カスハラの事例7選!訴えることは出来る?裁判事例や暴言例も紹介

カスハラの事例7選!訴えることは出来る?裁判事例や暴言例も紹介

「お客様からクレームを受けた時にどこまで対応するえば良いかわからない」
「態度が冷たい常連客がいて従業員のメンタルが気になる」

仕事をしていて、お客様からのお申し出(クレーム)は誰もが経験することでしょう。
しかし、中には度がすぎた要求をする顧客がいて社会問題となっています。

顧客等から受けるハラスメントを「カスタマーハラスメント(通称カスハラ)」と呼びます。

カスハラは従業員の健康を害するだけでなく、他のお客様にも迷惑がかかる可能性が高く、適切な対処が必要です。

そこで、当コラムでは具体的なカスハラの内容や裁判事例を解説します。
カスハラの具体例を知って、自社の対策に繋げていただけたらと思います。

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カスハラ事例5選!過去の事例から最新までを紹介

本章では、過去に起きたカスハラ事例を5例紹介します。

  1. 「タオルケットに穴」で土下座強要
  2. はま寿司「ほかの客の寿司にわさび」
  3. ICカードが切符投入口に入らず逆ギレ
  4. 「本田、会社に言うぞ」タクシーの名指しカスハラ
  5. 署に2時間近く居座り続け逮捕【2023年最新事例】

以下で詳しく解説します。

1.「タオルケットに穴」で土下座強要

カスハラでは、過度な要求で従業員や店舗管理者に理不尽な要求をするケースがあります。

購入したタオルケットに穴が開いていたと店に返品した際に、従業員と店長に対して土下座を要求した事件について解説します。

経緯購入したタオルケットに穴が開いていたと女性より店舗に訴えがあった
店の対応返品を受け付けた
被害内容・返品では足りずに土下座を要求
・土下座する様子を写真に撮ってSNSに投稿
・その後家まで謝罪に来るように要求
事件性の有無・強要罪で逮捕

この事例では土下座にてその場では対応したものの、自宅での謝罪を要求されて店側が被害届を提出しました。
その結果、強要罪(刑法第223条第1項)に当たるとされて女性が逮捕される結末となりました。

カスハラで、一般的な謝罪でも足りないと訴えて、土下座を要求するケースが多々あります。

営業時間中であり、他のお客様に迷惑をかけないようにと土下座に応じてしまうことも多いでしょう。
しかし社会通念上、やりすぎた謝罪の要求はカスハラに当たる可能性が高いです。

参照:「土下座せえへんかったら、店のもん壊す」ついには店員の頭を蹴るヤカラも…日本をむしばむ「モンスター客」の壮絶実態

2. はま寿司「ほかの客の寿司にわさび」

飲食店でもカスハラは問題となっています。

とくに衛生面の管理が厳しい飲食店で、顧客の問題行動により他のお客様への迷惑行為をおこなった事例を紹介します。

経緯10代の少年がレーン上の他の客のオーダー品である寿司の上にワサビを乗せてSNSに投稿した
店の対応少年より謝罪を受けたが被害届を出す方針
被害内容・SNS上で動画が拡散されて店の信頼を失う
・動画の拡散後の売上減少
・損害賠償金よりも裁判の金額が高くなる可能性が高い
事件性の有無・威力業務妨害で送検

回転寿司ではセルフで飲食物を受けとり、店員の目も行き届かないことから深刻なカスハラが話題となっています。

この事件の他にも『あきんどスシロー』で醤油や湯呑みを舐める動画が拡散された事件を覚えている人も多いのではないでしょうか?
スシローでは6000万円を超える損害賠償金額を要求していると報道されました。

