「コーポレートガバナンスという単語はよく聞くが、具体的にどんな内容を指すのか分かっていない…」
「コーポレートガバナンスに関する正しい認識を社内に広げたいが、手法がわからない…」
と悩む企業は多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは、コーポレートガバナンスについて解説します。コーポレートガバナンスの目的や内部統制との違いについても解説するので、参考にしてみましょう。
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目次
コーポレートガバナンスとは簡単に言うとどういう意味?
コーポレートガバナンスは「企業統治」を意味する言葉であり、企業での不祥事やトラブルを防ぐための仕組みを指します。
企業組織の運営や管理に関するルールとして認識されることが多く、透明性の向上や責任の所在を明らかにする効果があります。
また、法令遵守を徹底するための規則や手続きを指すこともあります。
直近では2021年6月に東京証券取引所を有する日本取引所グループが改正コーポレートガバナンス・コードを公表し、話題になりました。
経営の考え方やコンプライアンス意識に与えた影響は大きく、似たコーポレートガバナンスを導入する企業が増えています。
コーポレートガバナンスと内部統制の違い
コーポレートガバナンスと内部統制は、透明性のある企業運営・管理を目指す仕組みという点が共通しています。
しかし、内部統制はあくまでも社内向けの仕組みであり、社内規則・行動規範・独自の運営ガイドラインのことを指すことが大半です。
コーポレートガバナンスは株主の権利保護やコンプライアンス違反の予防など対外的な役割が多く、社会監査役なども巻き込んだ仕組みになるのが一般的です。
コーポレートガバナンスとコンプライアンスの違い
コンプライアンスは「法令順守」を指す言葉であり、法律・法令・条例で定められた事柄を徹底するための考え方のことです。
近年は法律だけでなく企業倫理や社会一般的なモラルもコンプライアンスに含むとする考え方が多く、ハラスメント対策やITリテラシーの向上などもコンプライアンスとしてみなされるようになりました。
コーポレートガバナンスが欠けていると結果的に不祥事が起き、コンプライアンス違反につながります。コンプライアンスを遵守するため、コーポレートガバナンスによる企業統治が必要、とイメージしておくとよいでしょう。
コーポレートガバナンスの目的とは
コーポレートガバナンスの目的は、大きく分けて下記の5つです。
- ステークホルダーの利益保護
- 株主価値の最大化
- リスク管理と持続可能性の確保
- 透明性と情報開示の向上
- 法令遵守と社会的責任
以下で詳しく解説します。
ステークホルダーの利益保護
ステークホルダーとは、株主・従業員・顧客・サプライヤー・地域社会・同業他社など、自社を取り巻く関係者を指す言葉です。
公正かつ公平な企業活動ができないとステークホルダーへ与えるダメージが大きくなるため、信頼の獲得と事業継続性の確保のためコーポレートガバナンスが欠かせません。
株主価値の最大化
コーポレートガバナンスは、企業活動の最適化により株主の利益最大化を狙うものでもあります。
経営陣の責任や報酬体系の適正化、情報開示の透明化が叶えば株式市場で優良企業として注目されやすくなります。
リスク管理と持続可能性の確保
内部統制や監査機能を強化することにより、重篤なコンプライアンス違反を予防しやすくなります。
最新の法律に基づいて企業活動したり、自社の社風を客観的に評価してもらい改善を繰り返したりしながら、持続可能性を向上させます。
透明性と情報開示の向上
適切な情報開示ができる企業は信頼されやすく、投資家の意思決定を支えます。
クリーンな企業であるというイメージも根付くため社会的な信用も高くなり、結果的に株式市場での注目度も高まります。
法令遵守と社会的責任
企業規模が大きくなればなるほど社会的責任が増していくため、その対応策としてコーポレートガバナンスを導入する企業も多いです。
法律に則った企業活動と社会に受け入れられる行動をすることで、倫理的な経営が成り立ちます。
コーポレートガバナンス・コードとは
コーポレートガバナンス・コードは、「企業統治指針」を指す言葉です。
