最近では、会社の業務時間外で行われる飲み会の在り方が問題視されています。そのため、企業では飲み会での嫌がらせ行為となるアルコールハラスメント(アルハラ)への配慮も必要です。アルハラの内容や防止対策は、社員研修で学べます。
今回は、アルハラ研修の目的や内容について、職場での具体例をもとに解説します。アルハラ防止対策も紹介するので、参考にしてみてください。
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目次
アルハラ(アルコールハラスメント)の定義とは?
アルハラ(アルコールハラスメント)は、飲酒による迷惑行為、アルコールの力で行われる嫌がらせです。たとえば、飲酒経験のない社員に対して、上司からアルコールを勧められる行為もアルハラになる可能性があります。
政府広報オンラインでは、お酒を飲めない人に無理やり飲酒を強要する行為は、暴力と同じだと指摘しています。
出典:政府広報オンライン「急性アルコール中毒の怖さを知っていますか?イッキ飲みや無理強いは命にかかわることも!」
飲酒経験のない人に飲酒を強要して飲ませた場合は、急性アルコール中毒を起こすかもしれません。急性アルコール中毒は、短時間で許容量を上回るアルコールの摂取が原因の中毒症状です。場合によっては、傷害罪などの法的な罰則を受ける可能性もあります。
アルハラは飲酒を介した嫌がらせだけではなく、度が過ぎる行為で大きな問題にもつながるハラスメントの一種です。
アルハラの判断基準とは?
職場で考えられる次の行為は、アルハラと判断される可能性があります。
- 飲み会の参加を断れない社風
- 酔っているから無礼講と考える社風
- 酔いつぶれを想定した準備
飲み会の参加を断れない社風
アルハラが起きやすい職場は、飲み会の参加を断れない雰囲気を持っています。
「飲み会は全員参加」を当然としている社風は、アルハラの要素があるでしょう。前述しましたが、お酒の飲めない人を飲み会に強制参加させたあげく、飲酒の強要で急性アルコール中毒となれば、傷害罪などの適用も考えられます。
※出典:厚生労働省「e-ヘルスネット」
飲み会の強制的な参加だけではなく、飲酒の強要も合わせてお酒の飲めない人に配慮しなければアルハラが疑われるでしょう。
酔っているから無礼講と考える社風
職場によっては、酔ったうえでのエピソードを武勇伝のように語る場合もあります。たとえば、「去年の忘年会は全員が朝まで飲んでいた」や「女子社員がお酌をしてくれた」、「上司も部下も関係なくバカ騒ぎをした」など。
過去の飲み会を振り返って、酔えば無礼講と考える社風はアルハラになる要素があります。酔ったうえでの悪ふざけや暴言、セクハラなどは度が過ぎれば人権侵害にもなるでしょう。
酔いつぶれを想定した準備
酔いつぶれたときの準備を万端にしておく飲み会は、アルハラとなる可能性があります。
酔いつぶれることを想定して、バケツや袋、介抱部屋などを準備する場合もあるでしょう。そのような準備は、「酔いつぶれても別室で休めるからつぶれるまで飲んで」と、飲酒の強要にもつながります。
アルハラとなる職場での発言や行為の具体例10選
お酒が飲める人は、懇親会や送別会などに参加した際は油断は禁物です。次に紹介する10の発言や行動は、度が過ぎればアルコールハラスメントと判断されるため、理解しておきましょう。
- 飲酒を強引に勧める行為
- 飲酒を断ることで受ける非難や見下し
- 飲める量を競わせる挑発行為
- 飲酒せざるを得なく仕向ける行為
- 節目のたびにアルコールで祝杯を上げようとする社風
- 飲酒を断ることが昇進に影響すると匂わせる行為
- 飲み会での言動や酔ったときのエピソードなどの下品な発言
- 飲酒しない人を排除する差別行為
- 酔った勢いで行う迷惑行為
- お酒の飲めない人にアルコール関連の贈り物を強制する行為
飲酒を強引に勧める行為
アルハラの特徴は、飲酒の強要ではないでしょうか。飲酒を強引に進める行為は、同僚や上司が個人の意志に反して行われます。
