司法試験・予備試験の科目別の難易度や問題数は?難しい科目はどれ?
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これから司法試験・予備試験に挑戦したいという方にとって、どのような試験科目が出題されるのかは気になるところだと思います。
そこで本コラムでは、司法試験8科目と予備試験10科目の概要や難易度について、アガルートアカデミーの司法試験講師「富川純樹講師」が解説していきます。
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司法試験の科目
司法試験は、短答式試験と論文式試験の2つの試験があり、短答式試験に合格しなければ論文式試験に進めません。
司法試験には「免除」という制度がないため、論文式試験で不合格になった場合、翌年はまた短答式試験から受験する必要があります。
司法試験 短答式試験の科目について
司法試験の短答式試験は、民法、憲法、刑法から出題されます。
民法は75点、憲法と刑法は50点の系175点満点です。
試験時間は、民法75分、憲法と刑法が50分。
出題数は、民法が30〜38問程、憲法と刑法は20〜25問程となっています。
司法試験 論文式試験の科目について
司法試験の論文式試験の試験科目は、公法系2科目(憲法、行政法)、民事系3科目(民法、商法、民事訴訟法)、刑事系2科目(刑法、刑事訴訟法)及び選択科目1科目(倒産法・租税法・経済法・知的財産法・労働法・環境法・国際関係法(公法系)・国際関係法(私法系)から1科目)の合計8科目になります。
配点はすべて100点満点で合計800点満点。
試験時間は、選択科目が3時間、他の7科目が2時間です。
予備試験の科目
予備試験は、短答式試験、論文式試験、口述試験の3つの試験があり、順番に合格していかないと次の試験に進むことができません。
予備試験も司法試験同様に「免除」という制度がありませんので、どこの段階(短答、論文、口述)で不合格になっても、翌年は短答式試験から受験しなければなりません。
予備試験 短答式試験の科目について
憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法(以下、この7科目を合わせて「法律基本科目」といいます。)と一般教養科目です。
法律科目は各30点、一般教養科目は60点の合計270点満点です。
憲法、行政法が合わせて1時間、民法、商法、民事訴訟法が合わせて1時間30分、刑法、刑事訴訟法が合わせて1時間、一般教養科目が1時間30分となっています。
なお、短答式試験は、1日で実施されます。
法律基本科目は、それぞれ10問から15問出題。
一般教養科目は40問程度の問題から20問を選択します。
予備試験 論文式試験の科目について
論文式試験の試験科目は、法律基本科目のほか、選択科目、民事実務基礎科目、刑事実務基礎科目の合計10科目です。
配点は全科目50点満点の合計500点。
憲法、行政法が合わせて2時間20分、民法、商法、民事訴訟法が合わせて3時間30分、刑法、刑事訴訟法が合わせて2時間20分、選択科目が1時間10分程度、法律事務基礎科目が民事、刑事合わせて3時間となっています。
なお、論文式試験は2日間で実施されます。
各科目1問ずつ出題されます。
予備試験 口述試験の科目について
法律実務基礎科目(民事、刑事)が試験科目であるとされていますが、法律基本科目(民事では、民法、商法、民事訴訟法。刑事では、刑法、刑事訴訟法)の知識・理解も問われているようです(口述試験については、法務省から出題テーマの発表があるだけで、問題が公表されていません。そのため、受験者からの再現に頼らざるを得ない状況です)。
上記のとおり口述試験では、法律実務科目の民事と刑事が出題。
両科目ともに57点から63点の間で採点され、60点が基準点とされています。
試験時間は公表されていません。
実際に受験した方のお話によると、15分程度が標準ですが、30分ほどになる方もいるようです。
口述試験は例年2日間で実施され、1日目に刑事、2日目に民事を受験する人と、1日目に民事、2日目に刑事を受験する人がいます。
試験官が簡単な事例を読み上げた後で、その事例で法的に問題となる点や関係する条文を聞いてきます。
問題数については、一概にはいえないのですが、端的に条文を指摘するだけの問題を含めると、民事刑事ともに概ね20項目程度になるようです。
司法試験・予備試験の科目ごとの問題数
科目ごとの問題数をまとめると、以下の通りです。
司法試験の問題数
試験 | 科目 | 問題数 |
短答式 | 民法 | 30〜38問程 |
短答式 | 憲法 | 20〜25問程 |
短答式 | 刑法 | 20〜25問程 |
論文式 | 公法系科目(憲法・行政法) | 2問 |
論文式 | 民事系科目(民法・商法・民事訴訟法) | 3問 |
論文式 | 刑事系科目(刑法・刑事訴訟法) | 2問 |
論文式 | 選択科目 | 2問 |
予備試験の問題数
試験 | 科目 | 問題数 |
短答式 | 憲法・行政法・民法・ 商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法 | 各10~15問 |
短答式 | 一般教養科目 | 40問程度の問題から20問を選択 |
論文式 | 憲法・行政法・民法・ 商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法・選択科目・民事実務基礎科目・刑事実務基礎科目 | 各1問(計10問) |
司法試験・予備試験の科目ごとの概要と難易度
【司法試験・予備試験】憲法の概要と難易度
司法試験、予備試験の憲法は具体的な事例に表れた規制の憲法適合性が問われます。
憲法は判例を軸に解答していくことになるため、受験生にとって素材判例が明らかな場合(予備であれば令和元年、司法であれば平成30年など)は難易度が比較的下がり、素材判例が明らかでない場合(予備平成28年など)は難易度が高くなる傾向にあります。
【司法試験・予備試験】行政法の概要と難易度
