『リーガルクエスト民事訴訟法』の司法試験へ向けた勉強での使い方と特徴
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この記事では、民事訴訟法の基本書として『リーガルクエスト 民事訴訟法』の内容と特徴、使い方、評価について説明していきます。
民事訴訟法は条文がなかったり、あっても概括的な規定にとどまることが多く、判例も必ずしも発展していないことが多い分野です。
そのため解釈のウェイトが大きく、基本書が重要になります。
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リーガルクエスト民訴の内容と特徴
まず初めにリーガルクエスト民事訴訟法の内容と特徴について解説していきます。
概要
『リーガルクエスト 民事訴訟法』は、三木浩一教授(慶應大学)、笠井正俊教授(京都大学)、垣内秀介教授(東京大学)、菱田雄郷教授(東京大学)の共著で、近時の民訴法の議論を総ざらいしてくれる本です。
本書の特徴として、最新かつスタンダードな内容、結論の明示、読みやすい文章が挙げられます。
最新かつスタンダードな内容
『リーガルクエスト 民事訴訟法』は先に書いたとおり、東大、京大、慶應の先生の共著であり、研究においても大きな影響力を有している4人の議論を経て書かれているため、その内容は最新かつスタンダードです。
自白や二重起訴(本書では重複訴訟の処理の問題として扱われます)の議論に三木先生の主張が強く反映されています。
後者については司法試験(平成30年民事訴訟法)に同様の問題意識に出たものと思われる問題が出題されたことがあるほどであるため、本書の記述はむしろ試験の役に立ちます(なお、三木先生の見解は、『注釈民事訴訟法第4巻』、『民事訴訟における手続運営の理論』にまとまっています)。
結論が明示されている
『リーガルクエスト 民事訴訟法』は、議論が錯綜している問題についても一定の結論を示してくれており、ともかく一つの答えを出さなければならない受験生にとって使いやすくなっています。
その結論がスタンダードなものであることは、先に書いたとおりです。
文章が読みやすい
『リーガルクエスト 民事訴訟法』は文章が読みやすいことも特徴です。
本書以前の民事訴訟法の本は講義調であり、インプットのために淡々と読むには必ずしも向かないものが多かったですが本書は癖のない文章で適切に見出しや段落を区切って書かれており、受験生にとって使いやすいです。
司法試験の勉強での使い方
ここからは司法試験の勉強での本書の使い方について解説していきます。
短答試験のための利用方法
『リーガルクエスト 民事訴訟法』は、短答試験に向いています。
民事訴訟法は過去問を中心に勉強すべきですが、インプットした知識の相互関係や判例の流れ、制度趣旨との関係といった全体像を理解するのに本書は役立ちます。
また、制度趣旨がしっかりと書かれているため、六法にマーキングしながら本書を読むことで、最高裁の取った結論が分からなくなったときでも制度趣旨を思い出し、そこから最高裁の取った結論を推測することが可能になります。
論文試験のための利用方法
『リーガルクエスト 民事訴訟法』は、論文試験でも効果を発揮します。
もちろん、過去問が第一であることは論文試験もあるいは民事訴訟法の試験も同じなのですが、『リーガルクエスト 民事訴訟法』に書かれていることさえ分かっていれば、全受験生の少なくとも平均以上の知識を持つことができます。
言い換えれば、本書に書かれていないことは他の受験生も分からないので気にする必要がありません。
本書には最新かつスタンダードな内容が書かれていて、その問題意識は出題者も共有していることが多いため、最新の問題意識から出た問題を単なる現場思考問題としてではなく、理論的に考えて解答することが可能になります。
民事訴訟法に関する基本書との組み合わせ
『リーガルクエスト 民事訴訟法』 とその他の基本書との組み合わせや差別化されている点について解説をしていきます。
基礎からわかる民事訴訟法
民事訴訟法について必要最低限のことが知りたい場合には、『基礎からわかる民事訴訟法』が向いています。
受験生の間では、かつて和田吉弘『基礎からわかる民事訴訟法』が人気がありましたが、最近改訂されたため、本書と迷う人もいると思います。
『基礎からわかる民事訴訟法』は、元裁判官による本であり、実務的な観点から書かれています。
一方、制度趣旨や最新の理論に触れたい場合、本書が向いています。
他の基本書との組み合わせ―読解 民事訴訟法
受験生の間では、勅使川原和彦『読解 民事訴訟法』も人気があります。
全体的なことについては『リーガルクエスト 民事訴訟法』で勉強した上で、受験生が陥りがちな誤解を解いたり、論点について深く理解するために『読解 民事訴訟法』を読む、といった使い方をするのがよいです。
『読解 民事訴訟法』は、試験対策に配慮した論点解説集といった書籍であり、基本書ではありません。
リーガルクエスト民事訴訟法の評価
まとめると『リーガルクエスト 民事訴訟法』は、
- 短答試験でインプットした知識の相互関係や、判例の流れ、制度趣旨との関係といった全体像を理解したいとき
- 論文試験で全受験生がの少なくとも半分が知っている知識を漏らさず得たいとき
- 最新の問題意識に触れたいとき
など、上記のようなときに効果を発揮します。
一方、
- 必要最低限のことが知りたいときは、元裁判官による本として、『基礎からわかる民事訴訟法』と、
- 受験生が陥りがちな誤解を解いたり、論点について深く理解したいときは、試験対策に配慮した論点解説集として、『読解 民事訴訟法』と、
それぞれ組み合わせて使うのがよいです。
このような使い方をする場合、本書はかなり役に立つはずです。
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