通関士の合格率が低い3つの理由を徹底解説!他資格の合格率と比較した結果とは
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このコラムでは通関士の合格率が低い理由や合格するための対策を解説します。
関税局が公表した第53回(令和元年)〜第57回(令和5年)の通関士試験の平均合格率は17.66%。
過去には合格率が10%を下回る年があったほどの難関資格です。
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通関士の合格率が低い3つの理由
通関士試験の例年の合格率は10%前後のため、かなり難易度が高い資格と言えるでしょう。
ここでは次に挙げる、通関士の合格率が低い3つの理由について解説していきます。
- 受験のハードルが低い
- 3科目で合格基準点をクリアする必要がある
- 回答の選択肢が多い
受験のハードルが低い
通関士には受験資格がないため、受験のハードルが低いです。
そのため「とりあえず受けてみよう」という、合格ラインに達していない人も多数受験しますので、合格率が低くなります。
また、受験手数料が2,900円と手頃であることも、受験者数が多い要因の一つ。
下表は他の士業系試験の受験手数料です。
受験手数料がリーズナブルなので、受験のハードルが低く、気軽に受ける人が他の士業系試験よりも多いでしょう。
資格試験名 | 受験手数料 |
---|---|
司法試験 | 28,000円(令和6年度) |
司法書士試験 | 8,000円(令和5年度) |
行政書士試験 | 10,400円(令和5年度) |
公認会計士試験 | 19,500円(例年) |
税理士試験 | 4,000円~10,000円(例年) |
3科目で合格基準点をクリアする必要がある
通関士試験の科目は、通関業法・関税法等・通関実務の3科目あり、すべての科目で合格基準点をクリアする必要があります。
各科目の合格基準点は例年、満点の60%以上となっています。
配点は通関業法と通関実務が45点、関税法等が60点です。
科目ごとの配点と合格基準点をまとめた表を参照ください。
科目 | 配点 | 合格基準点 |
---|---|---|
通関業法 | 45点 | 60%(27点) |
関税法等 | 60点 | 60%(36点) |
通関実務 | 45点 | 60%(27点) |
通関士試験では国際貿易・関税法・輸出入業務などの幅広い知識が求められます。
複雑な実務の知識も必要なため、学習内容が難しく、学習量も多いので、合格ラインに達するのは簡単ではないでしょう。
回答の選択肢が多い
通関士は、出題形式が択一式以外にも複数あり、回答の選択肢が多い出題が含まれているため、難易度はかなり高めです。
また、通関実務では輸出申告書と輸入申告書に関する計算問題が出題されますので、関税額や課税価格の算出を素早く正確にできる実務能力が必須となります。
なお、通関士試験の出題形式は以下の3つ。
- 選択式
- 択一式
- 計算式
選択式
5つの選択肢の中から、正しいものもしくは誤っているものを複数選択する形式。
また、選択肢の中から、複数の適切な語句を選択する語群選択式問題も出題されます。
択一式
文章の空欄に当てはまる最も適切な語句を選択肢から一つだけ選んで解答する形式。
計算式
課税価格を計算する問題が3問、それ以外の関税額等を算出する問題が1問出題されます。
参考:通関実務学習のポイント | 公益財団法人 日本関税協会
出題形式と配点は下表を参照ください。
試験科目 | 出題形式・配点/出題数 | ||||
---|---|---|---|---|---|
選択式 | 択一式 | 計算式 | 選択式・計算式 | ||
通関業法 | 35点/10問 | 10点/10問 | なし | ||
関税法等 | 45点/15問 | 15点/15問 | |||
通関実務 | 通関書類の作成要領 | なし | 20点/2問 | ||
その他通関手続の実務 | 10点/5問 | 5点/5問 | 10点/5問 | なし |
通関士の合格率は?
