仕事のやりがいは大切ですが、これから資格を目指す人にとっては、稼げる資格なのかどうかも気になるところです。
司法書士は難関資格ですが、果たして稼げる資格なのでしょうか。

この記事では、司法書士の年収の実態や収入アップのポイントについて解説します。

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司法書士の平均年収は約1122万円

厚生労働省の調査によると、全国の司法書士の平均年収は1121.7万円となっています(令和6年)。

出典:司法書士 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

ちなみに令和4年の平均年収は971.4万円でした。司法書士の平均年収は昨年より約150万円上がっています

ただし司法書士は、独立開業する場合と雇われて勤務する場合など、年収にはが大きく個人差があります

ここではカテゴリー別の司法書士の年収を解説します。

【司法書士の年収】独立開業で最多は1000万円以上

令和3年(2021)年度司法書士実態調査集計結果(司法書士白書2021年度版)によると、独立開業している司法書士の令和元年の税引前収入(売上)で一番多かったのは、「1,000~4,999万円」でした(回答者全体の30.8%)。
次いで多いのが「200~499万円」で全体の11.8%、3番目が「500~749万円」で全体の8.76%でした。

参照:司法書士白書2021年度版

最も多い1,000~4,999万円の幅が広いため、開業司法書士の平均年収を算出することはできませんが、5,000万円以上も含めると全体の38.9%が1,000万円以上の年収があるということが分かります。

「司法書士は難関資格の割に稼げない」などと言われることもありますが、実際には3分の1以上の開業司法書士の年収が1,000万円を超えており、高収入の開業司法書士は決して少なくないと言えるでしょう。

【司法書士の年収】勤務で最多は300~400万円

令和3年(2021)度司法書士実態調査集計結果(司法書士白書2021年度版)によると、勤務司法書士の令和元年の年収で一番多かったのは「300~400万円未満」で、全体の21.0%でした。
次いで多いのが「400~500万円未満」で18.3%、「500~600万円未満」で15.1%
と続きます。

勤務司法書士で年収1000万円以上は、2.9%で、開業司法書士よりも遥かに少ないということがわかります。

年収300~600万円未満が全体の54.3%を占めるため、平均年収としては400万円程度だと推計されます。

参照:司法書士白書2021年度版

令和2年度分民間給与実態統計調査結果によると、給与所得者の平均年収は433万円のため、一般的なサラリーマンとさほど変わらないと言えるでしょう。

出典:令和2年分民間給与実態統計調査結果 

他の士業と比べた場合、令和3年度賃金構造基本統計調査の結果から算出すると、公認会計士・税理士の平均年収は658万円となっており、勤務司法書士よりも高収入です。

出典:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査

司法書士は専門職のわりに、勤務の場合にはさほど高収入を望みにくく、高収入を目指す場合には独立開業することが必須と言えそうです。

そもそも司法書士とは

司法書士は、登記申請や裁判所への提出書類作成などの法律事務を扱う国家資格者です。

従来からのメイン業務は、不動産登記、商業登記の申請です。

登記というのは、不動産や会社についての情報を誰もが見られるように公示するための国の登録制度です。

たとえば、この不動産は現在誰が所有しているのか、といった情報が登記によってオープンにされており、不動産を売買したときに、売主Aさんから買主Bさんに所有者を変更する不動産登記の手続きを司法書士が行います。

関連コラム:司法書士とは?仕事内容をわかりやすく解説

近年では、登記以外にも司法書士の活躍の場が広がっています。

たとえば、遺言書の作成サポートや相続放棄申述書の作成などの相続関連業務、資産の承継手続きなどの民事信託業務、高齢者などの権利や財産を守るための成年後見人業務、認定を受けた司法書士による簡易裁判所での訴訟代理業務など多岐にわたります。

司法書士は、私たちの権利や財産にかかわる重要な仕事を担っているため、知識だけでなく、倫理観や誠実さも求められる社会的役割の大きな仕事です。

経験を積むほどにノウハウが身につき、お客さんからの信用が厚くなることが期待できます。独立開業すれば定年もないため、生涯現役を実現することもできるやりがいのある仕事です。

