通関士試験の科目免除とは?条件や免除となる科目・申請方法を解説
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本コラムでは、通関士試験における科目免除制度について解説します。
通関士試験に向けて準備を進めている人にとって、通関士試験における科目免除の仕組みを理解することは受験を有利に進めることにつながります。
合格までの学習スケジュールにも大きく影響する科目免除について、まずはしっかり知識を蓄えておきましょう。
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通関士試験の科目免除とは?
通関士試験に設けられている「科目免除」とは、通関士試験に課される試験科目の一部の免除を受けられる制度です。
通関士試験では「通関業法」「関税法等」「通関実務」の3科目全てを受験するのが原則です。
そして、3科目全てで合格基準点を満たすことで、通関士試験の合格をつかみ取ることができます。
3科目全ての合格基準点を満たすのは難易度が高く感じられますが、一定期間の実務経験を満たすことで、通関士試験3科目のうち1〜2科目の免除が受けられる仕組みがあります。
科目免除を受けられるのは、業務への従事期間に応じて「通関実務」の1科目、または「関税法等」「通関実務」の計2科目です。
「通関業法」は全受験者が必須で受験することになりますが、科目免除を受けることができれば1科目受験のみ、または2科目の受験結果で合否が決まります。
合格基準点が各科目に設定されていることから、受験科目数が少ないほど合格しやすくなるのはイメージしやすいですよね。
次章より、科目免除の具体的な仕組みについてチェックしていきましょう。
条件と免除になる科目
本章では、科目免除を受けるための条件、そして免除対象科目のパターンを詳しく解説します。
通関士試験に設けられている科目免除の仕組みは2パターンあり、以下の表が条件と免除対象科目の組み合わせです。
条件 | 免除される科目 |
通関業務に従事する期間が5年以上 | 通関実務1科目 |
通関業務に従事する期間が15年以上 | 通関実務 関税法等の2科目 |
受験者が通関業務への従事期間が長いほど、免除される科目が増えています。
表内で留意したいのは、具体的にどのような業務が「通関業務」と認められるのかという点です。
通関業法第2条を参考にすると、通関業務の主な具体例は以下のとおりです。
・通関手続
業務例:輸出や輸入の申告や許可を得るための手続き
・不服申立ての代理
業務例:関税法やその他法令による処分について、税関長に対する再調査の請求
・税関に対する主張又は陳述の代行
業務例:税関官署の検査の立会いにおける主張や陳述
・通関書類の作成
業務例:輸出申告書、輸入申告書、再調査の請求書などの作成
併せて、通関業務として認められない「特別の判断を必要としない機械的事務」についても理解しておきましょう。
具体的には、自己判断を要しない場合における次のような業務です。
・入力事務、タイプ事務
・使送事務
・貨物の内容点検業務
通関業務としてしっかりと認められる業務を適切に判断して科目免除を申請することが大切です。
続いては、科目免除に必要な業務従事期間と免除対象となる試験科目のパターン2つについてそれぞれ解説していきます。
通関業務に従事する期間が5年以上
1つめは、通関業務に5年以上従事しているパターンです。
「通関実務」の1科目が受験免除となり、残り2科目で合否が決まります。
3科目のうち「通関実務」は、どの受験者も必ず受験しなければならない「通関業法」に比べて合格基準点をクリアする難易度がやや高いとされています。
計算問題も出題され読解力が求められる試験科目のため、得意不得意の個人差が出やすい科目と言えるでしょう。
計算への苦手意識が強い人ほど、「通関実務」の免除を受けるメリットは大きいと考えられます。
通関業務に従事する期間が15年以上
2つめは、通関業務に15年以上従事しているパターンです。
15年という長期間にわたる実務経験により「関税法等」「通関実務」がいずれも免除され、「通関業法」の1科目勝負で合否判定がなされる仕組みがあります。
3科目のうち最も易しいとされる「通関業法」のみでの受験となるため、難易度が上位にある2科目の受験免除という恩恵は、通関士試験での合格率アップにとても大きなメリットがあると考えられます。
「通関実務」は前述したとおり、計算問題が中心の試験科目で得点に個人差が出やすい科目です。
「関税法等」は関税法をはじめとする法律が中心となって問題が構成される試験科目です。
各種法律に関する幅広い出題範囲により、知識量が求められます。
また、初学者にとっては法律同士のつながりや関連性が見えづらいため、アウトプットできる知識として定着させるまでにある程度まとまった学習時間が必要となります。
加えて、他の2科目が45点満点であるのに対し、「関税法等」のみ60点満点となっていることからも、合格基準点をクリアするためには膨大な知識のインプットが欠かせないことが分かります。
得点力に差がつきやすい「通関実務」と、膨大なインプット学習が求められる「関税法等」の2科目いずれも免除が適用されるのは、合格可能性の大幅アップにつながると考えてよいでしょう。
参考:税関 8009 通関士試験科目の一部免除(カスタムスアンサー)
参考:税関 9105 通関業務、関連業務の範囲(カスタムスアンサー)
科目免除を受けた人の合格率は高いのか?