『通関士試験 : 税関 Japan Customs』が公表した令和6年度の通関士試験では、受験者数は 6,135名 (前年度 6,332名 )、合格者数は1,534名(前年度1,212名)で、合格率が12.4%(前年度24.2%)でした。
令和2年から令和6年までの過去5年間の合格率を見ていきましょう。
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和6年(第58回) | 6,135人 | 759人 | 12.4% |
令和5年(第57回) | 6,332人 | 1,534人 | 24.2% |
令和4年(第56回) | 6,336人 | 1,212人 | 19.1% |
令和3年(第53回) | 6,961人 | 1,097人 | 15.8% |
令和2年(第54回) | 6,745人 | 1,140人 | 16.9% |
前回の通関士試験では、過去5年間で最も低い合格率となっています。
受験者数は令和3年度まで増加していますが、令和4年以降は減少気味です。
参考:通関士試験結果
通関士と他の資格試験の難易度を比較
ここでは通関士試験と他の資格試験の難易度を、合格率・勉強時間・勉強する範囲などから比較していきます。
まずは通関士の合格率・合格に必要な勉強時間の目安・学習範囲について確認しましょう。
合格率 | 10%~20%前後 |
合格に必要な時間 | 500時間前後 |
科目数 | 通関業法・関税法等・通関実務 |
比較する資格試験は次の7つの士業です。
- 司法書士
- 行政書士
- 宅地建物取引士
- 社会保険労務士
- 弁理士
- 公認会計士
- 税理士
順番に解説します。
司法書士と比較
司法書士の難易度は通関士よりかなり高めです。
法務省「令和5年度司法書士試験の最終結果」によると、受験者数は13,372人、最終合格者数は695人で、合格率は約5.2%。例年の合格率が3%〜5%ですので、通関士よりもさらに難易度の高い資格と言えます。
司法書士試験の試験科目は民法・不動産登記法・商法(会社法)・商業登記法・民事訴訟法・民事執行法・民事保全法・司法書士法・供託法・刑法・憲法の計11科目。
通関士は3科目ですが、それでも1科目の学習範囲が広く、覚える専門知識もかなり多いです。
司法書士は学習内容の難易度も学習量も通関士をはるかに超えると言えます。
勉強時間の目安は通関士の約6倍、3,000時間とされています。
行政書士と比較
行政書士の難易度は通関士よりも高めです。
一般財団法人 行政書士試験研究センターが公表した「令和5年度行政書士試験実施結果の概要」によると受験者数は46,991人で、合格者数は6,571人でした。
合格率は13.98%と同年の通関士よりも低い結果に。
例年の合格率も10%前後なので、難易度は通関士よりも高いです。
行政書士の試験科目は「行政書士の業務に関し必要な法令等」と「行政書士の業務に関連する一般知識等」です。
「行政書士の業務に関し必要な法令等」の内容は、基礎法学・憲法・行政法・民法・商法/会社法の5科目になります。
また「行政書士の業務に関連する一般知識等」の内容は、政治・経済・社会情報通信・個人情報保護・文章理解の5科目です。
合格を左右する法令科目の配点が8割を超えるので、法律知識を網羅的に深く習得することが必須となります。
そのため行政書士試験の合格に必要な勉強時間は、600〜1000時間と、通関士よりも長くなります。
宅地建物取引士と比較
通関士と比較して、宅地建物取引士の難易度はやや高めです。
一般財団法人 不動産適正取引推進機構が発表した「令和5年度宅地建物取引士資格試験結果の概要」では、受験者数は 233,276人で、合格者数は40,025 人でした。
合格率は17.2%と、同年の通関士よりやや低めですが、例年の合格率は15%〜17%ですので、難易度は通関士の方がやや高めと言えるでしょう。
宅建建物取引士の試験科目は、宅建業法・権利関係(民法など)・法令上の制限・税/その他の4科目。
7割近い出題数となる権利関係と宅建業法の学習は重点的に、細かく学ぶ必要があります。
宅建の合格に必要な勉強時間の目安は300時間〜400時間。
通関士よりも少ない勉強時間で合格を目指すことも可能です。
社会保険労務士と比較
社会保険労務士の難易度は通関士と比較すると高いです。
厚生労働省が公表した第55回社会保険労務士試験の合格者発表|厚生労働省によると、令和5年度の受験者数は42,741人、合格者数は2,720人、合格率は6.4%でした。
過去5年間の合格率は5.3%〜7.9%ですので、通関士よりも難易度はかなり高いでしょう。
