中小企業診断士の試験科目はどのようなものがあるのでしょうか。

これから中小企業診断士を目指す人にとって、試験科目を把握することは今後の道しるべになるので気になるのではないでしょうか。

中小企業診断士は中小企業の診断や経営戦略の助言を行うため、様々な知識が必要となっており、試験科目も色々なものがあります。

そこで、中小企業診断士試験科目について、合格率とともに見ていくことにしましょう。

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中小企業診断士の試験科目

中小企業診断士試験における一次試験の試験科目は「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」「運営管理(オペレーション・マネジメント)」「経営法務」「経営情報システム」「中小企業経営・中小企業政策」の7科目です。

マークシート択一式で出題されます。

一次試験の試験科目出題内容
経済学・経済政策ミクロ経済学・マクロ経済学を中心とした主要理論と経済政策
財務・会計企業における財務会計
企業経営理論経営戦略論・組織論・マーケティング論など
運営管理
(オペレーション・マネジメント)
生産管理、店舗・販売管理など
経営法務企業の経営に関する法律や制度、手続など
経営情報システム情報通信技術に関する基礎的知識及び経営情報管理
中小企業経営・中小企業政策中小企業経営の特徴や政策

中小企業診断士試験における二次試験(筆記試験)の試験科目は「事例 I」「事例 II」「事例 III」「事例 IV」の4科目です。

筆記試験となっています。

二次試験の試験科目出題内容
事例 I組織(人事を含む)を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例
事例 IIマーケティング、流通を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例
事例 III生産、技術を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例
事例 IV財務、会計を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例

以下では、それぞれの科目でどのような内容が出題されるのか、合格率とともに詳しく説明します。

1次試験の科目

中小企業診断士1次試験の科目は、7科目で、以下の科目があります。

科目別難易度に関しては、以下の記事も参考にしてみてください。

経済学・経済政策

ミクロ経済学とマクロ経済学を中心とした主要理論と経済政策が出題されます。

マクロ経済学の知識があると、為替相場や国際収支などの指標を的確に把握することで経営上の意思決定を正確に理解できます。

また、ミクロ経済学はマーケティングの効果を上げるうえで重要です。

経済学・経済政策科目の合格率

合格率は例年10.5~26.4%程度で推移しています。

合格率が多くの年で20%程度を超え、合格率にそれほど変化がないので他の科目と比較して合格しやすく、年度による難易度の変化が少ない科目といえます。

財務・会計

企業における財務会計分野の知識が出題されます。

これらの知識は企業経営の基本で、財務諸表等を見て経営分析を行うことが多いため中小企業診断士に欠かせない知識です。

また、社会の発展により中小企業の資金調達が今後増えることも考えられ、投資の評価や企業価値の算定といった知識についても必要となるためこの科目で出題されます。

財務・会計科目の合格率

合格率は例年7~26%程度で推移しています。

合格率の変動が大きいため年度により問題の難易度が大きく変化する科目といえます。

企業経営理論

経営戦略論、組織論、マーケティング論といった分野から出題されます。

企業経営において、資金面以外でも経営に関する知識として経営戦略や組織に関する知識は必須で、経営戦略の助言には欠かせないものとなっています。

また、近年ではブランドをはじめとする高い技術力を売りにして商売をすることもあり、マーケティング戦略も中小企業診断士に必要な知識です。

企業経営理論科目の合格率

合格率は例年7~35%程度で推移しています。

こちらも年度によって合格率の変動が大きいので、問題の難易度の変化が大きい科目といえるでしょう。

運営管理(オペレーション・マネジメント)

生産管理、店舗・販売管理といった分野を中心に出題されます。

中小企業では工場や店舗での生産や販売に関する運営の管理部門で大きな問題を抱えていることも多く、中小企業診断士としてこれらの管理方法に関する知識が重要となっています。

