【司法試験・予備試験】論文式試験の民法で問われること

私人間の法的な利害関係を規律するのが民法

一般的に,民法は私法の一般法であるといわれ,具体的には私人間の法的な利害関係を規律する法律であるといえます。

例えば,売買契約が締結されたにもかかわらず買主がなかなか代金を支払わない場合,売主としてはお金を払ってほしいと考えるでしょう。

このような法律関係を一般的に規律する法律が民法なのです。

当事者の言い分を法的な主張に言い換え,その当否を検討する

平成28年司法試験の採点実感によると,民法で問われていることは,「当事者間の利害関係を法的な観点から分析し構成する能力,様々な法的主張の意義及び法律問題相互の関係を正確に理解し,それに即して論旨を展開する能力など」です。

それはすなわち,争いが生じている当事者の間の法的な関係を分析し,それぞれの言い分を法的な主張に言い換えた上で,いずれの当事者の主張を認めるべきかを検討するということです。

よって,民法の問題を解く上では,当事者が何を求めているのか,具体的にはお金を払ってほしいのか,それとも物を返してほしいのか等,当事者の生の要求を考えることが大切です。

また,これに対して,相手方がどのような生の反論をするのか,そして,その反論の法的根拠は何かを考えることが重要であることも言うまでもありません。

【司法試験・予備試験】論文式試験における民法の勉強法①~条文から議論をスタートする~

条文の重要性

民法には1044条もの条文が存在するため,憲法とは異なり,当事者の主張が認められるかどうかについて条文にそのまま書かれてあることが少なくありません。

なので,民法を勉強する際には常に六法を横において,問題となる条文を引く癖をつけることが大切です。

要件と効果を意識する

当事者の法的主張が認められるか否かを検討する際は,条文に定められている要件と効果を意識することが大切です。

例えば,不法行為に基づいて損害賠償請求をする場合,根拠となる条文は民法709条です。

そこには,①故意又は過失によって,②他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した場合,③侵害と因果関係のある,④損害が発生すれば,⑤侵害をした者は損害を賠償する責任を負うと定められています。

すなわち,①~④の要件を満たして初めて⑤の効果が生じるので,当事者の法的主張が認められるか否かは,根拠条文の要件を1つ1つ検討していけばいいのです。

なお,これは,相手方の反論を論じる際にも同様のことが言えます。

条文に直接書かれていないことは制度趣旨から考える

先ほど,当事者の主張が認められるかどうかは条文に書いてあると述べましたが,条文には直接書かれておらず,条文を解釈して初めて結論が出る問題もあります。

例えば,民法94条は,「前項の規定による意思表示の無効は,善意の第三者に対抗することができない。」と定めていますが,「善意の第三者」の具体的な範囲は民法そのものに規定されていません。

そこで,「善意の第三者」を解釈してその範囲を明らかにする必要があります。
その際に,解釈の指針となるのは条文が作られた理由,すなわち条文の制度趣旨です。

民法の問題を解く上で,条文と並んで制度趣旨は非常に重要なので,民法の勉強をするときは条文の制度趣旨を意識することを心がけましょう。

※関連コラム:司法試験・予備試験の論文式試験の勉強法(総論)

【司法試験・予備試験】論文式試験における民法の勉強法②~問題演習~

旧司法試験のススメ

基本的なインプットを一通り終えたら,さっそく問題を解いてみましょう。

各種予備校本や学者が執筆した問題集でもよいのですが,旧司法試験の問題を解いてみることをお勧めします。

なぜなら,旧司法試験は新司法試験よりも問題文の量が少なく,要件と効果を意識した答案をマスターする上で適切であることに加え,新司法試験では旧司法試験から出題されることもあるからです。

要件と効果を意識した答案を心がける

先ほども述べたように,当事者の生の要求が認められるかどうかは,根拠条文の要件を検討して結論を出すことになります。

それにもかかわらず,ついつい論点に飛びついてしまい,要件を1つ1つ丁寧に検討することを忘れてしまう人が少なくありません。

そのため,問題演習をするときは,参考答案や優秀答案を参考にしつつ,要件と効果を意識した答案作成を心がけることが大切です。

論文式試験のための短答式試験を意識する

短答式試験は,論文式試験の知識の範囲を包摂する関係にあります。
そのため,短答式試験の一部を学習することは,論文式試験の知識を確認することを意味します

したがって,短答を演習している際も,事案を読みながら,「これは論文ならこのように論じていくな」とか,条文を確認しながら,「この条文は論文でも頻出の条文だから,関連知識も確認しておこう」などという形で学習を進めていくと,効率的な学習ができます。

短答式試験と論文式試験は,決して分けて別々に勉強しなければならないわけではないのです。

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この記事の監修者 谷山 政司 講師

谷山 政司 講師

平成23年度に(新)司法試験に合格後、伊藤塾にて主に予備試験ゼミを中心とした受験指導業務を担当。
谷山ゼミ受講者のうち、およそ70名ほどが予備試験に合格。谷山ゼミ出身者で、最終的な予備試験の合格率は7割を超える。

自身の受験経験だけでなく、答案の徹底的な分析やゼミ生への丁寧なカウンセリングの結果確立した論文作成ノウハウをもとに、アウトプットの仕方はもちろん、インプットの仕方までをも指導するスタイルは、ゼミ生の圧倒的支持を受けた。

また、期をまたいだゼミ生の交流会等を定期的に行うなど、実務に出た後のフォローも積極的に行っている。

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ブログ:「谷山政司のブログ」
Twitter:@taniyan0924

 

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