社会保険労務士の試験科目は、以下の10科目にもおよびます。
- 労働基準法
- 労働安全衛生法
- 労働者災害補償保険法
- 雇用保険法
- 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
- 労務管理その他の労働に関する一般常識
- 社会保険に関する一般常識
- 健康保険法
- 厚生年金保険法
- 国民年金法
通関士より科目数も多く、複雑な法律や制度の理解が求められるため、勉強時間の目安は800時間〜1000時間になります。
弁理士と比較
弁理士は通関士に比べて難易度はかなり高いです。
特許庁『令和5年度弁理士試験の結果について』によると、受験者数 3,065 人に対し、合格者数は 188 人で、合格率は 6.1%でした。
弁理士の過去5年間の合格率は、6.1%〜9.7%と、通関士の合格率10%〜20%前後と比較すると、かなり難易度が高いと言えます。
弁理士は試験内容が答式筆記試験・論文式筆記試験・口述試験の3つとなります。
それぞれの試験科目は以下の通り。
- 短答式試験は特許法/実用新案法・意匠法・商標法・工業所得件に関する条約・著作権法/不正競争防止法の5科目
- 論文式筆記試験は必須科目が 特許法/実用新案法・意匠法・商標法 の3科目
- 論文式試験選択科目は理工I(機械・応用力学)・理工Ⅱ(数学・物理)・理工Ⅲ(化学)・理工Ⅳ(生物)・理工Ⅴ(情報)。法律(弁理士の業務に関する法律)から1科目を選択
- 口述式試験は特許法/実用新案法・意匠法・商標法の3科目
通関士も科目ごとの学習範囲が広いですが、弁理士は科目数が多い上に、学種範囲が通関士以上に広いため勉強時間の目安は2,000時間〜3,000時間前後となります。
通関士の4倍~6倍の勉強時間が必要です。
公認会計士と比較
公認会計士の難易度は通関士よりも高いです。
金融庁『試験結果の概要 (令和5年公認会計士試験第Ⅱ回短答式試験)』によると、答案提出者数10,429 人に対して、合格者数 921 人で合格率は8.83%でした。
また『試験結果の概要 (令和6年公認会計士試験第Ⅰ回短答式試験)』では、答案提出者数 12,100人に対して合格者数は1,304人で、合格率は10.78%です。
例年、最終合格者数は10%前後ですので、通関士より難易度は高めです。
公認会計士の試験科目は以下の通り。
- 短答式試験・・・財務会計論・管理会計論・監査論・企業法の4科目
- 論文式試験・・・会計学・監査論・租税法・企業法・選択科目(経営学・経済学・民法・統計学のうちの1科目)の5科目
通関士試験はすべてマークシート方式ですが、公認会計士は短答式試験と論文式試験どちらも記述式となります。
学習範囲が広い上、暗記すべき知識量が膨大になるため勉強時間は、通関士の6倍の3,000時間程です。
税理士と比較
税理士は通関士よりも難易度は低いでしょう。
国税庁が公表した令和5年度(第73回)税理士試験結果表(試験地別)によると、受験者数が32,893人、合格者数は7,125人で、合格率は21.7%でした。
過去5年間の合格率は20%前後ですので、通関士よりも合格率は高めです。
税理士は全部で11科目あります。
- 簿記論
- 財務諸表論
- 所得税法
- 法人税法
- 相続税法
- 消費税法
- 酒税法
- 国税徴収法
- 住民税
- 事業税
- 固定資産税
上記から、会計学の簿記論・財務諸表論の必修2科目と、税法科目から選択した3科目(選択必須科目の法人税法・所得税法から1科目以上を含む)の計5科目を受験します。
令和4年より、受験資格要件が緩和されて、会計学に属する科目が誰でも受験できるようになりました。
また、税法科目に関しても法律・経済分野以外の履修の大学生・卒業生の受験が可能になっています。
上記の2つの変更により、多くの方の受験が可能になり、合格率が上昇したのでしょう。
税理士試験に合格するための勉強時間の目安は2,500〜3,500時間。
難易度に比べて勉強時間が長いのは、各科目の試験範囲の広さと覚えるべき税法の条文の多さにあります。
時間はかかりますが、丸暗記ではなく内容を理解しながら覚えることで確実に合格できる資格と言えるでしょう。
通関士試験の合格には多くの時間が必要
通関士試験に合格するための勉強時間は、平均で500時間前後とされています。
500時間の勉強時間を確保するには、以下の勉強時間と日数が必要です。
- 平日1時間、休日2時間勉強すると389日(約1年1ヶ月)必要
- 平日2時間、休日4時間勉強すると190日(約6.3ヶ月)必要
- 平日4時間、休日6時間勉強すると109日(約3.6ヶ月)必要
