独占業務や設置義務があることから、安定した需要を誇る国家資格である管理業務主任者。

しかし、2001年に作られたばかりということもあり、知名度はさほど高くありません。

本コラムでは、管理業務主任者の具体的な仕事内容などを分かりやすく紹介します。
管理業務主任者になるための案内も載せていますので、是非参考にしてみてください。


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管理業務主任者とは?

マンション管理業者は、マンションの各部屋のオーナー(=区分所有者)で構成される管理組合に対して管理委託契約に関する重要事項の説明や管理事務報告を行わなければなりません。
管理業務主任者はこれらの業務を行う際に必要な国家資格です。

近年では、マンションに住む人の増加に比例して、マンションの管理運営をサポートする管理業務主任者の需要も高まってきています。

管理業務主任者の試験日や試験科目などの試験概要については、下記をご覧下さい。

管理業務主任者の設置義務と独占業務

管理業務主任者には「設置義務」と「独占業務」があるため、資格を活かして働ける場面が存在します。

管理業務主任者の設置義務は、マンション管理適正化推進法第五十六条に以下のように定められています。

管理組合30組合につき、1名の管理業務主任者を設置すること

参考:マンションの管理の適正化の推進に関する法律

マンション管理業者は、上記の設置義務に則り、一定数以上の管理業務主任者を確保しなければなりません。
そのため、比較的就職・転職に強い資格だと言えるでしょう。

管理業務主任者の独占業務は、以下の4つがあげられます。

  • 管理受託契約に際しての重要事項を説明すること
  • 管理受託契約に関する重要事項説明書に記名・押印すること
  • 管理受託契約書に記名・押印すること
  • 管理組合に対して管理事務に関しての報告をすること

管理業務主任者の詳しい仕事内容については後述します。

管理業務主任者の仕事内容はきつい?それとも楽?

管理業務主任者はマンションのフロントマンとして仕事を行います。
マンションのフロントマンの仕事内容は具体的にどんなものなのか、仕事はきついのか楽なのかについて、詳しく説明します。

管理業務主任者(フロントマン)の仕事内容

マンションの管理運営は管理組合が行います。

しかし、管理組合の運営メンバーはマンションの住人から選出されるため、マンション管理の知識がなく、管理運営がうまくいかない場合もあります。そのため、管理組合はマンション管理をマンション管理業者に委託します。

その委託の際に、専門的な知識を持った管理業務主任者が窓口になり、下記の業務を行うこととなります。

  • 管理受託契約締結にあたり重要事項を説明すること
  • 管理受託契約に関する重要事項説明書に記名すること
  • 管理受託契約書に記名すること
  • 管理組合に対して管理事務に関しての報告をすること

これらの仕事は独占業務であるため、管理業務主任者の資格を持った人しかこの業務は行えません。

独占業務の他にも、管理組合ではカバーしきれない部分を、幅広い知識でサポートしながら業務を行います。
具体的には下記のような仕事です。

  • 管理組合が開催する理事会や総会のサポート
  • 管理組合の会計・出納業務
  • メンテナンスの計画と実施
  • マンションの住人や業者への対応

仕事内容はきつい?それとも楽?

(勤務している会社によって異なりますが)管理業務主任者の仕事がきついと言われることがあります。
その理由としては以下のようなものが挙げられます。

  1. 住民からのクレーム
  2. なんでもフロントまかせで雑務が多い
  3. 管理組合の理事会・総会が休日に開催されることが多く、休みが取りにくい

とは言え、管理業務主任者の仕事は、基本的に個人の裁量に任される部分が少なくありません。
無駄な業務を自分で省いていくことで仕事量を調整することは十分に可能です。

営業ノルマや体力を使う仕事ではなく、難しい知識も不要なため、未経験でも活躍しやすい傾向にあります。

また、トラブルを解決した際には住人に感謝されるなど、人とのコミュニケーションを通じてやりがいを感じられる側面もあり、一概に「きつい」や「楽」だと言えるような仕事ではないでしょう。

