予備試験の口述試験とは?対策と再現(過去問・回答例)を紹介
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予備試験の論文式試験を突破した場合、予備試験最後の試験である口述試験を受験することになります。
この口述試験を突破すれば、予備試験に最終合格となり、晴れて翌年以降の司法試験の受験資格を得られます。
口述試験は合格率が90%を超えているため、これまでの短答式試験や論文式試験に比べると、合格率はかなり高いと言えます。
しかし、口述試験は予備試験独自の試験であり、試験官からの口頭での質問に対して口頭で即座に答えなければなりません。
合格率の高さや、他の受験生が論文式試験を突破した実力者という点も相まって、極度の緊張に陥り、答えに詰まってしまった結果不合格ということもあり得ます。
そこで本コラムでは、口述式試験の概要、出題内容の再現例や対策の仕方について詳しく解説していきます。
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司法試験予備試験の口述(面接)試験とは
口述試験は、法的な推論、分析及び構成に基づいて弁論をする能力を有するかどうかの判定のために行われる、いわゆる面接試験です。
7月の短答式試験、9月の論文式試験を突破した受験生だけが受けることのできる予備試験最後の試験であり、民事訴訟実務・刑事訴訟実務・法曹倫理から出題されます。
ただし、民事訴訟実務・刑事訴訟実務といっても、民法、刑法等の法律基本科目の知識が問われることもあります。
主査・副査と呼ばれる2人の面接官に対して受験者1人という人数で、出題される問題に口頭で答える形式です。
受験者の再現を見る限り、試験委員がある事例を口頭で読み上げ、それについての問いが投げかけられ、受験者はその問いに答える形になります。
口述試験については法務省から出題テーマの発表があるだけで、問題が公表されていません。
そのため、問題内容を受験生が知りたいと思った場合、その方法は、受験者の再現に頼らざるを得ない状況です。
なお、六法は参照しても問題ありません。
ただし、回答を暗記しているのが当然な事項もあるので、回答できる範囲では六法を参照せずに回答できるように、普段から条文中心の勉強をしておくことが重要です。
口述試験の日程と科目、時間
口述試験は例年1月に2日連続で行われます。
1日は法律実務基礎科目の民事を、もう1日は法律実務基礎科目の刑事を、それぞれ行います。
試験時間は、試験官の質問内容や受験者の応答の速度などによって異なりますが、1つの試験につき約15分から30分程度です。
順番が早ければ、試験会場に来てすぐ試験を受けることができますが、順番が最後となると、試験会場に来てから試験を受けるまでに3,4時間待たされることも。
そのため、どの順番に割り当てられたかによって、集中力を持続させなければならない時間が変わってきます。
また、予備試験の口述試験の科目は、予備試験の論文式試験における法律実務基礎科目(民事訴訟実務,刑事訴訟実務及び法曹倫理)と同様です。
もっとも、法曹倫理については、民事訴訟実務・刑事訴訟実務のいずれの問題においても出題される可能性があります。
口述試験の合格率
平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 | |
採点対象者数 | 429 | 469 | 459 | 494 | 462 | 476 | 481 | 487 |
合格者数 | 405 | 444 | 433 | 476 | 442 | 467 | 472 | 479 |
合格率 | 94.4% | 94.7% | 94.3% | 96.4% | 95.7% | 98.1% | 98.1% | 98.4% |
予備全体 合格率 | 3.9% | 4.2% | 3.9% | 4.1% | 4.2% | 4.0% | 3.6% | 3.6% |
口述式試験の合格率は95%前後で、だいたいの方が合格する試験といえます。
ただし、それゆえに、本試験では緊張するため、「口述試験だけは二度と受けたくない」という合格者も少なくありません。
予備試験 口述試験の対策法とは?