企業組織のあるべき姿や、株主・顧客・取引先・従業員・地域社会など企業をとりまくありとあらゆるステークホルダーとの理想的な関係性について説かれているため、コーポレートガバナンスのガイドラインとして活用されています。
特に株式市場では、コーポレートガバナンス・コードに則った経営ができているかをひとつの指針としているケースが多いです。
上場の有無に関係なく、コーポレートガバナンスを導入する際の参考にしてみましょう。
コーポレートガバナンスが必要となった背景
コーポレートガバナンスが重視されるようになった背景として、下記が挙げられます。
- 企業の拡大と複雑化
- 株主とステークホルダーの利益保護の必要性
- 不正行為や経営不振の発生
- 投資家や金融市場の要求の変化
以下で詳しく解説します。
企業の拡大と複雑化
グローバル化に伴う多国籍企業の増加、働き方改革に伴うテレワークやフレックスタイム制の導入など企業の多様化が進む昨今、企業の組織管理も複雑化しています。
経営陣の意思決定が及ぶ範囲が広くなったため、意思決定のスピードが遅くなるなど思わぬ弊害が出て事業に影響するケースも増えました。
そのためコーポレートガバナンスによる責任の明確化や経営の可視化が求められるようになり、適正な企業活動を支える要因となっています。
株主とステークホルダーの利益保護の必要性
企業は株主やステークホルダーの利益を保護する必要がありますが、自社の利益しか考えない一部の企業ではこの意識が徹底されていないことが課題視されています。
コーポレートガバナンスによる定めがあれば利益保護に向けて動きやすく、かつ経営層の意識変革を起こすきっかけにもなります。
不正行為や経営不振の発生
虚偽による補助金の受給・偽装会計・労務管理の不徹底など、企業による不正行為は後を絶ちません。
コーポレートガバナンスが徹底されている企業ではこのような不正を発見しやすく、予防にも役立ちます。
また、目に見えない経営不振リスクも可視化できるので、持続可能性に貢献するのもメリットです。
投資家や金融市場の要求の変化
投資家や金融市場のニーズは時代に合わせて変化しており、近年ではサステナビリティをめぐる課題への取り組みや、中核人材における多様性の確保に積極的な企業が評価されやすくなっています。
適切なガバナンスを実践する企業は外部からの評価を得やすくなるため、導入のメリットがあるとわかります。
コーポレートガバナンスの日本と海外との特徴の違い
コーポレートガバナンスの考え方は日本だけでなく世界各国で導入されていますが、考え方が異なる点が多いので注意しましょう。
日本と海外の特徴における代表的な違いは、下記の通りです。
- 日本の特徴:長期志向 / コンセンサス志向 / 取締役会の重要性
- 海外の特徴:株主主義 / 監査と透明性 / 多国籍性
以下で詳しく解説します。
日本の特徴
長期志向
日本の企業は、長期的な持続可能性やステークホルダーの利益を重視する傾向にあり、地域社会の福祉や従業員の家族も大切にしています。
そのため一朝一夕で効果が出にくい取り組みも積極的に評価するのが特徴です。
コンセンサス志向
経営陣と従業員、または経営陣と取引先など、関係各所とのコンセンサスを得ることが重視されています。複数メンバーの合意を得て意思決定されることが多く、経営陣と労使組合の関係性が密接なのも大きな特徴です。
取締役会の重要性
取締役会を経営の中心に設置しており、意思決定機関として機能させているのが一般的です。株主との対話やコンセンサスの確保が重視されており、双方向のコミュニケーションが可能です。
海外の特徴
株主主義
海外では経営陣より株主の権限が強いとする考え方が一般的であり、企業には「株主の期待に答える」というミッションが課せられます。
企業価値の向上と利益の最大化を優先する企業が多いのも、株主主義による考え方と言えるでしょう。
監査と透明性
外部の監査法人や人事権の範囲外である監査役による、客観的な監視体制が敷かれていることも多いです。
透明性の高い情報開示を求められることも多く、チェック体制が日本より厳しいことも特徴です。
多国籍性
海外企業は多国籍かつ多様性のある人材を雇用していることが多く、国ごとの法令に合わせたビジネスが不可欠です。
