現役の公認会計士が司法試験を目指すと、どんなメリットがあるのでしょう?

公認会計士と法曹資格の両方を取得する相乗効果があるだけでなく、公認会計士試験と司法試験には共通性が多くあります。

そこでこのコラムでは、公認会計士と司法試験合格のメリット・共通点について解説致します。
このコラムで得た情報を参考に、今後の方針を決めてはいかがでしょう?

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公認会計士が司法試験に挑戦するメリット

公認会計士が司法試験に合格し、ダブルライセンスを取得することによって、より精度の高いM&Aのデューデリジェンスを行うことができます。

M&Aに際して、買収を考えている企業は、買収予定の企業を対象にデューデリジェンス(買収予定の企業を調査し、買収して問題が無いか確かめること)を行うことがあります。
その際、法務デューデリジェンスを弁護士に、財務デューデリジェンスを公認会計士に依頼することが多く、法務と財務の結果を踏まえて買収を行うか否かを決定します。

公認会計士は会計や財務の専門家であり、会計分野について非常に深い知識を有しています。
しかし、法律について深い知識を持っている方は少数でしょう。

企業の資料というのは、財務と法務の情報が明確に分かれているわけではありません。
財務資料の中に法務に関する情報が入っていたり、契約書等法律に関する資料の中に会計に関する資料が入っていることがあります。

情報の引継ぎや両方の専門家による情報交換がなされることは少なく、結果的に財務デューデリジェンスの報告書の中には法律に関する視点が不十分な資料が提出され、逆に財務に関する視点が不十分な法務デューデリジェンスの報告書が提出されることになってしまいます。

会計や財務の専門家である公認会計士とともに、法律の専門家である法曹の資格を取得することで、財務・法務双方の視点を兼ね備えた精度の高いデューデリジェンスの報告書を作成することができるようになるでしょう。

公認会計士試験と司法試験の概要

公認会計士試験とは

公認会計士試験は、短答式試験と論文式試験に分かれています

短答式試験では、企業法・管理会計論・監査論・財務会計論の4科目が出題。
論文式試験では、監査論・租税法・会計学(財務会計論及び管理会計論)・企業法・選択科目(経営学・経済学・民法・統計学の中から1科目を選択)の5科目が出題されます。

合格基準は
・短答式試験で総得点の70%を基準として、審査会が相当と認めた得点比率
・論文式試験で52%の得点比率を基準として、審査会が相当と認めた得点比率
となっています。

短答式試験では満点の70%以上の高い得点比率が必要であり、短答式試験に合格しても論文式試験で52%と平均以上の得点を目指さなければなりません。

また、総得点で合格基準点を上回っていたとしても各科目について、
・短答式試験で満点の40%を満たさず、かつ原則として答案提出者の下位から遡って33%の人数に当たる者と同一の得点比率に満たない者
・論文式試験で得点比率が40%に満たないもののある者
は不合格となることがあり、どの科目もしっかり勉強して試験に臨まなければなりません。

※参考:公認会計士試験受験案内

司法試験とは

司法試験も短答式試験と論文式試験に分かれています。

短答式試験では、憲法・民法・刑法の3科目が出題。
論文式試験で憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法・選択科目(倒産法・租税法・経済法・知的財産法・労働法・環境法・国際公法・国際私法の中から1科目を選択)の8科目が出題されます。

短答式試験は3科目と少ないものの、論文式試験は8科目と多くなっていることが特徴です。

合格基準は、短答式試験の合格に必要な成績を得た者を対象に、短答式試験と論文式試験の成績を総合して決定されます。

司法試験も科目最低点が設定されており、1科目でも
・短答式試験で各科目の配点の40%未満の得点
・論文式試験で配点の25%未満の得点
があった場合には、総合得点が合格点であったとしても、不合格になってしまいます。

