新たな資格にチャレンジしようと思ったら、中小企業診断士という選択肢を検討することがおすすめです。

このコラムでは、中小企業診断士の仕事内容やメリット、活躍までのステップについて詳しく解説していきます。

新しいチャレンジの第一歩を踏み出すための参考にしてくださいね。

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目次

中小企業診断士とは?役割は?

中小企業診断士とは、中小企業をターゲットとして経営課題に関する診断や助言を行う専門家のことです。

ここでは、中小企業診断士について詳しく解説します。

中小企業診断士とは?経営に関する国家資格

中小企業診断士とは、中小企業の経営に対して診断や支援を行う国家資格です。

試験に合格することで、中小企業診断士として登録できます。

全国には数多くの中小企業が存在していて、経営的なサポートを求めている中小企業は多いです。

そこで中小企業の経営者が一定の能力を持った人を選べるように、経済産業大臣が中小企業診断士を登録しています。

中小企業の経営に関するアドバイスを行うことは中小企業診断士の独占業務ではないため、資格がない人でも行えますが、資格を保有していることで客観的に実力を示せるでしょう。

中小企業診断士の役割は?経営に対して助言すること

中小企業診断士の役割は、中小企業の経営に対して助言や支援を行うことです。

近年は、感染症の影響などで数多くの中小企業がダメージを受けており、経営危機に瀕した中小企業も少なくないでしょう。

そこで、経営に関する問題点を見つけて指摘したり、解決策を提示することで、経営状況の改善に導きます。

中小企業診断士の資格を取得することで、経営に関しての専門知識が付くため、経営コンサルや企業内の経営・戦略部門で働くなど、幅広く活躍できます。

中小企業診断士の主な仕事の内容

中小企業診断士の仕事としてのプレゼン風画像

中小企業診断士の主な仕事内容は「中小企業の経営に関するコンサルティング」「分析の上で経営改善計画書・経営診断書を作成すること」「セミナーなどで専門知識を発信すること」です。

