アンコンシャスバイアスとは?具体例や職場での事例・対策について解説

アンコンシャスバイアスとは

無意識のうちに持っている偏見や思い込みを意味する「アンコンシャスバイアス」。アメリカの大手ICT企業がアンコンシャスバイアス対策を取り入れている背景から、近年、日本の企業でも注目されています。

しかし、人事担当者の中には「アンコンシャスバイアスとは何か分からない」方も多いのではないでしょうか。

今回のコラムではアンコンシャスバイアスの具体例や職場での事例、対策について詳しく解説します。

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アンコンシャスバイアスとは?7つのバイアスパターンを紹介

アンコンシャスバイアスとは、誰しもが持つ「無意識の偏見・思い込み」のこと。過去の経験や知識・価値観から他者に偏った判断をしてしまう心理現象です。

たとえば「男性なら定年まで働くのは当たり前」「女性なら家事をして当然」といった考えはアンコンシャスバイアスの代表例です。

アンコンシャスバイアスは物事を瞬時に判断するために不可欠な能力です。物事を大枠でスピーディーに理解するためには欠かせず、それ自体は悪いことではありません。

とはいえ、ほとんどの人は自身が持つアンコンシャスバイアスに配慮しながら生活しておらず、無意識のうちに他者を傷つけたり、間違った判断を導いてしまったりすることがあるのです。

では具体的に、私達の中にはどのようなアンコンシャスバイアスが存在するのでしょうか。

アンコンシャスバイアスは200種類以上あると言われていますが、今回は特に有名な下記7つのパターンを解説します。

  • 正常性バイアス
  • ハロー効果
  • 確証バイアス
  • ステレオタイプバイアス
  • 権威バイアス
  • 集団同調性バイアス
  • アインシュテルング効果

正常性バイアス

正常性バイアスは危険が差し迫っていても正常の範囲だと認識し、心の安定を保とうとする状態です。

例えば、会社の業績が悪化しているにもかかわらず、「自分の会社は倒産しないだろう」と自動的に判断する心理現象は、正常性バイアスによるものです。

正常性バイアスが作動すると対処が遅れてしまい、被害が拡大するおそれがあります。

ハロー効果

ある対象を評価するときに、その対象の持つ目立つ特徴により、他の印象や評価が歪められてしまう効果のことです。

ハロー効果には「ポジティブハロー効果」と「ネガティブハロー効果」の2つの種類があります。

ポジティブハロー効果は、その人の持つ一部の特徴が、その他の部分にもいい影響を与えます。例えば、学歴が高い人がいれば、その人物は信頼できる人だと感じる効果があります。

一方のネガティブハロー効果は、その人の持つ一部の特徴が、その他を評価する際に悪い影響を与えること。例えば、前職がアルバイトだった人を採用する場合に、その人物の評価を不当に低くつけてしまうケースが該当します。

確証バイアス

確証バイアスは、自分の考えや思い込みをサポートする情報ばかりを取り入れ、都合の悪い情報を排除する傾向です。

たとえば、一流大学出身である部下の働きぶりに問題があったとしても、上司が確証バイアスを持っていれば、人事評価で良い評価を与えてしまうかもしれません。

確証バイアスがあると、自分の思い込みを正当化し、反対とする情報を無視してしまいます。その結果、誤った判断を下してしまう可能性が高くなります。

ステレオタイプバイアス

多くの人に根付いている先入観・イメージにより判断してしまうことを、ステレオタイプバイアスと言います。

たとえば、「女性は文系だから数学が苦手」「男性は外で働き、女性は家庭を守るべき」「大阪人は面白い」など、他者をラベリング・カテゴライズして認識していく心理現象は、ステレオタイプバイアスに該当します。

権威バイアス

権威バイアスとは地位や肩書きによって、歪んだ評価をしてしまう心理メカニズムのことです。

「あの有名選手が愛用している〇〇」「〇〇先生が監修している化粧品」と聞くと、商品がより魅力的に見えるという経験は誰にでもあるでしょう。

ビジネスシーンでは、「社長がいうことは全て正しい」「〇〇部長の言う通りにしておけば問題ない」と、権威のある人の言葉をそのまま信じてしまうケースが権威バイアスに該当します。

集団同調性バイアス

所属している集団に主張を合わせてしまう心理現象を、集団同調性バイアスと言います。たとえ周りの人と異なる主張を持っていたとしても自分の意見を言わず、他の人に合わせてしまうのです。

例えば、災害発生時に周囲の様子をうかがっているうちに避難が遅れるケースは、集団同調性バイアスの一例として挙げられます。

集団同調性バイアスは会社の中でも多く発生します。集団同調性バイアスが生じると、多数派の意見しか取り入れられません。少数派の意見は例外だと捉えられるため、それらを取り入れて、より良い決断を下そうとはなりにくくなります。

