造園工事業をメインで営む建設会社の求人で、条件として一番に挙げられる資格は「造園施工管理技士」です。

その次、あるいは同等の資格として挙げられるのが「土木施工管理技士」です。 

土木施工管理技士が上位にくる理由は、造園と土木の工事の類似性が挙げられます。バックホウやクレーンの作業、外構設備や土木構造物の設置など共通点は多いです。 

しかし、ダム工事や橋梁工事、トンネル工事などのように大きく違う工種もあります。 

本コラムでは、造園工事と土木工事の仕事内容や種類の違い、資格の違いについて解説します。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。 

造園工事と土木工事の違い

 一般の方は、土木工事といえば、とび・土工・コンクリート工事、石工事、しゅんせつ工事などのすべてが、土木あるいは土木工事を構成するものというイメージがあると思います。 

しかし建設業法上では、土木と、とび・土工・コンクリート工事、石工事、しゅんせつ工事などは、建設工事の別の種類に分類されています。 

土木を含め、これらを総合的に指導・調整しながら施工する工事は「土木一式工事」です。 

これから建設業界を目指す方は、このポイントを把握しておくと、後々いろんなことが理解しやすくなります。 

造園工事と土木工事の違いを説明するにあたり、土木工事を土木一式工事と捉え、以下にその違いをまとめました。

造園工事 土木工事
定義整地、樹木の植栽、景石のすえ付け等により庭園、公園、緑地等の苑地を築造し、道路、建築物の屋上等を緑化し、又は植生を復元する工事 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む)
必要な建設業許可の区分造園工事 土木一式工事
主な工事区分植栽、地被、景石、地ごしらえ、公園設備、広場、園路、水景、屋上緑化、緑地育成など 河川、海岸、道路、空港、鋼橋架設、舗装、トンネル、下水道、ダムなど
参照元
国土交通省|業種区分、建設工事の内容他
https://www.mlit.go.jp/common/001209751.pdf
国土交通省|建設業法における配置技術者となり得る国家資格等一覧
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001619998.pdf

造園工事の種類 

造園工事の概要を捉えようとするとき5つのポイントがあります。基盤整備、植栽、緑地育成、施設設備、グラウンド・コート設備、自然育成の5つです。 

このポイントを踏まえ、造園工事として代表的な工事を3つ説明します。

植栽工事 

土壌改良などで基盤整備し、高中低木や草花・地被を植付け、必要に応じて支柱を設置するのが中心です。

また樹木の伐倒伐根、移植、整枝、剪定、施肥、除草、潅水なども含まれます。 

公共工事では、樹木の規格によって根鉢や植穴の大きさ、支柱の形状などが規定されます。 

現在では、樹木や地被などの緑化材料による快適な空間の創出、ランドスケープ・アーキテクチャを意識した植栽工事が求められる傾向にあります
 

地ごしらえ工事 

植栽などの対象となる区画の土壌を、植物が生育しやすいように整備するのが「地ごしらえ」です。不要な木の枝や雑草、小石・浮石などを取り除きます。 

地盤を耕起耕運してふっくらとさせ、水分や栄養素が保持されやすい状態にすることも含まれます。

公園設備工事 

公園設備工事は、造園工事業の中でも代表的な工事です。樹木や草花、芝生など植物に関する工事だけでなく、さまざまな建設工事も含まれます。

以下に、主な公園施設をまとめました。 

  • 修景施設|花壇、生垣、築山、噴水、水流、灯篭、彫像など
  • 休養施設|休憩所、ベンチ、野外卓、ピクニック場、野営場など
  • 遊戯施設|ブランコ、滑り台、シーソー、砂場、徒渉池など
  • 便益施設|売店、軽飲食店、簡易宿泊施設、駐車場、水飲み場など

土木工事の種類 

土木一式工事は、複合的で大規模な工事が多くなります。 

切土や盛土、地盤掘削などを単独で施工する場合は、とび・土工・コンクリート工事業であり、土木一式工事ではありません。また建設業許可27業種の専門工事のみを、土木一式工事で請け負うことはできません。 