しかしはま寿司の事例もスシローの事例も、行為を行った本人は10代と若いことが特徴です。
要求金額より減額されるのではと考えられています。

売上や株価の下落など、損害賠償金では補えないような損失が出る可能性も指摘されており、裁判費用も考慮すると飲食店の被害は計り知れません。

参照:はま寿司「ほかの客の寿司にわさび」少年が家裁送致に「6700万円損害賠償」スシローとの違いを弁護士が解説

3. ICカードが切符投入口に入らず逆ギレ

鉄道でもカスハラが問題になることがあります。

経緯駅員が乗客に暴行された
駅員の対応ICカードの入れ方を顧客に教えた
被害内容・使い方を教えたにもかかわらず逆上した
・対応した駅員の右胸を殴打
・身の危険を感じて警察へ通報
事件性の有無以下の犯罪に該当する可能性がある
・暴行罪
・傷害罪
・強盗罪
・公務執行妨害

このケースでは70代男性が加害者となりました。

カスハラを起こす可能性があるのは若い世代だけとは限りません。
もし怪我がなければ暴行罪、軽微でも怪我があれば傷害罪に当たる可能性があります。

さらにそのまま運賃を払わずに逃走すれば強盗罪、駅員の仕事を妨害したとして公務執行妨害に問われるかもしれません。

とくに飲酒後に駅員に対してハラスメントを行うケースが多く問題視されています。
感染症が落ち着き、会食や飲み会などが解禁されつつあるため、さらに事例が増える可能性も高いといえるでしょう。

参照:ICカードが切符投入口に入らず逆ギレ…駅係員への理不尽な暴力、国交省が公表

4.「本田、会社に言うぞ」タクシーの名指しカスハラ

タクシーを利用した際に氏名や運転免許証の有効期限などが書かれたプレートを見たことがある人は多いでしょう。

しかし、カスハラにより名前や所属がSNSに晒されるケースが増えたため、タクシー運転手の身分証の提示義務がなくなりました。

タクシー内に記載されている身分証を確認し、「本田」であると名前を確認して脅しあげるハラスメントがありました。

このようにSNSで拡散される可能性を考えると、タクシー運転手はプライバシーを晒される恐怖を抱えながら仕事をしなければなりません。
悪質な乗客が増えたことにより、タクシー運転手の身を守るように制度が変えられました。

参照:「本田、会社に言うぞ」タクシーの名指しカスハラ、氏名掲示廃止で転機 労組が語る「密室のストレス」

5. 署に2時間近く居座り続け逮捕【2023・2024年最新事例】

2023年の最新ハラスメント事例として、警察署でのカスハラを紹介します。

刑事と話がしたいと一方的に要求し、2時間以上警察署に居座った男性によるカスハラです。

5回以上ひきとるように注意喚起されたにもかかわらず退去しなかったため、建造物不退去容疑で現行犯逮捕されました。

この一件から、福岡警察署は全国初の警察内カスタマーハラスメント対策を本格的に作成し、『来庁時間の目処は1時間』といった施策を開始しています。

参照:署に2時間近く居座り続けた疑い 福岡県警、カスハラ対策で初の逮捕

※令和6年(2024年)の事例は未だありませんので、公開され次第掲載します

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カスハラの判断基準とは?

