『プラクティス民法債権総論』の司法試験へ向けた勉強での使い方と特徴
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債権総論は、契約法と並んで司法試験民法において大きなウェイトを占める分野です。
ところがこの分野では、判例が存在しなかったり、存在しても昭和や大審院のものであることも多く、必ずしも理論的根拠が明らかにされていないことがあります。
そして、債権法分野では平成29年(2017年)に大規模な改正が行われたため、かつての判例が必ずしも現行法の下で生きているとは限らないという状況になっています。
そこで、制度趣旨や具体的な要件・効果(特に改正の対象となったもの)の趣旨を知り、また、知識を整理するために基本書を読むことになります。
この記事では債権総論の基本書として、潮見佳男教授の『プラクティス民法 債権総論』の内容と特徴、使い方、評価について説明していきます。
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プラクティス民法債権総論の内容と特徴
まず初めに『プラクティス民法債権総論』の内容と特徴について解説していきます。
概要
『プラクティス民法 債権総論』は、債権法・相続法を中心とした民法の専門家として、近時の民法の立法・解釈を牽引してきた一人であり、京都大学法科大学院教授である潮見佳男教授が、債権総論の全体について、条文、判例、解釈を700ページ弱で説明したものです。
各セクションの構成
各セクションの構成は意義(要件効果の概要、ケース、趣旨等)、要件、効果というように統一されています。
また、要件・効果の箇所では、趣旨、条文、判例、判例がない重要事項については学説というように統一されています。
書かれている事項に統一性があり無駄な記述がないため、債権総論だけで700ページ弱というボリュームにもかかわらず、淡々と読み進めることができます。
応用的な記述
本書は基本的には従来の通説や、平成29年民法改正を準備した法制審議会の部会(著者は委員の一人です)における議論を説明するものであり、理論面や著者独自の見解に深く立ち入るものではありません。
もっとも、契約のリスク分配手段としての側面の強調、履行請求権の性質、債務不履行における損害・因果関係(いわゆる保護範囲論)など、応用的な部分も見られます。
受験生としては、このような部分は飛ばしてしまっても構わないですし、読むとすればそれはそれで勉強になります(裁判官が判決文に書くことはないというだけで、民法学者や実務家の間では共有されている理解です)。
司法試験の勉強での使い方
ここからは『プラクティス民法 債権総論』の司法試験の勉強での使い方を解説していきます。
短答試験のための利用方法
『プラクティス民法 債権総論』は、短答試験のために読むには向きません。
短答試験に使用する場合、同じ潮見教授の『民法(全)』があります。
こちらは過去問でインプットした知識の相互関係や、判例の流れ、制度趣旨との関係といった全体像を理解するのに役立ちます。
また、『プラクティス民法 債権総論』とは概ね構成が同じになっているため(『民法(全)』をベースにより詳しくしたものが『プラクティス民法 債権総論』というイメージです)、相性がよいです。
論文試験のための利用方法
『プラクティス民法 債権総論』は論文試験で効果を発揮します。
過去問も重要ですが、『プラクティス民法 債権総論』に書かれていることさえ分かっていれば、全受験生の少なくとも平均以上の知識を持つことができます。
言い換えれば、本書に書かれていないことは他の受験生も分からないので気にする必要がありません。
また「他の受験生も分からない」、つまり、現場思考の問題でも、本書で身につけることができる条文の正確な読み方や、制度趣旨の理解は強い武器になります。
他の基本書との組み合わせ
他の基本書と組み合わせる場合、当然ながら潮見教授の本とは相性がよいです。
全体像を確認するときは『民法(全)』、債権総論については『プラクティス民法 債権総論』、債権各論のうち不法行為法以外の部分については『基本講義 債権各論〈1〉契約法・事務管理・不当利得』、不法行為法については『基本講義 債権各論〈2〉不法行為』、相続法については『詳解 相続法』があります。
また他の分野についても、同じ京大系の、佐久間毅『民法の基礎1 総則』、同『民法の基礎2 物権』、松岡久和『担保物権法』とは相性がよいです。
初学者のための利用方法
『プラクティス民法 債権総論』は、もちろん初学者でも利用可能ですが注意点があります。
前述のとおり、本書には応用的な記述が含まれています。
そのため、判例や伝統的な理解が分からないうちに本書を理解しようとすると、応用的な記述を応用的な記述と気づくことができず混乱してしまい、受験生として必要最低限の事項も理解できないままになってしまう可能性があります。
そうならないために、初学者のうちは、六法・判例集を中心に、また、基本書を利用する場合は『民法(全)』のような簡潔な本を中心に、深く理解したい問題についてのみ『プラクティス民法 債権総論』を参照するのがよいです。
プラクティス民法債権総論の評価
まとめると、『プラクティス民法 債権総論』が効果を発揮するのは、
- 論文試験で全受験生がの少なくとも半分が知っている知識を漏らさず得たいとき
- 現場思考の問題を考える上で必要な、条文の正確な読み方や、制度趣旨の理解を得たいとき
といった場面になります。
一方、『プラクティス民法 債権総論』には応用的な記述が含まれており、
- 短答試験では、『民法(全)』を利用し、
- 初学者が利用する際は、六法・判例集を中心に、深く理解したい問題についてのみ『プラクティス民法 債権総論』を参照する
といった使い方をするのがよいです。
このような使い方をする場合、本書はかなり役に立つはずです。
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