※参考:司法試験の結果について

公認会計士試験も司法試験も勉強に必要な科目が多いため、長期間にわたって勉強する必要があります。

公認会計士試験と司法試験には共通点が多い

公認会計士試験と司法試験は、共通点が多数あります。

【共通点➀】試験の構成

公認会計士試験と司法試験は、ともに短答式試験と論文式試験で構成されています。

これにより、公認会計士試験で培った勉強法等を利用して、司法試験に挑むことができるでしょう。

司法試験のような難関試験の勉強を開始した方の多くは、どの様に勉強を行えば効率的に学習を進められるか分からないといった悩みを抱える傾向にあります。
途中で挫折するなどして諦めてしまう人も少なくありません。

公認会計士試験に合格した方は、公認会計士試験で編み出した効率的な勉強方法を司法試験でも応用できます。
勉強法等で悩むことが無くなり、挫折しにくいという利点があります。

【共通点➁】論文

前述したように、司法試験も公認会計士試験と同様に論文式試験があります。
特に似ているのは、公認会計士試験の論文式試験における「理論」の方です。

論文を書くことに馴染みがある公認会計士は、身につけた「型」を司法試験にも応用することで、得点を取りやすい論文を作成できるでしょう。

司法試験受験生が最も苦戦する論文式試験において、公認会計試験経験者は大きなアドバンテージを持つわけです。

【共通点➂】試験科目

公認会計士試験と司法試験では、試験科目が同じものがあります。

公認会計士試験の試験科目である企業法は、司法試験の商法(会社法)と同じ科目です。

また、公認会計士試験の時に必須科目だった租税法は、司法試験でも選択科目として出題
加えて、公認会計士試験の論文式試験では選択科目として民法が出題されますが、司法試験でも必須科目として民法が出題されます。

企業法や租税法など、公認会計士試験で学習したことを司法試験でも使うことができるため、勉強時間の短縮につながります。

その他にも、双方の試験は短答式試験に合格することが論文式試験に進むための要件となっており、まずは「短答式試験にピークを合わせる必要があること」や、「短答式試験と論文式試験では使われる知識が異なる部分があること」、そして「長時間の勉強が必要となるため毎日コツコツと勉強を進めていく必要があること」等も共通しています。

このように、司法試験と公認会計士試験では、試験科目や勉強方法等で多数の共通点があります。

共通している点が多いということは、公認会計士試験の勉強を利用・応用することができる点も多いということです。
公認会計士は、司法試験に合格しやすい環境にあるといえます。

まとめ

公認会計士の方が司法試験を目指すメリットや、試験の共通性について解説しました。

再びこのコラムをまとめると、
ダブルライセンスを取得することで、より精度の高いM&Aのデューデリジェンスを行うことができる
公認会計士試験と司法試験は共通点が多く、他の受験生よりも有利である
といったことが挙げられます。

司法試験にも合格することで、「財務・会計」の専門性に加えて「法律」の専門性も兼ね備えることができます。

司法試験を目指すとすると、「予備試験に合格⇒司法試験に挑戦ルート」「法科大学院を卒業⇒司法試験に挑戦ルート」のどちらかのルートを選ぶこととなります。

予備試験ルートと法科大学院ルートの選び方については下記のコラムをご参考下さい。

※関連コラム:司法試験は「予備試験」「法科大学院」どちらをまず目指すべき?おすすめは?

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この記事の監修者 谷山 政司 講師

谷山 政司 講師

平成23年度に(新)司法試験に合格後、伊藤塾にて主に予備試験ゼミを中心とした受験指導業務を担当。
谷山ゼミ受講者のうち、およそ70名ほどが予備試験に合格。谷山ゼミ出身者で、最終的な予備試験の合格率は7割を超える。

自身の受験経験だけでなく、答案の徹底的な分析やゼミ生への丁寧なカウンセリングの結果確立した論文作成ノウハウをもとに、アウトプットの仕方はもちろん、インプットの仕方までをも指導するスタイルは、ゼミ生の圧倒的支持を受けた。

また、期をまたいだゼミ生の交流会等を定期的に行うなど、実務に出た後のフォローも積極的に行っている。

谷山講師の紹介はこちら

ブログ:「谷山政司のブログ」
Twitter:@taniyan0924

 

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