では具体的にどのような状態がカスハラに当たるのか解説します。

厚生労働省『カスタマーハラスメント対策企業マニュアル』に基づく判断基準によると、以下の3点が重要です。

  1. 顧客等から受ける言動であること
  2. 顧客等の要求が妥当性を欠くもの
  3. 顧客等の言動が社会通念上不相当であるもの

つまり、「顧客から受ける理不尽な行動」がカスハラにあたります。

顧客等から受ける言動であること

カスハラは、カスタマーハラスメントの略なので、カスタマー(顧客)が加害者になるケースが多いです。

定義上は顧客“等”とついていますが、一般的なお客様のイメージと大きく変わりません。
顧客が企業や従業員に対して行う言動が常軌を逸しているとカスハラとなります。

顧客等の要求が妥当性を欠くもの

顧客等の要求が妥当性を欠いており、理不尽であるとカスハラに該当する可能性があります。

お客様が感じた不具合や改善要求を正当に訴えることは、決して悪いことではありません。

しかし、度を超えるとハラスメントになります。
無理難題を突きつける、土下座を要求するなどは妥当性が低いといえるでしょう。

顧客等の言動が社会通念上不相当であるもの

顧客等の言動が常識を越える場合もカスハラと判断される可能性が高いです。

店内で大声で怒鳴る、顔写真や名前をSNSにアップするなどが該当します。
恐怖で従業員を支配しようとする行為は、立派なハラスメントといえます。

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カスハラの暴言例10選

カスハラにあたる言動を具体的に解説します。
大まかには「顧客が従業員や企業を恐怖で支配しようとすること」がカスハラです。

もし実際の職場でカスハラではないかと疑われる行為があったら、1人で抱え込まずに相談しましょう。

従業員が心身ともに健康で働けるように、相談しやすい職場づくりも大切です。

1. 命令口調や威圧的な態度

従業員に対して命令口調であったり、威圧的な態度をとったりするとカスハラになる可能性が高いです。

例えば「おい!早くしろ」や「何やってんだよ!」といった言動です。

「お客様は神様です」というフレーズから、カスハラをする人は従業員よりも自分が偉いと思いがちです。
しかし決して立場の上下はないため、顧客が威圧的な態度をとっていい理由にはなりません。

2. 人格や能力の否定

従業員に対して人格や能力を否定するような言動もカスハラにあたります。

「お前こんなこともできないのかよ」などという発言などです。

人格や能力を否定すると従業員は萎縮しやすく、カスハラもエスカレートするかもしれません。
人格や能力を否定されたからといって、カスハラ加害者の言いなりにはならないようにしましょう。

3. 無理な要求

いくら顧客だからといって無理な要求を行うとカスハラになります。

「まだ店を閉めるな(閉店時間後)」といって居座る、「安くしろ」と無理な値下げを要求する行為はハラスメントです。

「この商品ありますか?」などの顧客サービスに含まれるような要求の範疇を超えたらハラスメントとして対処しましょう。

4. 身体的な接触

腕を掴む、突き飛ばす、蹴るといった身体的な接触は暴力行為となりカスハラです。

どのような場面でも、暴力により相手を支配しようとする行為は認められません。
暴行罪や傷害罪、窃盗罪など重大な刑事事件になる可能性も高い行為です。

従業員は身の危険を感じたら、まずは安全な場所に避難しましょう。

5. 不当な拘束

従業員を不当に拘束する行為もカスハラにあたります。

「俺の気がすむまで帰るな」と店に軟禁したり、自宅へ来るように強要する行為が不当な拘束です。

刑事罰になる可能性も高く、自宅などの密室ではカスハラがエスカレートする可能性も高まるでしょう。
要求が常軌を逸していると感じたら、従わずに警察に通報するなどして対処しましょう。

6. 過度な電話やメール

電話やメールでしつこくクレームを入れたり、嫌がらせ目的で頻繁に連絡を取る行為もカスハラです。

カスハラ的な電話やメールにより、肝心なお客様からの問い合わせに気づかない可能性があります。

頻度や内容が常識を逸している場合は、警察などに相談しましょう。

7. プライバシーの侵害やストーカー行為

住所や家族のことなど、プライベートなことを無理やり聞き出そうとするような行為のカスハラになる可能性があります。

さらに、勤務後の従業員の後をついて行くようなストーカー行為やシフトを聞き出す行為も当てはまります。

プライバシーを保護しなければ従業員は安心して働けません。

8. 差別的な言葉

従業員の人種や国籍、宗教などに対して差別的な発言をすることもカスハラになります。

また、最近では定年後の再雇用の従業員も多く、「早くしろジジイ」などと言った言動も問題です。

とくに国籍や宗教などの差別的発言は、言われた従業員も逆上しやすくトラブルが大きくなるかもしれません。

問題のある顧客がいたら、なるべく早めに対応する従業員を変えるなど対策しましょう。

9. 無視や軽視

従業員の発言や問いかけに対してわざと無視をしたり、馬鹿にするような態度を取ることもカスハラです。

このような顧客は無視をしているのは自分なのに、従業員に対して「聞いていない」などと後になってクレームをいうかもしれません。

顧客の対応がおかしいと感じたら早めに上司や同僚に相談しておきましょう。

10. 他の顧客との比較

他の店舗や他の顧客を引き合いに出して理不尽な言動を行うこともカスハラにあたります。

値引き交渉なども度が過ぎるとカスハラになるかもしれません。
「あの店より安くするまで帰らない」「あの客に比べて自分の商品は量が少ないから安くしろ」などが考えられます。

