会計事務所・税理士事務所などの求人情報を見ると、「1科目以上の税理士科目合格者」や「税理士一部科目合格者」などを採用条件としていることが多いです。

税理士資格は5科目合格で取得となりますが、一部科目の合格でも就職・転職で評価されるのでしょうか。

このコラムでは、税理士の科目合格について解説します。資格として履歴書に書けるのか、そして転職・就職に有利になるのかについてもまとめています。

これから税理士試験を目指す方、すでに一部科目合格されていて就職・転職を考えている方はぜひ参考にしてください。

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税理士試験の科目合格制とは

科目合格制とは、科目ごとの合格が認められる制度です。

税理士試験では、一度合格した科目は、生涯有効となり、次回以降のその科目の試験は免除となります。

税理士資格取得のためには必須(会計学に属する科目)・選択(税法に属する科目)計5科目の合格が必要ですが、一度に5科目を受験・合格する必要はなく、1科目ずつの受験・合格でも資格の取得が認められます。

税理士試験の科目区分は以下の通りです。

分野科目選択/必須
会計学・簿記論
・財務諸表論
必須
税法・所得税法
・法人税法
1科目以上の選択必須
・相続税法
・消費税法 又は 酒税法
・国税徴収法
・住民税 又は 事業税
・固定資産税
1~2科目を選択

科目合格の期限はいつまで?

税理士試験の合格科目の期限は一生涯となります。

近年の合格率が15~17%前後と難易度の高い税理士試験。合格した科目は生涯有効なので、自分のペースで受験して、何年かかけて資格取得をすることが可能です。

科目合格制が認められている他の資格では、科目合格の有効期限が定められていることがほとんどです。

たとえば中小企業診断士の第一次試験の科目合格の有効期限は、科目合格した年度の試験を含め3年間。それ以降の試験は合格した科目を再度受験し直さなくてはいけません。

税理士の科目合格は履歴書に書ける?

結論から言えば、税理士の科目合格は資格として履歴書に書けます。

税理士試験の各教科の学習は法律・経済の知識を網羅的に身につけるものなので、科目合格であっても価値・社会的信用度が高いのです。

また、税理士試験は各科目の学習範囲が広くそれぞれの合格率も低いため、転職・就職市場での市場価値アップにかなり有効でしょう。

履歴書への書き方

資格を記入する欄に、

20△△年✕月 税理士試験(簿記論)合格
20△◇年〇月 税理士試験(所得税法)合格

のように記載しましょう。

就職・転職先が会計事務所の場合、科目合格者に資格手当を支給する事務所が多いです。

税理士の科目合格は一般企業で評価される?

税理士試験の科目合格は、一般企業においても評価されます。

たとえ1科目であっても、「会計業務や財務業務の知識がある」とみなされ、人員配置・人材評価の判断材料となるでしょう。

特に経理の仕事などで会計知識を有する人材を求めている企業では、簿記・会計の理解が深い証明となる、簿記論・財務諸表論の合格者の人材価値が高くなります。

また、顧問税理士を持たずに自社で税務や決算を行う企業では、税務担当者として税法科目の合格者へのニーズが高くなるでしょう。

税理士の科目合格は転職の際に評価される?【業種別】

税理士の科目合格は、合格科目への知識があることと、論理的思考力・計算力・継続力がある証でもあります。転職する場合は、科目合格数が1つでも強いアピールポイントになるでしょう。

例えば、簿記論・財務諸表論の科目合格者の場合、会計実務の基本が身についているとみなされるので、経理職への転職に有利になります。

また、当然ですが税理士事務所・会計事務所などのへの転職の際は、合格科目数が多い程評価されやすくなります。

ここからは、税理士の科目合格が評価されやすい業種について解説していきます。

会計事務所

求人情報を確認すると、会計事務所は科目合格者への有利な条件を提示していることが多いです。

特に必須科目である「簿記論」と「財務諸表論」の2科目に合格していると、会計事務所への転職には有利です。この2科目を取得していることで、業務に対応できる十分な会計知識があると判断されます。

また会計帳簿・財務諸表の実務をすぐに任せられると見なされるので、採用されやすいでしょう。

次に評価が高いのが、「所得税法」か「法人税法」の科目合格者。法人の申告業務を多く引き受ける事務所ですと、特にこの2つの科目所得者は重宝されるでしょう。

税理士法人

税理士資格取得には税理士試験5科目合格+最低2年以上の実務経験が必要です。

税理士法人では、科目合格者を採用し、働きながら残りの科目の合格を目指してもらうケースが多いです。実務経験を積むことで、試験勉強の理解もしやすくなるでしょう。

将来税理士として長く働いてもらうために、科目合格者を積極的に採用している事務所も少なくありません。

税理士法人への転職で評価されやすい科目は、転職先が求めている人材によって異なります。

例えば、転職先が法人企業の税務を任せたい場合は「法人税法」に合格している方が有利ですし、資産管理の相談業務を任せたい場合は「相続税法」に合格している方を評価するでしょう。

一般企業

先にも述べたように一般企業の経理・財務部門への転職には、簿記論または財務諸表論の科目合格は、特に高く評価されます。

試験勉強で習得した専門知識は、日々の会計業務・月次決算業務・財務計画のサポート・各種申告書の作成など、幅広い業務に役立つと考えられるからです。

これに加えて、法人税法・消費税法・相続税法をいずれか1科目以上取得していると、さらに転職に有利になる可能性があります。

税理士の科目合格者の年収について

国税庁が発表した令和4年度の給与所得者の平均給与は458万円でした。これに対し、MS-Japan調べでの税理士の科目合格者の平均年収は次の通りとなりました。

合格科目数平均年収(万円)
1科目514.0
2科目542.9
3科目565.1
4科目511.9
税理士資格保持者764.0
出典:「MS-Japan調べ」

科目合格者全体の平均年収は533.2万円で、給与所得者の平均年収(458万円)との差は75万円となりました。税理士の科目合格が1科目以上あれば、既に平均年収を超えていることがわかります。

また、基本的には合格科目数と年収水準は比例しました。一方で、本データで4科目合格者の平均年収が1-3科目合格者よりも低い結果となったのは、4科目合格者の年齢層が若かったことが要因と考えられ、30代以下の割合が、4科目合格者は70%を占めたのに対し、1-3科目合格者データは55%前後と大きく差が出ました。

税理士資格保持者と科目合格者で年収230.8万円の差!【科目合格者の年収実態】発表 | 株式会社MS-Japanのプレスリリース

税理士試験の科目合格とは?まとめ

税理士試験は科目ごとの合格が認められる「科目合格制」をとっています。

一度合格した科目は、生涯有効となるので、一度に5科目すべてに合格する必要はありません。科目ごとに専門知識の習得が必要な上、学習内容も高度なため、数年間かけて税理士資格を取る方も多いです。

取得が難しく社会的信用度も上がる税理士試験は、例え1科目の合格であっても価値があるものです。特に、会計事務所・税理士法人・一般企業の経理や財務部門への就職・転職には有利でしょう。

科目合格は論理的思考力・計算力・継続力等がある証明にもなるので、その他の職種でも、税理士試験の科目合格が人事評価を上げる可能性はあります。

税理士資格取得者はもちろん、税理士の科目合格者も、年収が民間給与所得者の平均を上回っています。特に勤務先が会計事務所の場合は、科目合格数に応じて、資格手当が支給されることも多いです。

税理士試験の科目合格が、勤務先・就職や転職時の市場価値を高めることは間違いないでしょう。

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