司法書士の報酬

司法書士の報酬がいくらくらいなのか、気になりますよね。

代表的な業務についての報酬の目安を紹介します。

不動産登記の申請に関する業務の報酬

司法書士の代表的な業務といえるのが、不動産登記の申請です。不動産登記は、土地や建物の権利関係を正しく公示して、安全な取引ができるようにするための国の制度です。

たとえば、その土地はいつ、誰が、どのような理由で取得したものであるのか、担保にとられているのか(抵当権などが付いているのか)といった情報を、登記されることによって誰もが知ることができます。

不動産登記には様々な内容があり、登記する項目は法律で決められています。不動産登記の申請には、正確な知識とノウハウが必要であり、重要な財産である不動産取引についてのミスは許されません。そのため、本人に代わってその道のプロである司法書士が登記申請を依頼されます。

たとえば、銀行で住宅ローンを組んで中古住宅を購入するケースを考えてみます。その場合、よくある一連の不動産登記手続きは、以下のようになります。

①売主Aが売買代金を受け取って住宅ローンの残債を完済する。⇒抵当権抹消登記
②売買代金の支払いにより売主Aから買主Bに所有者が変わる。⇒所有権移転登記
③買主Bが銀行で住宅ローンを組んでマンションを担保にする。⇒抵当権設定登記

このような一連の登記を司法書士は正しく判断し、必要な書類の準備、当事者への意思確認、本人確認、お金の流れの確認、といったことを行ったうえで登記申請を行います。
重要な財産の権利関係が変わる手続きなので、責任のある仕事です。上記の例の場合、報酬としては、下記が目安となります。

①抵当権抹消登記 1万5千円程度
②所有権移転登記 5万円程度
③抵当権設定登記 4万円程度、合計10万5千円程度

ただし、内容の複雑さや不動産やローンの借入金の金額などによっても変動します。

商業登記の申請に関する業務の報酬

株式会社や合同会社など、様々な法人についての情報を登録して開示する制度である商業登記の申請も、司法書士のメイン業務の一つです。

登記するべき内容は法律で決まっており、司法書士は正しい知識を持って正確な情報を登記します。

申請には、事案に応じた添付書類が必要で、依頼者からしっかりと聞き取りを行い、実情に合った書類を用意します。

報酬の目安は、会社設立登記で約10万円、役員変更登記で約3万円です。

裁判所に提出する書類作成の業務の報酬

司法書士は、裁判所に提出する様々な書類の作成も行います。

依頼者の目的に応じて、裁判所に提出する書類には様々な種類のものがあります。

たとえば以下のようなものがあります。

  • 財産よりも借金が多いので相続を放棄したい⇒相続放棄の申述申立て
  • 高齢の親が認知症になって判断能力が衰えてしまったので、財産管理などをする後見人を選任してほしい⇒成年後見人の選任申立て
  • 亡くなった親の自筆証書遺言を見つけた⇒遺言書検認の申立て

報酬の目安は、以下のようになります。

  • 相続放棄の申述申立て 約5万円
  • 成年後見人の選任申立て 約5万5000円
  • 遺言書検認の申立て 約3万円

司法書士の年収は男性・女性に違いはある?

司法書士の場合、男性であっても女性であっても同じ仕事をする専門職であるため、基本的に性別による年収の違いはありません。

ただし、女性の場合、残業のない働き方を希望したり、育児と両立できる働き方を選択するケースなどもあり、働き方によって年収が男性より少なくなることもあります。

もちろん、男性であっても家庭生活との両立などを考えて仕事をセーブする人もいます。

性別によって不利になることがない点は、司法書士の魅力の一つです。

司法書士の年齢による年収の違いは?

年齢別の司法書士の年収に関する統計調査はされていません。

ただ、独立開業する司法書士の場合、年数を重ねることで顧客が増えていくケースが多いため、ある程度年齢を重ねた司法書士の方が年収が高い傾向があります。

とはいえ、若くして多くの顧客を獲得して成功する司法書士も少なからず存在し、開業から3年以内に年収が1000万円を超える司法書士も決して珍しくありません。

一方、勤務司法書士の場合、民間企業や公務員と比べ、定期昇給や昇進の制度はほぼ存在しないため、年齢が上がってもそれほど年収の増加は見込めません。

1年目であっても10年目であっても、基本的に司法書士業務に違いはないため、それほど年収に差がつかない傾向があります。

司法書士になるには

司法書士になるためには、国家試験である司法書士試験に合格するのがスタンダードな方法です。 

司法書士試験は、合格率3~5%程度のとても難易度が高い試験で、よく比較対象とされる行政書士試験(合格率10%程度)よりもはるかに難しいレベルです。とはいえ、決して秀才しか合格できないタイプの試験ではなく、真面目にコツコツと取り組むことができれば誰もが合格を目指すことができます。