そのためコーポレートガバナンスによる企業統治を徹底し、異文化理解を進める必要があります。
コーポレートガバナンスの強化に成功した企業事例3選
ここでは、コーポレートガバナンスの強化により企業成長を叶えた事例を紹介します。
自社にも参考になるポイントがないか、チェックしてみましょう。
トヨタ自動車(Toyota Motor Corporation)
トヨタ自動車は、高品質・持続可能な生産体制・顧客満足度を重視した経営をしてきた結果、企業価値の向上を果たしています。
外部取締役の登用や情報開示の透明性向上にも同時に取り組み、意思決定のプロセスも改善されています。株主との信頼関係が生まれ、ステークホルダー全体の利益を上げられるようになりました。
ファーストリテイリング(Fast Retailing)
UNIQLOなどのアパレルショップを手掛けるファーストリテイリングでは、顧客ニーズに合った商品開発とプロモーションに力を入れたことで、利益の拡大を叶えています。
顧客満足度も高くリピーターが多いからこそ持続可能な企業活動ができ、安定企業としての評価を獲得しました。
また、外部取締役の登用にも力を入れており、監視体制を強化しているのもポイントです。
ソフトバンクグループ(SoftBank Group)
ソフトバンクグループでは最先端技術の積極的な活用により、事業の成長を加速化させました。
経営層のリーダーシップと意思決定を支えるコーポレートガバナンスを徹底しており、リスクをとった成長戦略も叶えています。ガバナンスの柔軟性とリスク管理対策が功を奏した事例であり、現在も企業価値が上昇しつづけています。
コーポレートガバナンス問題への5つの取り組み
最後に、コーポレートガバナンス問題に対する代表的な取り組み内容を5つ紹介します。
- ガバナンスフレームワークの整備
- 監査と監督の強化
- 取締役会の役割と責任の明確化
- ステークホルダーとの対話と関与
- 倫理教育と企業文化の浸透
以下で詳しく解説しますので、自社に不足している部分がないか、改めてチェックしてみましょう。
ガバナンスフレームワークの整備
ガバナンスフレームワークとは、企業組織がガバナンスを実装・管理・監視するためのフレームワークを指します。
組織運営に関する原則や監視体制のガイドラインを策定し、自社のルールとして根付かせましょう。また、経営陣の役割・責任、取締役会の機能、株主権の保護について盛り込むのもおすすめです。
監査と監督の強化
監査・監督機能を強化するため、人事権の及ばない独立した監査役や監査委員会の設置が望まれます。財務状況の可視化や人事の透明性を確保し、社内外からの信頼を確保することが大切です。
取締役会の役割と責任の明確化
取締役会は、自社の経営方針・販売戦略・リスク管理・コンプライアンス監督等を担う最重要機関です。
事前に取締役会の構成や運営ルールを明確にしておき、経営の意思決定スピードを上げていきましょう。
ステークホルダーとの対話と関与
ステークホルダーとのコミュニケーションを密におこない、自社が期待されていることや現状の不満を聞き取る姿勢が大切です。
社会的なニーズに答えていくことが企業成長の支えとなり、持続可能な経営が叶います。
倫理教育と企業文化の浸透
経営層だけでなく現場で働く従業員まで広く倫理教育をおこない、モラルハザードやコンプライアンス違反をおこさない企業文化を醸成します。
教育・研修による指導やリーダー人材の雇用などを試み、信頼性のある企業活動にしていきましょう。
コーポレートガバナンスまとめ
コーポレートガバナンスは中長期的な企業成長と持続可能性を考える際に欠かせない視点であり、企業規模問わずガバナンス体制の構築が期待されています。
各ステークホルダーと協働できればお互いの立場を尊重しやすく、公平性のある活動ができる可能性も高まります。
自社の経営理念やミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を見直し、コーポレートガバナンスの存在意義を今一度確かめてみましょう。
策定後は経営層以外にも広く周知させ、透明性を確保することもポイントです。
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