通関士の試験日は、例年10月の第1または第2日曜日ですので、勉強するペースに応じて学習開始時期を決めましょう。
500時間はあくまで参考時間。これまでの資格試験受験経験や、大学等の履修内容によっても勉強時間は変わってきます。
資格試験そのものが初めての方でしたら、700時間以上の勉強時間が必要なこともあります。
逆に、これまで他の資格試験を複数受けてきた方でしたら、400時間の勉強時間で合格することも可能です。
これまでの学習状況・確保できる勉強時間を考慮して±100時間は見ておいた方が良いでしょう。
ただ、働きながら、学校に通いながら通関士の勉強を毎日するのは、かなり大変かと思います。
学習期間を短くするには、休日も長時間勉強する必要があるため、モチベーションの維持が大切です。
独学が難しい場合は、予備校・通信講座を利用して、学習進捗を管理しながら効率的に学ぶと良いでしょう。
通関士に合格するための3つの対策
まったくの初学者の方ですと、試験情報の収集・学習スケジュールの作成・テキストと教材選び・模試の申込みなどをすべて自分で行わなくてはなりません。
必要な勉強時間の目安は500時間ですが、できれば最短で合格したいはずです。
通関士試験を確実に合格するための、以下3つの対策をご紹介いたします。
- 勉強のスケジュールを立てる
- 通信講座を受ける
- 予備校に通う
勉強のスケジュールを立てる
通関士資格を取得するには、約500時間の勉強時間が必要とされます。
そのため、最短で合格するには、勉強時間のスケジュールを立てることが大切です。
学習スケジュールを立てる流れは次の通り。
① 自分の学習状況に応じて総勉強時間の目安を決める(500時間±100時間)
② 1日に確保できる勉強時間を算出し、総勉強時間を達成するには何日かかるか計算する
③ 通関士の試験日から逆算して学習開始時期を決める
初学者の方でしたら、+100時間以上見た方が良いでしょう。
試験日から逆算して勉強のスケジュールを立てるには、まずは自分が1日(平日・休日)どのくらい勉強時間を確保できるか把握しましょう。
例えば初学者の方で総勉強時間を600時間と仮定します。平日2時間・休日3時間の勉強時間が確保できるとすると、263日(8.8ヶ月)の学習期間が必要になります。
例年、通関士の試験日となる10月の第1または第2日曜日から逆算すると、1月の中旬には学習をスタートする必要があるでしょう。
総勉強時間は、効率よく集中して勉強した場合の時間です。
勉強時間を達成したことで満足しないように、1日の学習内容・学習量を決めておくと良いでしょう。
1日分の学習ノルマを決めて、目標時間内に終わらせるようにしましょう。
通信講座を受ける
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- 講師に直接聞ける質問制度
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予備校に通う
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通関士試験を独学で合格するのは難しい
結論、通関士試験に独学で合格することは不可能ではないものの、かなり難しいでしょう。
独学が難しい理由として次のような点が挙げられます。
- 学習範囲が広く、膨大な知識量が必要(国際貿易に関する法律・法規の知識や通関業務実務全般の知識など)
- 受験勉強が長期間になりやすいため、モチベーションの維持が難しい
- わからない所は自分で解決しなくてはならない
- 自分の判断で、合格に必要なポイントをピックアップしなくてはならない
時間に余裕のある方でしたら、市販の参考書やテキストを使って、基礎から網羅的に学ぶのも良いでしょう。
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まとめ
通関士の例年の合格率は10%〜15%で、難易度の高い資格と言えます。
合格率が低い理由として、以下の3つが挙げられます。
- 受験のハードルが低い
- 3科目で合格基準点をクリアする必要がある
- 回答の選択肢が多い
試験範囲が広く、関税法や通関業など国際貿易に関する法律・規制についての専門知識が求められるため、まとまった勉強時間が必要です。
通関士の合格に必要な勉強時間の目安は500時間と言われています。
毎日2時間勉強した場合、8ヶ月以上の学習期間が必要です。
長期間の学習期間となるので、独学で合格を目指すのは難しいでしょう。
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