【司法試験・予備試験】選択科目の選び方!おすすめは○○法
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司法試験では論文式試験において選択科目が課されてきましたが、2022年度から、予備試験においても、論文式試験の一般教養科目がなくなり、代わりに選択科目が追加されました。(司法試験法5条3項2号)
したがって、司法試験受験者だけでなく、予備試験受験者も選択科目を自分で決めなければなりません。
色々あるけど何が自分に合っているか分からない、どうやって決めたらいいか分からないなど漠然とした不安があると思います。
そこで、今回は選択科目の選び方のポイントをいくつか紹介したいと思います。
目次
【谷山政司講師が解説!】選択科目の正しい選び方とは?
アガルートアカデミー司法試験の谷山政司講師が、司法試験・予備試験の「選択科目」の選び方について解説します。
2022年度からは予備試験論文式試験でも課せられるようになった選択科目をどう選べばよいか悩む方も多いでしょう。
自身にとって適切なものを選ぶための基準を6つご紹介します。
司法試験・予備試験の選択科目とは?

司法試験および予備試験の選択科目は、労働法・経済法・倒産法・知的財産法・租税法・環境法・国際関係法(公法系)・国際関係法(私法系)の8つです。
司法試験の論文式試験は、通常1科目の試験時間が2時間であるのに対し、選択科目では各科目2題が出題され、試験時間は3時間です。
予備試験の選択科目は、出題1題、試験時間1時間10分程度となっています。
選択科目それぞれの特徴
労働法
司法試験と予備試験において、労働法は一貫して高い人気を誇る選択科目。
受験生の約3分の1が選択しており、その人気の高さから、基本書や予備校の講座など教材が充実している点が大きな特徴です。
また、労働法は多くの人にとって身近な法律であり、イメージしやすく学習に取り組みやすい科目といえるでしょう。
さらに法律実務家にとって必須の知識であり、特に弁護士では、労働問題の法律相談が多く、実務で役立つ場面が多々あります。
現代は「働き方改革」に代表されるように労働法への注目度が高まっており、労働法の専門家のニーズも増加傾向にあります。
労働法を学習することで、将来の法律実務家としての価値は確実に高まります。
経済法
経済法は、主に独占禁止法の理解を問う科目であり、最近では、労働法に次ぐ人気があると言っても過言ではありません。
独占禁止法は、事業者間の健全な競争を促し、消費者がより良い商品を低価格で購入できる「市場の競争機能」を保護することで、国民経済の発展を目指す法律です。
試験では、具体的な事業活動が独占禁止法による規制の対象となるかどうかが問われます。
人の生命や財産といった個別具体的な権利利益ではなく、「市場の競争機能」という抽象的な概念が保護法益となる点が最大の特徴であり、他の法律科目とは異なる視点が求められます。
倒産法
倒産法は、破産法、民事再生法、会社更生法、会社法の特別精算分野などの法律の総称です。
司法試験では破産法と民事再生法から各1題、予備試験ではどちらか1題が出題されます。
一見分量が多いと思われがちですが、出題分野が限定的で、条文の検索・あてはめ能力が問われることが多いため、記憶すべき知識は比較的少ないのが特徴です。
倒産法は民法や民事訴訟法と関連が深く、これらを学ぶことで倒産法の概念の半分以上が理解できます。これも、記憶すべき知識が比較的少ない理由の一つです。
民事系の原則が倒産法でどう変容するかを学ぶことで、民事系科目全体の理解も深まるシナジー効果も期待されます。
つまり、倒産法を学ぶことで、民事系科目の実力も向上します。
事実、倒産法選択者の合格率は選択科目の中で最も高いです。
また、司法試験・予備試験ともに人気が高く、情報交換もしやすい科目です。
実務でも頻繁に用いられる分野であり、学習は将来のキャリアにも役立つでしょう。
知的財産法
知的財産法は、特許法や著作権法など、無形の権利である知的財産権を保護する法律群を指します。
司法試験では特許法と著作権法のみが出題され、その中でも出題範囲は限定的です。
主に、特許や著作物の権利侵害に関する紛争事例が問われます。
知的財産分野では、最新の発明内容や技術資料を理解しなければならないため、法は理系出身者に馴染みやすい分野といえますが、法律である以上は、文系の能力も当然に求められます。
商標や著作権に関する相談は多岐にわたり、実務でも必須の分野で、知的財産関連に特化した法律事務所もありますが、適切な対応ができる法曹はまだ少ないのが現状です。
この分野の知識を体系的に習得することで、他の法曹との差別化を図り、業務分野を拡大できるという大きなメリットがあります。
理系出身者であれば、専門知識と組み合わせることでさらに活躍の場が広がるでしょう。
租税法
租税法は、主に所得税法が出題され、関連して法人税法や国税通則法からも出題されます。
企業にとって租税は重大な関心事であるため、実務上極めて重要な分野です。
