土地家屋調査士は、不動産の「表示に関する登記」を専門に行える資格であり、8士業にも数えられているエキスパート職の一つです。

登記といえば司法書士が一般的なイメージですが、「表示に関する登記」は土地家屋調査士にしかできない業務です。

そして「表示に関する登記」は所有者に義務付けられていますので、義務付けられた登記を独占的に行うことができるという強味を持った資格となっています。

本コラムでは、現在土地家屋調査士に興味をお持ちの方や、受験を決めている初学者向けに、試験の難易度と、勉強を始める前に知っておくべきことをお伝えします。

※土地家屋調査士の業務内容や関連する職種などは下記をご覧ください。
関連コラム:土地家屋調査士とは?資格の基本情報と仕事内容

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土地家屋調査士試験の難易度は高い

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土地家屋調査士の難易度はマンション管理士や行政書士試験と同じくらいと言われ、1,000時間以上の勉強時間が必要です。合格率は8~9%、偏差値で例えるとは60~64となります。

土地家屋調査士試験は、毎年10月に行われる筆記試験と、翌年1月に行われる口述試験で構成されています。

筆記試験は相対評価となっており、上位約400名程度が合格となります。

合格者のみが翌年の口述試験に進むことができ、口述試験も通過すれば晴れて土地家屋調査士となる資格を得ることができるのです。

<筆記試験>

■午前の部
平面測量10問/作図1問
(試験時間:2時間)

■午後の部
[択一]民法3問/不動産登記法16問/土地家屋調査士法1問
[書式]土地・建物から各1問
(試験時間:2時間30分)

<口述試験>
1人15分程度の面接方式による試験

関連コラム:土地家屋調査士の試験内容と試験日・申し込み スケジュール

最終合格率は概ね8~9%の間で推移していますが、近年は受験者数の減少に伴ってやや上昇傾向にあります。

とはいえ、土地家屋調査士試験は難易度は非常に高い試験となり、難関国家資格のひとつといえます。

令和5年度の土地家屋調査士試験の合格率は9.66%(受験者数4,429人 、合格者数428人)という結果でした。

下記は直近10年の合格率推移となります。

年度受験者数合格者数合格率
令和5年度4,429人428人9.66%
令和4年度4,404人424人9.62%
令和3年度3,859人404人10.47%
令和2年度3,785人392人10.36%
令和元年度4,198人406人9.68%
平成30年度4,380人418人9.54%
平成29年度4,600人400人8.69%
平成28年度4,506人402人8.92%
平成27年度4,568人403人8.82%
平成26年度4,617人407人8.82%

土地家屋調査士の筆記試験のうち「午前の部」につきましては、測量士・測量士補・一級建築士・二級建築士のいずれかの試験に合格していれば免除されることになっています。

そのため、ほとんどの受験生は、毎年5月に行われる測量士補試験に合格して免除を受けます。(※令和3年度の測量士補試験は9月に実施)

また、口述試験はほぼ受験者全員が合格するので、難易度と呼べるようなものはありません。

つまり、土地家屋調査士試験の難易度を語る場合は、一般的に「午後の部」についてです。

よってここでは主に「午後の部」についてお話をしていきます。

土地家屋調査士試験の難易度が高い理由

「午後の部」の試験は、択一と書式に分かれています。

択一では民法が3問、不動産登記法が16問、土地家屋調査士法が1問、計20問が出題されます。

書式では、土地と建物からそれぞれ1問が出題されます。

土地家屋調査士試験は難易度が高い部類に入りますが、その理由はいくつかあります。

理由① 計算や作図が必要

一番の理由はこれです。

書式問題には必ず計算問題があります。

決して高度というわけではありませんが、三角関数や複素数の知識が必要のため、苦手意識が先に立ってしまう方が多いです。

また、複数の図面を定規を使って作成しなければなりません。

早く正確に描くには練習が必要で、ズレや未記入があると減点となります。

法令知識さえ知っていれば合格できるわけではないという点が、土地家屋調査士試験の難しいところです。

理由② 法律初学者には民法が鬼門

民法は、「総則」「物権」「相続」の分野からそれぞれ1問ずつ出題されます。

他資格で既に勉強経験がある方にとっては難易度は高くありませんが、法律初学者にとっては慣れない言葉や概念に戸惑うでしょう。

3問しか出題されない割に学習範囲がそれなりにあるので、時間が取られてしまう科目でもあります。

また、民法が出題内容になったのは平成16年からなので、過去問の蓄積が少なく、対策が立てづらいことも挙げられます。

理由③ 試験時間が短い

「午後の部」は、午後1時から午後3時30分までの2時間30分です。

この間に択一を20問解き、土地と建物の2件の申請書を書き、座標値や辺長・面積を求め、3つ以上の図(地積測量図、建物図面、各階平面図 etc)を作成しなければなりません。