管理業務主任者はやめとけ?やめとけと言われる理由について

管理業務主任者はやめとけと言われることがあります。ここでは主に以下の3つの理由

  • 知名度が低い
  • 住民からのクレーム対応などがきつい
  • 年収アップには繋がりにくい

についてみていきます。

知名度が低い

まず最初に挙げられる理由としては「知名度が低い」というもの。

不動産関係の資格と言えば宅建などが有名ですが、確かに宅建と比べると管理業務主任者という資格の一般的な知名度は必ずしも高くないでしょう。

しかし、知名度が低い=役に立たない と考えるのは早計です。

まず、管理業務主任者は宅建同様国家資格であり、その意味で一定の権威があると言えるでしょう。

また、管理業務主任者には上述の通り独占業務があり、その業務を行うには管理業務主任者有資格者の存在が必須となります。

その意味で、一般の知名度はともかく、こと不動産業界(特にマンション管理業関係)においては一定程度知名度もあり、有用性が高いと考えられます。

一般のイメージにとらわれずに検討してみてはいかがでしょうか。

住民からのクレーム対応などがきつい

上述の通り、管理業務主任者として仕事をする際に、住民からのクレーム対応などが必要となる場面もあるでしょう。

そうしたことが苦手な人にとっては、それが「管理業務主任者はきつい」と認識する要因となっているようです。

但し、クレーム対応などは接客業ではある種つきものであると言えますし、逆に人とのコミュニケーションが得意という人にとってはむしろ見せ場ということもできるでしょう。

結局きついかどうかは人によるとしか言えないので、その点はまず自分でよく考える必要があるでしょう。

年収アップには繋がりにくい

以下で詳しく検討していますが、管理業務主任者の年収が一般的に300~500万円と言われているのに対し、不動産業全体の平均年収は約536万円*という数値となっており、一見資格の有無が大きく年収にプラスに働いているようには見受けられません。

*※令和5年賃金構造基本統計調査による不動産業全体の平均年収は約536万円(きまって支給する現金給与額約34万円*12+年間賞与その他特別給与額約127万円)

そのため、仮に年収アップに繋がりにくいのならばわざわざ時間と労力を割いて資格試験の勉強をするくらいなら、適度に休んだり残業を頑張った方が良いのでは?と考える人もいるでしょう。

ただその一方、不動産業界、特に不動産営業の場合成果に応じて給与が大きく変わることがあり、営業がうまくいけば年収も大きくなり得ますが、うまくいかなければ年収も大きく下がることもあり得ます。

業界全体の数値が上記のような値になっているのは、そうした背景が絡んでいる可能性もあります。

一方、不動産系の会社の中には資格手当制度を設けている会社があります。例えば管理業務主任者資格を有している場合、毎月給与にプラスして○万円を支給する、といったものです。

ベースとしての給与に資格手当がプラスされれば、その上で仮に営業成績が振るわずとも資格手当によって減少分を相殺できるかもしれません。

そういった意味でも、やはり資格取得の検討の余地はあると言えるでしょう。

管理業務主任者の年収は?平均年収などをチェック!

管理業務主任者の年収は一般的に300~500万円と言われています。令和5年分賃金構造基本統計調査によると不動産業全体の平均年収は約536万円(きまって支給する現金給与額約34万円*12+年間賞与その他特別給与額約127万円)であるため、管理業務主任者の年収は不動産業界全体とあまり差はないと言えるでしょう。

管理業務主任者の資格はマンション管理業界などでの転職には有利に働くこともあるため、管理業務主任者の資格を取得して年収の高い会社に転職し、収入アップをはかることもできるでしょう。
また、会社によっては管理業務主任者の資格を所持していることで、資格手当が出ることもあります。