「お酒を飲むことが当たり前」という判断で懇親会に参加している人からすると、悪気があってすることではありません。ただし、飲酒を勧められた相手にすれば苦痛極まりない行為です。
飲酒を断ることで受ける非難や見下し
アルハラは、飲めない人が飲酒を断ることで、非難したり見下したりする行為も該当します。
「他の新入社員は飲んでいるのに飲めないなんてだらしない」や「この程度の酒が飲めないなんて情けない」などと、非難や見下す発言は、相手を傷つける行為にもなるでしょう。
飲める量を競わせる挑発行為
飲酒量の競い合いは、お酒に強い人が優位な立場とも思わせる行為です。
飲み会では、飲酒量を競うように挑発し、無理な量を飲ませる行為もアルハラと考えられます。飲める量を競わせる行為は、急性アルコール中毒にもつながる挑発行為です。
飲酒せざるを得なく仕向ける行為
職場で催されるイベントやパーティで、参加者全員が飲酒せざるを得なく仕向ける行為はアルハラに該当します。
イベント会場にアルコール類だけを用意することは、飲まない人を無視した行為です。
節目のたびにアルコールで祝杯を上げようとする社風
仕事の節目ごとにアルコールで祝う社風は、度が過ぎればアルハラとなるでしょう。
プロジェクトの成功や同僚の昇進など、何かとこじつけて飲み会を開くことは問題ではありません。しかし、頻度が多くなれば飲酒の強要にもつながります。
飲酒を断ることが昇進に影響すると匂わせる行為
飲酒と仕事を結びつけることは、飲まない人からすると迷惑行為です。
飲酒を断ると昇進に影響するとなれば、飲まない人でも飲まざるを得なくなるでしょう。立場を使って飲酒を強要する行為は、アルハラに該当します。
飲み会での言動や酔ったときのエピソードなどの下品な発言
飲み会では、酔った勢いで突拍子もない行動を起こすことも考えられます。
飲み会での言動や酔ったときの下品な冗談、不適切なコメントなどの発言は、度が過ぎればアルハラとなるでしょう。
飲酒しない人を排除する差別行為
飲酒しない人を社内のネットワーキングから排除する行為は、アルハラに該当します。
また、酒を飲める人だけを意図的に参加させる飲酒目的の社内イベントも差別行為となるでしょう。つまり、飲酒を条件に参加者を選別する行為は、アルハラと判断されます。
酔った勢いで行う迷惑行為
飲み会は、酔った勢いで迷惑行為を起こしやすい条件の揃った集まりです。許容以上の飲酒は、判断力の低下を招き、暴言や悪ふざけなどでアルハラになる可能性があります。
飲んだ勢いで、普段見せないような態度で接したり、ひんしゅくを買うような行為もアルハラ行為です。
お酒の飲めない人にアルコール関連の贈り物を強制する行為
アルハラは、日頃の行動が該当することもあるでしょう。飲酒の習慣がない人は、アルコールを含む贈り物を受け取っても迷惑に思われます。
迷惑行為と知りながら、アルコール関連の贈り物を強制的に送ることはアルハラです。
アルハラ研修の目的
社員研修の中には、アルハラについて知識を学べるアルハラ研修があります。ここでは、アルハラ研修の目的を3つ紹介しましょう。
- アルハラが引き起こす問題の理解から危機意識を強化する
- アルハラとパワハラ、セクハラなどの関係を正しく理解する
- 職場の飲み会の在り方を見直す機会にする
アルハラが引き起こす問題の理解から危機意識を強化する
アルハラ研修の目的は、アルハラが引き起こす問題を理解することです。
職場の飲み会は、アルコールをともなうため、過度な飲酒量で競い合うことが考えられます。その結果、飲めない人が短時間で大量のアルコールを摂取して急性アルコール中毒になることもあるでしょう。
急性アルコール中毒になった人を死亡させれば、傷害致死罪となる場合もあります。アルハラ研修は、そのような問題防止のヒントとなる危機意識が強化できるでしょう。
アルハラとパワハラ、セクハラなどの関係を正しく理解する
アルハラ研修は、職場で起こるハラスメントの判断に役立ちます。アルハラは、アルコールに関する行動から発生するハラスメントですが、パワハラやセクハラなどともつながるでしょう。