出題のボリュームからすると、試験時間が短い印象は否めません。

図面を描けずに終わってしまう方もたくさんおり、土地家屋調査士試験はスピード勝負と言っても過言ではありません。

※宅建と土地家屋調査士のダブルライセンスは相性がいいため、気になる方は下記もご覧ください。
関連コラム:宅建士から土地家屋調査士のダブルライセンスへ!難易度とメリット

合格率でみる土地家屋調査士の難易度ランキング

土地家屋調査士と他の資格の例年の合格率をまとめてみると、以下のようになりました。

  • 1位:司法書士(4~5%)
  • 2位:マンション管理士(8~9%)
  • 2位: 土地家屋調査士(8~9%)
  • 4位:行政書士(11~15%)
  • 5位:宅建士(15~17%)
  • 6位:管理業務主任者(20~23%)

土地家屋調査士の合格率は例年8~9%という水準になっています。

合格率の観点から、土地家屋調査士を他資格と比較すると、マンション管理士と同等の難易度となり、行政書士よりは少し難易度は低い資格となります。

その他にも、関連性の高い資格として、「測量士」や「測量士補」がありますが、これらの資格より難易度は高い傾向にあります。

土地家屋調査士の資格を取るために、まずは測量士補の資格を獲得してから、土地家屋調査士の午前試験の免除を受ける方も多くいらっしゃいます。

勉強時間で見る難易度ランキング

次に、勉強時間の面から上記に挙げた各資格の勉強時間をまとめてみました。

  • 1位:司法書士(3,000時間)
  • 2位:マンション管理士(1,000時間)
  • 2位: 土地家屋調査士(600~1,000時間)
  • 4位:行政書士(500時間)
  • 5位:宅建士(300時間)
  • 6位:管理業務主任者(300~400時間)

司法書士・土地家屋調査士・行政書士は、1,000時間以上の勉強時間が必要となります。

勉強時間の観点で見ると、土地家屋調査士の難易度は不動産関連の資格と比較すると、勉強時間が長くなり、マンション管理士や管理業務主任者、宅建よりは難易度が高い資格といえます。

土地家屋調査士の難易度を大学の偏差値で例えると?

土地家屋調査士の難易度を大学の偏差値に例えると、下記表となります。

土地家屋調査士の偏差値は60~64で、難易度としてはマンション管理士や行政書士試験などと同じくらいとなります。

大学で見ると、MARCHと同じくらいの難易度であるといえます。

大学偏差値試験
東京大学・京都大学68~司法試験・予備試験
慶應大学・早稲田大学・
上智大学
65~67不動産鑑定士・司法書士・弁理士
明治大学・青山学院大学・
立教大学・中央大学・
法政大学
60~64土地家屋調査士・中小企業診断士・社労士・行政書士・
技術士二次試験・通関士・マンション管理士・ケアマネジャー
日本大学・東洋大学・
駒澤大学・専修大学
55~56技術士一次試験・宅建・測量士・管理業務主任者・
社会福祉士・インテリアコーディネーター

