司法試験の選択科目を何にしようか迷っていませんか?
色々あるけど何が自分に合っているか分からない、どうやって決めたらいいか分からないなど漠然とした不安があるかと思います。

そこで、今回は選択科目のひとつ、『租税法』の特徴やその勉強法を紹介します。

これを読んで少しでも司法試験の選択科目の決定に役立てば幸いです。
また、既に租税法を学ぶことを決めている方や、最近学び始めた方にも有益な情報を提供します。

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租税法の特徴

租税法の問題は、所得税法がメインで、所得税法と関係する範囲で法人税法及び国税通則法からも出題されます。

企業にとって租税についての問題は重大な関心事であるので、租税法は実務上極めて重要です。

また、特に弁護士になった後は、個人事業主となることが多く確定申告を自ら行う必要が出てきますが、その際にも租税法の知識があると助かるでしょう。

租税法は、税に関する法律であるので、法改正が頻繁にされるという特徴がありますが、司法試験の出題にはあまり影響しないので安心してください。

租税法を選択する者の割合は、司法試験では約7%程度、予備試験では5%程度と少なく、いずれも受験者数第6位の科目となっています。
したがって受験生同士の情報交換にはやや苦労するかもしれません。

しかし、租税について深く理解している法曹はそれほど多くなく、興味をもって学習すれば大きなアドバンテージになることでしょう。
特に、ある取引をする際に、税法的な観点からアドバイスをすることができると、企業のお客様たちには重宝されます。

租税法の勉強法

試験で問われること

租税法の試験では、所得税法とそれに関係する限度で法人税法及び国税通則法から2題出題されます。

そのうちメインの出題範囲となるのは所得税法です。
さらに、その所得税法の中でも「所得分類」の問題が頻出です。

令和4年度から予備試験の選択科目として出題された租税法の論文試験においても、このような傾向が顕著であり、5つの小問中、所得税法からの出題が4問で、そのうちの3問において所得分類に関係する問題が出題されています。

また、解答に当たって「根拠条文と理由を付して答えなさい」や「最高裁判所の判例を参考にして」などの指示が付されていることが多いです。

特に、司法試験の採点実感を読むと、判例に言及することが求められた設問においては、事件名まで答案に記載することが求められていることが分かります。

さらに、租税法の試験の問題文には、参照条文として所得税法施行令等が掲載されていることが多いです。

この参照条文を読むと検討するべき所得税法等の条文が分かりますので、検討すべき条文を外してしまうことが少ないのも租税法の特徴といえるでしょう。

効率的な勉強法

租税法の試験においては、近年は法人税法からの出題割合が増えつつありますが、依然として所得税法からの出題がメインになります。
したがって、まずは所得税法をマスターすることから勉強を始めていきましょう。

その上で、法人税法との異同を意識して関連法令の勉強を深めていくのが効率的です。

また、租税法は選択者が少ないうえに、教材も充実しているとは言い難い科目です。
したがって、独学よりも予備校などを利用して勉強することをオススメします。

租税法は、他の選択科目に比べれば覚えることが比較的少ないため、暗記を苦手とする方にも向いているといえます。

さらに、租税法は学説上の争いは少なく、判例を正確に理解すれば合格答案を書くことができることも多いです。

そのため、判例の学習は必須といえます。

※関連コラム:【司法試験・予備試験】選択科目ごとの合格率・難易度を解説!

租税法のおすすめ基本書

『スタンダード所得税法 第4版』(弘文堂・佐藤英明)・『スタンダード法人税法 第3版』(弘文堂・渡辺徹也)


※引用:amazon


※引用:amazon

司法試験の租税法においては、裁判例の規範を用いて具体的事案を処理することが求められています。本書ではケースメソッドが用いられ、解説も裁判例の立場からなされており、その範囲も司法試験対策として過不足がないと言えますし、その他司法試験を意識した記述がちりばめられています。
そのため、本書は司法試験対策に強い親和性があります。
現に、上位ロースクールにおける租税法選択受験生の多くが本書を利用しているといってよいでしょう。


『租税法入門 第2版』(有斐閣・増井良啓)

※引用:amazon

『入門』本であることからして、ページ数は少ないですが、その中に租税法のエッセンスが詰めこまれており、一度租税法を学んだ人は知識を体系的に整理することができます。

租税法の意義や歴史的背景、実務慣行、経済学的分析など、必ずしも司法試験には直結しないものの、租税法への理解を深め、学問的関心を呼び起こす記述が多いといえます。
そのため、租税法への理解をより深めたい中級者以上におすすめの一冊と言えます。

※関連コラム:司法試験・予備試験におすすめの基本書50冊【15科目・目的別】

租税法が向いているか確かめるには?

テキストに目を通して興味を持てるか

選択科目を決定するに当たっては、学習のモチベーションを維持できるかが重要です。

この点、『租税』と聞いて興味を持てるのか、なんとなくめんどくさそうだなと感じるのかは意外と重要です。

まずは租税法に興味を持てそうか、司法試験の過去問を見たり、入門書に目を通してみたりして確認してみましょう。

また、租税法は覚えることが少ないため、暗記があまり得意ではないという受験生に向いているといえます。

ダブルライセンスを目指しているか

さらに、租税法は、簿記などの資格を保有している方であれば特に取り組みやすい分野でしょう。

もっとも、司法試験の問題では会計学の知識は必要とされていないので、計算が得意でなくても特段心配はいりません。

その上、租税法を学習すれば、公認会計士や税理士としての資格を取得する際にも有利に働きます。

したがって、将来これらのダブルライセンスを取得したいと考えている方にもオススメの科目です。

租税法は現在は選択者が少ないですが、積極的に興味をもって学習することで、他の人にはない自分だけの強みを身に付けることができるでしょう。

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この記事の監修者 丸野 悟史 講師

丸野 悟史 講師

平成23年に予備試験後、平成24年に司法試験合格。

司法試験合格後,司法修習開始まで及び弁護士登録後の合計約3年間にわたり,伊藤塾にてゼミ(予備試験ゼミ,特進ゼミ等)を中心に受験指導を行い,多くの予備試験合格者を輩出した。

また,司法試験科目に限られない幅広い法的知識を有し,アガルートアカデミーでは,弁理士試験の講義も担当する。

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