判例つき六法は「いらない」と言われることもありますが、一概にそうとは言えません。司法試験・予備試験の勉強スタイルや試験の種類によって、判例つき・判例なしを使い分けることが重要です。基本的には判例つき六法と判例なし六法の両方を目的に応じて準備するのがおすすめです。

六法と一口に言っても、判例の有無・サイズ・紙か電子かなど種類はさまざまで、それぞれに長所と短所があります。誤った六法を選ぶと勉強効率が下がってしまうため、自分に合った六法を選ぶことが大切です。

この記事では、以下のポイントについて解説します。

  • 判例つき六法が本当に必要かどうか
  • 六法を選ぶときのポイント
  • 司法試験・予備試験におすすめの六法

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司法試験・予備試験の判例六法(判例付き六法)とは?

判例付き六法とは、条文のすぐ後に、その条文に関連する主要な最高裁判所判例の要旨(エッセンス)が掲載されている六法のことです。

通常の六法(文字通り条文のみが並んでいるもの)が「法律の条文」を確認するための道具であるのに対し、判例付き六法は「その条文が実際の裁判でどのように解釈・適用されているか」をセットで学べる多機能な学習ツールといえます。

判例つき六法はいらない?

判例つき六法は「いらない」わけではなく、むしろ用意しておくことをおすすめします。

ただし、判例つき六法だけでなく、判例なしの六法も併せて準備し、両方を使い分けるのが理想的です。
六法の主な使い方としては、

  • (ⅰ)六法に書き込みをして知識を集約する、
  • (ⅱ)論文を書く際に参照する、という2つが想定されます。

(ⅰ)知識の集約という観点では、判例つき六法が適しています。あらかじめ判例が掲載されている分、自分で書き込むべき情報が少なくて済み、効率的に知識を一元化できるためです。

一方、(ⅱ)論文式試験での参照という観点では、判例なしの六法が適しています。司法試験の論文式試験で配布される法文には当然判例の記載がないため、本番と同じ環境に慣れておく意味でも、判例のついていない六法を使うべきだからです。

このように、判例つき六法と判例なし六法にはそれぞれ異なる役割があります。「判例つき六法はいらないのでは」と考えるのではなく、両方の特性を理解したうえで、目的に応じて使い分けることが合格への近道といえるでしょう。

必要な六法を選ぶポイント

六法を選ぶ際のポイントは、①紙媒体か電子媒体か、②持ち運びに適したサイズかどうかの2点です。司法試験では本番配布が紙媒体のため、紙でコンパクトな六法を選ぶことが最も効率的といえます。

①紙媒体の六法をおすすめする理由

司法試験・予備試験の学習には、電子媒体よりも紙媒体の六法をおすすめします。理由は大きく2つあります。

1つ目は、知識を集約するツールとして使いやすいからです。六法は条文の確認だけでなく、自分で書き込みをして知識を一元化していく使い方が想定されます。

その際、線を引いたり余白にメモを書き込んだりといった作業は、電子媒体よりも紙媒体のほうが直感的でスムーズに行えます。

2つ目は、試験本番の環境に慣れることができるからです。司法試験の論文式試験で受験生に配布される法文は、当然ながら紙媒体です。普段から紙媒体の六法を使って条文を引く動作に慣れておくことで、本番でもスムーズに条文を参照でき、実力を発揮しやすくなります。

以上の理由から、特に知識の集約と本番対策の両面で、紙媒体の六法を選ぶことをおすすめします。

②持ち運びに適した小型六法がおすすめ

六法のサイズは、持ち運びに適した小型のものをおすすめします。理由は大きく2つあります。

1つ目は、小型の六法でも司法試験・予備試験に必要な条文は十分に収録されているからです。サイズが大きい六法は収録法令が多いものの、その多くは試験に出題される可能性が低い条文です。むしろ余計な条文が少ない分、小型の六法のほうが目的の条文を探しやすく、使い勝手に優れています。

