通関士試験と貿易実務検定の違い・難しさは?どっちを目指すべきか解説
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貿易業界で働きたい、もしくは、貿易業界で働いていてキャリアアップを目指したい、と考える際に、通関士試験と貿易実務検定の違いやどちらを取るべきか、気になる方も多いのではないでしょうか。
このコラムでは、通関士試験と貿易実務検定の違いを試験内容や難易度に触れて解説します。
どちらを取得したらいいか、参考にしていただければ幸いです。
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アガルートアカデミー通関士試験講座担当の加藤佑喜(ゆき)と申します。
今回は通関士試験と貿易実務検定それぞれの特徴について解説します。
どちらも受験資格はありませんので、皆さんの目標に合った方をお選びくださいね。
まずは、それぞれのざっくりとした違いを見ていきましょう。
通関士と貿易実務検定の違い
通関士試験と貿易実務検定の違いは、通関士は国家資格なのに対して、貿易実務検定は民間資格(検定)になります。
また、通関士試験では関税法や通関業法など法律を学ぶのに対し、貿易実務検定は貿易についての用語、全体的な基礎知識から学ぶなどの違いがあります。
通関士試験
- 貿易業界唯一の国家資格
- 通関業者や商社等への就職や転職に有利
- 企業によっては受験支援や資格手当がある(稀に貿易実務検定にもあります。)
- 関税法や通関業法等、主に法律を学ぶことができる
貿易実務検定
- 民間資格
- C級からA級まである(過去には準A級もありましたが、A級と統合されました)
- 通関業者や商社、メーカー、物流会社等への就職や転職に有利
- 貿易についての用語など、全体的な基礎知識から学ぶことができる
「通関士試験はちょっと難しいな…。」という方は、貿易実務検定C級を目指すことから始めてみると良いでしょう。
資格は「勉強をしました!」というアピールになりますので持っていて損はありません。
ただし、これらの資格の学習内容は色が大きく異なりますので、注意が必要です。
通関業者や商社など、その業界内で働いている方がキャリアアップを図りたい場合には、自身の仕事内容によってどの資格を取得するか選択することになります。
試験内容(学習内容)を踏まえたうえで、ご自身の仕事内容や目指したい仕事内容で求められる知識に対応している資格を目指すと良いでしょう。
資格があることで、その分野の知識があることのアピールになり、キャリアアップにつながりやすくなります。
次はそれぞれの試験内容について見ていきましょう。
試験内容の違い
試験内容の違いを明確にするために、貿易取引の流れを大まかに確認してみましょう。
ここではある新規取引による貨物が日本に到着し、市場へ流通するまでを例とします。
貿易取引の流れ(ざっくりVer.)
- 各種調査・照会
- 交渉
- 取引開始
- 輸出(船積み)
- 本邦到着(日本のことを「本邦」と表現します。)
- 保税地域等への運送・保管
- 輸入(検査・通関手続)
- 物流・市場
それでは、2つの試験内容の違いを確認しましょう。
通関士試験 ④~⑦
貿易実務検定 ①~⑧+英語力
いかがでしょうか。
貿易実務検定の方が範囲が広いことがお分かり頂けると思います。
加えてビジネス英語力も必要となります。
対して通関士試験は範囲は狭いですが、詳細な部分まで学習することになります。
通関士試験には、英語力に関する問題はありませんが、申告書問題では書類上の貨物の品名は全て英単語表記なので、既に知っていればアドバンテージになります。
しかし、英語が苦手だという方も合格されているので、必ずしも必要ではありません。
皆さんの努力次第で合格が可能です。
次に試験内容を確認しましょう。
通関士試験
通関士試験の内容は以下のようになっています。
試験日 | 2024年10月6日(日) |
試験科目 | 3科目(➀通関業法、②関税法等、③通関実務) |
合格基準 |
それぞれの科目で60%を超えることが必要 (稀に基準が下がりますが、期待するべきではありません。) |
試験形式 |
マークシート方式 (計算問題の解答は、数字を1つずつマークしますので選択問題ではありません。) |
貿易実務検定
貿易実務検定の試験内容は以下の通りです。
貿易実務検定C級 | 貿易実務検定B級 | 貿易実務検定A級 | |
試験日 | 年5回(2025年3月2日、5月、7月、10月6日、2024年12月8日) | 年3回(2025年3月9日、7月、2024年12月15日) | 年1回(2024年10月6日) |
