本コラムでは『債権総論』の特徴や、試験に向けての活用法について解説していきたいと思います。

「債権法が改正されて久しいけれど、改正法について信頼できる基本書で勉強したい」「近年の反対説にも配慮した司法試験の出題傾向にも対応できるような勉強をしていきたい」そのように考えている人は多いのではないでしょうか。

司法試験の対策という観点からすると、一工夫を加えて読むようにするとより一層力を発揮する基本書です。

『債権総論(中田裕康著)』の内容と特徴

本書の特徴としては、

1. 改正法についてとても詳しい記述がされていること
2. 判例、通説のみにとどまらず、有力説、自説としている学説、反対説についても丁寧な記述がされていること

が挙げられます。

詳しく解説していきます。

特徴①　改正法について詳しい記述がされている

債権法が改正されて久しいですが、まだまだ改正法について懇切丁寧に記述がされている基本書は少ないのが現状です。

限られた記述しかない基本書で何とか勉強しつつ、テストに備えるというのが多くの受験生の現実なのではないでしょうか。

本書では、改正法の要点について詳しくまとめられているのはもちろんのことながら、改正に至る経緯などもまとめられています。

本書は旧法時代からの受験生は、自分の知識と紐付けて学ぶことができます。

改正法から勉強を始めた皆さんにとっても、条文の趣旨などがわかりやすくなっています。

改正民法の歴史も垣間見えるので、無味乾燥になりがちな法律勉強が、知的好奇心をくすぐるものとなります。

ですので、改正民法を学ぶにあたっては、本書はとっておきの一冊となると思います。

特徴②　学説、反対説についても丁寧な記述がされている

本書では有力説、反対説に渡って詳しい記述がされている基本書です。

多くの受験生は、今まで判例や通説だけを学んで試験に挑んでいたと思いますが、刑法では周知の通りここ数年間学説対立問題が続いて出題されています。

さらに、令和4年度司法試験では憲法も三者対立構造の問題に戻りましたし、民法でも簡単な学説対立問題が問われました。

このことから、司法試験委員会がこれまでの「判例・通説だけを効率よく押さえる」という勉強法ではなく、「様々な学説の議論状況にまで配慮した」勉強法を受験生に求めてきているというメッセージを読み取ることができます。

本書は今後の試験対策という観点からしても優れていると言えるでしょう。

司法試験の勉強での使い方

本書は少し文章が固く、難しく感じる方もいます。

本書の内容は正確性が高く、充実しているので、少し勉強の進んでいる受験生の通読におすすめです。

通読

本書は様々な学説についてまとめられています。

初めに読むときは、判例・通説の解説のみピックアップして読むことをおすすめします。

判例・通説の解説を読んだ後に個別の分野について反対説を確認するといいでしょう。

反対説などの確認のための参考書として

基本書として通読する使い方だけではなく、初学者がまず平易な基本書で科目の概要を掴んだ後に、本書を反対説等確認のための参考書として活用する方法がおすすめです。

『債権総論(中田裕康著)』の評価

以上の通り、本書は近年の司法試験対策という観点からしてもとてもオススメできる一冊です。

特に、改正民法についてしっかり対策していきたい、あるいは、判例・通説だけでなく有力説や反対説など幅広い学説をカバーしていきたいと思っている受験生の強い味方になるでしょう。

このような受験生の方は、ぜひ本書を手に取って勉強に活用して欲しいです。