口述試験の再現例
では、面接官からどんな質問をされるのか、実際に行われた口述試験の内容をみていきましょう。
【民事】の質問&回答
民事科目では事例を記載したパネルが机の上に置いてあり、それを見ながら受け答えしていくことが多いです。
民事科目では必ずといっていいほど、毎年要件事実を聞かれます。
質問 | 回答 |
机の上に置いてあるパネルを見てください。 Xの主張が書かれています。 パネルを見ながら聞いてください。 |
はい。 |
(主査がパネルの事例を読む) Xの依頼を受けた弁護士Pは訴訟を提起しました。 請求の趣旨はなんですか? |
はい。 請求の趣旨は、「被告は、原告に対し、本件建物を明け渡せ。」です。 |
はい。 では訴訟物はなんですか? |
はい。 訴訟物は、「所有権に基づく返還請求権としての建物返還…建物明渡請求権」です。 |
はい。 では請求原因事実はなんですか? |
「1,Xは本件建物を所有している。2,Yは本件建物を占有している」です。 |
令和元年度予備試験口述式試験より |
このように要件事実は頻出中の頻出なので、暗記必須です。
また、論文の時にはあまり出ない執行・保全もよく問われます。
質問(続き) | 回答(続き) |
はい。 ではYが本件建物を第三者に売却しようとしています。Pとしては事前に講じておくべき手続…まあ事前に講じておくべき手続があるんですが、それはなんですか? |
はい。 占有移転禁止の仮処分です。 |
令和元年度予備試験口述式試験より |
また、民事訴訟法からの出題もされます。
質問 | 回答 |
(主査がパネルの事例を読む) この場合、Xの弁護士Pはいかなる対応をすべきですか? |
この場合、訴えの取り下げをやめるようにXを説得すべきです。 |
そもそも今回取り下げはできますか? | 出来ると思います。 |
無条件にできますか? 今回、もう人証の取調べも済んでしまっています。 |
被告の同意が必要です。 |
今回同意は得られそうですか? | 得られなさそうです。 |
令和元年度予備試験口述式試験より |
頻出とは言えませんが、法曹倫理からの出題もされます。
質問(続き) | 回答(続き) |
そうですよね。 ではこの「自分はPの依頼人なのだから、意向に従うべきだ」という部分はどうですか?倫理の観点から答えてください。 |
はい。 まず、弁護士は誠実義務を負っているため、依頼人の意向は最大限尊重するべきですが、今回の場合、訴えを取り下げることはXに有利とは言えませんし、被告の同意が得られなさそうということで現実的でもないので、必ずしも意向に従う必要はないと思います。 |
令和元年度予備試験口述式試験より |
【刑事】の質問&回答
刑事科目では、ひとつの事例を利用して、前半は刑法に関する実体法の知識、後半は刑事手続きに関する知識を問う問題が多いです。
刑事手続きについては口述プロパー知識として対策する必要がありますが、近年では実体法上の論点の方が重視される傾向にあります。
また、民事と異なり刑事では事案を書いたパネルを用意されることは基本的にありません。
したがって、主査が読み上げる事例をしっかり聞いて、把握することが重要です。
質問 | 回答 |
それでは私がいまから事案を読み上げますのでよく聞いてください。 分からなければ尋ねてください。 途中で聞き返していただいても構いません。 |
はい。 |
宗教団体の幹部であるAは、特殊な治療方法で傷を癒すことが出来るとして信者を集めていた。Aは、信者であるVの体調が悪いので治してほしいとVの友人から頼まれ、Vの治療を引き受け、自宅へ連れてきた。Aは結局Vを治療することが出来なかったが、病院に連れて行けば、自らの虚名が暴かれることを恐れ、Vを山中に遺棄し、死の危険を発生させた。しかし、Vはたまたまその場を通りかかった通行人に保護され、一命をとりとめた。 事案は分かりましたか? |
はい。 |
Aには何か犯罪は成立しますか?殺意はなかったとして考えてください。 | はい。 保護責任者遺棄罪が成立します。 |
はい。 保護責任というのは、どのような場合に発生しますか?一般的に説明してください。 |
はい。 一般的にはまず法令などで義務が発生する場合や、排他的支配関係が存在する場合や、危険の引き受けがある状況の下で保護責任が発生します。 |
うん。 では今回の事案に即して説明してください。 |
はい。 まず、Aは自ら自宅にVを連れてきているところ、Vの身柄を引き受けており、危険の引き受けがあったといえます。また、今回は特にAが宗教教団の幹部であり、しかも特殊な治療方法を教義としているということなので、Vを治療できるという信頼に基づいてVを引渡されているのでありますから、心理的にも排他的支配関係があったといえます。 |
令和元年度予備試験口述式試験より |
このように、刑法の知識に関する出題をしたあと、後半は同じ事例を用いて刑事訴訟法の知識を問います。
質問 | 回答 |
はい。 ではAは保護責任者遺棄罪の公訴事実で起訴され、公判前整理手続きに付されたとします。そこで、検察官から証明予定事実記載書面が提出されました。検察官は次に何をしますか? |
はい。 証拠の請求をします。 |
はい。 では検察官請求証拠が開示されました。弁護人が他に証拠開示を求めることができる手続きはありますか? |
はい。 類型証拠の開示請求と主張関連証拠の開示請求です。 |
他には? | 一覧表の交付を求めることが出来ます。 |
