このコラムでは、司法書士試験対策における商業登記法について、どのような科目なのか、出題傾向や配点、そして勉強方法について解説いたします。

司法書士試験における商業登記法について

商業登記法とは

商法や会社法の規定による登記すべき事項その他手続について定めた法律です。

たとえば、会社を設立するときには設立登記をしなければなりませんが、申請書にどのような記載をしなければならないのかということや、会社の取締役の交代が起こった時、どのような内容の変更登記をしなければならないのかということなど、商法・会社法と関係の深い法律です。

出題形式と配点

司法書士試験において商業登記法は、午後の部の多肢択一式試験で8問、午後の部の記述式試験で1問出題されています。

また、多肢択一式試験の配点は1問3点なので、商業登記法の多肢択一式試験で24点分出題されることになります。

さらに、記述式試験は、全2問の出題で満点が70点となっているので、単純計算ですが、商業登記法の記述式試験の配点は35点分あるということになります。

出題傾向と特性

商業登記法は商法・会社法と密接な関係があります。

予備校の中には、商法・会社法と商業登記法を同じテキストにしているところもあるくらいです。

出題範囲は商業登記法全般に及びます。

とりわけ外国会社や持分会社については、会社法よりもむしろ商業登記法で良く出題される傾向があります。

また、不動産登記法と同様に、登記先例からの出題も見られます。

「先例」とは、各種法令から一義的にその内容を確定することが困難なものなどについて、法務局はどのように扱うべきかという指示をいい、「通達」や「回答」という形で法務省から示されます。

商業登記法の勉強法

商業登記法は、商法・会社法と密接な関係があります。

経験から言えば、恐らく司法書士試験の学習を始めて、最初に直面する壁が商法・会社法、商業登記法ではないかと思います。

司法書士試験の学習は通常、民法・不動産登記法から始まります。

不動産登記法は、売買、贈与、相続など生活に身近な話が多く、イメージが掴みやすいのですが、商業登記法は、株式発行や増資、組織再編など、非日常的な話が多く、具体的なイメージが掴みづらいところがあります。

商業登記法は商法・会社法の先にある法律ですから、商法・会社法の知識が曖昧であれば、商業登記法はさらに難解なものになります。

そのため、商業登記法を学習するにあたっては、商業登記法や商業登記規則だけでなく、ベースとなる会社法の規定を常に意識しながら学習するのが良いでしょう。

多肢択一式の学習の仕方

多肢択一式試験では、商法・会社法・一般法人法などにおいて登記することが求められている事項に関する出題が満遍なくされています。

しかし、今まで誰も見たことがないような問題ばかりが出題されるわけではなく、過去問と類似する問題や、過去問の言い回しを変えたりした問題も出題がされています。

そこで、過去問を繰り返し解き、柱となる正確な知識を定着させる勉強をしていく必要があります。

また、商業登記法は、会社法と共に法改正が頻繁な科目ですから、最新の改正情報に常に目ざとくあるようにしましょう

商業登記法も不動産登記法と同様に、近年難化傾向が著しい科目です。

未出の知識への対応は個人では限界がありますから、ぜひ予備校の答練等を利用して効率よく学習していただきたいと思います。

本試験では、8問中6問以上は取りたいところです。

記述式の学習の仕方

記述式試験では、商業登記法の知識だけでなく、商法・会社法などの商業登記法の基礎となる法律の知識があることを前提として、申請書にどのような事項を記載しなければならないのか、また、司法書士として、登記の申請を代理すべきでない事項があるか、また、そのように判断した理由を聞くといった問題が出題されています。

不動産登記法の記述式の学習の仕方でも同様のお話をしていますが、記述式においても過去問は重要です。

しかし、択一式と異なり、記述式問題においては同じ問題が出題されるということはありませんから、択一式の過去問の様に何度も繰り返し解く必要性は低いと思います。

記述式問題への対応力は演習量に比例しますから、可能な限り新しい問題を解く機会を増やすことをお勧めします。

商業登記に関する業務は、司法書士の主要な業務です。

司法書士試験でも多肢択一式と記述式の両方の試験が課され、商業登記法に関する配点割合は、不動産登記法に次いで高くなっています。

そのため、勉強の優先度は高く、多くの勉強時間を割く必要があります

また、商業登記法は、一般になじみの薄い科目であるにもかかわらず、商業登記に関する細かい出題がされ、制限時間も厳しいので、ほかの科目と比べて難しい科目です。

さらに、配点割合が高いにも関わらず、不動産登記法と比べて準備が不足している受験生が多い科目で、実際の難易度より難しく感じる傾向にある科目です。

多くの受験生が苦手としている分、得点源にすることができれば試験上大きな武器となる科目です。

ぜひ、会社法と共に商業登記法に強くなり、合格を一気に引き寄せてください。

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この記事の監修者 竹田 篤史講師

竹田篤史講師


社会保険労務士事務所、司法書士法人勤務後、大手資格予備校にて受講相談、教材制作、講師を担当。

短期合格のノウハウをより多くの受講生に提供するため、株式会社アガルートへ入社。

これまで、ほぼ独学で行政書士試験、司法書士試験に合格し、社会保険労務士試験には一発で合格。

自らの受験経験で培った短期合格のノウハウを余すところなく提供する。

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