弁護士として独立した場合、確定申告を自身で行う際にも租税法の知識が役立ちます。
租税分野の法律については、その性質上頻繁な法改正がありますが、司法試験の出題には大きく影響しません。
ただし、司法試験・予備試験での選択者数は比較的少ないため、情報交換にはやや苦労するかもしれません。
しかし、その分、租税法に精通した法曹は多くなく、深く学ぶことで大きな強みとなります。
特に、取引における税法的なアドバイスは企業クライアントから重宝され、他の法曹との差別化を図れるでしょう。
環境法
環境法は環境10法(環境基本法・環境影響評価法・大気汚染防止法・質汚濁防止法・土壌汚染対策法・循環型社会形成推進基本法・廃棄物処理法・容器包装リサイクル法・自然公園法・地球温暖化対策推進法)と呼ばれる個別法が出題範囲です。
司法試験・予備試験において選択者が比較的少ない科目ですが、近年は予備校の教材が充実し、学習環境が改善されています。
この分野は「脱炭素」といった世界的な問題に直結しており、今後の実務での注目度が高まる可能性があります。
選択者が少ない現状は、しっかりと対策すれば上位合格を目指しやすく、合格後も専門家として差別化を図れるメリットがあります。
また、環境法は民法の不法行為分野や行政法との関連性が深く、環境汚染の予防と回復を目的とした法規制や訴訟手段が問われます。
そのため、民法や行政法が得意な方、または得意になりたい方に特におすすめです。
国際関係法(公法系)
国際公法は、司法試験で最も選択者が少ない科目です。
そのため、教材や予備校の講座が限られており、学習環境は厳しいと言えます。
しかし、この選択者の少なさは、しっかり対策すれば高得点を狙いやすいというメリットにもなります。
実際、令和6年度司法試験では、国際公法で足切りされた受験生はゼロでした。
出題範囲は国際法、国際経済法、国際人権法の3分野ですが、国際経済法の出題可能性は低く、実質的には国際法と国際人権法がメインとなります。
国家間の紛争解決に関する問題が出題されるのが特徴です。
選択者が少ないからこそ、深く学習することで大きなアドバンテージを得られる可能性があるでしょう。
国際関係法(私法系)
国際私法は、私人間の国際的な紛争が発生した際に、どの国の法律を適用すべきか(準拠法)や、日本の裁判所で審理できるか(国際裁判管轄)を決める法律分野です。
日本では「法の適用に関する通則法」が代表的であり、司法試験では主に同法と、民事訴訟法・人事訴訟法の国際裁判管轄に関する規定を学習します。
近年、選択者の割合は微減傾向にあるものの、依然として一定の人気を保っており、予備校の講座や教材も比較的充実しています。
また、出題範囲が狭く、学習量が少ないため、他の選択科目と比べて学習しやすい点が特徴です。国際的な問題に関心があり、効率的に学習を進めたい方にとって魅力的な科目と言えるでしょう。
【コスパ最強】講師が教える!予備試験の選択科目のおすすめは?
アガルートアカデミーの講師谷山がおすすめする予備試験の選択科目は、ズバリ「倒産法」です。その理由は、倒産法がコスパ最強の「0.5科目」といえるような科目だからです。
谷山の専門科目だからだろ?という突っ込みがあるかもしれませんが、決してそんなことはない事を今からご説明いたします。
倒産法とは、簡単に言うと、経済的にピンチになった多重債務者から、債権者がどのようにしてお金を回収するかを定めたものと言ってよいでしょう。
債権者、債務者という言葉は、「民法」で中心的に学ぶことです。
そして、債務者が債権者にお金を払わないのであれば、債権者は訴訟をして、最終的には債務者の財産を差し押さえたりしてお金を回収することになります。それは、「民事訴訟法」や「民事執行法」という部分で学ぶことです。
倒産法は、「民法」や「民事訴訟法」及び「民事執行法」という「民事一般法」ではうまく解決できないような場合に使われる法律です。
そのため、倒産法の中で学ぶことの半分以上は、民事一般法で勉強している事柄が前提になっています。
よく、「倒産法は量が多いから…」という話を耳にします。確かに、学者の書いている倒産法の基本書は分厚いものが多いです。なぜなら、倒産法には民事一般法が深く関わっているため、前提の説明が入らざるを得ないからです。
倒産法で新しく学ぶ事項は本当に限られています。なので、アガルートの講座の講義時間も比較的短いです。
また、上記のような理由から、倒産法を学ぶと、民事一般法の理解がグッと深まります。
そのことも関係しているかもしれませんが、「司法試験合格者」の「合格率」が一番高いのは、労働法でも経済法でもなく、実は「倒産法」選択者なのです。
実際に、令和6年予備試験で出題された問題を見てみてください。
ほとんどが「民法上の法律関係」で占められています。
そして、超基本的な条文を一つ選択し、その要件充足性を検討させる問題が出題されています。
なので、民事一般法を学んでいる方にとっては、倒産法は、「0.5科目」というコスパ最強科目になると思っています。
勉強時間が少なくて済む選択科目は?