顧客の主張が明らかに行き過ぎである場合は、警察への通報も視野に入れましょう。

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カスハラで訴えることは出来る?裁判事例2選

カスハラにより裁判を起こした場合の裁判事例について解説します。

ポイントと法律違反の可能性についてまとめました。
自社でカスハラが起きた際に組織と従業員を守るヒントにしてみてください。

また、厚労省では『カスタマーハラスメント・就活ハラスメント悩み相談室』が設置されています。

自社内で解決しない場合は、従業員の健康を守るためにも悩み相談しつを活用してみましょう。

1. 看護職員に「馬鹿野郎」「お前なんかやめちまえ」

まず介護現場で看護師が受けたカスハラの事例について解説します。

介護現場はセクハラやカスハラが起きやすい傾向にあります。

当事例では認知症の入居者の家族からのカスハラが問題になりました。

カスハラの内容・「馬鹿野郎」「お前なんかやめちまえ」という暴言をはく
・ホーム長や従業員に人格否定をするようなあだ名をつける
・介護・看護内容の変更を強要する
施設側の対応・細かくカスハラの内容を記録
・加害者への警告文を9回以上送付
違反する法律安全配慮義務違反の可能性
ポイント・録音がなくても記録が証拠として有効と判断された
・施設管理者が適切に警告文を送っていたことがよかった
・繰り返されるハラスメントに対しては録音や動画データがあるとなお良い
・契約解除にあたる禁止事項を起こす対象者を契約書に明示すると良い

この事例では、管理者であるホーム長の記録や警告文をきちんと加害者に送付していた事実により、安全配慮義務違反とはなりませんでした。

さらに加害者家族の契約解除や契約解除後の料金変更が認められて、施設側の主張が正しいとの判決がくだっています。

このようにカスハラが起きた際には証拠の提出が重要です。
詳細な記録を取り、可能であれば録音や録画ができるとなお良いでしょう。

「介護現場のセクハラやカスハラは当たり前だから我慢するもの」ではなく、防止策を検討する義務があることを覚えておきましょう。

2. 市の職員に複数回にわたる不当な要求行為や暴言

市の職員に対してのカスハラにおける裁判事例を紹介します。

本来は市民の正当な権利とされている情報開示請求ですが、当事例では不当な請求の繰り返しや架電をくりかえされました。

その結果、職員の業務負担が増えて残業代が多くなったため、残業代等の損害賠償を裁判で争いました。

カスハラの内容・大阪市の職員に対して複数回の不当な要求を繰り返した
・職員に対して暴言を吐いた
・脅迫的な言葉を繰り返し職員に言い放った
施設側の主張・業務が増えたことによる残業代の請求
・裁判に関わった弁護士費用の一部負担の要求
判決80万円の損害賠償
ポイント・残業代全てが損害と判断されることはなかった
・正当な市民の権利を逸脱した言動だったと判断された

当事例でもカスハラが認められて損害賠償を加害者が払うことになりました。

本来は市民がよりよく生活するために、市役所の機能や電話は利用されるべきです。
しかしこのようなカスハラにより、市の業務が圧迫されてしまうと他の市民に迷惑がかかる可能性があります。

市の円滑な運営を守るためなら損害賠償80万円という額は決して高過ぎる額ではないでしょう。

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カスハラ(カスタマーハラスメント)事例まとめ

当記事ではカスハラの具体例と裁判事例について解説しました。

カスハラが起こった際には、加害者のみならず組織の対応も裁判の論点となる可能性があります。
なぜなら、従業員の安全配慮義務があるからです。

カスハラはいつ起こるかわからず、即座に適切な対応策を取るためにも自社内でのハラスメント対策の強化が必須です。

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