行政法の基本書、どうしようかというときに、行政法の本は1冊になっているものだけで本当に大丈夫かなど悩んだことはありませんか。

1冊にまとまっているもので繰り返し学修することは大事ですが、同時にわからないことを理解するために、丁寧に解説されている基本書を随時参照して学修することも大切です。

このコラムでは、行政法の基本書の中でも詳しめなものである宇賀先生の「行政法概説」の特徴や、司法試験への活用方法についてご紹介します。

行政法概説Ⅰ～Ⅲの特徴

※引用：amazon

※引用：amazon

※引用：amazon

宇賀先生の概説書の特徴・魅力は一言でいうと、「最新の情報・裁判例が豊富で詳しく、理論的であること」です。

最新の法改正・制度・裁判例の情報が載っていて、新しい版のものを買って読むことで改正などに対応しやすいという利点があります。

裁判例についても、比較的新しい地方裁判所の裁判例なども豊富に紹介されていて、いろいろな例について知ることができます。

また、行政法の理論的な説明も丁寧になされており、講学上の概念の理解も同時に行うことができます。

行政法概説Ⅰ～Ⅲの内容

本概説書は1巻から3巻で構成されています。

1巻は、行政法の総論分野についてまとめられています。

2巻は、行政救済法の分野について書かれています。

3巻は、行政組織、公物、公務員などの分野について書かれています。

また、全体でかなりの頁数にはなりますが、コラムや補足的説明に割いている頁もそれなりに多いので、本文だけを読むという使い方をすれば、そこまで読む量は多くありません。

巻末の索引を用いて調べることで、辞書的に知りたかったことを知ることができるという使用方法もあります。

司法試験の勉強での使い方

本書は司法試験では詳述度では最高レベルです。

あまり見かけない論点やトピックが出てきたときに、その疑問を解消するために、ざっと読んでみるという使用方法が有効です。

頻出論点・トピックなど（処分性、原告適格、訴えの利益、取消訴訟以外の訴訟の訴訟要件、裁量の認定と裁量権逸脱濫用、違法性の承継、行政手続法上の違法事由など）が気になった際には行政法概説を読んでみるといいでしょう。

司法試験対策においては、基本をおさえるために同じ本を繰り返し読むということが重要ですが、この本は通読して繰り返し読むという使用方法には向いていません。

理解をきちんとしている人が読むならば学修が進みやすいものの、初学者にとっては、具体的なイメージがつかみづらいことがあります。

あるいは、最初は薄めの本（藤田宙靖先生の行政法入門は薄いけれども、とても読みやすく全体像をつかむのに最適です）を読み、そのあとに詳しめの本として本書をざっと読むという使い方でも良いでしょう。

頻出・重要トピックについて本書を読むと、他の受験生でこれ以上押さえている人はいないはずだという自信につながるはずです。

行政法概説の評価

この本のメリットは、

• 詳しく裁判例などを含めて解説されている
• 最新の情報をおさえやすい
• 調べものに使える

という点です。

他方で、

• 繰り返し通読するにはあまりに長すぎるので難しい

というデメリットもあります。

したがって、繰り返し読むための基本書として、櫻井・橋本先生の行政法または中原先生の基本行政法を用意し参照するとともに、調べものや、しっかりと学修を深めたいトピックについて、本書を参照するというのがもっとも司法試験に適した使用方法ではないでしょうか。