業務には、高い専門性や論理的思考力、円滑なコミュニケーション能力などが必要であり、幅広い活動が求められます。

以下では、代表的な3つの仕事内容について、それぞれ詳しく見ていきます。

①経営コンサルティング

中小企業診断士の最も代表的な仕事が経営コンサルティングと言えるでしょう。

中小企業の経営者が抱える経営課題について共通認識を持ちます。

そのうえで、課題解決に向けて必要な資源を検討し、どのようにアクションをとるかスケジュール策定を行います。

専門知識が豊富な中小企業診断士ならではの視点で、経営の改善に伴走するという仕事内容ですね。

②経営改善計画書・経営診断書の作成

各種申請に必要な書類作成においても中小企業診断士のスキルが発揮されます。

主な作成書類としては、経営改善計画書と経営診断書です。

経営改善計画書とは、将来的な経営改善を具体的な施策を用いて説明する書類で、金融機関から融資を受けるうえで必要とされる書類のひとつです。

お金の動きにダイレクトにかかわる書類なので、とても大切な仕事のひとつと言えるでしょう。

また、経営診断書という書類を作成するのも重要な役割です。

経営診断書は「産業廃棄物許可申請」の際に提出する書類のひとつです。

産業廃棄物を取り扱う中小企業の財政状態を把握し、不法投棄が行われないように書類提出が義務化されています。

なお、以上2つの書類の作成は中小企業診断士しかできないものです。

③専門知識の発信

経営に関する専門知識が豊富な中小企業診断士は、その知識を発信する仕事も含まれています。

例えば、中小企業と顧問契約を結び、企業からの経営に関する質問に回答するという仕事です。

また、経営層を対象としたセミナーなどで情報発信を行う中小企業診断士もいます。

経営課題の個々のケースに対応するだけでなく、広く情報発信をすることで経営改善へアプローチできるのもやりがいと言えますね。

中小企業診断士は何ができる?できることは?活躍の場や活かし方

本章では、中小企業診断士として活躍するフィールドや資格の活かし方について紹介します。

経営コンサルタント

中小企業診断士の資格を活かした職業に「経営コンサルタント」があります。

独立開業で自分の事務所を構え、経営者を兼ねながらコンサルティング業務を行う人もいれば、コンサルティング業界に就職してコンサルタントとして活躍する人もいます。

いずれにしても、中小企業の経営者とともに企業を動かし、大きな達成感を味わえる活躍ができますよ。

会計事務所、税理士事務所

会計士や税理士といった「仕業」に関する事務所への就職も、中小企業診断士として活躍するルートのひとつと言えるでしょう。

前述したとおり、中小企業診断士の出題範囲には「財務・会計」が含まれており、会計士や税理士の扱うフィールドと非常に親和性が高いです。

企業のコーポレート部門

経営戦略に精通した人材である中小企業診断士は、企業の中枢を支えるポジションとして活躍することもできます。

総務部や管理部といった企業成長に重要な役割を果たすフィールドで、経営的な視点をもってリーダーシップを発揮して活躍できるでしょう。

転職に限らず、社内昇進・異動にもポジティブに影響する資格ですね。

中小企業診断士になるまでのステップ

本章では、中小企業診断士になるまでのステップを詳しく解説していきます。

いくつかのルートがある中で、ここでは代表的なルートについて紹介します。

代表的なルートでは、中小企業診断士になるまでには2つのステップがあります。

①中小企業診断士試験に合格する

②実務補習を受ける

それぞれのステップを詳しく解説するので参考にしてくださいね。

①中小企業診断士試験に合格する

まずは資格試験に合格することが必須です。

試験は一次試験、二次試験(筆記試験)、二次試験(口述試験)という形で構成されています。

②実務補習を受ける

資格試験に合格できたら、最後のステップに入ります。

中小企業診断士として登録するためのステップとして、診断実務に従事するか実務補習を受講するかのいずれかが義務付けられています。

中小企業診断士の実務補習は、二次試験合格後3年以内に15日以上の受講が必要です。

実際の経営コンサルティングの場に身を置き、中小企業診断士の先輩から実践的な指導を受ける機会となっています。

中小企業診断士試験の概要

2024年中小企業診断士の試験日程や申し込みスケジュールは、以下のとおりです。

受験資格なし(学歴、年齢、国籍等による制限はなく、誰でも受験できます)
受験手数料1次試験:14,500円
2次試験:17,800円
試験スケジュール【1次試験 申込書配布・受付】2024年4月25日(木)~5月29日(水)
【1次試験】2024年8月3日(土)・4日(日)
【1次試験合格発表】2024年9月3日(火)
【2次試験 申込書配布・受付】2024年8月23日(金)~9月17日(火)
【2次試験(筆記試験)】2024年10月27日(日)
【筆記試験合格発表】2025年1月15日(水)
【2次試験(口述試験)】2025年1月26日(日)
【2次試験合格発表】2025年2月5日(水)
受験地【1次試験】札幌・仙台・東京・名古屋・金沢・大阪・広島・四国・福岡・那覇
【2次試験】札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡

参考:令和6年度の試験について

中小企業診断士試験における1次試験には、受験資格がないため、誰でも受験できます。

また、1次試験は全国10都道府県で実施されますが、2次試験の受験地は、7都道府県です。

2次試験は、1次試験に比べて受験地が少ないため、受験地まで遠い方は、あらかじめ交通手段や宿泊地などを確保しておきましょう。

ここからは、それぞれの試験について詳しく解説します。

一次試験

配点試験科目
100点経済学・経済政策
100点財務・会計
100点企業経営理論
100点運営管理(オペレーション・マネジメント)
100点経営法務
100点経営情報システム
100点中小企業経営・中小企業政策

一次試験では7科目が出題されます。

経済や財務といったお金の動きから、中小企業の経営戦略に至るまで幅広い経営知識が問われます。

例年は8月に開催されることが多くなっていますが、年度によって前後があるので注意してください。

また、合格基準は原則として「総点数の60%得点以上」かつ「1科目も40%得点未満ではない」こととされています。

7科目700点満点ということで考えると、「420点以上」かつ「全科目で40点以上」であることが合格基準と言えますね。

二次試験(筆記試験)

配点試験科目
100点中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 I
100点中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 II
100点中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 III
100点中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 IV

二次試験の筆記試験では「中小企業の診断及び助言に関する実務の事例」が出題されます。

例年10月に開催されることが多いですが、一次試験と同様で年度により変更がある可能性があるので注意してください。

合格基準は一次試験と同様、「総点数の60%得点以上」かつ「1科目も40%得点未満ではない」ことを両方満たすことです。

二次試験(口述試験)

