【これが真実】弁護士の将来性は?増えすぎて食えない・儲からない・需要がないという噂は本当か
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昨今、「弁護士に将来性・需要はない」という噂を聞くことがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。
また、AIの登場によって、弁護士の仕事がなくなることはあるのでしょうか。
今回のコラムでは、弁護士の将来性・需要の有無について解説していきます。
弁護士という職に興味をお持ちの方はぜひご覧ください。
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弁護士が「将来性がない」「需要がない」「食えない」と言われる背景
弁護士が「将来性がない」と言われる背景には、「①司法制度改革による弁護士数の増加」「②平均年収の減少」「③他の仕業ができる業務の拡大」があります。
法律業界の動向の変化により、需要が下がるのではないかと懸念する声があります。
①司法制度改革による弁護士数の増加
2000年頃、裁判の迅速化や国民へのより充実した法的サービスの提供のため、司法制度改革がなされました。
この改革の根幹はロースクール制度の発足です。
より質の高い法曹を生むため、ロースクールという大学院制度(法科大学院)を設けたのです。
司法制度改革前まで、司法試験に受験資格は存在しませんでした。
しかし、ロースクール、つまり法科大学院という新たな教育機関が誕生したことで、原則としてロースクールを修了した者にしか司法試験の受験資格を認めない運用になりました。
(ロースクールに通わなくとも、予備試験に合格することで司法試験の受験資格を得ることが可能です)
この制度だと司法試験合格者は減少するようにも思えますが、実際には政府の方針として、ロースクール修了者の多くを合格者にすることを目標としていたため、司法試験合格者は増えています。
現に、ロースクール制度発足年である2004年における弁護士総数は20,224人でしたが、運用から16年経過した2020年における弁護士総数は42,164人にまで増加。
※参考:日本弁護士連合会と弁護士数
弁護士人口の将来予想 によれば、弁護士総数は2032年には53,792人になると予測されています。
このように、司法試験の合格者が増加し、その合格者の多くが弁護士となるため、日本全体の弁護士数は増加傾向にあります。
そのため、供給過多と評価でき、「需要がない」「食えない」との噂がたつ背景となっています。
②平均年収の減少
前述の弁護士数の増加に伴い、弁護士の平均年収が減少しています。
日本弁護士会が実施した弁護士に対するアンケート調査によれば、2006年における所得平均は約1,748万円でしたが、2018年における所得平均は約959万円とのデータがあります。
このように、弁護士の年収が減少傾向にあるのは事実であり、この資料を基に「弁護士に将来性はない」「儲からない」との評価がなされているのでしょう。
③他の仕業ができる業務の拡大
弁護士が「将来性がない」と言われる背景の一つとして、他の仕業ができる業務が拡大していることが挙げられます。
これまでは、弁護士・司法書士・行政書士の業務内容が明確に棲み分けされていました。
しかし、近年法改正があり、これまでは弁護士の独占業務であった「裁判手続き代理業務」の一部を司法書士もできるようになり、「紛争解決手続き業務」の一部も行政書士ができるように変更されました。
これにより、弁護士一人あたりに依頼される案件数が少なくなるという可能性はあります。
弁護士の需要は根強い
前述したように、弁護士の将来性や需要について悲観するような噂がありますが、実際は弁護士にはまだまだ根強い需要があると考えられます。
その理由について以下で解説していきます。
①特定の弁護士事務所の採用数が上昇傾向にある
毎年の弁護士数が増加している一方、もしも弁護士事務所の採用人数が横ばいであれば、弁護士の需要がないと判断できるでしょう。
しかし、実際には事務所の採用人数も増加しています。
例えば、企業法務(企業間の紛争やM&A、資金調達)を主にに扱う弁護士事務所は一定数ありますが、特に有名なのが5大事務所です。
5大事務所とは、多くの弁護士を抱えた大所帯の事務所5つの総称です。
具体的には、西村あさひ法律事務所、長島・大野・常松法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業、森・濱田松本法律事務所、TMI総合法律事務所を指します。
これら事務所の採用人数は、2009年では計116人でしたが、2021年では計211人でした。
※参考:司法修習生進路調査
このように、弁護士数の増加だけでなく、事務所採用人数も増加していることを考えれば、弁護士の案件・業務は多くあるということを意味します。
そのため、決して「弁護士の需要がなくなった」わけではないと言えるでしょう。
②多種多様な働き方が開拓されている
2000年前後の弁護士の働き方としては、裁判所付近に弁護士事務所を構え、主に刑事や民事の法廷紛争を扱うのが主流でした。
しかし、現在の弁護士の働き方は極めて多様化しています。
前述した企業法務、国際案件を主に扱う渉外法務、民間企業の法務部等で一社員として会社をサポートするインハウス、官公庁などで働く任期付き公務員など、法廷紛争以外の業務が増えているのです。
現に、インハウス弁護士、つまり企業内弁護士の数は、2014年では1,000人ほどでしたが、2021年には2,965人にまで増加。
※参考:企業内弁護士数の推移(2001年~2022年)
これはまさに、社会の中で弁護士へのニーズが高まっていることの表れであり、まだまだ色々な需要があると十分にいえます。
児童相談所へのサポート、小学校・中学校などでのいじめ問題に対するサポートや、新たな技術であるAI等の知的財産専門弁護士など、今後の社会問題や技術革新に伴い、弁護士のニーズは変容しつつも、常に社会に存在しています。
※関連コラム:弁護士になるには?予備試験ルートを推奨する6つの理由~年齢や費用など~
AIの登場で弁護士の仕事は奪われないのか
AIの登場で、弁護士の仕事が奪われるのか?という疑問については、結論から言うと、完全に奪われることは考えにくいでしょう。
理由について、詳しく解説していきます。
弁護士業務の多くは、AIでは代替できない
弁護士業務の多くは、AIでは代替できません。
なぜなら、弁護士の仕事には人間を相手にした高度なコミュニケーション力が求められるからです。
また、依頼者から信頼を得ることは、AIには難しく、相手を説得したりすることも、できないでしょう。
複雑な案件を理解したり、人の感情を読み取ったりすることは、AIには困難なことです。
AIの登場により、弁護士の働き方が変わることは考えられますが、仕事がなくなる可能性は極めて低いでしょう。
AIはあくまでも弁護士業務の効率化する役割にすぎない
AIは、すでに弁護士の業務でも活用されていますが、あくまで業務を効率化に使用されているという状況です。
現状、AIが担っているのは、契約書の作成・確認業務や賠償金の算出といった、事務作業です。
このような作業効率化は、今後ますます進んでいくと考えられます。
ただし、依頼者からのヒアリングや法的なアドバイスなど、人との関わりや高度な判断力が必要な業務に関しては、今後もAIに奪われることはないでしょう。
弁護士には十分に将来性がある
「弁護士に将来性はない」との噂がありますが、それは表面的な評価に過ぎません。
弁護士の法律事務所採用人数の傾向や他のキャリアパスの存在などを考慮すれば、弁護士の需要、将来性はまだ十分に高いと言えるでしょう。
司法試験は難関ではありますが、しっかりと対策を行えば決して合格できない試験ではありません。
弁護士に興味がある方は、「どのような業務を扱いたいか」「どのような弁護士になりたいか」を明確にイメージし、高いモチベーションを持って司法試験を目指していくと良いでしょう。
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