税理士試験の受験を考えている方の中には、まずは簿記論から勉強を始めようと思っている方も多いのではないでしょうか?

簿記論は、税理士試験科目の中でも必須科目であるため、税理士を目指す方であれば避けては通れない科目です。

しかし、いきなり簿記論の勉強を始めようと思っても、何から手を付ければよいのか分からないですよね。

そこで本コラムでは、税理士試験の簿記論について、必要な勉強時間、合格率・難易度、おすすめの勉強法まで詳しく解説します。

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簿記論とは

簿記論とは、企業などが経営状態を明らかにするために、日々の取引や事業活動などを帳簿に記録するルールのことをいいます。

簿記論は、税理士試験において必須科目となっているため、この簿記論から受験勉強を始める人も多いです。

「簿記」と聞くと、日商簿記検定を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、税理士試験の「簿記論」は、日商簿記3級と30%程度、2級と60%程度、1級と90%程度出題範囲が重なっており、学習内容が被るところも多くなっています。

もっとも、日商簿記検定と税理士試験では出題形式が異なるため、その点には注意する必要があります。

簿記論の試験内容

この章では、簿記論の試験内容について詳しく解説します。

試験時間

税理士試験は3日間にわたって行われますが、2024(令和6)年度試験は以下のような時間割となっています。

下記のとおり、簿記論は1日目の9時から11時の時間で行われ、試験時間は120分です。

月日時間科目
8月6日(火)9:00~11:00簿記論
12:30~14:30財務諸表論
15:30~17:30消費税法又は酒税法
8月7日(水)9:00~11:00法人税法
12:00~14:00相続税法
15:00~17:00所得税法
8月8日(木)9:00~11:00国税徴収法
12:00~14:00固定資産税
15:00~17:00住民税又は事業税
参考:令和6年度(第74回)税理士試験公告|国税庁

出題傾向

簿記論の出題範囲は、以下の通りです。

複式簿記の原理、その記帳・計算及び帳簿組織、商業簿記のほか工業簿記を含む。ただし、原価計算を除く。

試験日程・試験科目について|国税庁

例年の出題傾向としては、ほぼ全てが計算問題となっており、勘定科目や金額を穴埋め形式で解答する問題もよく出題されます。

内容としては、基本的な問題から難易度の高い問題まで様々な問題が出題されますが、とにかく出題数が多いです。これらの問題を試験時間内に処理するためには、正確で素早い計算力が求められます。

そのため、難しい問題に時間をかけすぎず、基本的な問題を確実にこなしていくことがポイントとなります。

出題形式

簿記論は、第1問25点、第2問25点、第3問50点の合計100点満点の試験であり、全て計算問題です。各大問の注意事項や資料を読み、それらの条件に基づいて、小問を解いていきます。

第1問、第2問では、簿記についての基本的な理解を問う個別問題が、第3問では、決算整理を行う総合問題が出題される傾向にあります。

合格基準

簿記論の合格基準は、公式では満点の60%以上とされています。

ただし、後述のとおり例年12~23%前後で合格率が推移していることから、実質的には相対評価の試験といわれています。

そのため、全受験者の中で上位12~23%前後の中に入る必要があります。

簿記論の合格率は?

令和6年度試験における簿記論の受験者数は17,711人、合格者数は3,076人で、合格率は17.4%という結果になりました。

簿記論の合格率の推移

簿記論の合格率は、年度によって多少の差はあるものの、概ね12~23%前後で推移しています。

簿記論の過去10年間の合格率は、以下の通りです。

年度受験者数合格者数合格率
2024年17,7113,07617.4%
2023年16,0932,79417.4%
2022年12,8882,96523.0%
2021年11,1661,84116.5%
2020年10,7572,42922.6%
2019年11,7842,05217.4%
2018年11,9411,77014.8%
2017年12,7751,81914.2%
2016年13,9361,75312.6%
2015年15,7832,96518.8%

簿記論の難易度は?

簿記論は試験時間に対して問題量が非常に多く、素早い計算能力や処理能力が求められる試験です。

計算が得意な受験生にとってはそれほど難易度は高くないかもしれませんが、計算が苦手な受験生にとっては、かなり難易度の高い科目であるといえるでしょう。

そして簿記論は、簿記1級と比較してもクセの強い試験といわれることがあり、いわゆる「捨て問」と呼ばれる難問を取捨選択する能力も身に付ける必要があります。

合格率も12~23%前後で推移しており、かなり低い値となっています。

簿記論の勉強時間はどれくらい必要?

簿記論の合格までに必要な勉強時間は、500~1000時間ほどといわれています。

ただし、税理士試験を受ける前に既に簿記一級を取得している場合は、簿記一級から簿記論合格までにかかる勉強時間は300~400時間程度とされています。

簿記論は全て計算問題で構成されており、暗記の比重が小さいため、計算が得意か不得意かによっても合格までに必要な勉強時間は異なるでしょう。

簿記論のおすすめ勉強法

難易度の高い簿記論の試験を突破するためには、どのような勉強を行えばよいのでしょうか?