口述試験を受験できるのは、筆記試験をクリアした受験者のみとなっています。

以下のような内容で試験が実施されます。

・中小企業の診断及び助言に関する能力を評価する

・約10分間の個人面接の形式で行われる

なお、口述試験の合格基準は「評定が60%以上」とされています。

二次試験の筆記試験と口述試験の両方で合格基準を満たすことで、中小企業診断士試験に合格できます。

中小企業診断士を取るメリット

続いては、中小企業診断士の資格を取るメリットについて考えていきましょう。

次の3つのメリットを知ることで、中小企業診断士の魅力を感じることができますよ。

経営コンサルティングへの信頼性がある

中小企業診断士の資格は、経営コンサルティングに関する唯一の国家資格です。

また、取得難易度も決して容易ではないため、資格を保持していることは経営に関する幅広い専門知識を持っている証明として大きなメリットがあります。

中小企業の経営者にとって、自分自身の企業を成長させるにあたって誰と組むかを慎重に検討することは言うまでもありません。

その検討にあたって大きな信頼感を誇るのが、中小企業診断士の資格と言えます。

経営ノウハウを得ることでキャリアの幅が広がる

資格を取得するプロセスで幅広い経営知識を手に入れることができるのも、中小企業診断士を目指すメリットのひとつです。

中小企業診断士試験の出題範囲は幅広く、試験対策において膨大な知識に触れることになります。

例えば、経済全体の動きを扱う「経済学・経済政策」や、組織経営において必要な知識となる「財務・会計」、そして中小企業ならではの経営政策に関する「中小企業経営・中小企業政策」などが出題されます。

試験対策を重ねる中で経営ノウハウが蓄積されることは言うまでもないでしょう。

結果的に、所属企業の中で経営により近いフィールドでの活躍につながったり、知識を活かして任された業務を遂行したりしやすくなると考えられますね。

年収アップにつながる

会社勤めで中小企業診断士を取得した場合、資格手当で年収アップにつながることがあります。

資格手当の相場は月1〜3万円とされており、年間12〜36万円の収入アップが見込めます。

単年で考えると決して大きな額とは言えないかもしれませんが、中長期的な視点では数百万円単位での収入アップになりますね。

中小企業診断士の年収

中小企業診断士は資格をもって会社に勤め、自社の経営の診断や指導を行っていく人と独立開業して様々な企業の診断や指導を行っていく人がいます。

そのため資格を持って会社に勤める場合と独立開業する場合とで年収を分けて解説します。

資格を持って会社に勤める場合

こちらの場合、東京都の求人を見てみると平均年収は606万円となっていることが分かります。

また、一般企業でも毎月1~3万円ほど中小企業診断士に資格手当を付与している企業も多いです。

独立開業する場合

中小企業診断協会『データでみる中小企業診断士2016年度版』によると、独立した中小企業診断士の年間売上は以下のようになっています。

回答数構成比割合
300万円以内498.88%
301~400万円以内468.33%
401~500万円以内559.96%
501~800万円以内11019.93%
801~1,000万円以内8214.86%
1,001~1,500万円以内10418.84%
1,501~2,000万円以内509.06%
2,001~2,500万円以内203.62%
2,501~3,000万円以内122.17%
3,001万円以上244.35%
合計552100.00%

これをみて分かる通り、。最頻値は501万円~800万円以内となっているので、平均年収もこの位と推測されます。

また1,000万円を超える高い売上を誇る中小企業診断士は38.04%と3分の1を超えていることが分かります。

中小企業診断士は高い年収を得ることができるので、キャリアアップにはおすすめの資格といえそうです。

中小企業診断士資格が役に立たないと言われる理由は?