その結果、似たような意見が集まり新しい発想は生まれづらくなり、会社のイノベーションを阻む要因となる可能性があります。

アインシュテルング効果

アインシュテルング効果とは、慣れ親しんだ考えが優先され、別の答えを無視する傾向のことです。

アインシュテルング効果の代表例として「水がめ問題」が挙げられます。水がめ問題は容量の異なる3つの容器を使用し、指定された量を測る問題です。この問題には何通りかの解決法があります。しかし、ある解き方を教えられた人々は別のやり方を考えず、その解き方に固執してしまうことが判明しました。

このように、自分なりの考え方を持っていると、たとえ他の答えを引き出す能力があるにも関わらず、他の可能性を無視してしまうのが、アインシュテルング効果による弊害となります。

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アンコンシャスバイアスの職場での事例を男女別に紹介

アンコンシャスバイアスは日常生活だけでなく、職場でも頻繁に発生します。

たとえば「男性なら残業や休日出勤をするのは当たり前」、「お茶くみは女性がするもの」といった思い込みは、アンコンシャスバイアスの代表例です。

以下では職場で受けやすいアンコンシャスバイアスの具体例を男女別に解説します。

男性が職場で受けやすいアンコンシャスバイアスの具体例

「男性なら残業や休日出勤をするのは当たり前」という考え方は、男性が職場で受けやすいアンコンシャスバイアスの典型例です。

近年、ワークライフバランスは重要視されていますが、長時間労働に慣れ親しんだ固定概念はそう簡単には変わりません。

実際に内閣府男女参画局が実施した調査によると、男性の4人に1人は周囲から「男性なら残業や休日出勤をするのは当たり前だ」と言われた経験があることが明らかになっています。

また管理職やリーダーは男性が向いている、大きな商談や大事な交渉事は男性がやる方がいいという考え方も、男性が職場で受けるアンコンシャスバイアスの例です。

管理職やリーダー、大事な交渉事に必要となる要素は、その人の経験や能力、資質です。性別では判断できるものでありません。「男性が向いている」という思い込みに引きづられた代表例と言えるでしょう。

女性が職場で受けやすいアンコンシャスバイアスの具体例

事務作業や清掃、お茶くみなど、簡単な仕事は女性がするべきという思い込みは、女性が職場で受けやすいアンコンシャスバイアスです

男女平等の考え方が広まっているにも関わらず、未だ根強く女性特有の業務として捉えられているのは、アンコンシャスバイアスによるものと考えられます。

その他、「女性の上司には抵抗がある」との思い込みも、女性が職場で感じることが多いようです。日本は世界的にも意思決定層に女性が少なく、女性役職者に対する男性の抵抗が強い傾向にあります。

アンコンシャスバイアスは「男女」という枠以外にも多数存在します

アンコンシャスバイアスはそもそも男子・女性のみのものではありません。

たとえば、車椅子を使用する従業員に対して宿泊を伴う出張を本人に確認することなく任命しなかったケースは、アンコンシャスバイアスによるものだと言えるでしょう。

業務を任命する上司としては配慮したのかもしれませんが、障害に対する先入観により、従業員本人の能力発揮の機会を奪っていると考えられます。

このように、障害者・LGBTといった性的マイノリティ・非正規社員・外国人など、男女という枠以外にも、アンコンシャスバイアスは多数存在します。

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アンコンシャスバイアスが企業に及ぼす問題とは

ここまでみてきたように、アンコンシャスバイアスは日常的に発生します。

では、アンコンシャスバイアスは企業にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか。以下5つの例を解説します。

  • ハラスメントの原因となる
  • ダイバーシティ促進への弊害
  • 社内風土が悪くなる
  • 社内の連携が取れなくなる
  • コンプライアンス違反などが起こりやすくなる

ハラスメントの原因となる

自分自身が持つアンコンシャスバイアスを認識しないまま他者と関わると、ハラスメントの原因となることがあります。性別による無意識の偏見は、日常の会話や態度に現れてくるためです。

多くの場合、ハラスメントの行為者は無自覚です。つまり、アンコンシャスバイアスを自覚してないがゆえに、ハラスメントに該当していると気づけないのです。

ハラスメントが発生すると従業員の仕事に対する意欲は低下し、メンタルヘルス不調を引き起こしたり、退職者が増えたりするリスクが高まります。

ダイバーシティ促進への弊害

アンコンシャスバイアスの問題の一つにダイバーシティ促進への弊害があります。

変化の激しい市場で生き残っていくには、これまでにない新しいアイデアが不可欠です。

では新しいアイデアはどこから生まれるのでしょう。それは、異なった意見・考え方から生じます。異なった意見・考え方を受け入れるには、多様な価値観を尊重できる環境が整備されている必要があります。

しかし、アンコンシャスバイアスがあると、ダイバーシティ(多様性)の促進は進みません。年齢や性別、国籍・宗教・就労形態等に偏った先入観があると、多様な人材や働き方を受け入れるのは難しいためです。

