基礎演習民事訴訟法の内容と司法試験に向けた勉強での使い方
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このコラムでは、長谷部由起子編『基礎演習民事訴訟法』について書いていきます。
多くの受験生は民事訴訟法という抽象論の最も複雑な科目に苦戦していると思います。
予備校のインプット教材や典型的な論点の理解や暗記は終えたものの、司法試験の民事訴訟法特有のひねりのある法律論の論述や判例射程問題への対応などにどう対応していいかわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで、受験生の中でもポピュラーな演習本の一つ、基礎演習民事訴訟法の特徴、また、これを使うべき受験生のレベルや使い方などを書いていきます。
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基礎演習民事訴訟法は有名な民事訴訟法学者30名により、民事訴訟法の主要論点を30テーマに絞り、これらを事例問題への解決という形で解説していく演習本です。
内容としては、「当事者能力」や「争点効・信義則」など、司法試験でも頻出のテーマに絞ったうえで、司法試験の問題を若干簡易化させた問題文が掲載されています。
そして多くの章では、まず初めに当該論点の一般論を複数の学説に触れ、それらを整理しつつ解説しています。
そのうえで当該個別事案への解決という形で解説されています。
全体としては、一つのテーマを深堀していくため、30テーマに絞られているのもあり、網羅性には若干欠ける印象です。
他方、一つのテーマに対する解説は厚く、いわゆる典型論点の論証パターンの貼り付けでは対応しようのない、ひねった問題への対応力の涵養という面ではおすすめできる教材であると感じます。
そしてレベルについてですが、勉強開始してすぐの方(予備校の基礎講座のレベルが固まっていない段階)には少しレベルが高く感じられるものであると感じます。
そのため、基本的な論証を押さえ、初学者向けの演習本、予備校の短文問題集などを終えた受験生の過去問への橋渡しといった位置づけのレベルであるといえます。
勉強への使い方
民事訴訟法の主要論点の復習
民事訴訟法の試験範囲そのものは膨大です。
基本書、予備校の基礎講座テキストなどは管轄などのテーマから始まり、上訴までとかなり多くのテーマが扱われています。
しかし、民事訴訟法の司法試験及び予備試験での出題蓋然性が高いテーマは極めて偏っており、数年に一度は必ず出題されるようなテーマ(例えば弁論主義、自白、補助参加など)も多く存在します。
そこで、勉強の2周目は、1周目とは異なり、主要なテーマに絞って緻密に理論面を固めていくという勉強方針が有用な科目となります。
そのため、勉強の2周目に使うのであれば、上述の本書の特徴は司法試験の試験傾向に合致するものであるといえます。
司法試験特有のひねりのある問題への対応
何度も書いているように、民事訴訟法の試験の出題形式は独特です。
多くの受験生が「論証」の形で覚えているような判例の規範などを直接吐き出すのではなく、それらの知識を前提に、試験本番まで受験生が考えたこともないような問題点を問うてくる問題が多いのです。
この傾向に対応するためには、多くの現場思考論点をしらみつぶしに、手広く知識をつけていくしかないとも思えます。
しかし、そうではなく、このような問題を解けるようになるための近道は、主要なテーマ、基礎論点に対する深い理解なのです。
「この制度の趣旨は何か」
「この重要判例はこういう事案だったからこう判示した」
など、基本的な点をしっかり理解することで、試験本番も問題の所在に気が付くことが出来ます。
この傾向を頭に入れたうえで、本書の特徴を振り返ると、主要なテーマにつき多角的に深い検討を加えているという点で、この科目の試験の傾向に合致しているといえます。
※関連コラム:【司法試験・予備試験】正しい演習書の使い方と科目別おすすめ本14冊
基礎演習民事訴訟法の評価
この演習本が向いている人は、基本的な論点は一応網羅したが、主要な論点のうち理解の複雑なもの(例えば独立当事者参加など)の事例問題が解ける自信がない、司法試験の過去問への橋渡しとして何か問題演習をしておきたいといった方です。
基礎演習という名前につられて、入門書レベルだと思い、初学者が手を出すと苦労するレベルであると思います。
なお本書の使いづらい点としては、抽象論に詳細な検討がされているけれども、結局、答案にどう表現したらよいのかわからないという状態に陥る可能性がある点です。
読む際に答案に表現するならどういうロジックで書くかなどをイメージしながら読んでいかないと「理解したつもり」で終わってしまう可能性があるので注意しましょう。
なおアガルートアカデミーでは、同書の解説講座が展開されており、全ての問題に答案例がついています。
理解の答案への反映のさせ方がわからないという方にはこちらの講座の併用もおすすめです。
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