中小企業診断士の資格は役に立たないという噂を聞いたことがあり、不安に感じている人もいるのではないでしょうか。

このように言われる理由は、以下の3つです。

  • 独占業務がないから
  • 年収があまり上がらない可能性があるから
  • 資格取得が仕事につながらない可能性もあるから

独占業務がないから

中小企業診断士の企業への診断・支援は独占業務ではありません。

独占業務とは資格を持つ人しかできない仕事を指し、弁護士や公認会計士には独占業務があります。

中小企業診断士には独占業務がないため、役に立たないと言われることが多いです。

しかし中小企業診断士の資格を持っていることで、専門知識があると示せるため、就職やキャリアアップに大きく役立つでしょう。

中小企業診断士は経営コンサルタントや企業内の経営・戦略部門など、活躍できるフィールドは多いです。

そのため独占業務ではないからといって、仕事がなくなることはないため、心配する必要はないでしょう。

年収があまり上がらない可能性があるから

中小企業診断士資格を取得しても、年収が大きく上がらないケースがあります。

中小企業診断士活動状況アンケート調査」によると、コンサルティング業務を行っている人の年収は、501~800万円が1番多いという結果でした。

日本人の平均年収よりは高いものの、大きく年収が上がらない人もいるのが事実です。

ただし年収が801万円を超えている人は、アンケート回答者のうち35.4%もいました。

年収1,000万円を超えるのも可能なため、資格を取得しても年収が上がらないとは限らないでしょう。

資格取得が仕事につながらない可能性もあるから

中小企業診断士の資格を取得しても、必ず仕事につながるとは限りません。

資格によって何をしなくとも仕事が増えるわけではなく、仕事を獲得するには、専門知識を活かして働く必要があります。

例えば経営コンサルタントとして転職したり、業務で結果を残してキャリアアップする必要があるでしょう。

資格を活かして働くためには、何かしらの行動を起こすことが不可欠です。

中小企業診断士に将来性がある理由

これから中小企業診断士を目指すにあたって、中小企業診断士に将来性があるかどうかは知っておきたいところですよね。

結論として、中小企業診断士は将来性のある仕事です。

その理由について紹介していきます。

数字に現れないものを扱う能力が求められる

仕事の将来性を語るうえで、その仕事がAIに取って代わられるかどうかという視点は欠かせません。

中小企業診断士が行う経営コンサルティングは、AIに代替されづらい業務と考えられています。

AIが苦手とする数値化しづらい指標、例えばブランド力や雰囲気といったものまで扱うのが経営コンサルティングです。

そのため、人間ならではの購買や判断に影響する「見えない力」をどう考えるかが大切になってきます。

経営者との高度かつ繊細なコミュニケーションが求められる

AIの代替可能性の低さに限らず、中小企業診断士の将来性は依然高いと考えられます。

経営コンサルティングを担ううえで、経営者とは多くのコミュニケーションをとっていくことになりますよね。

経営者が自分の経営する企業を成長させたいのは言うまでもありません。

しかしながら、やみくもに企業を成長させたいわけではなく、経営者自身の「思い」を企業経営で表現しているとも言えます。

言い換えると、経営者は企業経営をとおして自己実現や社会貢献を目指しているのです。

そのため、経営者は目先の利益に走らずに、あえて第2・第3の手段を講じることもあるでしょう。

経営者との高度かつ繊細な意思疎通を経て、経営者の思いをのせた企業経営を支えるのが中小企業診断士です。

高度なスキルと経験が必要となる中小企業診断士は、今後もニーズが高まり続けると考えられます。

※関連コラム:中小企業診断士は将来性・需要がある?AIに代替されないかを考察

中小企業診断士のよくある疑問

中小企業診断士の資格を取得するにあたって、よくある疑問をまとめてみました。

試験に合格するまでに必要な勉強時間・期間は?

中小企業診断士試験に合格するためには、約1000時間の勉強時間が必要です。

関連コラム:中小企業診断士の合格に必要な勉強時間の目安は?科目別の時間配分も解説

中小企業診断士試験の難易度は?

中小企業診断士は、合格率が低い部類と言えます。

合格までに必要な勉強時間も多く、簡単な試験ではありません。

関連コラム:中小企業診断士の難易度ランキング!他資格と合格率や勉強時間を比較

独学でも合格できる?

独学でも無理ではありませんが、より確実・効率的に目指すなら通信講座の活用がおすすめです。

関連コラム:中小企業診断士は独学だと無理?独学だと難しいのはこんな人

まとめ

本コラムでは、中小企業診断士の仕事内容や役割、年収などを詳しく解説しました。

中小企業診断士とは、中小企業の経営に対して診断や支援を行う国家資格です。

中小企業の経営に対して助言や支援を行う役割を担います。

主な仕事内容は以下のとおりです。

  • 中小企業の経営に関するコンサルティング
  • 経営改善計画書・経営診断書を作成
  • セミナーなどで専門知識を発信

中小企業診断士になるためには、まずは中小企業診断士試験に合格する必要があります。

ぜひアガルートの講座を利用して、最短合格を目指してみてください。

この記事の監修者:三戸部裕司 講師

三戸部 裕司

2015年 国家総合職試験合格
2016年 東京大学 教育学部卒業
2022年 中小企業診断士試験合格
自身も働きながら中小企業診断士試験に合格。
その経験を元に社会人でも合格可能な、効率的で無駄のない講座を実施している。

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