宅建士と中小企業診断士の2つの資格があるのは知っているけど、具体的にどのような仕事の違いがあるのか、また、試験を受ける場合はどちらが難しいのか、

疑問に思ったことはないでしょうか。

このコラムでは、2つの資格の違いや難易度を検討し、更にダブルライセンスについても見ていきましょう。

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宅建、中小企業診断士の違い

宅建士の正式名称は「宅地建物取引士」。

宅建士は不動産取引のエキスパートといえます。

中小企業診断士はその名の通り、中小企業に対する経営課題を見て、今後の対応などを解決する者です。

中小企業診断士は中小企業の経営に対するエキスパートといえるでしょう。

それぞれの仕事内容

宅建士と中小企業診断士は、それぞれの分野の専門家として以下のことを行います。

宅建士の仕事内容

宅建士の主な仕事は以下の内容です。

①重要事項の説明

②重要事項説明書への記名押印

③37条書面(契約書)への記名押印

中小企業診断士の仕事内容

中小企業診断士の主な仕事は、現状分析を踏まえた企業の成長戦略のアドバイスです。

難易度が高いのはどっち?

結論から言うと、試験の難易度は中小企業診断士試験の方が宅建士試験より難しいといえるでしょう。

受験資格

宅建士試験、中小企業診断士第1次試験試験ともに受験資格はありません。

そのため、これらの試験は年齢・学歴・性別といった者に関係なく誰でも受験することができます。

一方、中小企業診断士の第2次試験では当該年度または前年度第1次試験合格者が受験資格となります。中小企業診断士試験は第1次試験と第2次試験で階層になっているといえます。

試験内容

宅建士試験の場合、四肢択一のマークシート式です。一回の試験で合否が決まります。

試験科目は民法などの権利関係、宅建業法、都市計画法などの法令上の制限、所得税などの税・その他、不動産に関する知識などの5点免除問題です。

不動産取引のエキスパートとして不動産関連法令が多く出題されることが分かります。

中小企業診断士試験は第1次試験と第2次試験に分かれており、2つの試験に合格することで、中小企業診断士試験合格となります。

まず、第1次試験は多肢択一式のマークシート式となっています。

試験科目は、経済・経済政策、財務・会計、企業経営理論、運営管理、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策と多岐にわたります。

第2次試験では筆記試験と口述試験で構成されています。筆記試験では実務の事例が出され、適切に診断の上アドバイスをしていくという試験です。

中小企業診断士は試験科目が多いので、科目合格及び1次試験合格による翌年の試験免除制度があります。

第1次試験で60%以上得点した科目は科目合格となり、翌年及び翌々年の第1次試験ではその科目は免除されます。

つまり、3年間で上記7科目に合格すれば第1次試験合格となります。

また、第1次試験合格者は合格年度と翌年度に第2次試験を受験することができます。

そのため第1次試験合格後、直近の第2次試験に不合格になっても翌年は第1次試験を免除され第2次試験だけを受験することになります。

ただし、中小企業診断士試験には基準点があります。

第1次試験及び第2次試験ともに1つの科目に40%未満の点数があった場合、その時点で不合格になります。

中小企業診断士試験では科目の弱点を無くし、まんべんなく得点する必要があります。

このように中小企業診断士試験は幅広い分野の知識が必要で、2つの試験で合格しなければならず、更に基準点もあるため宅建試験より大変な試験といえます。

合格率

宅建士試験の合格率は例年13~18%(最新令和5年度は17.2%)で推移しています。100人の受験生のうち80人以上が落ちる試験となっており、合格率が低いです。

一方、中小企業診断士試験の合格率は1次試験で例年30%前後(最新令和6年度は27.5%)、2次試験で例年18%前後(最新令和5年度は5.5%)となっています。こちらも低い水準となっています。

一見すると宅建士試験の方が合格率が低いとも思えます。

しかし、中小企業診断士は第1次試験と第2次試験に合格して初めて中小企業診断士試験合格となり、国家資格である中小企業診断士を名乗ることができるので、実際には第1次試験の合格率と第2次試験の合格率を掛け合わせた合格率が本来の合格率といえるでしょう。

1次試験と2次試験の合格率を掛け合わせると宅建士試験よりはるかに低い合格率となります。

合格率の面からみると中小企業診断士試験の方が合格が難しい試験であるといえます。

合格までの勉強時間

宅建士試験の場合、一般に合格に必要な勉強時間は300~400時間といわれています。

これに対し中小企業診断士試験の合格に必要な勉強時間は一般に、1000時間といわれています。

中小企業診断士になるには宅建士の3倍程の勉強時間が必要とされています。

中小企業診断士試験は多数の分野や科目から出題されており、択一試験のみならず筆記、口述試験にも備える必要があります。

また、中小企業診断士試験は独自の基準点が設定されており弱点を潰す必要があることから長時間の勉強が必要とされているためと考えられます。

【目的別】どちらの資格を取得したらいいのか?