代表的な土木一式工事を3つ解説します。

河川工事 

河川工事を施工する第一の目的は、洪水が発生したときに、洪水を安全に流下させることです。そのために目標となる流量を設定し、護岸や川底を整備します。 

以下に、主な河川工事の種類をまとめました。 

  • 護岸工事|河岸や堤防を流水による浸食や洗掘から保護する工事
  • 樋門工事|河川流水のオーバーフローを調整する樋門を設置する工事
  • 地すべり防止工事|地形を変化させる抑制工と杭やアンカーを打込む抑止工がある
  • 床止め(床固め)|流水による川底の洗堀を防ぐ工事

橋梁工事 

橋梁工事とは、道路や鉄道の障害となる川や海などに橋を架け渡し、交通路を確保する工事です。

高い技術力と施工能力が必要であり、自然の景観も損なわない優れたデザイン性も求められます。 

橋梁は、主桁・横桁などの上部構造と、基礎・橋脚・橋台などの下部構造で構成され、桁橋、トラス橋、アーチ橋などさまざまな形状があります。

現在の橋梁は、鋼製か、RCやPCのコンクリート製、あるいは両方の組み合わせがほとんどです。

トンネル工事

 トンネルの使用目的は、大きく通行用通水用に分けることができます。 

通行用は、鉄道や自動車道を通すために、地山や岩盤を掘削し通行路を確保します。

通水用は、ダムからの取水や農業・工業用水などを送水するためのトンネルです。 

トンネルは、さまざまな場所に設置されます。大規模トンネルが多い山間部、建物の下を通る都市トンネルや地下鉄、海底を通す海底トンネルなどがあります。

造園工事と土木工事の資格の違い

造園工事も土木工事も主たる資格は「施工管理技士」ですが、その他にも取得することで自身の市場価値を高め、勤務する建設会社での評価を上げる資格はあります。

ここでは、造園工事土木工事に分けて、取得すれば建設業界で有利に活躍できる資格の代表的なものを紹介します。

造園工事の主な資格

造園工事における主な資格は、「造園施工管理技士」「造園技能士」です。

どちらも国家資格であり難易度は高いですが、施工管理は工事管理の、技能士は造園技術のエキスパートとして評価されます。

造園施工管理技士

造園施工管理技士は、造園工事において施工計画書の作成から、工程・品質・安全などの各管理を担う職務です。

1級2級があり業務範囲に違いがあります。

1級造園は、監理技術者(主任技術者を含む)として工事の請負金額に関係なく現場を指導・監督できますが、2級造園は管理できる工事の請負金額に規定があり、主任技術者として施工管理を担う立場です。

造園技能士

造園技能士は造園技術において高い専門知識と技術があると認定される資格で、技能と実務経験に応じて、1級(上級)、2級(中級)、3級(初級)にランク付けされています。

一般的な庭園はもちろん、公園や公共施設の緑地、街路樹の管理業務などにおいて活躍します。

土木工事の主な資格

土木工事は、建設現場において建築と双璧をなす工事業であり、業種も多いため関連する資格は多いです。

このうち代表的な土木施工管理技士コンクリート診断士測量士の3つの資格について説明します。

土木施工管理技士

土木施工管理技士国家資格で1級と2級があり、それぞれ施工管理として担当できる工事に規定があるのは他の施工管理と変わりません。

1級土木施工管理技士は、9つの建設業種で専任技術者(又は監理技術者)になることが可能です。

建設業界で土木工事業関連で継続的に働くことを希望するのであれば、1級土木施工管理技士の取得を目指すべきです。

※参考サイト:一級土木施工管理技士がすごいとされる5つの理由!有資格者を評価する人の口コミも紹介

コンクリート診断士

コンクリート診断士は、すでに完成しているコンクリート建造物において、建物の診断や維持管理の業務に関わります。

コンクリートに関連する高い知識と技術、経験が求められます。

公益社団法人日本コンクリート工学会が所管する資格で、国家資格ではありませんが、建設業界での資格としての評価は高いです。

測量士

測量士は、土地の位置や面積、距離などの測量を行うのが主な業務です。建設工事を施工する際は必ず測量が必要であり、高いニーズがある国家資格です。

測量士になるには2通りの方法があります。国土地理院が行う測量士試験に合格する方法と、大学などで専門科目を修めて実務経験を積む方法です。 

参照元
国土交通省|建設業法における配置技術者となり得る国家資格等一覧https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001619998.pdf