企業内弁護士(インハウスローヤー)とは?なるにはどうする?年収や仕事内容の違いについても解説
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弁護士と聞くと、法律事務所で働いている弁護士を思い浮かべる方が多いと思います。実際、多くの弁護士はどこかしらの法律事務所に所属して働いている場合が多いです。
一方、近年では一般企業において雇用される企業内弁護士も増えてきています。もっとも、企業内弁護士と言われても、具体的にどのような業務をしているのかご存じではない方が多いのではないでしょうか?
そこで、本コラムでは、企業内弁護士の具体的な仕事内容や、法律事務所勤務との違い、企業内弁護士のメリットなどについて解説したいと思います。
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企業内弁護士とは?わかりやすく解説
企業内弁護士とは、正式には、日本法に基づく会社、外国会社の日本支社、特殊法人、公益法人、事業組合、学校法人、国立大学法人等、国と地方自治体以外のあらゆる法人に役員又は従業員として勤務する弁護士のうち、当該法人の所在地を自身の法律事務所所在地として弁護士登録している者をいいます(日本弁護士連合会:企業内弁護士とは )。
もっとも、多くの場合、企業内弁護士とは、一般企業で従業員として雇用されて、社内での法務関連業務等に携わる弁護士のことを意味し、本コラムにおいてもこのような弁護士を想定して説明していきます。
企業内弁護士の仕事内容
企業内弁護士は、あくまで一般企業の従業員として雇用される弁護士であるため、その仕事内容は、所属する企業や部署によって異なります。
取引先や行政当局との交渉、契約書審査、社内規程の策定はもちろん、M&A計画の立案・実行や知的財産戦略の立案、法務部門全般、訴訟管理、コンプライアンス体制の策定・実施・監視など、その業務内容は様々です(日本弁護士連合会:企業内弁護士に関するQ&A )。
ここでは、その中でも特にメインの業務となる契約書審査について説明します。
契約書審査とは、その名の通り、社内の各部署や取引先から送られてくる契約書をチェックする仕事です。
一般企業の場合、取引を開始する際には何らかの契約を締結するのが通常です。
契約の種類は、会社の事業内容や取引先によっても異なりますが、商品の売買契約や、商標・著作物等のライセンス契約、派遣契約、業務委託契約など多岐に渡ります。
そして、これらの契約を締結するに当たっては、契約書を作成することが必要です。
そのため、企業内弁護士は、これらの種々の契約書について、法的リスクの有無等のチェックを行なう必要があります。
このような仕事が、契約書審査といわれる業務です。
企業内弁護士の働き方
企業内弁護士は、他の従業員と同様、勤務先の企業の就業規則に従って働くことが多いです。
そのため、朝9時頃に出社して夕方6時頃に帰る、というような一般の会社員と同じような働き方になります。
もっとも、一般の会社員と同様、繁忙期などには残業が必要になる場合もあるでしょう。
企業内弁護士の人数の推移
年度 | 人数 |
---|---|
2001 | 66 |
2002 | 80 |
2003 | 88 |
2004 | 109 |
2005 | 123 |
2006 | 146 |
2007 | 188 |
2008 | 266 |
2009 | 354 |
2010 | 428 |
2011 | 587 |
2012 | 771 |
2013 | 953 |
2014 | 1,179 |
2015 | 1,442 |
2016 | 1,707 |
2017 | 1,931 |
2018 | 2,161 |
2019 | 2,418 |
2020 | 2,629 |
2021 | 2,820 |
2022 | 2,965 |
2023 | 3,184 |
上の表からも分かるように、企業内弁護士の数は年々増加しており、2001年から2023年までで、約50倍の数に増えています。
特にここ10年の間で、企業内弁護士の数は飛躍的に増加しており、今後も増加し続けることが予想されます。
企業内弁護士が増えている理由
では、これほどまでに企業内弁護士の数が増えているのはなぜなのでしょうか。
その要因としては、大きく「弁護士人口の増加」と「企業のコンプライアンス意識の強化」が挙げられます。
弁護士人口の増加
2001年の司法制度改革に伴い、日本における弁護士人口は大きく増加することになりました。
司法制度改革以前は、日本の弁護士数は非常に少なく、一般企業にまで弁護士の供給が追いついていないのが実情でした。
もっとも、司法制度改革を機に、弁護士の数が増加したことで、法律事務所だけでなく一般企業にも弁護士が就職するようになり、年々企業内弁護士の数が増加することになりました。
このように、近年の企業内弁護士の増加には、司法制度改革に伴う弁護士人口の増加が深く関わっています。
企業のコンプライアンス意識の強化
また、近年では、グローバル化や時代の変化に伴って、企業のコンプライアンスに対する意識が高まっています。
ニュースなどでも、企業におけるセクハラやパワハラといった問題がよく取り上げられていますよね。
このような法的リスクに対応するという意味でも、企業内弁護士は重宝されています。
外部の弁護士に依頼をすると、どうしても時間や費用が多くかかってしまいますが、企業の中に弁護士がいれば、法的なトラブルが発生した場合でも、迅速かつ最低限の費用でトラブルに対応することができます。
このように、企業のコンプライアンス意識の強化も企業内弁護士増加の要因となっているといえるでしょう。
企業内弁護士の年収
企業内弁護士の年収は、勤務する企業によっても異なりますが、500万〜1000万円程度がボリュームゾーンとなっているようです。
弁護士は、資格を持った専門職であるため、所属企業のその他の従業員に比べると、給料が上乗せされる傾向にあります。
そのため、企業内弁護士であっても、法律事務所の弁護士に比べて極端に年収が低いということはありません。
企業内弁護士になるには?