はい。 では犯行現場を目撃したCが検察官の取調において犯行状況を詳細に供述し、それを記載した供述録取書が作成されました。検察官がCの供述内容を立証したい場合、いかなる手段が考えられますか? |
証人尋問の請求をします。 |
はい。 では公判廷でCの証人尋問が行われました。ところがCは犯行状況については何も覚えていないと言うばかりです。そこで検察官は「あなたはAがVを遺棄する現場を見たのではないのですか?」と尋問したところ、弁護人から異議申し立てがなされました。この場合まず裁判官はなにをすべきですか? |
はい。 異議申し立てについての決定をします。 |
その前になにかしませんか? | はい。 検察官側の意見を聞きます。 |
はい。 それに対して検察官はなんと述べますか? |
記憶喚起のための誘導尋問である旨を主張します。 |
令和元年度予備試験口述式試験より |
また、条文番号を問われたりもします。
質問(続き) | 回答(続き) |
そういうことができるんですね。 では、Cの証人尋問において、Cの供述録取書の署名押印がCのものであることを確かめるために検察官がCに供述録取書を示したところ、弁護人から異議申し立てがなされました。この場合検察官はなんと主張しますか? |
文書の成立の真正を確かめるためのものである旨主張します。 |
そういうことができるんですね。 条文のどこに書いてありますか? |
はい。刑事訴訟規則の199条の…枝番がついていたかと思います。 |
令和元年度予備試験口述式試験より |
口述試験の答え方のポイント
まず、全ての試験にいえることですが、一番大事なのは「問いに答える」ということです。
当たり前じゃないか、と思うかもしれませんが、意外にもこれが出来ない人がいます。
口述までいけるということはかなりハイレベルな知識を持っているということです。
ゆえに、聞かれていないことまでぺらぺらと喋ってしまう人が多くいます。
しかし、いくら知識をひけらかしたところで点数になりません。
とにかく聞かれたことにだけ答えるという姿勢を徹底しましょう。
また、聞かれたことに対してぐだぐだと理由から説明し始めるタイプもいますが、まずは結論だけ答え、あとから理由を問われた場合にだけ詳しく理由を述べましょう。
次に、口述式試験は「受からせる試験」です。
(まれに意地悪なタイプもいらっしゃいますが)試験官はあなたを受からせようと誘導をしてくれます。
その誘導に乗ることこそが重要です。
分からない問題が出ても、考え込んで沈黙したり、話過ぎたりせず、とにかく試験官の言うことをよく聞いて会話のキャッチボールを上手く行いましょう。
試験官と喧嘩したり、泣き出してしまったりするのは厳禁です。
また、口述式試験では六法を参照することが出来ますが、基本的には開かないというスタンスで望むべきです。
なぜなら、いきなり六法を見るということは、その問題の答えが分からないということをわざわざアピールすることに等しいからです。
また、サッと条文を引けないと、ただただ条文をめくって右往左往している沈黙の時間が流れ、余計に焦ってしまいます。
たしかに、口述式試験では条文番号を問われたりもしますが、分からなくても六法を参照せずに大まかな位置を答えるべきです。
それでスルーされる場合もありますし、「六法見ていいですよ」と言われる場合もあるので、とにかく最初から六法を見るのは避けてください。
口述試験は「慣れ」が重要
以上のような受け答えを出来れば合格できるはずなのですが、やはり口述試験の大敵は緊張です。
会場の独特の雰囲気や面接という試験形式、「ここまで来たらもう落ちれない」というプレッシャーが、普段なら絶対にしないミスを誘発します。
だからこそ、「慣れ」が必要なのです。
具体的には、過去問演習が非常に効果的です。
この点、口述式試験の過去問は公式には手に入らないので、予備校や過去問再現ブログ等を上手く活用しましょう。
しかし、口述式試験の過去問演習には問題を出題してくれる人の存在が必要なので、独学の方には厳しいかと思います。
そこで、模試を受験することをおすすめします。
どの予備校も口述式試験の模試を開催しているので、なるべく多く、最低でも2つの模試は受験しましょう。
論文式試験の合格を確認したらまずすべきことは、予備校の模試の申し込みをすることと言っても過言ではありません。
口述式試験のおすすめ講座
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2024年も実施予定ですので、ぜひご活用ください。(2024年の講座に関しては、準備中です)
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平成23年度に(新)司法試験に合格後、伊藤塾にて主に予備試験ゼミを中心とした受験指導業務を担当。
谷山ゼミ受講者のうち、およそ70名ほどが予備試験に合格。谷山ゼミ出身者で、最終的な予備試験の合格率は7割を超える。
自身の受験経験だけでなく、答案の徹底的な分析やゼミ生への丁寧なカウンセリングの結果確立した論文作成ノウハウをもとに、アウトプットの仕方はもちろん、インプットの仕方までをも指導するスタイルは、ゼミ生の圧倒的支持を受けた。
また、期をまたいだゼミ生の交流会等を定期的に行うなど、実務に出た後のフォローも積極的に行っている。
谷山講師の紹介はこちら
ブログ:「谷山政司のブログ」
Twitter:@taniyan0924