法律の世界では、よく「錯誤」という言葉が登場します。その中でも一番有名なのは、民法における「錯誤」であり、大学の法学部でも、民法の授業の最初の段階で学ぶことが多いと思います。

そして、民法とは、我々の生活に深く関係している法律であり、もしかしたら皆さんも、上記のような「錯誤」に陥って、トラブルに発展してしまったという事もあるかもしれません。

では、民法における「錯誤」とはいったいどういうものでしょうか?今回は、民法における「錯誤」について、分かりやすく解説していきたいと思います。

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錯誤とは?分かりやすく解説

「錯誤」とは、わかりやすく言えば、「勘違い」や「間違い」のことです。
民法での「錯誤」は、表意者が意思表示を無意識に誤った場合に、意思表示から推察される内容と本人の意思が食い違っている状態を指します。
法律的に錯誤があると、意思表示を取り消して契約をなかったことにできるなどの効果を得られます。

具体例を考えてみましょう。以下の事例を見てください。

Aは甲土地を所有していた。Bは、この甲土地の近くに将来リニアモーターカーが通るため、甲土地が値上がりするというネットの情報を目にした。Bはそれを鵜呑みにし、Aに対し「甲土地の近くに将来リニアモーターカーが通るらしく、そうなれば土地の価格も上がるだろうから、もしAさんがこの土地を利用しないならば、私に売ってほしい。」と言った。Aはこれを受けて、「分かりました。それならば、将来の土地の値上がりを見越して、時価より2割高い値段でよければ、甲土地を売りますよ。」と返答した。Bはこれを承諾し、Aと土地の売買契約を締結し、Aにその代金全額を支払った。ところが、この土地の近くに将来リニアモーターカーが通るという話はなく、それは調べればすぐわかることであった。

上記のような場合、Bさんとしては、Aさんに対して、何か言いたいことがあるのではないでしょうか。

そう、Bは、Aさんに対して、払った売買代金分のお金を返してほしいと言いたいですよね。

その理由として、自分が甲土地を買いたいといったのは、「勘違い」だったからになります。

では、このようなBさんの言い分は認められるでしょうか。

民法95条を使って、上記の事案を解決してみよう

上記の事案は、まさに、「勘違い」から生まれたトラブルが問題となっていますよね。このような場合の解決のカギは、民法95条が握っています。

まずは、民法95条についてみてみましょう。

  1.  意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及 び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
    一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
    二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
  2. 前項第2号の規定による意思表示の取り消しは、その事情が法律行為の基礎とされ ていることが表示されていたときに限り、することができる。
  3. 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、 第1項の規定による意思表示の取り消しをすることができない。
     一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき
     二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき
  4. 第1項の規定による意思表示の取り消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗す ることができない。

一見すると、難解な語句が並んでいるように見えますが、一つ一つをかみ砕いていくと、そこまで難しくありません。今回の事案とともに、95条の規定を読み解いていきましょう。

民法95条1項と2項の検討をしてみよう

まずは1項から検討していきます。

上記の事案では、Bの甲土地を買うという「意思表示」がありますね。

では、「次に掲げる錯誤に基づくもの」と言えるでしょうか。

次に掲げるとは、95条の1号か2号のどちらかに当たる時のことをいいます。

今回は、2号になります。

すなわち、「表意者」Bが、甲土地の売買契約という「法律行為」の「基礎とした事情」は、甲土地の付近にリニアモーターカーが通るため、甲土地の価格が上がるという事情ですが、実際にはこのような話はないため、「その認識が真実に反する錯誤」があることになります。

このような勘違いの事を、「動機の錯誤」と言ったりします。

ここで、一度2項を見てみてください。

2項は、「前項第2号の規定による意思表示の取消は、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されたときに限りすることができる」と規定されています。

まさに、上記の事案では、95条1項2号の規定によるものですね。

そこで、「その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されているか」を検討する必要があります。ここは色々な考え方があるところですが、簡単に言うと、勘違いを起こした事情が相手方に示され、しっかりと契約内容になっていた場合だと考えておいてください。