ただ、独学での合格は非常に難しく、ほとんどの人が通信講座や予備校を利用します。

関連コラム:司法書士は独学で合格可能?難しい理由&独学合格のためのポイント6つ

司法書士試験は年1回、7月の第1日曜日に筆記試験が実施されます。

試験科目は11科目あり、午前の部は4科目(民法、商法・会社法、憲法、刑法)、午後の部は7科目(不動産登記法、商業登記法、供託法、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、司法書士法)を1日で受験しなければなりません。

筆記試験合格者には、10月下旬に口述試験が実施され、この口述試験はほぼ全員が合格します。

 試験合格後は、新人研修を受ける必要があります。

新人研修を受けた後、司法書士会に登録手続きを行い、それが済むと晴れて司法書士として仕事をすることができるようになります。なお、例外的な方法として、登記官や裁判所書記官などの法律系の公務員として10年以上の勤務をして、法務大臣に認定された場合は、司法書士試験に合格しなくても司法書士になることができます。

関連コラム:司法書士になるには?なるまでの流れと方法を順番に解説

司法書士として年収を上げるためのポイント3つ

司法書士が年収を上げるための方法として、3つのポイントをご紹介します。

1.はじめから仕事を選り好みしない
2.顧客と長期的な信頼関係を築く
3.他士業との連携を図る

1.はじめから仕事を選り好みしない

司法書士の業務範囲は広がっており、従来からの登記業務だけでなく、成年後見業務、裁判業務、相続関係業務、資産承継業務、企業法務関連など多岐にわたっています。

自分が経験したことのない業務であっても、選り好みせずに積極的にチャレンジしていくことで、自分の能力や新規顧客獲得の可能性もどんどん広がっていきます。

その前提として、常に勉強を続け、知識や経験を積み重ねていく必要があるでしょう。

特に独立開業したばかりの司法書士は、経験がないからと二の足を踏むのではなく、新たな経験を積むチャンスだととらえて新規の業務に取り組んでいく姿勢が大切です。

2.顧客と長期的な信頼関係を築く

司法書士の業務は、人の財産や家族関係といったデリケートな問題に立ち入ることになるため、顧客との信頼関係がとても重要です。

そのため、しっかりとした信頼関係を築くことができれば、一度の依頼で終わりではなく、その後も継続的に相談や依頼を受けたり、その人から別の顧客の紹介を受けることも多いという特性があります。

顧客の信頼を得るためには、常に誠実で真摯な態度で業務に取り組むことが大切です。

3.他士業との連携を図る

司法書士の仕事は、他士業からの紹介も重要な営業ルートとなります。

たとえば、不動産登記の仕事では土地家屋調査士と協力して仕事を進めたり、会社設立時には税理士と連携することもあります。

他士業者と信頼関係を築き、協力して仕事をしたり、仕事を紹介し合ったりできる体制を作ることができれば、双方にとってメリットがあり顧客獲得のチャンスも増えるでしょう。

まとめ

司法書士は難易度が高く人数が限られることもあり、比較的高収入を狙いやすい職業です。また、独立開業もしやすく自由な働き方ができるという魅力もあります。

社会人になってから、働きながら資格取得を目指す人も多く、30代、40代で合格して第二のキャリアをスタートする人も沢山います。

働きながら合格を目指す場合、限られた時間の中でいつでもどこでも、自分の都合に合わせて学習ができる通信講座の利用をおすすめします。

輝かしい第二のキャリアを目指して、司法書士試験の勉強を始めてみませんか。

関連コラム:司法書士と行政書士はどっちが稼げる?年収を比較して解説

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三枝講師

この記事の監修者 三枝 りょう講師

三枝りょう講師



合格直後から予備校制作スタッフとして受験業界に携わり、翌年にプロ講師としてデビュー。

以来20年以上、プロ合格請負人として各資格スクールから講義を全国に配信し,安定して合格者を輩出。

受験指導総時間1万2000時間のベテラン講師。

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