多くの法科大学院(ロースクール)は、法律の能力を測る筆記試験の点数のみならず、大学の成績や、外国語の能力、そして志願理由書の内容を総合考慮して合否の判定をしています。

例えば、慶應義塾大学法科大学院既修者コースでは合否判定において、法律知識を図る筆記試験を80%、その他提出書類を20%の割合で考慮するということが明示されています(2020年度実施入学試験要綱参照)。

このように、法科大学院入試というと一見法律の能力のみが問われるものと思われがちですが、志望理由書等の提出書類も甘く見てはいけません。

そこで、このコラムで、志望理由書の内容とその対策を確認していきましょう。

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法科大学院(ロースクール)の志望理由書(ステートメント)とは?

法科大学院の志望理由書とは一言で言うと大学院に対して、その大学院を志望する理由や自己PRをする書面です。

つまり、筆記試験での実力とは別に、志願者の熱意やその人の能力、いままでの経験等を図るためのものです。

志望理由書は、ステートメント(ステメン)などと呼ばれることもあります。

志望理由書に書くべき内容

それぞれの大学院で、志望理由書に書くべき内容は変わってきます(自分の受験する法科大学院の入試要項で書くべきテーマを確認してみましょう)。

そのなかでも多くの大学院で書くことが要求されていることを二つに大別すると

①なぜその大学院を志望するのか
②自分がその大学院に入学するのにふさわしい人物であることのアピール

のふたつです。

①のポイントは、当該大学院固有の特徴をしっかりと記載することです。

例えば、漠然と「法律の能力を高めたい」や「法曹になりたい」といった旨の事を記載しても、他の法科大学院でもいいよね?となってしまいます。

そこで、その大学院でしかできないことを調べておくことが大切です。

例えば、自分の関心分野の著名な先生が在籍しているとか、他に無いエクスターンなどの経験が積めるなど、具体的に書けるといいかと思います。

そして②のポイントについては、原体験や自分の特徴(長所でも短所でもいい)を、①に着地させるように書くことです。

ただ単に自分がいかに素晴らしい人間かを長々と書くよりも、「こういう能力を身に付けるようにいままで活動してきて、将来こういう弁護士になりたい。そのためには、この法科大学院でこういう経験をしたい。」といった形にすると、その法科大学院にふさわしい人物であることがアピールできると思います。

また①に加えて、そもそも法曹を目指したきっかけを書くことが求められる場合もあります。

法曹を目指した具体的なエピソードがあればそれを書くのがよいでしょうが、多くの人はエピソードなど無い場合がほとんどです。

無理に捏造せず、素直に、法曹を目指し始めたころのことを思い出して書けば足りると思います。

既修コースと未修コースの内容の違い

法科大学院の多くは、法律既修者コースと法律未修者コースに分かれます。

前者は入学前にも法律の勉強をしていた者(法学部卒業に限られない)の入学を想定しており、後者は法律の勉強をしていない者の入学を想定しています。

どちらの入試形態であっても、多くの法科大学院は志望理由書の提出を求めています。

法学既修者コースの場合には、いままでの法律を勉強してきた過程のことを書くように求められます。

未修者コースの場合は、法律以外の分野で何を経験してきたか、法科大学院で法律を学ぶ資質があるかということを検討する観点から志望理由書のテーマが設定されている場合がほとんどです。

多様なバックグラウンドの志願者を受け入れるという観点から法学未修者コースを開設している以上、今までの経験を無理に直接法律に関連付ける必要はありません。

少なくとも入学以後に法律家として活躍できる資質があることをアピールできれば良いでしょう。

※関連コラム:法科大学院(ロースクール)入試の対策・試験科目・勉強方法を解説

志望理由書を作成する準備

準備にはふたつの過程があります。

まず①記載する内容を集める段階と、②実際に書くという段階です。

志望理由も単に公表されているパンフレットの内容を書くだけでなく実際にキャンパスに足を運んだ感想であるとか、実際に通っている先輩の声を聞いて志望するに至ったなどということが書けるとより深みのある内容になると思います。

そのため、①の段階では、記載する内容を集めるという作業をすることで、より充実した志望理由書になるでしょう。

次に実際に書いていくのですが、できれば完成したものを他人に見てもらいましょう。

客観的に指摘されることで初めて気が付くことも多くあるはずです。

法科大学院入試を経験した先輩に見てもらったり、予備校を利用することをお勧めします。

※関連コラム:法科大学院受験の面接ってどんな感じ?質問内容と対処法

志望理由書の作成スケジュール

例年、法科大学院入試は夏ごろから始まります。

基本的には各法科大学院の提出期限までに提出できれば問題ないのですが、一点気を付けなくてはならないのは予備試験のスケジュールとの関係です。

予備試験の短答式試験が7月中旬に実施されます。

そのため、この直前期に志望理由書に作成に忙殺されるということは避けたいです。

そこで、予備試験との併願を考えている方は提出期限をチェックして予備試験の直前は予備試験の勉強に注力できるように余裕をもって準備しましょう。

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この記事の監修者 谷山 政司 講師

谷山 政司 講師

平成23年度に(新)司法試験に合格後、伊藤塾にて主に予備試験ゼミを中心とした受験指導業務を担当。
谷山ゼミ受講者のうち、およそ70名ほどが予備試験に合格。谷山ゼミ出身者で、最終的な予備試験の合格率は7割を超える。

自身の受験経験だけでなく、答案の徹底的な分析やゼミ生への丁寧なカウンセリングの結果確立した論文作成ノウハウをもとに、アウトプットの仕方はもちろん、インプットの仕方までをも指導するスタイルは、ゼミ生の圧倒的支持を受けた。

また、期をまたいだゼミ生の交流会等を定期的に行うなど、実務に出た後のフォローも積極的に行っている。

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ブログ:「谷山政司のブログ」
Twitter:@taniyan0924

 

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