司法試験・予備試験ではたくさんの量の文章を書くことになります。

したがって、合格するにはより論理的で美しい文章を書かなければなりません。

では、司法試験・予備試験に合格するのに必要な文章力はどの程度のものなのでしょうか。

どのように身に付けていけば良いのでしょうか。

本コラムでは、司法試験・予備試験合格のための文章力について考察していきたいと思います。

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司法試験・予備試験合格に必要な文章力とは?

論文式試験の勉強を始めてみると、想像以上に文章を書くということが難しいことに気付くと思います。

中には手ごたえがなかなか得られずに焦ってしまう人もいるかもしれません。

しかし、論文式試験では芸術的で独創的な文章を書く必要は全くないのです。

法律論文答案で重要なのは「筋が通っていること」です。

論理的で明快な文章を書ければよく、センスのようなものは(もちろんあるに越したことはないですが)なくても合格はできます。

論理的で明快な文章とは?

では論理的で明快な文章とはどんな文章か。

代表的な特徴は以下の7つです。

① 一文が短い

ダラダラとした文章は読み手に読む気を失わせます。

論理的な文章とは常にワンセンテンスワンテーマです。

② ナンバリングが適切である

ナンバリングとは段落分けのことです。

段落分けは「ここではこのテーマについて書いていますよ」というアピールなので、あるのとないのとでは読みやすさが格段に変わります。

もっとも、過度なインデントは採点実感で度々指摘されていることなので気を付けましょう。

③ 接続詞を効果的に使う

論理的な文章を書くにあたっては、接続詞を上手く使いこなすことは非常に重要です。

たとえば、ひとつの文章に対して逆説を2回使うのは基本的にNGとされています。

また、同じ接続詞を繰り返し使うのはどこか子供じみて見えてしまうので、同じ順説でも「したがって」「よって」など上手く使い分けると良い文章になります。

④ 法的三段論法を徹底している

法律論文答案を書く際の骨組みとなるのはいつも三段論法です。

三段論法とは、

(前提1)Aは、Bである。 
(前提2)Cは、Aである。
(結論)Cは、Bである。

という論理構造による思考回路をいいます。

法律の世界は「要件」と「効果」です。

そのため、「要件」(前提1)を満たす具体的事実(前提2)があって初めて効果(結論)を導くことが出来るという三段論法の思考回路が有用なのです。

法律答案を書くときにはこの前提1を立てる作業を「規範定立」、前提2を書く作業を「あてはめ」と言います。

具体的には、以下のように文章を組み立てていきます。

(前提1)「人を殺す」行為には殺人罪が成立する
(前提2)甲は、人を殺した
(結論)Aの行為には殺人罪が成立する

以上は殺人罪が成立するか否かの論証ですが、実際に答案を書くときには「人を殺す」とはいかなる行為を言うのかを解釈した上で、はたして甲の行為が「人を殺す」行為に当たるのかをあてはめていく、というように緻密に三段論法を組み立てていくことになります。

⑤ 問題提起をする

問題提起とはたとえば、「甲の行為には殺人罪が成立するか」というようにこれから論証していくことの核心を提示することです。

最初に問題提起をすることで「今何を解決しようとしているのか」を明確にすることができます。

法律論文答案は複雑で、書いているうちに迷子になる時があります。

そんな時、最初に問題提起をしてあげると着地点が明確になり、論理が錯綜することを回避できます。

⑥ あてはめを充実させる

今までの話をまとめると、法律答案は「問題提起」→「規範定立」→「あてはめ」→「結論」の順番で書くべきであるということがいえます。

その中でも答案の善し悪しを左右するのは「あてはめ」だといわれます。

なぜなら「あてはめ」に一番書き手の個性が発揮されるからです。

問題提起や規範定立はある程度勉強していれば誰もが同じようなことを書きます。

これに対してあてはめとは、問題文中の事実に自分なりの評価を加えていく作業です。

事実の抽出とそれに対する評価に書き手の個性が現れます。

いいあてはめは経験を積むことによってしか出来るようになりません。

だからこそ過去問演習が重要なのです。

⑦ 当たり前のことを書く

文章を書くということは、自分の思考を言葉にして表現するということです。

すなわち、文章を書く際には「考える」→「言葉にする」→「文字にする」という過程を経ることになります。

自分の頭で考えたことを100%そのままの形で正確に、自分以外の誰かに伝えるということは思いのほか難しいです。

自分では当たり前だと思っていた重要な前提を、ついすっ飛ばして話を進めてしまうという経験はないでしょうか?

それと同じことが答案を書くうえでも起こりがちです。

「当たり前のことを書く」このことは意外と大事です。

特に、学習を進めていって「慣れ」が出てくるほど、当たり前のことを軽視してしまいます。

※関連コラム:司法試験・予備試験の論文式試験の勉強法(総論)

文章力が低くても、論文式試験に特化した書き方ができれば合格できる?

以上にあげた7つの特徴を抑えている答案が「いい答案」です。

そして、この7つの特徴は決してセンスが必要だとかそういった難しいことではありません。

意識すれば誰にでも出来ます。

「文章力がない」と悩んでいる方は今いちど自分の答案を見てみてください。

先の7つの点を意識して書かれていますか?

思うような成果がでないと、「自分はセンスがない」「頭の出来が違うんだ」と落ち込んでしまうかもしれませんが、「文章力」が高い方というのは多くの場合天才とかではなく、先に述べたような細かな点を意識して答案を書いている方のことです。

「文章力」がないと思う原因は勉強不足か、あるいは先述の7つの点を意識せずになんとなくそれっぽい文章を書いてしまっていることがほとんどです。

つまり、「文章力」とは何か潜在的な能力などではなく、文章作成のちょっとした工夫です。

したがって法律答案に関係のない「文章力一般」をあげる練習のようなものは全く必要ありません。

必要なのはリーガルライティングです。

ではどうすればいいか。

まず「何を書いたらいいか分からない」状態の方は単純に勉強不足なので、インプットを充実させましょう。

「書くべきことは分かるのに答案の評価が低い」という方は過去問演習を徹底してください。

ただし、書きっぱなしでは何も変わりません。

書くたびに先述した7つのポイントを抑えられているか、自分でチェックしましょう。

そのあとに、可能であれば第三者に添削してもらいましょう。

リーガルライティング力の高め方 まとめ

以上のことをまとめると、文章力を高めるには以下のような勉強を行うべきです。

1. まずは最低限の答案を書けるだけインプット
2. 7つの点を意識して起案
   ①一文は短く
   ②ナンバリング
   ③接続詞
   ④三段論法
   ⑤問題提起
   ⑥あてはめ重視
   ⑦当たり前を書く
3. 書いた答案を自己分析
4. 添削してもらう

起案をするのには過去問が一番良い教材ですが、難しすぎると感じる場合は演習本などで慣れてからの方が良いかもしれません。

とにかく起案は練習あるのみです。

がんばりましょう!

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