たとえば、上司からの飲み会参加の強要はパワハラにも該当します。また、酔った勢いで性的言動をくり返すことはセクハラです。アルハラ研修では、ハラスメントの関係を正しく理解できます。
職場の飲み会の在り方を見直す機会にする
職場の飲み会は、上司や同僚との関わり方がその後の仕事にも影響します。
アルハラ研修は、お酒を飲める人に都合の良い研修ではありません。飲めない人も参加しやすくなる飲み会の在り方を見直す機会になるでしょう。
アルハラ研修の一般的な内容
アルハラは、社員研修として企業単位で学べます。企業単位で学ぶメリットは、組織的に共通認識を持てる点です。アルハラ研修は、一般的に次の講座内容を学べます。
- アルハラの基本知識
- アルハラに該当する言動や行動
- アルハラの先にある法的な罰則や起訴事例
- アルハラを防ぐためのコツ
- アルハラ問題の相談先の設置
アルハラの基本知識
アルハラ研修では、アルコールハラスメントの定義やハラスメントのひとつとして誕生した背景、他のハラスメントとのつながりなどを学びます。
他のハラスメントとは、パワハラやセクハラなどです。
アルハラに該当する言動や行動
アルハラ研修は、アルハラと判断できる言動や行動などを具体的に学ぶ機会となるでしょう。
実際の飲み会で起こる言動や行動を洗い出し共有します。たとえば、宴会の罰ゲームで負けた人に飲み慣れないアルコールを飲ませたりする行為などです。また、その行為をあおる言動もアルハラとなります。
アルハラの先にある法的な罰則や起訴事例
アルハラは、エスカレートすると犯罪につながる迷惑行為です。
アルハラ研修では、アルハラの先にある法的な罰則や起訴事例などを学びます。起訴事例などを学ぶことで、飲んだうえでの責任を研修参加者全員で考えられるでしょう。
アルハラを防ぐためのコツ
アルハラの防止は、アルコールの飲めない人を対象にすることがコツです。
アルハラ研修では、ハラスメントになる原因を知り、その原因を排除することが防止対策となります。
アルハラ問題の相談先の設置
アルハラは、他のハラスメントと同様に相談窓口の設置が必要です。
アルハラ研修では、問題が起きたことを想定して、相談できる環境整備やイベント開催のルール作成方法などを学べます。
アルハラ研修はどんな人におすすめ?
アルハラ研修は、次のような人におすすめの研修です。
- 現代のハラスメント問題について知識を深めたい人
- 飲み会の機会が多い企業の総務・人事担当者
- コンプライアンスを意識した忘年会や新年会を企画したい人
現代のハラスメント問題について知識を深めたい人
アルハラ研修では、パワハラやセクハラなどの関係するハラスメントについても学べます。コンプライアンスを重視した現代社会のハラスメント問題の知識が深められるでしょう。
飲み会の機会が多い企業の総務・人事担当者
アルハラ研修は、飲み会の機会が多い総務や人事担当者のアルハラ対策としても役立ちます。
飲みニケーションを重視している企業の場合は、飲み会の機会が多くなるでしょう。飲み会の頻度が多ければ、総務や人事部による会場の予約や出欠確認などの手間も増えます。
飲み会をまとめる担当者は、事前準備よりもアルハラへの対応に苦労するかもしれません。アルハラ研修では、飲み会で起こる可能性のある問題を知る機会となるため、アルハラ対応の知見が得られます。
コンプライアンスを意識した忘年会や新年会を企画したい人
アルハラ研修は、現代のコンプライアンスに準拠した企業の在り方を学べる機会です。
多様な働き方が認められる現代では、会社行事への参加もコンプライアンスを意識しなければなりません。
アルハラ研修では、アルコールを飲める人と飲めない人も問題なく参加できるための知識が学べます。これからの忘年会や新年会の在り方を考えている担当者向けにおすすめの講座です。
アルハラ研修のプログラム例
アルハラ研修は、基本から防止対策まで体系的な学習が期待できます。ここでは、アルハラ研修で学べる一般的なプログラム7項目を紹介しましょう。