また、近年は中小企業でもITを活用して生産や店舗・販売の管理を行うことも増えてきており、今後管理方法の整備に当たって中小企業診断士が必要になる分野でもあります。

運営管理(オペレーション・マネジメント)科目の合格率

合格率は例年9~26%で推移しています。

合格率の差が激しく、年度により難易度の変化が大きい科目です。

特に2021年(令和2年度)では合格率わずか9%でした。

経営法務

企業の経営に関する法律や制度、手続が出題されます。

中小企業診断士として企業経営者に助言を行う際、法律など実務的な知識を身につけておかなければいけません。

また、専門的な内容に関しては弁護士などを活用することもあるため、他の専門職に橋渡しをする目的で法律知識を有していることが必要です。

経営法務科目の合格率

合格率は例年5~27%となっています。

合格率の変動が少ないため、年度による問題の難易度の変化はあまり大きくありません。

しかし、合格率の高い年でも20%に届いていない傾向にあるので難易度は安定しているものの、難易度が高い科目といえます。

経営情報システム

情報通信技術に関する基礎的知識及び経営情報管理という分野から出題されます。

通信情報技術の発展や普及で今後様々な場面で情報システムを活用して経営をすすめることになるでしょう。

これらの知識を磨くことで、中小企業診断士の活動の場を更に広げることができます。

経営情報システム科目の合格率

合格率は例年10~28%程度となっています。

年度による問題の難易度の変化は、やや大きめの科目です。

中小企業経営・中小企業政策

中小企業経営の特徴や政策が出題されます。中小企業診断士は特に中小企業に対する経営分析や助言が期待されています。

そのため中小企業の独自性を踏まえて経営分析や経営戦略を立案する必要があります。この科目は中小企業診断士特有の科目です。

中小企業経営・中小企業政策科目の合格率

合格率は例年5~23%となっています。

合格率の変動が大きいため年度によって問題の難易度の変化が大きいといえます。

また、近年では合格率20%を超えた年は2018年(平成30年度)のみとなっているため比較的難しい科目といえるでしょう。

中小企業診断士1次試験全体の合格率は以下のようになっています。

年度受験者数合格者数合格率
2024年(令和6年)18,2095,00727.5%
2023年(令和5年)18,6215,52129.6%
2022年(令和4年)17,3455,01928.9%
2021年(令和3年)16,0575,83936.4%
2020年(令和2年)11,7855,00542.5%
2019年(令和元年)14,6914,44430.2%
2018年(平成30年)13,7733,23623.5%

合格率に上昇傾向が認められ、今後もこの傾向は維持されていくものと思われます。

そのため、昔に比べれば1次試験は合格しやすくなっているといえるでしょう。

2次試験の科目

2次試験の科目は、筆記試験と口述試験があり、筆記は4科目で、以下の科目があります。

事例1:組織(人事を含む)を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例

企業に関する事例を読み、企業の体質といった企業背景を記述する問題や今後の組織変革のためにどのようなアドバイスをするかを記述する問題など、企業の組織管理や強化のあり方を答える科目です。

出題者の意図を把握しづらく、設問をよく読んでも分からないこともあるため難しい科目となっています。

中小企業診断士2次試験の【事例1】出題傾向と勉強法

事例2:マーケティング、流通を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例

企業に関する事例を読み企業の今後の望ましい取引先や計画への助言を記述する問題など、1次試験の「企業経営論」で出てくるマーケティング論と「運営管理」で出てくる店舗・販売管理を応用する力が試されます。

小売、サービス業の事例が多く比較的取り組みやすい業種からの事例となることが多いものの、4科目中最も長文で出題されることが多く、読解力が試される科目でもあります。

関連コラム:中小企業診断士2次試験の【事例2】出題傾向と勉強法

事例3:生産、技術を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例

企業に関する事例を読み、生産や技術に関する問題点と対応策を記述する問題や新製品の充実、拡大の方法を記述する問題など1次試験の「運営管理」で出てくる生産管理を基本とした問題が出題されます。

製造業の事例が多く、この業種へのなじみが深い人にとって取り組みやすい科目です。

一方、サービス業など他業種の人はあまり親しみがない分難しく感じることの多い科目です。

関連コラム:中小企業診断士2次試験の【事例3】出題傾向と勉強法

事例4:財務、会計を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例

計算書類を読み優れている会計分野を挙げる問題や現在の業績評価の問題点を回答する問題など、財務・会計分野に対する知識が試されます。

ここでの知識は1次試験で勉強した財務会計知識を活用すれば得点できる分野となっています。

筆記試験の合格率

筆記試験の合格率は例年18~19%で推移しています。

1次試験に合格した人であっても筆記試験の合格率は20%に届かないため、過去問などを活用してしっかりと勉強することが重要です。

関連コラム:中小企業診断士2次試験の【事例4】出題傾向と勉強法

口述試験

筆記試験に合格した人は口述試験を受けることができます。口述試験では、約10分間の面接が行われます。

筆記試験の事例を使い多角的な視点から質問がされ、それにきちんと応対できているかが評価のポイントとなります。

資料の持ち込みが禁止されているので試験開始までに筆記試験で出題された事例を見ておくことが必要になります。

口述試験の合格率

口述試験の合格率は例年99%以上と極めて高い数字となっています。

口述試験は中小企業診断士としてきちんと働くことができるような受け答えができるかといった点を重視しており、極めて合格しやすい試験といえます。

そのため口述試験は、試験官から尋ねられた質問に対し丁寧に回答していけば合格できる試験です。

科目合格制度も活用しよう

中小企業診断士1次試験には科目合格制度というものがあります。

これは、1次試験で不合格の人を対象に満点の60%以上を獲得した科目について科目合格として取り扱う制度です。

科目合格制度の対象となった科目では、翌年と翌々年に限り受験を免除することができます。

これにより勉強する範囲が少なくなり、1次試験合格に近づくことができるというメリットがあります。

中小企業診断士にはこのように受験を免除できる制度があるので、ぜひ活用してみてはどうでしょうか?

まとめ

以上が中小企業診断士の試験科目についての解説となります。

このコラムをまとめると、重要な点は以下の部分です。

  • 中小企業診断士には1次試験と2次試験がある
  • 1次試験はマークシートの択一式で、経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論、運営管理、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策の7科目がある
  • 2次試験は筆記試験と口述試験で、筆記試験では4科目、組織・人事、マーケティング・流通生産・技術、財務・会計といった事例問題が出題され、口述試験では面接試験が行われる

中小企業診断士の試験では様々な知識を問う科目があり、どれも仕事に欠かせない知識だということが分かりました。

勉強する範囲は広いですが、その分やりがいのある資格なのでぜひ目指してみてはいかがでしょうか。

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