2つ目は、すきま時間を有効活用できるからです。六法は知識を集約するツールとして使う以上、繰り返し見直す機会が多くなります。持ち運び可能な小型サイズであれば、通学・通勤中の電車内などの移動時間にも気軽に取り出して確認でき、学習の効率を高められます。

以上の理由から、収録内容と携帯性のバランスに優れた、持ち運びやすい小型の六法を選ぶことをおすすめします。

おすすめの判例つき六法

判例つき六法のおすすめは、有斐閣の「判例六法」です。条文直後に関連判例が掲載されており、二色刷りで条文と判例が見分けやすく、知識の集約ツールとして最も使いやすい一冊です。

判例六法(有斐閣)

有斐閣判例六法 令和8年版 (単行本)
※引用:amazon

判例六法(有斐閣)は、判例つきの六法として最もポピュラーな六法といえます。

条文のすぐ後ろに関連判例が載っていて知識の集約にはもってこいの仕様になっています。

また二色刷りになっていて、判例部分の色が変わっているので条文部分と判例部分が見分けやすく、「条文と条文が離れているため、条文のみを参照したいときに目的の条文を探し当てにくい」という判例つき六法のデメリットを緩和しています。

判例六法プロフェッショナルとの違い

「判例六法」には、1冊にまとまった通常版(判例六法)と、2分冊で構成される上位版(判例六法プロフェッショナル)があります。

※引用:amazon

判例六法プロフェッショナルは、その名の通り実務家(弁護士・裁判官・検察官)や研究者向けに編纂されていますが、一部の受験生にも愛用者がいます。通常版との主な違いを以下の表にまとめました。

比較一覧表

項目通常版(判例六法)判例六法プロフェッショナル
冊数・ボリューム1冊(約2,300ページ)2分冊(計約5,300ページ)
収録判例数約11,000件約14,500件
収録法令数120件約400件
サイズ・重さA5判・持ち運び可能B5判・非常に重く据え置き向き
主な対象層司法試験・予備試験受験生実務家、研究者、上級学習者

このスペック差を踏まえると、受験生にとってプロフェッショナルには大きなメリットがある反面、無視できないデメリットも存在します。

まずメリットとして挙げられるのは、圧倒的な情報量です。通常版には載っていないマイナーな最高裁判例や、重要な下級審裁判例まで網羅されているため、論文式試験で「未知の論点」が出た際、周辺判例から推論のヒントを得られる可能性が高まります。また、収録法令数が豊富なので、行政法や選択科目など、参照法文が多い科目の学習にも強みを発揮します。

しかし、受験生が直面する最大のデメリットが「重さとサイズ」という物理的な制約です。2冊合わせると相当な重量になり、勉強机のスペースを大きく占領してしまうだけでなく、自習室や予備校へ毎日持ち歩くのは現実的ではありません。また、司法試験の合格に必要な重要判例の9割以上は通常版でカバーされているため、情報が多すぎてかえって「何が重要か」が見えにくくなるというオーバースペックの罠に陥るリスクもあります。

これらを総合的に考慮すると、最初の1冊としては圧倒的に「通常版」がおすすめです。

司法試験・予備試験の学習において最も大切なのは、基礎となる重要判例を何度も繰り返し確認し、そのエッセンスを脳に刻み込むことです。プロフェッショナルの膨大な情報は、基礎が固まっていない段階ではノイズになりかねません。

もしプロフェッショナルを活用したい場合は、常にカバンに入れて持ち歩くメインツールとして「通常版」をボロボロになるまで使い倒し、基本書を読んでも納得がいかない時のための「自宅用の置き辞書」としてプロフェッショナルを据え置くなど、自分の学習スタイルと「機動力」に合わせて選択するのが賢明です。