司法試験、予備試験の行政法ですが、予備試験は救済法、作用法からバランスよく出題され出題形式についても特に癖はありません。
司法試験では設問に加えていわゆる誘導文が存在するため、誘導文をヒントに解答してくことになることろが特徴です。
行政法も憲法と同様判例を軸に解答していくことになるため、受験生にとって馴染みの薄い判例が素材となった場合には難易度が高くなる傾向にあります。
【司法試験・予備試験】民法の概要と難易度
司法試験、予備試験の民法ですが、出題形式としては「甲の乙に対する請求は認められるか」といった当事者の請求の可否を問う形が基本となります。
昔に比べると問われている点は分かりやすくなったように思われますが、予備試験で法定地上権(令和元年)、司法試験では隣地通行(令和2年)など論文対策が手薄になりがちな分野からの出題があり、受験生にとってはなお難易度が高い科目となります。
【司法試験・予備試験】商法の概要と難易度
司法試験、予備試験の商法は基本的には会社法分野からの出題が中心ですが、予備試験では商法、手形分野からの出題があることが特徴です。
会社法は条文が非常に多く、細かな部分からの出題もあることから苦手な受験生も多いと思いますが、問われていることは明確なので条文との付き合い方をマスターすれば一気に得点源になると思われます。
【司法試験・予備試験】民事訴訟法の概要と難易度
司法試験、予備試験の民事訴訟法ですが、行政法と同様いわゆる誘導文がありますので、誘導分をヒントに解答してくことになります。
民事訴訟法は、いわゆる「あてはめ」といわれる部分が他の科目に比して少ないため、知識の量及び深さの勝負になる傾向にあります。
司法試験、予備試験ともにかなり深い理解が問われているため難しい科目といえるでしょう。
【司法試験・予備試験】刑法の概要と難易度
司法試験、予備試験の刑法ですが、出題の傾向について少し違いがあります。
予備試験は「甲及び乙の罪責について論じなさい」というオーソドックスな出題ですが、司法試験では「○○の立場からはどのような説明が考えられるか」「△△の立場からはどのような説明が考えられるか」という形で自己のとる見解以外からの論述が求められる点に特徴があります。
オーソドックスな出題が続く予備試験については多くの受験生にとって取り組みやすい科目になると思いますが、司法試験については自説以外の知識が求められる点で難易度が高いと感じる受験生は多いと思います。
【司法試験・予備試験】刑事訴訟法の概要と難易度
司法試験、予備試験の刑事訴訟法ですが、基本的には捜査、公判から満遍なく出題されますが、予備試験ではいずれか一方の場合もあります。
出題の形式及び出題分野もある程度固まっており、受験生にとっては取り組みやすい科目であると思われます。
ただ、令和元年の司法試験では刑法と同様、自己の見解とは異なる立場からの立論が求められる出題がされていますので、今後出題傾向に変化があるかもしれません。
【予備試験】民事実務基礎科目の概要と難易度
民事実務基礎科目は、要件事実、事実認定、保全・執行、法曹倫理からの出題である程度固まっています。
出題分野や出題傾向が固まっている点からすれば取り組みやすいようにも思いますが、必ず出題されている要件事実は他の科目と異なり緻密な記憶が要求されるため、受験生にとっては難しいと感じることが多いと思います。
【予備試験】刑事実務基礎科目の概要と難易度
刑事実務科目は、身柄に関する手続、刑事第一審手続、事実認定、証拠法、法曹倫理からの出題である程度固まっています。
基本的には刑法、刑事訴訟法の知識が要求されるのですが、実体法科目として学習する部分とは異なる範囲(保釈、公判前整理手続など)からの出題が多いため受験生にとっては難しいと感じることが多いと思います。
どのような順番で勉強を進めれば良い?
短答式に合格した人が、論文式を受験できるんだから、まずは短答式の勉強からはじめないとダメなのでは?と思うかもしれません。
しかしこれは逆なのです。
短答式試験は、知識の正確性を中心に問う試験ですが、論文式試験は知識の多寡を問うよりも、基本的な知識からの応用力を問うという傾向にあります。
そのため、論文式試験で問われる知識と短答式試験で問われる知識の範囲では、短答式試験で問われる範囲が論文式試験で問われる範囲を包含する関係にあります。
そのため、まずは論文式試験の勉強をして核となる知識及び法的な思考方法を身に着けてから、細かめの短答プロパー知識を勉強するのが効率的です。
以上のような理由から勉強は論文の勉強からはじめることをお勧めします。
どの科目から勉強すべき?
上記のとおり予備試験には沢山の科目があるため、どの科目から勉強すればいいの?と思われるかもしれません。
この点について私は、『民法』から勉強することをお勧めしています。
民法は、売買契約や、賃貸借契約など、ある程度生活に密着した事柄を扱うため、具体的な事例をイメージしやすいと考えているからです。
勉強の方針
法律の勉強を始めたばかりの頃は本当に分からないことだらけなので、やる気を失ってしまうかもしれません。
ただ、法律は難しいため、1回で分からなくても気にする必要ありません。
大切なのはとにかく何度も何度も繰り返すことです。
何度も繰り返しているうちに、分からなかったことが少しずつ分かってきます。
普通の合格者は、すべての知識を完璧に理解してきれない間に受かっていきます。
それは論文式試験の合格点が200点台を推移していることが物語っています。
そのため、勉強をはじめたばかりの人が理解できないのは当然のことであるため、とにかく少しでも前に前に勉強を進めて欲しいと思っています。
効率よく学習をしたいという方には、予備校の利用をお勧めします。
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富川 純樹 講師
関西学院大学法科大学院(未修)を卒業後,平成27年に司法試験に合格(69期)。
アガルートアカデミーでは,ラウンジ(個別指導)や受験生の受講相談も担当している。
富川講師の紹介はこちら
Twitter:@dsx79079