税理士試験の相続税法とは?必要な勉強時間や難易度は?勉強方法も詳しく解説!
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税理士試験を受験するにあたり、そもそも相続税法とはどのような科目でどのような試験内容であるのか、疑問に持たれている方も多いと思います。
相続税法という言葉自体は聞いたことがあるとしても、具体的なイメージが湧かず、税理士試験を受験するのに足踏みをしている方もいるのではないでしょうか。
そこで、本コラムでは税理士試験における相続税法について、詳しくご紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
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目次
相続税法とは?
税理士試験の科目のひとつにもある相続税法とは、相続税と贈与税の2つの税金に関する法律のことを指します。
相続税とは、相続または遺贈により無償で財産を取得した場合にかかる税金です。
一方で、贈与税とは相続又は遺贈以外の原因によって無償で財産を取得した場合にかかる税金を意味します。
両者は、「無償で」財産を取得するという点では共通していますが、相続税は相続または遺贈を原因とすること、贈与税は相続または遺贈以外を原因とすることで、区別されます。
相続税法の試験内容
この章では、相続税法の試験内容について詳しく解説します。
試験時間
税理士試験は3日間にわたって行われますが、2024(令和6)年度試験は以下のような時間割となっています。
下記のとおり、相続税法は2日目の12時から14時の時間で行われ、試験時間は120分です。
月日 | 時間 | 科目 |
---|---|---|
8月6日(火) | 9:00~11:00 | 簿記論 |
12:30~14:30 | 財務諸表論 | |
15:30~17:30 | 消費税法又は酒税法 | |
8月7日(水) | 9:00~11:00 | 法人税法 |
12:00~14:00 | 相続税法 | |
15:00~17:00 | 所得税法 | |
8月8日(木) | 9:00~11:00 | 国税徴収法 |
12:00~14:00 | 固定資産税 | |
15:00~17:00 | 住民税又は事業税 |
出題傾向
相続税法の出題範囲は、以下の通りです。
当該科目に係る法令に関する事項のほか、租税特別措置法、国税通則法など当該科目に関連する他の法令に定める関係事項を含む。
試験日程・試験科目について|国税庁
出題傾向の大枠として、大問として、第1問と第2問が設定され、大問の中に小問が2つ設定されることが多いです。
直近の試験では大問2つ、うち小問が2つ出題されています。
また、大問が2つある中で、片方が相続税をメインテーマとした問題、もう一方が贈与税をメインテーマとした出題がなされています。
そして相続税を含む税法の改正があった場合、数年後に当該改正について出題されている傾向があります。
たとえば令和5年度の試験では、平成30年度の税制改正にてポイントとなった、小規模宅地等の相続税の課税価格の計算の特例や、令和3年4月1日以降の一般社団法人等の理事である者等の死亡に係る相続税についての理解を問う問題が出題されました。
このように、相続税と贈与税が満遍なくいずれも出題され、税法関連の改正があった場合、数年後に出題される傾向があるといえます。
出題形式
出題形式は、比較的短い事例問題をもとに、課税関係について条文をもとに説明する理論問題と、具体的な課税価格を求める計算問題となります。
すべて記述式の問題になっています。
合格基準
相続税法の合格基準は、公式では満点の60%以上とされています。
ただし、後述のとおり例年11~14%前後で合格率が推移していることから、実質的には相対評価の試験といわれています。
そのため、全受験者の中で上位11~14%前後の中に入る必要があります。
相続税法の合格率は?
令和5年度試験における相続税法の受験者数は2,428人、合格者数は282人で、合格率は11.6%という結果になりました。
相続税法の合格率の推移
相続税法の合格率は、年度によって多少の差はあるものの、概ね11~14%前後で推移しています。
相続税法の2015年度~2023年度の合格率は、以下の通りです。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2023年 | 2,428 | 282 | 11.6% |
2022年 | 2,370 | 336 | 14.2% |
2021年 | 2,548 | 325 | 12.8% |
2020年 | 2,499 | 264 | 10.6% |
2019年 | 2,897 | 338 | 11.7% |
2018年 | 3,089 | 363 | 11.8% |
2017年 | 3,303 | 400 | 12.1% |
2016年 | 3,636 | 454 | 12.5% |
2015年 | 3,895 | 521 | 13.4% |
2015年の受験者数が3895名であったところ、2023年では2428名にまで減少しており、受験者数は減少傾向にあるといえます。
一方で合格率については、上述したように11~14%前後で推移していることから、受験者数が減少傾向にあるとはいえ、一定の合格率は保持しているといえるでしょう。
相続税法の難易度は?
合格率が毎年11~14%前後であることから、難易度は高いといえるでしょう。
相続税法は税理士試験の他の科目と比較しても、合格率が低い科目です。そのため、科目単独でみても難関であることがわかります。
しかし税理士試験には受験回数制限はなく、何度も受験することができます。
何より適切な学習と対策をすることで、合格を目指せるでしょう。
相続税法の勉強時間はどのくらい必要?