勉強時間が少ない選択科目は「国際関係法(私法)」と「経済法」が挙げられます。
中には、司法試験1ヶ月前に「国際関係法(私法系)」の学習を始めたにもかかわらず、司法試験本番で高得点を取ったという合格者もいたりします。
国際関係法(私法系)で中心的に学習する法律は、「法の適用に関する通則法」という法律ですが、この法律は43条までしかありませんし、これまで法律基本科目で学習してきた概念を前提とした制度がよく出てきます。
これが、国際関係法(私法系)の勉強時間が少なくて済む主な理由でしょう。
また、最近は、勉強量が少ないということから、「経済法」も人気になってきています。
こちらも、講座や教材が充実してきています。
参考までに、アガルートの講義の講義時間の短さでランキングを付けてみましょう。
| 順位 | 選択科目 | 講義時間 |
| 1位 | 経済法 | 25時間 |
| 2位 | 国際公法 | 38時間 |
| 3位 | 租税法 | 40時間 |
| 4位 | 国際私法 | 46時間 |
| 5位 | 知的財産法 | 63時間 |
| 6位 | 倒産法 | 64時間 |
| 7位 | 環境法 | 65時間 |
| 8位 | 労働法 | 69時間 |
ただし、勉強時間が少なくて済むことと、本試験での難易度(相対的に点数をどのくらいとることができるか)は、基本的には別物です。
例えば、国際私法については、大枠をすぐにマスターできるものの、近時は少し問題自体が難化傾向にあるという声もあります。
受験生に人気がある選択科目は?
予備試験の選択科目の人気トップ3は労働法、倒産法、経済法です。

| 人気 | 予備試験選択科目 | 受験者数 | 受験者の割合 |
| 1 | 労働法 | 5,863人 | 37.19% |
| 2 | 倒産法 | 2,922人 | 18.54% |
| 3 | 経済法 | 2,290人 | 14.53% |
| 4 | 知的財産法 | 1,566人 | 9.93% |
| 5 | 国際関係法(私法系) | 1,509人 | 9.57% |
| 6 | 租税法 | 703人 | 4.46% |
| 7 | 国際関係法(公法系) | 478人 | 3.03% |
| 8 | 環境法 | 433人 | 2.75% |
司法試験の選択科目の人気トップ3は労働法、経済法、倒産法です。

| 人気 | 司法試験選択科目 | 受験者数 | 受験者の割合 |
| 1 | 労働法 | 1,182人 | 29.04% |
| 2 | 経済法 | 846人 | 20.79% |
| 3 | 倒産法 | 638人 | 15.68% |
| 4 | 知的財産法 | 561人 | 13.78% |
| 5 | 国際関係法(私法系) | 395人 | 9.71% |
| 6 | 租税法 | 219人 | 5.38% |
| 7 | 環境法 | 153人 | 3.76% |
| 8 | 国際関係法(公法系) | 76人 | 1.87% |
この出願状況から客観的に分かることとしては、予備試験・司法試験ともにダントツ1位の人気を誇るのは、「労働法」になります。
その理由として確実に言えることは、「教材・講座が充実している」「実務に出た場合に使う」という点でしょう。
実際、弁護士になった場合は、労働問題の法律相談を受けることは非常によくあります。
2位から5位までは、予備試験と司法試験で順位に少し変動があるものの、「倒産法」、「知的財産法」「経済法」「国際関係法(私法系)」の4つの科目がランクインしており、これは当面は大きく変動がないものと思われます。
特に経済法については令和に入ってから人気が徐々に上がってきているように思われます。その理由として確実に言えることは、「必要な勉強量が少ない」という点でしょう。
選択科目の選び方
では、どのようにして選択科目を選べばよいのでしょうか。
以下、選択科目を決定する上での重要なファクターをいくつかご紹介します。
選択科目の選び方
- 必要な勉強量・時間
- 興味があるか
- 教材・講座が充実しているか
- 求められる能力
- 実務に出た場合に使うか
- 選択している受験者の割合