通関士試験の3科目のうち、高難易度の試験科目の免除を受けることができれば合格の可能性は高くなると言えます。
本章では、科目免除の有無と合格率についてさらに詳しく解説していきます。
通関士試験における科目免除の有無と合格率を年度別に整理したのが以下の表です。
■通関士試験の年度別合格率(科目免除数別・全受験者)
年度 | 全科目受験者 | 1科目免除受験者 | 2科目免除受験者 | 全受験者 |
---|---|---|---|---|
2024年 | 12.4% | 10.4% | 61.3% | 12.4% |
2023年度 | 23.0% | 22.0% | 70.8% | 24.2% |
2022年度 | 17.7% | 17.2% | 65.6% | 19.1% |
2021年度 | 14.9% | 10.6% | 59.1% | 15.8% |
2020年度 | 14.4% | 20.7% | 75.4% | 16.9% |
税関ホームページを参考にすると、例年の傾向として、全受験者の合格率は10~20%前後となっています。
科目免除なしの3科目受験者の合格率は、いずれの年度も全受験者合格率平均をやや下回っています。
つまり、科目免除を受けることができた受験者は、科目免除のない受験者より高い合格率を残していると理解できます。
それでは、科目免除の有無と合格率の関係をさらに詳細に考えていきましょう。
1科目免除の受験者は、年度によって傾向が異なっています。
2021年度は科目免除なしの受験者よりも合格率が低くなる、いわゆる逆転現象が起こっていますが、近年の傾向を大きく捉えれば例外と考えてよいでしょう。
例年の傾向として、1科目免除受験者は平均的な合格率、または3科目受験者の約1.5倍以上の合格率を残しています。
また、2科目免除の受験者は、他の受験者に比べて合格率が大幅に上回る傾向があります。
例年15%以下しか合格をつかめていない科目免除なし受験者に比べ、2科目免除受験者は60〜75%程度の合格率で推移していることが読み取れます。
高難易度の試験科目の免除という大きなメリットにより、合格率が大幅に上昇していることが例年の傾向から読み取れます。
科目免除を受ける人の割合
科目免除によって合格率が高くなっている通関士試験の受験者のうち、科目免除を活用する受験者はどの程度いるのでしょうか?
次の表は、税関ホームページをもとに各年度における科目免除の受験者数を整理したものです。
■通関士試験の年度別受験者数(科目免除数別・全受験者)
年度 | 科目免除なし(3科目受験) | 1科目免除 | 2科目免除 | 全受験者 |
---|---|---|---|---|
2024年度 | 5,451名 | 529名 | 155名 | 6,135名 |
2023年度 | 5,606名 | 555名 | 171名 | 6,332名 |
2022年度 | 5,640名 | 507名 | 189名 | 6,336名 |
2021年度 | 6,226名 | 549名 | 186名 | 6,961名 |
2020年度 | 5,934名 | 600名 | 211名 | 6,745名 |
2019年度 | 5,661名 | 567名 | 160名 | 6,388名 |
例年6千名以上の受験者がいる中で、ボリュームゾーンは科目免除なしで3科目を受験する受験者となっています。
1科目または2科目の科目免除を活用しているのは700〜800名程度で、全受験者の10〜12%程度です。
通関業務での実務経験が一定期間必要とされるため、科目免除を活用する受験者はそれほど多くありません。
しかしながら、科目免除のメリットは大きいため、条件を満たす場合は科目免除を活用して受験するのが一般的と考えられます。
科目免除の申請方法
通関士試験の科目免除を活用して受験を有利に進めるには事前申請が必要です。
本章では、科目免除を受けるうえで受験者が事前に行う必要のある申請手続きについて、ステップごとに解説していきます。
科目免除を受けたい受験者の申請手続きは、次の3ステップで行います。
1.必要書類の用意
科目免除の審査を受けるため、受験者は次の2通を用意する必要があります。
・通関士試験科目の一部免除申請書
・証明書
いずれも税関指定の様式がありますので、出願書類と併せて請求するか、税関ホームページから入手しましょう。
なお、「証明書」は通関業務に従事するうえでの所属組織・団体などが記入する必要があります。
2.必要書類の提出
審査に必要な申請書類は、受験願書と一緒に税関へ提出します。
申請書の提出期間は「受験願書受付期間」と同様とされていますが、審査を経て科目免除の可否が決定されるので、可能な限り早めに申請書を提出できるよう準備しておきましょう。
書類を提出しただけでは科目免除が確定したわけではないので注意してくださいね。
3.決定通知書の確認
税関での審査結果は、受験票とともに交付されます。
科目免除が決定した場合は「通関士試験科目の一部免除通知書」、残念ながら科目免除の対象になれなかった場合は「通関士試験科目の一部免除申請却下通知書」が届きます。
通知書を確認し、受験すべき試験科目を把握できればステップは完了です。
対策すべき受験科目を今一度意識して、試験本番までの学習を継続してくださいね。
まとめ
本コラムでは、通関士試験で受けられる科目免除の仕組みについて紹介しました。
本コラムのポイントは以下のとおりです。
・通関業務での実務経験が一定期間あることで、1~2科目の科目免除を申請できる
・難易度の高い試験科目が免除されることで、例年の科目免除受験者の合格率は比較的高く推移している
・科目免除受験者は例年10~12%程度いる
・科目免除での受験には事前に申請手続きを行う必要がある
通関士試験における科目免除はメリットが大きいことが分かりました。
通関士試験の合格可能性を高めるため、科目免除制度を適切に活用していきましょう。
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