日本の司法を支える存在として、重要な職責を果たしている裁判官。

裁判官になるにはどういったルートをたどれば良いのでしょう?

「裁判官になりたいけど、その方法は分からない」という方にとって、この情報は気になることかと思います。

このコラムでは、裁判官になるルートなどについて解説します。
ぜひ参考にしてください。

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裁判官の業務内容とは?

裁判官の業務内容は、「訴えを起こしてきた人」と「訴えを起こされた人」の話を良く聞き、法律に則って中立な立場から判断を下すというものです。

具体的には、書類を読んだり、証拠を見たり、証人の話を聞いたりして両者の主張を吟味し、どちらの主張が正しいかを裁判所などで判決や決定として判断します。

事務作業の多い仕事といえるでしょう。

裁判官になるには?

では、上記のような業務を行う裁判官になるには、どのようなルートをたどれば良いのでしょうか。

結論としては、3つのルートをたどります。

  1. 予備試験⇒司法試験⇒司法修習で裁判官採用ルート
  2. 法科大学院⇒司法試験⇒司法修習で裁判官採用ルート
  3. 弁護士からの転身ルート

以下にて詳しく解説していきます。

➀司法試験の受験資格を得る

裁判官になるためには、司法試験に合格する必要があります。

現行の司法試験では受験資格に制限があり、予備試験に合格するか、法科大学院に入学して受験資格を得なければなりません。

予備試験は毎年1回行われる試験です。
例年、7月に8科目の短答式試験、9月に10科目の論文式試験、1月に2科目の口述試験があり、2月に合格発表となっています。

およそ6か月にわたって試験が続くので、健康管理がとても重要です。

また、出題形式が多様で、試験科目も多いので勉強することも多く、合格するためには長時間の勉強が必要でしょう。

この予備試験に合格することで、司法試験の受験資格を得ることができます。

関連コラム:予備試験とは?短答・論文・口述の概要(合格点、配点、試験時間等)を全て解説

法科大学院ルート

法科大学院ルートでは、大学院ごとに独自の試験を受験し、合格する必要があります。

日程が重ならない限り複数の法科大学院を受験することも可能です。

各大学院ごとに既修者コースと未修者コースがあり、既修者コースでは2年間、未修者コースでは3年間の修業をしなければなりません。

多数ある法科大学院の中から1つに入学し、要件を充足することで司法試験の受験資格を得られます。

関連コラム:法科大学院(ロースクール)とは?入るにはどうすれば良い?メリットも簡単に解説

②司法試験に合格する

予備試験ルート及び法科大学院ルートで得た受験資格をもとに、司法試験を受験して合格しなければなりません。

受験資格には年数と回数の制限があり、5年間で5回までとなっています。

気になる司法試験の合格率ですが、予備試験ルートの受験生の方が法科大学院ルートの受験生より合格率が高くなっています。
予備試験ルートでは、例年80%程度の方が合格しているのに対し、法科大学院ルートでは全体平均で例年30%程度となっており、かなりの差があります。

合格率の点からすると、予備試験ルートを目指した方が良いでしょう。

関連コラム:司法試験の難易度・合格率をアガルート講師がお答えします

③司法修習での裁判官採用

司法試験に合格後、直ちに法曹になれる訳ではなく、1年間の研修を受けなければなりません。

これを司法修習と言います。

司法修習では、司法試験だけでは不足する事実認定などの知識や実技を実務修習や集合修習で学び、最後に二回試験と呼ばれる試験に合格することで法曹となる資格が与えられます。

そのような司法修習ですが、実は裁判官のリクルートも兼ねているのです。

裁判官になるには、実務修習・集合修習及び二回試験といった各試験の成績、人格や動機・熱意といった点が優れていなければなりません。
また、裁判官の多くが司法試験を一発合格しており、合格するまで何十年と受験を続ける人もいることを踏まえると、特に優秀な人が裁判官になっているといえるでしょう。

下の表は司法修習を終え、裁判官になった人の数です。

どの修習期でも裁判官の採用者は100人を下回っており、司法修習の修了者の中でもほんの一握りであることが分かります。

修了期修了者数人数
70期1,563人65人
71期1,517人82人
72期1,487人75人
73期1,468人66人
74期1,458人73人
75期1,325人76人

※参考:日本弁護士連合会:基礎的な統計情報(2021年)