簿記論の勉強法のポイントとしては、

  1. 必要な知識をインプットする
  2. 問題集などで基礎問題の演習を繰り返し行う
  3. 過去問で実践練習を積む
  4. 財務諸表論と並行して学習する

などが挙げられます。それぞれ詳しく解説していきます。

1. 必要な知識をインプットする

まずは、予備校の講義を聞いたり、参考書を読んだりして、必要な知識をインプットすることが大切です。

簿記論とは、企業などが経営状態を明らかにするために、日々の取引や事業活動などを帳簿に記録するルールのことをいうため、まずはこれらのルールをインプットして理解する必要があります。

もっとも、ただ講義を聞いたり、参考書を読んだりしているだけでは、知識がきちんと定着しているのかどうかなかなか分からないと思います。

そこで、おすすめしたいのが、税理士試験を受験する前に日商簿記検定を受験してみることです。

前の章でも説明したとおり、日商簿記検定と税理士試験は出題範囲が重なっているところも多く、要求される知識もある程度重なっています。

特に簿記検定2級であれば、税理士試験に比べて合格のハードルは低めなので、まずは簿記検定2級の取得を目指して、インプットを行うのが良いでしょう。

2. 問題集などで基礎問題の演習を繰り返し行う

インプットを一通り終えたら、次は、問題集などを使い基礎問題の演習を繰り返し行いましょう。

簿記論の試験では、難易度の高い問題が出題される一方で、基礎的な問題も出題されるため、試験本番では基礎問題を確実に解いて得点する必要があります。

そのため、簿記論の試験勉強においては、基礎問題の演習を繰り返し行うことが特に重要になります。

この際に、注意したいのが、1回目で完璧に理解・暗記しようとしすぎないことです。

1回目で理解して覚えたつもりになっても、何日か経つと忘れてしまうことはよくあります。

そのため、忘れてしまうということは織り込み済みで、同じ問題を何度も繰り返し解いて復習することが重要です。

不安になっていろいろな問題集に手を広げたくなる気持ちも分かりますが、それよりも同じ問題集を何度も繰り返し解いて完璧に仕上げることを目標にするのが良いでしょう。

3. 過去問で実践練習を積む

基礎問題がある程度解けるようになってきたら、実際の過去問を使って実践練習を積むようにしましょう。

先ほども説明したとおり、簿記論の試験は、試験時間に比して問題量が非常に多いため、素早い計算能力の他に、いわゆる「捨て問」を見極めて問題を取捨選択する能力も身に付ける必要があります。

もっとも、こうした能力は基礎問題の演習を繰り返しているだけでは身に付かないことも事実です。

そのため、基礎問題がある程度解けるようになってきたら、実際の過去問に時間を測ってチャレンジしてみて、時間配分の感覚などを掴むようにしましょう。

また、実際に過去問を解いてみることで、自分の弱点などが新たに発見できることもあるので、出来るだけ早い段階で一度過去問に触れてみるというのもおすすめです。

4. 財務諸表論と並行して学習する

可能であれば、財務諸表論と並行して学習を進めるというのもおすすめです。

財務諸表論とは、企業が帳簿で記録された内容を株主などに報告するために作成する「財務諸表」の作成手続きと、その背景にある理論を学ぶ科目であり、簿記論の背景理解を深めるためにも役立ちます。

財務諸表論は、簿記論と同様必須科目であり、税理士になるためには必ず合格しなければならない科目であるため、時間に余裕がある場合には、簿記論と財務諸表論のセットで学習を進めていくのが効率的だといえるでしょう。

簿記論は独学で合格できる?

結論からいうと、簿記論に独学で合格することは可能です。

最近では市販の参考書や問題集も充実しており、解説等も丁寧に書かれています。自分で参考書を読んで理解し、問題集を繰り返し解いて演習を行えば、十分に合格は可能であるといえるでしょう。

独学であれば、予備校に通う場合と比べて費用もかなり抑えることができるため、この点が独学の最大のメリットだといえるでしょう。

しかし、独学にもいくつかデメリットがあります。

一つは、モチベーションを維持するのが難しいという点です。

独学の場合、自分一人だけで勉強を進めていく必要があるため、かなり強い意志を持っていないと、途中で挫折してしまうことも多いでしょう。

もう一つは、講師などに気軽に質問が出来ないという点です。

市販の参考書などにも詳しい解説は載っているのですが、やはり講師に直接質問するのには劣るため、この点もデメリットだといえるでしょう。

これらのメリットとデメリットを考慮して、自分に合った勉強方法を見つけましょう。

税理士試験の簿記論とは?まとめ

本コラムでは、税理士試験の簿記論について、必要な勉強時間や、合格率・難易度、おすすめの勉強法などを詳しく解説してきました。

  • 簿記論は計算がメインであり、素早く正確な処理能力が求められる
  • 合格率は例年12~23%前後であり、難易度が高い
  • 合格までに必要な勉強時間は、500~1000時間
  • 簿記論の勉強においては、何度も繰り返し問題演習を行うことが重要
  • 独学でも合格可能だが、独学の場合モチベーションの維持などが難しい

などが分かってもらえたと思います。

簿記論の合格を目指す方は、以上のポイントを念頭において、自分にあった勉強法を見つけていくのがよいでしょう。

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