企業内弁護士になるには、まずは、法律事務所勤務の弁護士と同様、司法試験に合格し、司法修習を修了する必要があります。
その後は、司法修習修了後に新卒で企業内弁護士になる人もいれば、一定期間法律事務所で実務経験を積んだ後に転職して企業内弁護士になる人もいます。
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新卒1年目でも企業内弁護士になれるの?
結論からいうと、新卒1年目でも企業内弁護士になることは可能です。
新卒1年目で企業内弁護士として勤務したい場合には、法律事務所の就活と同様、法科大学院生や修習生の間に、一般企業の就活を行うことになります。
もっとも、法務部はあるけど企業内弁護士は特に募集していない、という企業も多く存在するため、志望する企業がどのような採用形態で募集を行なっているのかという点は、事前によく確認するようにしましょう。
企業内弁護士を多く抱える企業としては、以下のような企業が挙げられます。企業内弁護士を志望する方は、企業選びの際の参考にすると良いでしょう。
順位 | 企業名 | 人数 |
---|---|---|
1 | ヤフー | 27 |
2 | 野村證券 | 23 |
3 | 三菱商事 | 22 |
4 | 三井住友銀行 | 21 |
5 | 三井物産 | 17 |
6 | 双日 | 16 |
6 | 三菱UFJ銀行 | 16 |
6 | LINE | 16 |
9 | アマゾンジャパン | 15 |
9 | 丸紅 | 15 |
9 | 三井住友信託銀行 | 15 |
9 | 三菱UFJ信託銀行 | 15 |
13 | SMBC日興証券 | 14 |
13 | パナソニック | 14 |
13 | みずほ証券 | 14 |
16 | 伊藤忠商事 | 13 |
16 | 住友電気工業 | 13 |
16 | 第一生命保険 | 13 |
16 | ゆうちょ銀行 | 13 |
20 | NTTドコモほか2社 | 12 |
企業内弁護士を多く抱える企業上位20社(2001年~2023年) より
法律事務所の弁護士と企業内弁護士の違い
ここまで、企業内弁護士とは一体何なのか、ということを説明してきました。
法律事務所勤務の弁護士と企業内弁護士の違いについて、年収、仕事内容、働き方・ライフワークバランスの3つに分けて説明していきます。
年収
前の章でも述べたとおり、企業内弁護士の年収は500万〜1000万円前後の場合が多いです。
これに対し、法律事務所勤務の弁護士の場合、人によってかなり差がありますが、500万~1500万円がボリュームゾーンとなっており、基本的には企業内弁護士であっても法律事務所勤務の弁護士であっても、収入にはそれほど差がないといえます。
もっとも、法律事務所勤務の弁護士の場合、パートナーになれば年収5000万〜1億円程度稼ぐことも夢ではありません。
企業内弁護士の場合、基本的には一般企業で雇用されている立場であるため、年収5000万円以上稼ぐのはなかなか難しいといえるでしょう。
このように、法律事務所勤務の弁護士と企業内弁護士の年収は、平均すると同程度だといえますが、法律事務所勤務の弁護士の方が、成功した場合の経済的なインパクトは大きいといえます。
仕事内容
企業内弁護士の仕事内容は、取引先や行政当局との交渉、契約書審査、社内規程の策定をはじめとし、M&A計画の立案・実行や知的財産戦略の立案、法務部門全般、訴訟管理、コンプライアンス体制の策定・実施・監視など多岐にわたります。
もっとも、企業内弁護士である以上、一般民事や刑事事件を取り扱うことはほとんどなく、基本的には企業法務と呼ばれる分野が中心となります。
これに対し、法律事務所勤務の弁護士の場合、一部の大手法律事務所等を除いては、一般民事や刑事事件から企業法務まで幅広い業務分野を取り扱っていることが多いです。
このように、企業内弁護士の仕事内容には様々なものがあるものの、法律事務所勤務の弁護士と比べると、その業務分野は限定されているといえます。
働き方・ライフワークバランス
企業内弁護士は、勤務先の企業の就業規則に従って働くことが多いです。
したがって、朝9時頃に出社して夕方6時頃に帰る、というようないわゆる一般の会社員と同じような働き方も可能であり、ライフワークバランスは比較的保ちやすいといえるでしょう。
これに対し、法律事務所勤務の弁護士の場合、事務所によっても異なりますが、企業内弁護士と比べると忙しい事務所が多いです。
そのため、企業内弁護士の方が、働き方やライフワークバランスといった点では安定しているといえるでしょう。
企業内弁護士になるメリットとデメリット
ここからは、企業内弁護士になるメリットとデメリットについて解説していきます。
メリット
企業内弁護士になるメリットとしては、①安定した働き方ができること、②福利厚生が充実していること、③ビジネスに主体的に関与することができること、の3つが挙げられます。
以下では、それぞれについて詳しく説明します。
