中小企業診断士の1次試験のうち、「中小企業経営・政策」科目は、我が国の中小企業の経営実態や国の中小企業に対する支援施策などがテーマとなっています。

中小企業関連団体やコンサルタントでない限り、多くの受験生には馴染みのない科目でしょう。

内容もトレンドなものが多く、過去の受験体験があまり活かされないケースが多い内容が多く含まれています。

範囲も膨大にあるため、この記事では、中小企業経営・政策の出題傾向や、最短で合格するための勉強法のポイントを紹介します。

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中小企業診断士試験における中小企業経営・政策の概要

中小企業経営・政策は、中小企業診断士の1次試験の科目のひとつですが、以下のような特徴を持っています。

中小企業経営・政策とは

この科目は、大きく、「中小企業経営」と、「中小企業政策」の2つにテーマ分類されます。

中小企業診断協会では、中小企業経営・政策の科目設置の目的として、以下のような内容を掲げています。

(科目設置の目的)  中小企業診断士は、中小企業に対するコンサルタントとしての役割を期待されており、中小企業経営の特徴を踏まえて、経営分析や経営戦略の策定等の診断・助言を行う必要がある。そこで、企業経営の実態や各種統計等により、経済・産業における中小企業の役割や位置づけを理解するとともに、中小企業の経営特質や経営における大企業との相違を把握する必要がある。また、創業や中小企業経営の診断・助言を行う際には、国や地方自治体等が講じている各種の政策を、成長ステージや経営課題に合わせて適切に活用することが有効である。

令和6年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書

つまり中小企業診断士は、まずは、中小企業の現状や特性を理解した上で経営者にアドバイスすることが必要であり、加えて、その現状や特性に合わせて国や地方自治体が行う中小企業支援施策を普及させていくことが求められています。

変動が大きい合格率

中小企業経営・政策の過去5年間の合格率を見ると、23.0%(平成30年)、5.6% (令和元年) 、16.4%(令和2年)、7%(令和3年)、10.9%(令和4年)、20.6%(令和5年)、5.6%(令和6年)と、変動が大きいです。

中小企業経営・政策科目は、範囲が膨大であることと、トレンドが変化していくこともあり、受験生が苦戦している実態が浮き彫りになっています。

【参考】中小企業診断協会 中小企業診断士試験 過去の試験結果・統計資料

中小企業経営・政策科目の二次試験との関連性は、比較的薄いと言えます。

直接中小企業の動向や政策を問う問題はありませんが、事例問題の与件(問題文に出てくるケース企業の現状情報)に出てくる中小企業をめぐる環境変化は、中小企業白書から脈々と伝わってきます。

この与件の読み取りは二次試験の大きな課題ですが、中小企業経営・政策科目をしっかりやっていると、二次試験では与件の読み取りが楽になるというメリットがあります。

※関連コラム:中小企業診断士1次試験で最も難しい科目は?科目別の難易度を解説

出題形式と配点

中小企業経営・政策は、以下の仕様で出題されます。

・二日目の3科目目(最後の科目)

・時間数は90分

・択一マークシート形式(四肢または五肢択一式)

・問題数は23~24問

出題の傾向

調査や法律にもとづく知識をストレートに問うパターンと、簡単な企業の事例を活用して中小企業政策内容を問うパターンがあります。

中小企業経営テーマが前半、中小企業政策が後半で、ほぼ半分ずつの割合で出題されています。

合格率が乱高下する手ごわい科目ですが、実はかなり出題傾向がはっきりしています。

中小企業経営では「経済センサス」や「法人企業統計調査年報」からかなり出題されます(5~7問)。

それらの調査で問われるのは、業種別の中小企業の動向です。

その問い方は、選択肢で「建設業の事業所は増加傾向にある」「建設業の事業所は減少傾向にある」などと傾向を問う問題と、「全企業に占める中小企業の従業者総数は、全体の約50%、付加価値額は全体の約70%を占めている。」などと、数値の正誤を問う問題まであります。

かなり細かい理解が必要です。

また、中小企業政策では「中小企業基本法」「下請代金支払遅延等防止法」「商店街」「信用保証」「海外進出」など、中小企業にとって最も身近なテーマが定番になっています。

中小企業政策で問われるのは、支援の対象者の基準や、法律の規制内容などです。

例えば、中小企業基本法で規定する小規模事業者の基準を問う問題では、「時使用する従業員数が20人のパン製造業(資本金 1 千万円)は、小規模企業者に該当する。」「常時使用する従業員数が8人の野菜卸売業(資本金 1 百万円)は、小規模企業者に該当する。」などの、数値を伴う内容が多く問われます。

中小企業経営の勉強法

中小企業経営・政策科目の勉強法には、定番の方法があります。

①中小企業白書と中小企業施策ガイドブックがバイブル

中小企業経営の現状を把握するためには、「中小企業白書」、中小企業に対する支援施策は「中小企業施策利用ガイドブック」が定番の教材です。

それぞれ、中小企業庁のホームページから公開されています。

【参考】中小企業庁 中小企業白書

【参考】中小企業庁 中小企業施策利用ガイドブック

②まずは、体系を理解し、定番テーマから攻める

中小企業白書や中小企業施策利用ガイドブックの目次を概観し、調査や支援施策の大まかな体系を理解します。

その後、その体系のどの位置にどんな調査や施策があるかを確認します。

例えば、中小企業施策ではまず、「経営サポート」「金融サポート」「財務サポート」 などの大枠があることを理解し、それぞれの大枠の中に、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」などといった個別の支援施策がある事を理解します。

それらの個別の施策のうち、過去問題を元に頻出施策をリストアップします。

③最後に学習し、徹底した暗記

リストアップされた調査や施策のみを徹底的に理解しますが、膨大な資料を暗記するのは無理です。

調査は「どんな傾向になっているか」、施策は「対象」「内容」に絞ってまとめてから暗記していきましょう。

まとめ

中小企業診断士1次試験科目であるの中小企業経営・政策は、合格率が乱高下するために、難関科目と思われていますが、意外に頻出テーマが絞られており、効率的な学習が可能なことをご理解いただけたのではないでしょうか?

まずは、全体を俯瞰し、体系を理解し、頻出テーマを絞って学習していきましょう。

関連コラム:中小企業診断士は独学でも合格できる?無理?勉強法も解説

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