司法試験の短答では判例の細かい知識が問われ、また論文では判例をモデルとした事案が出題されることが多く、司法試験に立ち向かうためには判例知識が必須です。

「憲法の判例の表現には、抽象的で難解なものが多く、一人で読むのは難しい」「判例を読んだはいいが、結局どの判例に依拠して答案を書いたらいいのか分からない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか？

そのような受験生にオススメしたいのが、「精読憲法判例」です。

このコラムでは、司法試験に向けた「精読憲法判例」の活用方法について解説していきます。

精読憲法判例の内容と特徴

「判例百選」等、他にも憲法判例の解説本はありますが「精読憲法判例」は判例の全文を掲載しているため、学習者が後回しにしやすい事案の概要や理由付けについても、細かく読み込める点を特徴としています。

また、事案と判旨を理解しやすいよう、判決の論理構造についての解説や簡単な問い、各段落についての解説を設けてあります。

「全文掲載だとかえって読みにくいのでは？」と不安に思う方もいるかもしれません。

ですが、事実関係や判決の内容について、簡単な問いが設定されており、初学者であっても、この問いをヒントに読み進めることができるよう工夫されています。

また、判例相互の関係性をつかむために、テーマごとに各判例の位置づけについて解説しています。

これにより、学説の状況を踏まえた判例の展開を把握でき、ウォームアップをしてから各判例の読み込みに入れるという点も本書の長所といえます。

司法試験の勉強での使い方

ここからは、「精読憲法判例」の司法試験の勉強での使い方について解説していきます。

基本的な利用方法

まずは【Navigator】と【論理構造】を見て、判例の大体の流れや要旨を先に把握しましょう。

その後【Questions】と【事案】【判決/決定】を同時並行で読んでいきます。

【Questions】には、問いの答えがある段落番号がヒントとして記載されているので、その段落に着目しながら【事案】と【判決/決定】を読むことで、テンポよく読み進めていくことができます。

さらに深く検討したいという方は、【補足説明】や【Questions】の応用問題を通じ、判例の妥当性や射程等についても考えてみましょう。

短答式試験対策としての活用法

短答式試験では、判例の結論を知っているだけでは足りず、結論に至るまでの理由付けや細かな言い回しについて注意して学習できているか、判例相互の関係性を理解できているかが問われます。

精読憲法判例では、判旨・決定要旨の全文が掲載されているため、判例の理由付けや細かな表現についても網羅的に読み込むことができます。

特に重要な部分には網掛けがされており、また【Questions】による補助もあるため、一人では判例の読み方が分からず不安という方にも取り組みやすいです。

判例相互の関係性についても、各テーマ毎に学説の状況と判例の展開をまとめたページを読むことで、理解が捗ります。

論文式試験対策としての活用法

論文式試験では、モデルとなった判例の事案との違いを踏まえて、判例の射程を検討することが求められています。

精読憲法判例では、【Questions】と【事案】【判決/決定】を並行して読むことを通じ、事案と判旨・決定要旨の的確な理解を得ることができます。

また、判決/決定理由の各段落ごとに、調査官解説に準拠した解説が記載されており、いかなる事情がどのように結論に影響したのかという点についても意識的に読み進めることができます。

精読憲法判例の評価

本書は下記の点で非常におすすめできる判例解説書です。

• 判例の内容を適切に理解できるよう、学習の指針を示している点
• 判決/決定の段落ごとに詳細な解説を設けている点

本書を利用すれば、基本的な判例について一から丁寧に検討するができるため、憲法判例の読み方が分からないという初学者にはもちろんのこと、重要判例については一通り知っているという中級～上級者にとっても、今一度判例を深く理解するツールとしておすすめです。

試験対策との関係でも、本書を使って判例への深い理解を得ることは非常に有効といえます。

「精読憲法判例」を利用して、判決・決定の理由付けや各判例のつながりを意識した学習を通じ、ぜひ憲法判例を自分のものにしましょう！