1 必要な勉強量・時間
先ほど述べたように、選択科目は全部で8科目ありますが、各科目に必要な勉強量は同じではなく、科目によっては勉強量が多いものもあります。
例えば、労働法や倒産法のように必要な勉強時間が多い科目もあれば、国際関係法(私法系)や経済法のように出題範囲が比較的狭い科目もあります。
ですが、範囲が狭い科目を選ぶべき、ということではなく、あくまで選択科目に充てることができる勉強時間との関係で選ぶことが大切です。
※下記はアガルートにおける選択科目ごとの講義時間です。
- 倒産法:43時間
- 労働法:70時間
- 知的財産法:63時間
- 国際私法:46時間
- 環境法:64時間
- 経済法:23時間
- 国際公法:38時間
- 租税法:40時間
2 興味があるか
選択科目を選ぶ上で考慮すべき事項のひとつとして、興味があるかどうかはかなり重要な要素です。
司法試験・予備試験の学習では、どうしても選択科目以外の7科目に時間を充てる傾向があることから、選択科目の学習を負担に感じる人が多いため、興味がない科目だと勉強そのものが苦痛になってしまうからです。
簡単な入門書でもいいので、気になる選択科目の概観を確認しつつ、興味を持てるものかどうかを確認しましょう。
3 教材・講座が充実しているか
教材の充実度も、選択科目を選ぶ上では重要な事項です。
例えば、労働法のように、例年全受験者の3割程度が選択するような科目であれば、教材や各種予備校の講座も充実していますが、受験者が少ない科目ではどうしても教材や各種予備校の講座等が充実しにくいです。
4 求められる能力
科目によって求められる能力も違ってきます。
例えば、労働法や知的財産法は暗記量が比較的多いですが、経済法は暗記よりもあてはめ重視の科目です。
一度司法試験の過去問の再現答案に目を通し、自分の能力を活かすことができそうな科目を選ぶのをおススメします。
5 実務に出た場合に使うか
司法試験に合格して実務に出た後に有用かどうかも、選択科目を選ぶ上での考慮要素になるでしょう。
例えば、特許関係の弁護士を志望している場合であれば、実務に出てから特許法や著作権法を使う可能性があるので、知的財産法を選ぶという人が少なくありません。
6 選択している受験者の割合
選択している受験者の割合も、ひとつの考慮要素になります。
なぜなら、受験者が多ければ、自主ゼミ(勉強会)を組みやすかったり、情報交換が容易にできるなどのメリットがあるからです。
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・「2.司法試験 論文過去問解析講座」「3.予備試験 論文過去問解析講座」
→過去問から出題趣旨等を徹底解析。正確でベストな解答例を見て習得できます。
・「4.論証集の『使い方』」
→「論証」という面で、必要な知識を総ざらいできる講座。
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この記事の監修者 谷山 政司 講師
2003年 中央大学法学部法律学科卒
2010年 中央大学法科大学院既修者コース修了
2011年 (新)司法試験合格
2014年 伊藤塾にて、予備試験ゼミ・司法試験ゼミ(倒産法)・特進ゼミ等を担当
2015年 司法修習修了(68期)
同年12月 弁護士登録、法律事務所ASCOPE所属
2016年 アガルート参画 個別指導事業立ち上げ
2017年 個別指導や「予備試験1年合格カリキュラム マネージメントオプション」から、予備試験1年合格者を多数輩出
谷山ゼミ受講者のうち、およそ70名ほどが予備試験に合格。谷山ゼミ出身者で、最終的な予備試験の合格率は7割を超える。
自身の受験経験だけでなく、答案の徹底的な分析やゼミ生への丁寧なカウンセリングの結果確立した論文作成ノウハウをもとに、アウトプットの仕方はもちろん、インプットの仕方までをも指導するスタイルは、ゼミ生の圧倒的支持を受けた。
また、期をまたいだゼミ生の交流会等を定期的に行うなど、実務に出た後のフォローも積極的に行っている。
谷山講師の紹介はこちら
ブログ:「谷山政司のブログ」
Twitter:@taniyan0924