①アルコールハラスメントの基本知識
- すでに起こしているかもしれないアルハラ度チェック
- アルコールハラスメントの概要
- アルハラに該当する言動や行動
②アルハラとつながるハラスメントの種類
- パワーハラスメント(パワハラ)との関係性
- セクシャルハラスメント(セクハラ)との関係性
- それぞれのハラスメントがつながる職場の問題
③アルハラと法的な事例
- 飲み会参加者の飲酒運転と同乗者の罪について
- 飲めない人に強要したことで起きる問題
- 急性アルコール中毒の事例紹介
④アルハラを起こす人の特徴
- 一気飲みや意図的な酔いつぶしはアルハラ確定
- アルハラで職場の飲み会が規制される可能性
- 酔ったうえでの迷惑行為の紹介
⑤アルハラを防止するためにやるべきこと
- 飲める人と飲めない人への理解
- 日頃からコミュニケーションを形成しておくメリット
- 飲み会以外でも本音を聞き取れる方法を考える
⑥アルハラ防止に役立つ準備
- 飲めない人にも配慮した飲み会の準備方法
- アルハラになりそうな状況を変える進行のヒント
- 飲み会のリスクに対応する企画時の準備すること
⑦アルハラの認識度をチェック
- アルハラの認識度をチェックする演習ワーク
- 理解度を確認する飲み会で注意すべきことをグループごとに発表
- 自社向けのハラスメント相談窓口への要望をヒアリング
アルハラ防止のために企業がすべき対策とは?
ここでは、アルハラについて企業がすべき防止対策を3つ紹介します。
- 組織全体でアルハラを理解したうえで宴会を企画する
- アルハラの先にある法的な処置が職場に与える影響を知る
- 断れる組織の環境を整える
組織全体でアルハラを理解したうえで宴会を企画する
アルハラは、お酒を飲んだうえで起こる問題です。そのため、職場で飲み会の在り方を理解していたとしてもアルコールが入れば酔ってコントロールできないことも考えられます。
アルハラに関しての対策は、組織全体での理解が必要です。アルコールが入ることで起こる問題への理解と、アルハラの被害者が受ける問題などを組織全体で把握しましょう。
そのうえで新年会や忘年会などの宴会を企画すれば、飲める人優先の会ではなくなります。
アルハラの先にある法的な処置が職場に与える影響を知る
職場の飲み会に参加する人は、アルハラの先にある法的な処置を把握することが大切です。たとえば、飲んだ後の飲酒運転やお酒を強要したうえで起こる急性アルコール中毒など。
もし、そのような問題が発生した場合は、法的な処置が関わってきます。飲酒運転による免許停止が業務に影響することも少なくありません。飲酒運転で事故を起こしたり、飲酒の強要で急性アルコール中毒になったりすれば、飲み会を主催した職場への影響は絶大です。
アルハラは、会社の存続にも影響するため、組織全体でリスクを理解することが求められるでしょう。
断れる組織の環境を整える
企業にとってのアルハラ対策は、飲む人を優先する考え方ではなく、飲めない人が断れる環境の整備ではないでしょうか。たった一度の飲み会が原因で、アルハラの被害者、加害者双方とも修復できない関係になる場合もあります。
飲み会を予定する組織は、事前に断れる環境づくりが必要です。アルコールを飲まなくても堂々と参加できる環境がポジティブな宴会につながるでしょう。
アルハラ研修まとめ
今回は、アルハラ研修について目的や内容などを解説してきました。最後に紹介したアルハラ防止対策は、アルハラ研修で組織全体の学習として学べます。
アガルートでは、アルコールハラスメント研修を社員研修のプログラムに組み込むカスタマイズが可能です。カスタマイズした自社向けの研修をオンライン完結型での提供もできます。
まずは、「研修のお問い合わせ」で、自社向けのプログラムをすり合わせてみてはいかがでしょうか。
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