上記の事案では、BがAに対して、甲土地の地価が上がりそうなことを述べて、Aも地価が上がることを前提に、時価の2割り増しで甲土地をBに譲ると述べていますよね。

ということは、甲土地の地価が上がるという勘違いを起こした事情が、相手方であるAに示され、このことを含めた土地の売買代金が設定されていますので、契約内容になっていたといえます。

そうすると、2項の要件は充たすことになりますね。

もう一度1項に戻りましょう。1項の残りの要件は、「その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき」です。

これも、簡単に述べると、その錯誤がなければ、本人も、はたから見ている我々一般人も、その行為をしないだろうという意味ととらえておいてください。土地の売買という高価な取引ですから、もし甲土地が値上がりしないのであれば、おそらくBは甲土地を買わなかったでしょうし、我々も通常は買いませんよね。

ということで、95条1項と2項の要件を充足し、その結果、Bは、この売買契約の「意思表示」を「取り消すこと」ができます。

売買契約の意思表示を取り消すとどうなる?

では、売買契約の意思表示を取り消すと、どうなるのでしょうか。これについて、民法121条は、「取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。」と規定しています。

無効とは、簡単に言うと、何もない状態の事を言います。そうすると、BがAとの売買契約を取り消すことによって、BとAとの甲土地の売買契約は、何もなかったことになるのです。

逆に言うと、Bが「取り消す」と言うまでは、BとAの売買契約は依然として残っていることになります。

では、BとAの売買契約が何もなかったことになった場合、どうなるのでしょうか?

これについては、民法121条1項が、「無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。」と規定しています。

つまり、Bが売買契約を取り消すことによって、AとBの甲土地の売買契約は、「無効な行為」となります。

そうすると、AはBから売買代金分のお金を受け取っているので、「無効な行為」に「基づく債務の履行として給付を受けた者」に当たります。

その結果、Aは「相手方」Bを「原状に復させる義務を負う」ことになります。要するに、売買契約がなかった時点に戻す義務です。

つまり、AはBを、売買契約に基づいてお金を払っていない状態に戻す義務があるのです。

その結果として、Aは、Bに対して、甲土地の売買代金として受け取ったお金を返す必要があるのです。

95条3項と4項を見てみよう

上記のように見ていくと、Bは晴れてお金を返してもらうことができそうです。

ただし、95条3項には、錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、 第1項の規定による意思表示の取り消しをすることができない。と書かれています。

ここでいう「重大な過失」とは、簡単に言うと、自分が勘違いしていることは、ちょっと調べればわかるはずなのに、それもせずに、漫然と売買契約をしたという意味だと思ってください。

そうすると、Bは、土地の売買契約という一生で一度するかしないかという行為を行うにもかかわらず、また、簡単に調べれば、甲土地付近にリニアモーターカーが通ることは嘘だとわかるにもかかわらず、ネットの情報を簡単に鵜呑みにして、それ以外に問い合わせをするなどもしていませんよね。

したがって、Bには「重大な過失」があると言っていいかもしれません。

この場合、Bは「取り消しをすることができない」事になってしまいます。ただし、95条3項各号に書かれているように、

①相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき

②相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき

には契約を取り消すことができます。

例えば、AがBの勘違いを知っていたような場合は、Aを保護する必要はありませんよね。

そういう場合は、Bがうっかりしていたとしても、なお売買契約を取り消すことができるとしています。

なお、4項については、本問のケースでは「第三者」が出てきませんので、検討する必要はありません。

まとめ

上記の検討のように、錯誤とは、「勘違い」のことを指しますが、実際のトラブルとの関係では、上記事例のように、「勘違いして支払ってしまったお金を返してほしい」とか、「勘違いして契約をしてしまったので、契約を無かったことにしてほしい」という具体的なトラブルの中で用いられる概念であるということが分かります。

また、上記の検討のように、法律には、一見難しい言葉が並んでいるように見えますが、実は、法律には、「当然のこと」が書かれているにすぎません。

ですから、普段の学習においても、まずは、難しい言葉を簡単な言葉に置き換えることと、その具体例を言えるようになること、この二つを押さえながら学習すると、暗記もしやすくなりますし、かつ、忘れにくくなる知識が増えていきます。ぜひ参考にしてみてください。

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