両方の資格の仕事内容や試験の難易度の違いは理解できたでしょうが、自身がどちらに向いているかはまだ分からないでしょう。

そこで、この2つの資格のうち、どちらを目指したら良いかを説明します。

宅建を取得したほうがいいのはこんな人

土日祝日など、一般に休みの人が多いなかでも働ける人

宅建士の仕事は重要事項の説明などですが、多くの取引相手は個人です。

そのため土日祝日など多くの人が休みの時に顧客に不動産へ来てもらい、重要事項の説明や契約書への記名押印をします。

稼ぎ時が土日祝日なので、曜日にとらわれず働きたいという人は向いています。

慎重に物事を判断できる人

宅建士は都市計画で定められている事項を説明します。

そのため、特定の物件について、何を説明し、契約書に書かなければならないかを確認しなければなりません。

この作業は慎重に行い、見落としが無いように遂行する必要があります。物事を慎重に進めることができれば、宅建の仕事もうまくいくでしょう。

資格試験の勉強は初めてという人

資格試験の勉強はペースやどのような勉強をすべきかといった勉強法を学ぶことからスタートします。

宅建士は法律系の資格試験の中では簡単な部類で、ペースや勉強法を掴むことができ、他の資格試験の勉強でも役立ちます。そのため宅建士でまず資格試験の勉強を行うべきでしょう。

中小企業診断士を取得した方がいいのはこんな人

モチベーションの高い人

中小企業診断士は企業の課題を把握して、それに対する戦略や回答を助言する仕事です。

そのため問題解決にあたって前向きで積極的に行動している人が多いです。中小企業診断士には向上心が大事なので、モチベーションが高い人は向いているでしょう。

人脈を広げたい人

中小企業診断士は、他の診断士や別の士業の人と連携をとって仕事を遂行していくことも多いです。

企業の課題は複合的な問題も多く、1人の診断士だけでは処理できないこともあるからです。

このように、中小企業診断士は他の診断士などと交流の機会があるため、人脈を広げることのできる資格といえそうです。

多面的かつ俯瞰的に物事を判断できる人

企業の課題は複合的な要因であることが多いです。

企業の現状を把握するには第三者からの視点という俯瞰的視野が必要で、物事を多角的に見る必要があります。

そのため、物事を多面的に見ることのできる人などは中小企業診断士にむいています。

ダブルライセンスを目指すメリット

ここまでは宅建士と中小企業診断士を区別して論じてきましたが、2つの資格は相性が良く、ダブルライセンスによるメリットも以下の3点があります。

試験範囲が重複する部分がある

宅建士試験の「法令上の制限」と中小企業診断士試験の運営管理の各科目では、「都市計画法」という共通の法律で重複します。

そのため、一方で都市計画法を勉強すれば他方の資格の勉強で都市計画法を勉強する必要はなく、勉強量の圧縮を図ることができます。

両資格を持つことで、就職や転職がさらに有利になる

中小企業診断士と宅建士は1つ持っているだけでも就職や転職が有利になる資格です。

これら2つを持つと、他者と差別化を図ることができるので、更に有利になります。

特に不動産業界では極めて有用です。不動産業界も中小企業が多く、独占業務の性質上、宅建士が特に必要です。

そのため勤めている会社の経営戦略や不動産取引の業務の両方に携わることのできる人材は貴重で、不動産業者は是非勤務をしてもらいたいと考えるはずです。

不動産業の経営戦略という専門性を持つことができる

中小企業診断士として活動していく中で、宅建士の資格が役立ちます。宅建の勉強をしていく中で不動産関連法に詳しくなります。

そのため不動産についての知識を深め、他の中小企業診断士にない不動産業界の経営戦略に専門性を持つことができます。

ダブルライセンスを目指す場合の理想スケジュール

ダブルライセンスを目指す場合、自分の主に活用したい資格が中小企業診断士なのか宅建士なのかにより変化します。

中小企業診断士として活動していく中で不動産関連法への知識を深め、不動産業界の経営戦略を専門的にしたいという場合には、中小企業診断士を先に勉強しましょう。

宅建士として活動していく中で勤めている企業の経営戦略に関与していきたいという場合には宅建士の勉強を先にしましょう。

このように自分がメインとする資格を先に勉強し、取得できたら次の資格を勉強するという方法が最短といえます。

まとめ

このコラムをまとめると以下のようになります。

・宅建士は不動産取引のスペシャリストとして重要事項の説明や契約書等への記名押印を行う

・中小企業診断士は中小企業経営に対するエキスパートとして経営の診断や助言を行う

・試験の難易度は中小企業診断士の方が難しい

・土日などでも働くことができる人、冷静に物事を判断できる人、初めて資格試験を勉強する人は宅建士向き

・モチベーションが高い人、人脈を広げたい人、多面的かつ俯瞰的に物事を見ることができる人は中小企業診断士向き

・試験科目の重複や就職・転職の有利、専門性などでダブルライセンスも魅力的

・ダブルライセンスを考える場合、主に活用したい資格を先に勉強すべし

宅建士と中小企業診断士はどちらも魅力のある資格であることが分かりました。自分の目指したい資格に向かって勉強をはじめてみましょう。

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