試験科目 | 2科目(➀貿易実務、②貿易実務英語) | 3科目(➀貿易実務、②貿易マーケティング、③貿易実務英語) | 3科目(➀貿易実務、②貿易マーケティング、③貿易実務英語) |
合格基準 | 2科目の合計160点(80%)を基準として試験委員長の定める点 | 3科目の合計210点(70%)を基準として試験委員長の定める点 | 各回毎の基準点(3科目の合計) |
試験形式 |
選択式 インターネット試験(自宅可) |
選択式 インターネット試験(自宅可) |
選択式、記述式、計算問題有り 会場受験 ※受験会場が多数ではないため、公表された際にはよく確認する必要があります。 |
以上のことから、1から学習をスタートしよう!という方には貿易実務検定のC級がとっかかりやすいと思います。
難易度についてはこの後に解説しますね。
難易度・合格率の違い
通関士試験と貿易実務検定の各級で難易度を比較すると、貿易実務検定C級が1番難易度が低いです。
貿易実務検定C級、貿易実務検定B級、貿易実務検定A級、通関士試験の順に難易度が高くなっていくといえます。
ただし、試験の中身が違うことと、貿易実務検定は英語力が必要となることから貿易実務検定A級と通関士試験を比較するのは少し難しいです。
あくまで表面上での比較というイメージで捉えていただければと思います。
各試験の難易度と合格目安(公開されているもの)は以下の通りです。
試験種 | 合格率・レベル |
---|---|
通関士試験 | 10~15%前後(2024年は12.4%) |
貿易実務検定C級 | 合格率は約50%(令和4年3月は49.7%) おおむね1~3年以上の実務経験レベル。 貿易実務経験者の中堅層を対象とする。 |
貿易実務検定B級 | 合格率は約50%(令和4年3月は49.7%) おおむね1~3年以上の実務経験レベル。 貿易実務経験者の中堅層を対象とする。 |
貿易実務検定A級 | 合格率約35~40%前後(令和4年10月は35.1%) おおむね3~4年以上の実務経験のレベル。 貿易実務において判断業務を行うことができる。 |
貿易実務検定の表記はあくまで目安です。実務経験がなくても、テキスト等でしっかり学習をすれば合格が可能です。
ですので、これから就職を考える方はC級から目指すと良いでしょう。
また、2021年12月に新しい検定試験「通関ビジネス実務検定C級」が誕生しました。
この検定(C級)は、通関士試験の基本的な内容に、貿易実務検定C級、それと地理の知識を合わせた試験です。
こちらも貿易実務検定C級と同様にネット試験ですので、気軽に受験が可能です。
C級は年に2回(5月と12月※)実施されます。
「最初から通関士試験は難しいけど、少しは勉強したい!」という方におすすめです。
また、通関士試験に合格された方で「次は貿易実務検定に挑戦しよう!」という方にもおすすめですね。
通関士試験で学習した知識の復習を兼ねながら進めることができます。
B級以上はまだ開始されていません(※)ので、こちらも今後が楽しみです。
受験内容でもお話した通り、通関士試験では「各科目」合格基準点を超える必要があります。
しかし、貿易実務検定は合算での合否判断となりますので、例えば「英語は得意だから、そこで点数を稼ぐぞ!」という戦略を立てるのも良いですね。
※2022年5月時点の情報
両方取るのも意味がある?どちらを先にとるべきか?
「どちらの資格も取る必要はありますか?」というご質問を頂くことがありますが、
試験内容でご説明した通り、色に違いがありますので、「通関士になりたい!」という方は当然に通関士試験を受ける必要がありますが、そうでなければ貿易実務検定からスタートして、興味が出てきたら通関士も!という考え方も良いですね。
「スキルアップをしたい!」という方はこれら2つの資格に限らず、どんどん関連資格を取得していくのも楽しいですよ。
EPAビジネス実務検定、日商ビジネス英語、STC試験、外国為替、ディプロマ…
私自身、順番に関連資格を取得していますが、「こう繋がるのか!」や、「こっちのテキストでより理解が深まった!」等、新しい発見が増えていきます。
また、「こういう仕事をしているんだな、こんな仕事や作業、機械があるのか」と、直接見えていなかった部分も書籍上で知ることができます。
現場を知る機会にもなり、世界はとても広いということに気付かされます。
まとめ
ここまで読んで下さってありがとうございます。
学習をはじめる時には必ず不安や心配があると思います。
でも、「不確実性があるのが挑戦」だと思います。
挑戦無くして成長はありません。
私自身、今後も挑戦を続けて参ります。
皆さんに少しでも通関士試験や貿易実務検定等の魅力をお伝えできるように励みます。
一緒に一歩ずつ成長しましょう(^^)
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