相続税法の合格に必要な勉強時間は、500時間前後といわれています。
1日2~3時間毎日勉強する場合、半年以上の学習期間が必要となります。
ただし、勉強時間はあくまで目安です。
試験日程から逆算して早めに着手することで、余裕をもって勉強することができるでしょう。
相続税法のおすすめ勉強方法
難易度の高い相続税法の試験を突破するためには、どのような勉強を行えばよいのでしょうか?
相続税法の勉強方法のポイントとしては、
- 出題傾向に沿った学習
- 広い視点を持った学習
- 法改正を重視する
- 理論問題の対策
- 計算問題の対策
などが挙げられます。それぞれ詳しく解説していきます。
1. 出題傾向に沿った学習
まずは、出題傾向に沿った学習方法を意識しましょう。
上述したように、相続税法は理論問題と計算問題といった2つの大問で構成されます。
理論問題では小問2つに細分化され、小問1つでは各規定ごとの個別的・基礎的な問題、もう一方の小問2では総合的・応用的な問題が出題されています。
計算問題では、家族構成に関する具体的な事例をもとに財産状況を把握したうえで、計算をすることが求められます。
理論問題に対応するためには、条文の基礎的な理解だけでなく、相続税法特有の言葉の意味も正確に抑えることを意識した勉強が非常に重要となります。
計算問題では、相続関係図を正確に読み取ったうえで問題文から財産状況を把握し、計算式に落とし込む必要があります。
そこでは財産の価値を正しく評価する「財産評価」が非常に重要となってくるので、ぜひ着目して勉強しましょう。
2. 広い視点を持った学習
相続税法の学習にあたり、条文の理解は必須です。
ただし相続税法で出題される条文は非常に多いため、1つ1つの条文を丁寧に理解しようとすると効率が悪く、途中で挫折してしまうおそれもあります。
そのため、相続税法の学習では、まず条文全体の大まかな理解を先行して行うことがポイントです。
条文全体のイメージが掴めたら、重要となる細部の条文についての学習をすると、効率よく学習をすることができます。
3. 法改正を重視する
相続税法では上述した通り、改正法も出題されています。
そのため、直近で改正された相続税法に関する法令や、租税特別措置法、国税通則法等は要チェックです。
4. 理論問題の対策
理論問題対策として必要なことは、「結論を決め、その結論に向けた論理を展開すること」に尽きます。
たとえば令和5年度の試験問題で、「小規模宅地等の特例(租税特別措置法第69条の4)における特定居住用宅地等に該当するかどうか」、「関連する条文に触れつつ説明しなさい」という問題があります。
回答としては、「該当する」または「該当しない」をまずもって明確に摘示しなければいけません。
当たり前のように思えますが、論述を進めていくなかで論述前に決めていた結論が途中でブレてしまう受験生も多数います。
そのため、まずは「結論を明確にすること」が重要です。
そのうえで、当該結論にむけて、「関連する条文に触れつつ説明」をすることが大切です。
その場合、やみくもに「関連する条文」を摘示するのではなく、特例措置法69条の4第3項2号を端的に摘示し、各要件該当性を検討する必要があります。
このように理論問題対策では、まず結論を決めてから、結論に向けてポイントなる条文を摘示し、要件あてはめをすることが重要となります。
5. 計算問題の対策
計算問題は多くの受験生が苦手とするところです。問題文も長文になり、計算も複雑化しやすく、ミスが多くなるところです。
そこで、計算問題を学習するうえでポイントになるのは、細分化して計算をすることです。
合否を分けるのは、大きなミスをしないことです。たとえば相続人や分割財産を間違ってしまうことは、致命的なミスとなります。
このように、1つ1つ問題文を細分化し、計算を進めることでミスも少なくなり、仮にミスをしたとしても致命傷にならずに済みます。
相続税法は独学で合格できる?
結論からいうと、相続税法の独学での合格はかなり難しいといえます。
上述したように相続税法は条文が多く、また計算問題も含まれ、他の科目と比較しても難易度が高い科目です。
そのため、独学で相続税法の理論問題だけでなく、計算問題まで網羅的に学習をすることは難しいといえます。
もちろん、独学での学習で合格ができないということではありませんが、予備校や通信講座を利用している方と比較すると、より長い学習時間と質の高い勉強が求められるといえるでしょう。
より短時間で、より確実に相続税法の合格を目指すのであれば、予備校や通信講座を活用することをおすすめします。
税理士試験の相続税法とは?まとめ
このコラムでは、税理士試験の相続税法について、出題傾向や近年の合格率、勉強方法等についてご紹介してきました。
相続税法は他の科目と比較しても難解な科目とされ、合格率も低いことから、適切な勉強法・対策をしなければなかなか合格することができない科目であるといえます。
より短時間で、より確実に合格するには、相続税法の出題傾向を理解し、その出題傾向を意識した勉強をすることが何より重要といえます。
特に、相続税法は改定特例法も抑える必要があるため、直近5年以内の改正の有無・その内容についても意識的に学習をする必要があります。
相続税法は難しい科目ではありますが、その一方で得意科目にすることができれば、他の受験生よりも1歩以上有利になるといえるでしょう。
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