おすすめの判例なし六法

判例なし六法のおすすめは、以下の3冊です。

  • 有斐閣の「ポケット六法」
  • 第一法規の「司法試験用六法」
  • 信山社の「法学六法」

ポケット六法(有斐閣)

※引用:amazon

ポケット六法(有斐閣)は、判例つきではない六法としては最もポピュラーなもののひとつです。

近年の改訂によって条文の準用関係も各条文ごとに丁寧に記載されるように改められているほか、改正のあった条文には線が引いてあり改正があったことがわかりやすくなっています。

またその名の通り充分持ち運び可能なサイズであり(それでもこれが入るポケットはあまりないと思いますが…)、また司法試験との関係では必要十分な法令が記載されているので非常におすすめの一冊です。

なお三省堂からデイリー六法という六法が刊行されていますが、掲載条文や仕様は、ほぼポケット六法と同様ですので、そちらもポケット六法同様におすすめできます。

司法試験用六法(第一法規)

※引用:amazon

司法試験用六法(第一法規)は、こちらは司法試験本番で配布されるのと同様の六法になっています。

ほかの六法と比べると①憲法や刑訴法に条文の題名が記載されていない、②索引がない、③条文の準用関係についての記載がない等の違いがあります。

学習用として普段使いするにはやや不便な六法になっていますが、司法試験直前により実践的な環境で答案作成の練習をしたい方にはおすすめできます。

なお、同じ第一法規から「司法試験予備試験用六法」「法科大学院試験用六法」も刊行されていますが、掲載条文の差があるだけで仕様は同じですので、自分が目指す試験との関係で選んでいただければと思います。

法学六法(信山社)

※引用:amazon

法学六法(信山社)の特徴はなんといってもそのサイズです。

わずか300g弱と非常に軽く、かさばりません。

その分掲載条文は少なく、司法試験との関係では必要十分とは言えませんが、電車の中で条文を読みたい人などは上記の六法のほかに一冊用意して持ち歩いてもいいかもしれません。

まとめ

司法試験の勉強において、条文が記載された六法は受験生にとって必要不可欠なツールです。六法を選ぶ際は、まず判例つき・判例なしの両方を用意することをおすすめします。判例つきの六法は知識を集約しやすく、判例なしの六法は論文式試験での参照に適しているためです。

また、媒体は紙媒体を、サイズは持ち運びに適した小さめのものを選ぶとよいでしょう。具体的には、判例つきなら「判例六法(有斐閣)」、判例なしなら「ポケット六法(有斐閣)」「司法試験用六法(第一法規)」「法学六法」などがおすすめです。

自分の学習スタイルや目指す試験に合わせて六法を選び、合格を目指しましょう。

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この記事の監修者 谷山 政司 講師

谷山 政司 講師

2003年 中央大学法学部法律学科卒
2010年 中央大学法科大学院既修者コース修了
2011年 (新)司法試験合格
2014年 伊藤塾にて、予備試験ゼミ・司法試験ゼミ(倒産法)・特進ゼミ等を担当
2015年 司法修習修了(68期)
同年12月 弁護士登録、法律事務所ASCOPE所属
2016年 アガルート参画 個別指導事業立ち上げ
2017年 個別指導や「予備試験1年合格カリキュラム マネージメントオプション」から、予備試験1年合格者を多数輩出

谷山ゼミ受講者のうち、およそ70名ほどが予備試験に合格。谷山ゼミ出身者で、最終的な予備試験の合格率は7割を超える。
自身の受験経験だけでなく、答案の徹底的な分析やゼミ生への丁寧なカウンセリングの結果確立した論文作成ノウハウをもとに、アウトプットの仕方はもちろん、インプットの仕方までをも指導するスタイルは、ゼミ生の圧倒的支持を受けた。
また、期をまたいだゼミ生の交流会等を定期的に行うなど、実務に出た後のフォローも積極的に行っている。

谷山講師の紹介はこちら

ブログ:「谷山政司のブログ」
Twitter:@taniyan0924

 

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