①安定した働き方ができる
上でも述べたとおり、企業内弁護士は、法律事務所勤務の弁護士に比べると労働時間も短く、会社員と同じような生活リズムで過ごすことができます。
そのため、法律事務所の激務に耐えられる自信がないという方にとっては、企業内弁護士はとても良い選択肢だといえます。
②福利厚生が充実している
企業内弁護士は、他の従業員と同様、一般企業において充実した福利厚生を受けることができます。
これに対し、通常の法律事務所は、弁護士の数も数人程度のところが多く、一般企業のような福利厚生を受けることはできません。
したがって、福利厚生を重視する方には、企業内弁護士がおすすめです。
③ビジネスに主体的に関与することができる
企業内弁護士は、所属企業のビジネスに主体的に関与することができ、これは大きなやりがいの一つといえます。
案件の初期の段階から関わり、戦略を構築していく作業は、企業の外部にいては困難であるため、法律事務所勤務の弁護士とは違った形でビジネスに関与することができます。
また、関係部署からの感謝の声や、フィードバックを直接耳にすることができる点も、企業内弁護士のやりがいといえます。
デメリット
企業内弁護士になるデメリットとしては、①法律事務所勤務の弁護士と比べると自由度が低いこと、②法律事務所勤務の方が稼げる可能性があること、③仕事が単調に感じる場合があること、の3つが挙げられます。
以下では、それぞれについて詳しく説明します。
①法律事務所勤務の弁護士に比べると自由度は低い
企業内弁護士は、企業という組織の中で働いている以上、ある程度は組織のルールに縛られることになります。
例えば、出社時間について、法律事務所の場合は基本的に自由なことが多いですが、企業内弁護士の場合には決められていることが多いと思います。
また、企業内弁護士の場合、異動や転勤を命じられる可能性もゼロではありません。
このように、自由度という点では、法律事務所に比べるとどうしても劣るといえます。
②法律事務所勤務の方が稼げる可能性がある
先ほども説明したとおり、企業内弁護士であっても、年収1000万円前後は十分に稼ぐことができます。
しかしながら、法律事務所のパートナーのように、年収5000万円以上稼ぐことはなかなか困難です。
そのため、とにかくたくさん稼ぎたいという方には、企業内弁護士はあまりおすすめできないといえます。
③仕事が単調だと感じる場合がある
企業内弁護士の業務は、企業法務全般にわたっており、その種類は様々です。もっとも、所属企業や部署によっては、同じような業務の繰り返しになり単調に感じてしまうこともあるかもしれません。
これに対し、法律事務所勤務の弁護士の場合には、一般民事や刑事事件から企業法務まで幅広い業務分野を取り扱う場合が多く、仕事内容自体もバラエティに富んでいます。
このように、企業内弁護士の場合には、仕事を単調だと感じてしまうことがあります。
企業が弁護士を採用するメリット
企業が弁護士を採用するメリットとしては、社内で法的なトラブルが発生した場合に、迅速に対応できるという点が挙げられます。
また、ちょっとした法律知識を確認したい場合であっても、外部の弁護士に依頼すると費用がかかってしまう一方、企業内弁護士であれば気軽に尋ねることが可能です。
顧問弁護士との違いは?
企業内弁護士と似たような仕事を行うものとして、顧問弁護士というのがあります。
企業内弁護士も顧問弁護士も、企業における法務全般を扱うという点では非常によく似ています。
もっとも、顧問弁護士の場合、特定の企業に雇用されているのではなく、顧問契約という形で契約を締結していることが多いです。
顧問契約とは、特定の専門家との間で優先的な事件処理や助言を得ることを目的として締結される契約で、業務委託契約の一種です。
弁護士が顧問契約を締結する場合、企業内の法的問題に対する相談や助言を得ることを内容とされます。
したがって、基本的に顧問弁護士は、法律事務所に勤務しながら、特定の企業(複数の場合もあります)と顧問契約を結ぶことになります。
このように、企業内弁護士と顧問弁護士は、業務内容については重複する部分も多いのですが、企業との契約形態などに違いがあり、その働き方は異なります。
参考:企業内弁護士と顧問弁護士の違い | 弁護士の転職ノウハウ | 転職エージェント【アガルートキャリア】
まとめ
本コラムでは、企業内弁護士の仕事内容や年収、法律事務所勤務の弁護士との違いなどについて説明してきました。
企業内弁護士は、法律事務所勤務の弁護士と比べると、安定した働き方をすることができ、ワークライフバランスも保ちやすいのが魅力的です。
近年では、一般企業における企業内弁護士の需要が高まり、企業内弁護士の数自体が年々増加してきています。
現在、弁護士を志望されている方は、企業内弁護士も選択肢に入れて検討してみるのも良いでしょう。
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