※偏差値はあくまでも弊社で算出した数値となります

土地家屋調査士の勉強を有利に進めるために

まずは択一の民法から勉強を始める

初学者はまず択一の勉強、その中でも民法から始めましょう。

民法は私人間の法律関係の基本にあるものなので、概念を理解しておくとその後の不動産登記法の理解も進みやすいからです。

不動産の売買や相続、申請の代理や代位などは、すべて民法の知識がベースになっています。

また、民法は範囲が限られているとはいえ、それなりにボリュームもあります。

後半はできる限りメインの不動産登記法に時間を充てたいため、早めに学習を済ませておくのが吉といえます。

全体として択一知識を身に付けるには、早めに過去問に触れることがポイントです。

関連コラム:土地家屋調査士試験の民法勉強法!しっかり対策して3問全問正解

論点を学んだらすぐに過去問を解いてみる

テキストで一つの論点を学んだら、すぐに過去問を解いてみましょう。

最初のうちは分からなくてもよいので、まずは本試験の問題に触れて、何がどのように問われているかを肌で知ることが大切です。

すると、再びテキストに戻ったときに、どこが押さえておくべき論点であったかを理解できます。

テキスト→過去問→テキスト→過去問の繰り返しが、択一学習の基本となります。

関連コラム:土地家屋調査士の過去問で効率的に問題を解く力を身につける方法

書式は電卓や定規に触れ使い方に慣れる

一方、書式については、いきなり過去問に取り組むと難易度が高すぎますので、まずは毎日電卓や定規に触れ、使い方に慣れましょう。

電卓は基本的な放射計算、点の移動計算、交点計算などを繰り返します。

定規は簡単な作図から初めて、動かし方の感覚を身に付けます。

申請書は、申請書例を繰り返し写して記載内容の法則性を覚えていきます。

これらは知識よりも技術なので、頭ではなく指に覚えさせていくイメージです。

基本的な「型」を身に付けてから、満を持して過去問に臨みましょう。

なお、書式の過去問は数が限られています。

問題はストーリーのように設定がありますので、何度も解くと飽きてしまいます。

そのため、つまみ食いのように見ることは避けておき、1問1問を大切に解くようにしましょう。

また、過去問を解く順番は、近年から過去に遡って解くことをお勧めします。

近年の方が易しく、過去の方が難しい傾向があるからです。

択一も書式もある程度解けるようになったら、時間を計ってスピードを上げていきます。

早く解いてもミスがないように訓練することで、本試験に対応できる実力が身に付きます。

※土地家屋調査士試験を独学で合格を考えている方は、下記に勉強法や勉強時間の解説をまとめているので、是非合わせてご覧ください。

関連コラム:土地家屋調査士試験に独学で合格するための勉強法と知っておくべきリスク

関連コラム:土地家屋調査士試験に独学で合格できる勉強時間は?時間を無駄にしないための講師からのアドバイス

令和6年度 土地家屋調査士試験の難易度は?

令和6年度の土地家屋調査士試験は、択一式は過去問をきちんとしていれば正解できる問題で、記述式は実務寄りの時間がかかる難しい問題だったという印象です。

以下に択一式と記述式の難易度をまとめました。

出題テーマ難易度
第1問制限行為能力者
第2問不動産の物権変動
第3問代襲相続
第4問表題登記の添付情報
第5問調査士報告方式による申請
第6問地図又は地図に準ずる図面
第7問地積に関する更正の登記
第8問土地の分筆の登記
第9問土地の合筆の登記
第10問地役権図面
第11問代位による申請
第12問建物の認定
第13問建物の所在
第14問附属建物
第15問建物の表示に関する登記
第16問建物の分割又は合併の登記
第17問建物の滅失の登記
第18問区分建物の登記
第19問筆界特定の申請
第20問土地家屋調査士又は土地家屋調査士法人易 
第21問土地
第22問建物

択一式は30分程度の短い時間で終わらせ、記述式にじっくり取り組むことができたかどうかが、今回の試験の合否の分かれ目になったと言えるでしょう。

難易度の高い資格は予備校で効率的に学んでほしい

土地家屋調査士試験には独学で臨む方も多くいます。

しかし今までみてきたように、試験に合格するには多くの知識と技術が必要です。

すべてを独学で身に着けるのは効率が悪いですし、参考書が少ないので一人では勉強を進めにくい面もあります。

時間とお金のどちらを取るかは個々人の判断ですが、本気で合格するつもりであれば、多少お金をかけても予備校で効率的に勉強した方が良いと思います。

アガルートアカデミーのカリキュラムは、まったくの学習未経験者でも1年ほどの学習期間で合格を目指せる内容となっています。

学習未経験者の一発合格率が28.46%と大変高いので、より確実に合格を目指して土地家屋調査士としての一歩を踏み出したい方はぜひ資料請求や受講相談をしてみてください。

※土地家屋調査士には仕事がない?将来性はあるのか?と疑問に思われている方は、下記のコラムをご覧ください。
関連コラム:土地家屋調査士は将来性のある仕事?長く活躍し続けるための4つのポイント

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この記事の著者 中里 ユタカ 講師

中里 ユタカ 講師

宅建士試験・行政書士試験・測量士補、土地家屋調査士試験にすべてストレートで合格。

まったくの初学者から、中山講師の講義を受けて8ヶ月で土地家屋調査士試験に合格。(択一13位、総合29位)

自らの受験経験で培った短期合格のためのテクニックを提供している。

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