関連コラム:司法修習とは?修習生登録後の流れと5つの修習の内容

【その他】弁護士からの転身ルート

裁判官になる人の多くは予備試験ルートか法科大学院ルートで裁判官になります。

一方で、数は少ないものの、実は弁護士になった後に裁判官へキャリアを変えることもできるのです。

例えば、常勤裁判官では、65人が弁護士任官された上で裁判官として執務されています。(2020年10月1日時点)
※参考:弁護士任官Q&A

このようなルートがある理由は、弁護士として培った幅広い社会経験を活かし、司法がより身近で頼りがいのあるものとなるようにするため。

このルートでは、弁護士事務所や任官支援事務所で経験3年以上の経験を積んだ後に応募し、内閣による任命が行われることで裁判官になることができます

この転身では基準が示されており、以下のような点から判断されます。

【形式的基準】
ア 弁護士経験10年以上の判事任官が望ましいが、当面は弁護士経験3年以上の判事補任官も可
イ 年齢55歳位までの者を基本
ウ 懲戒処分を受けたことがない

【実質的基準】
ア 法律家としての能力、識見(事実認定能力、識見、事件処理に必要な理論上及び実務上の専門的知識能力、幅広い教養に支えられた視野の広さなど)
イ 人物・性格面(廉直さ、公正さ、寛容さ、決断力、協調性、基本的人権と正義を尊重する心情など)

要は能力や人格が優れている必要があるわけです。

どのルートにおいても、裁判官になるには多くの難関を潜り抜けなければなりません。

関連コラム:弁護士になるには?予備試験ルートを推奨する6つの理由~年齢や費用など~

裁判官になるのに年齢制限はない

裁判官は法律により定年が定められています。

最高裁判所判事は70歳、高裁・地裁・家裁は65歳、簡易裁は70歳です。(裁判所法第50条)

一方、裁判官になることのできる最年少や最高齢の年齢については、特に法律などで定めがあるわけではありません。

そのため、裁判官になるのに年齢制限はないといえるでしょう。

裁判官になるために必要な勉強時間とは?

裁判官になるために必要な勉強時間のうち、多くは司法試験の勉強時間となります。

司法試験の合格に必要な勉強時間は、およそ3,000時間~8,000時間と言われています。

仮に毎日8時間しっかり勉強をした場合でも、1年~3年は学習をしなければなりません。
非常に長い勉強時間が必要であることが分かります。

また、人によって勉強時間が大きく異なることも特徴といえるでしょう。

これは、司法試験に必要な学習の範囲が膨大なため、資格予備校を利用し効率的な勉強をしている等の理由が考えられます。

裁判官となって多くの事件に携わりたいと考えるなら、効率的な学習のために予備校を活用することをお勧めします。

関連コラム:司法試験予備試験に1年で合格する勉強法

よくある質問

最短で裁判官になるには?

最短で裁判官になる方法は、予備試験を突破することです。

予備試験には、年齢制限や受験資格がありません。

予備試験合格後、司法試験を受験し、合格後1年間の司法修習を受けるというルートで全てスムーズにいった場合、予備試験合格から、最短2年で裁判官になれます。

裁判官の出身大学ランキング

裁判官になった人の出身大学は公式なデータが公開されていませんが、令和6年度司法試験合格人数のランキングは以下の通りです。

1位:慶應義塾大法科大学院

2位:早稲田大法科大学院

3位:東京大法科大学院

4位:京都大法科大学院

5位:中央大学法科大学院

これらの大学は法曹を数多く輩出しています。

高卒で裁判官になるには?学歴は関係ない?

上記の通り、予備試験には、年齢制限や受験資格がありませんので、学歴は関係ありません。

最年少で裁判官になった人は?

司法試験の最年少合格者は、17歳です。

17歳で司法試験に合格した場合、裁判官の道に進むとすると、一番早くて19歳で、裁判官になることになります。

裁判官になるならまずは司法試験を突破しよう

これまでのまとめとして、以下の点が重要になります。

・裁判官になるには、「1、予備試験⇒司法試験⇒司法修習で裁判官採用ルート」「2、法科大学院⇒司法試験⇒司法修習で裁判官採用ルート」「3、弁護士からの転身ルート」の3ルートがある

・裁判官になるには成績や人格が優れている必要がある

・法科大学院修了生に比べ、予備試験合格者の方が司法試験の合格率が高く、短期間で司法試験の受験資格を手に入れることが可能

裁判官になる第一歩としては、高い合格率や受験資格の短期入手が可能な予備試験ルートをメインに考え、場合によっては法科大学院ルートを検討すると良いでしょう。

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