このようにアンコンシャスバイアスがあると、ダイバーシティ促進が進みにくい傾向があります。

社内風土が悪くなる

アンコンシャスバイアスは、組織の共通認識・習慣となり、社内風土として定着します。このような偏った習慣は、社内風土が悪くなる原因となるため注意が必要です。

誤った習慣に縛られると、良好な人間関係が構築できず、社内の雰囲気が悪くなり、労働効率が低くなるなど深刻な問題を引き起こすおそれがあります。

社内の連携が取れなくなる

偏った偏見による発言は、社内のコミュニケーションを悪化させる要因の1つとなります。

例えば、出身地や出身学校や性別、年齢などへの無意識の決めつけが言動の中にあると、自分は排除されていると考える人もいるでしょう。

たとえ発言した人に悪意がなくとも、される側が嫌悪感を抱くと、良好な社内の連携を取るのは難しくなります。

社内の連携が取れなくなると個々の社員にとどまらず、部署・企業のパフォーマンスを低下させるリスクがあります。

コンプライアンス違反などが起こりやすくなる

アンコンシャスバイアスにより価値観の多様性が認められない場合、コンプライアンス違反が起こりやすくなります。

例えば「男性なら長時間労働をするべき」といった偏った思い込みがあると、男性社員に長時間労働を強要してしまうかもしれません。

また、アンコンシャスバイアスはセクハラやパワハラ等も誘発しやすいため、コンプライアンス違反の発生率が高まります。

コンプライアンス違反が発生すると、今まで積み重ねてきた企業の実績・信頼感はあっという間に失われます。最悪の場合、倒産にまで発展するケースもあります。

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企業が行いたいアンコンシャスバイアスの対策とは

アンコンシャスバイアスを放置しておくと、社員のモチベーションが低下するにとどまらず、企業活動にもマイナスな影響を与えてしまいます。では、アンコンシャスバイアスに対して企業はどのような対策を取るべきなのでしょうか。

企業が行いたいアンコンシャスバイアス対策の流れは、以下の3ステップです。

  1. アンコンシャスバイアスを知る
  2. 誰もがもっているものだと気づく
  3. 具体的な対策を講じる

①アンコンシャスバイアスについて全従業員への周知・啓発

まずは、アンコンシャスバイアスについて全従業員への周知・啓発を促しましょう。

アンコンシャスバイアスが注目されるようになったのは、2010年代に入ってからのこと。そのため、「アンコンシャスバイアスとは何か」を知らない人がたくさんいます。

アンコンシャスバイアスとは何かを知らなければ、アンコンシャスバイアスを解消しようという発想にすら至りません。

職場のアンコンシャスバイアスを解消する第1ステップは、みんなが理解することから始まります。

②アンコンシャスバイアスは誰もが持っていることに気づいてもらう

アンコンシャスバイアスを持っていない人はいません。日々生活していく上で、アンコンシャスバイアスは気づかないうちに作られていくためです。

そのため、特定の人が持っているものではなく、誰もが持っていることに気づいてもらうことが大切です。

アンコンシャスバイアスを自分も持っているかもしれないと気づくだけで、自分の判断に疑問を持てるようになり、行動が変化します。

③具体的な対策を実施する

そうはいっても、アンコンシャスバイアスは無意識に生まれるため、自分で気づくのは困難です。

そこで効果的なのが、ハラスメント研修です。

ハラスメント研修を実施することで、自身がどのような無意識の思い込みを持っているのか、客観的に認識できます。また、企業側としても、社内にはどのようなアンコンシャスバイアスがあるのかを把握できるメリットがあります。

ハラスメント研修を実施する際は、全従業員に受けさせるのが望ましいです。

なぜなら、習慣・思考は社内風土となるためです。全従業員がアンコンシャスバイアスに気づくことにより、働きやすい職場へと変化します。

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アンコンシャスバイアスに気づき組織力を高めるメリットと目的

アンコンシャスバイアスに気づけると、これまで当たり前(常識)と思っていることに対して疑問を持つことができます。

疑問を持てれば、自分の発言・行動にも影響を与えるでしょう。

その結果、以下のような良い変化が起こります。

  • ハラスメント防止ができ、誰もが働きやすい職場となる
  • 良好な人間関係が築け、社内の雰囲気が良くなる
  • コミュニケーションが活性化され、円滑な意思疎通ができる職場となる
  • 多様な人材を受け入れられ、新しいアイデアが生まれやすくなる
  • コンプライアンスが遵守され、企業の社会的信頼度が高まる

このようにアンコンシャスバイアスを解消すれば、企業活動に多くのポジティブな影響が生まれます。

つまり、アンコンシャスバイアス対策を行う目的は、最終的に社内の風通しを良くして連携が取れる社内風土の醸成と言えるでしょう。

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迷ったらアガルートのハラスメント研修へ

これまで「アンコンシャスバイアスはないか」「企業が取るべき対策やメリット」については分かったと思いますが、自社に合う研修内容について迷う方がいるはずです。

アガルートでは御社とコミュニケーションをとり、御社にあった研修内容をカスタマイズすることも可能です。

ハラスメントの実施を検討しているのであれば、お気軽にご相談ください。

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