管理業務主任者が年収を上げる方法

管理業務主任者が年収を上げる方法として、以下があります。

  • キャリアアップする
  • 資格を活かす
  • 独立する

それぞれ詳しく解説しているため、自分に合った方法で年収アップを目指しましょう。

キャリアアップする

まず初めに、キャリアアップして年収を上げる方法があります。

マンション管理業界の会社の体質として年功序列が残っている傾向にあることから長く務めることにより実績や信頼を得ることができ、そこから昇進できればおのずと年収も上がるでしょう。

また、管理業務主任者は比較的新しい資格のため、これから資格に対しての手当なども充実していくと考えられます。

資格を活かす

続いては資格を活かして年収を上げる方法です。

管理業務主任者の資格を所持していると、セミナーや教材作成など様々な仕事も行うことができるため、このような別の仕事をすることで年収を上げている方もいらっしゃいます。

また、管理業務主任者の業務と関連したマンション管理士や宅建士の資格を取得することで、より業務の幅を広げることができるため、おのずと年収は上がっていくでしょう。

独立する

最後は独立して年収を上げる方法です。

ただ、管理業務主任者は管理会社に勤めて仕事する資格となるため、独立する人は多くありません。

管理業務主任者として独立する場合は、管理会社を立ち上げ、徐々に契約数を増やしていくことができれば、年収を上げることも可能となりますが、ハードルは高いため注意が必要です

なお、前述した他の資格を併用することや、講師や執筆などを並行して行うことで、安定して収入を得られることもあります。

独立のしやすさから、類似資格でありコンサルティング資格のマンション管理士を取得して、マンション管理士として独立する方法を選ぶことが比較的多くあります。

管理業務主任者資格をとっても意味ないって噂は本当?需要はある?

「管理業務主任者の資格をとっても意味がない」なんて噂をきいたことがある人もいるのではないでしょうか。

管理業務主任者は2001年に創設された比較的新しい国家資格のため、まだ知名度が低く馴染みがない可能性が考えられます。

また、管理業務主任者を活かせる業界は限られており、不動産業界など一部でしか活躍することができないため、こういった点も原因なのではないでしょうか。

ただ、管理業務主任者の仕事は独占業務や設置義務があるため、マンション管理会社や不動産会社などでは需要がある資格となります。

そのため、マンション管理業界での就職や転職には有利に働く傾向にあります。

また、管理業務主任者の資格を保持している方に資格手当を支給している不動産管理会社は多く、資格を取得しているだけで年収を上げることも可能です。

不動産関連ではマンション管理士との相性もいいため、両方の資格を持っていると業務の幅も広がります。

なお、マンション管理士と管理業務主任者の試験範囲は類似している箇所も多くあり、管理業務主任者の資格を持っているとマンション管理士の試験は5問免除で受けれるというメリットもあります。

さらに、マンション数の増加に伴い管理業務主任者は社会的に求められる機会が増えてきました。
これからさらに需要が高まると考えられるため、管理業務主任者の資格を取得する価値は十分にあると言えるのではないでしょうか。

管理業務主任者の資格取得の難易度や合格率の推移については下記をご覧ください。

マンション管理士とのダブル受験については下記をご覧ください。

管理業務主任者になるには?

管理業務主任者になるには、管理業務主任者試験に合格することが必要です。
合格したのち、管理業務主任者として登録し、管理業務主任者証の交付を受けてはじめて管理業務主任者を名乗ることができます。

関連コラム:マンション管理士試験・管理業務主任者試験の概要

国家資格であり、独占業務や設置義務により法律的に仕事が保証されている、さらには需要も高まりつつあるなど、将来性のある管理業務主任者。

未来を見据え、管理業務主任者資格の取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修者 和内 尋嗣

和内 尋嗣

管理業務主任者及び宅地建物取引士の資格を保有。
管理業務主任者として、マンション管理業者で累計30棟程の管理組合の運営に携わる。

団地型・タワー・複合用途等、多種多様な管理組合を実務レベルで経験してきた。

現在は不動産関連など執筆活動にも従事している。

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