『大学在学中に,予備試験合格&司法試験合格を目指す』という目標を見たとしても,多くの大学生は,夢物語のように思われるかもしれません。

しかし,大学在学中の司法試験合格者は実際に存在しており、合格率も高い傾向にあります。

大学生が夢物語と思われる『大学在学中の予備試験合格&司法試験合格』の現状とその理由についてみていきましょう。

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大学在学中の司法試験合格は可能!!

正しい取り組み方をすれば、在学中に司法試験に合格することは、十分可能です。現行の司法試験制度では、法科大学院に入学して、司法試験の受験資格を得るか、予備試験に合格することで、司法試験の受験資格を得る必要があります。

この2つのルートのうち、予備試験ルートで大学2年時ないし大学3年時に合格することができれば、在学中の司法試験合格が可能になります。

法務省の発表によると,令和6年司法試験の最年少合格者の年齢は17歳となっており,これは,大学在学中だけでなく高校在学中でも司法試験に合格できることを示しています。

司法試験における大学生の合格率と合格者数

試験年度合格率受験者数合格者数
平成26年94.0%50人47人
平成27年89.5%57人51人
平成28年95.8%72人69人
平成29年95.7%93人89人
平成30年94.1%119人112人
令和元年99.0%96人95人
令和2年97.3%150人146人
令和3年98.1%156人153人
令和4年99.3%150人149人
令和5年97.2%37人36人
令和6年97.0%67人65人

※参考:司法試験の結果について

理由は,予備試験ルート

大学在学中の司法試験合格者が増加している理由は,司法試験予備試験制度にあります。

司法試験予備試験とは,法科大学院を経由しないで法曹資格を取得する道を開くために設けられた試験で,これに合格した者は,法科大学院修了者と同等の資格で司法試験を受験することができます。

司法試験は,法科大学院を修了するか,司法試験予備試験に合格するかしなければ,受験することができません。

しかし,司法試験予備試験に受験資格の制限はなく,誰もが受験することが可能です。

そのため,大学在学中から司法試験予備試験を受験する者が増えており,大学在学中に司法試験予備試験に合格した者が増えていることから,大学在学中に司法試験に合格する学生が増えています。

在学中に予備試験・司法試験を目指すメリット

在学中に予備試験・司法試験を目指すメリットは,早くに実務に出られることです。

法務省の発表によれば,司法試験合格者の平均年齢は,約28歳となっています。

在学中に予備試験に合格し,翌年の司法試験に合格することができれば,20代前半で司法試験に合格したことになります。
法曹三者の多くが,1年でも早く実務に出た方が良いと言っているところであり,20代前半で実務に出ることが可能なのは,在学中に予備試験に合格した場合のみ。

また、予備試験合格者の司法試験合格率は、例年90%前後となっており、この数字はどの法科大学院の司法試験合格率と比べても圧倒的に高くなっています。

これが,在学中に予備試験を目指すメリットの一つであるといえます。

また,予備試験対策は,そのまま法科大学院入試対策にもなりますので、万が一司法試験に受からなかったとしても、ルートを変更する選択もできます。

法科大学院入試は,年々倍率が下がっているものの,依然として難易度は高く,対策をしないと上位法科大学院に合格することは困難です。
そして,早い時期から予備試験・司法試験対策をしていれば,法科大学院対策でも他の受験生に大きなアドバンテージをつけることができます。

これも,在学中に,予備試験・司法試験を目指すメリットとなります。

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司法試験予備試験の「大学」区分の合格率

予備試験合格者の最終学歴を分類すると以下のようになりました。

最終学歴別合格率
大学卒業2.35%
大学在学中7.17%
大学中退1.00%
法科大学院修了1.67%
法科大学院在学中4.06%
法科大学院中退0.34%
令和5年司法試験予備試験データより

これを見ると、大学在学中の合格率が最も高くなっています。

この点から、予備試験は何年も勉強してようやく合格するというものでなく、3・4年という大学在学中の短期間で十分合格可能であることが見て取れます。
また、在学中に合格される方はモチベーションが高く、毎日勉強するという短期決戦型の方が多いことが背景にあると推測されます。

もっとも、在学中に合格するのは決して簡単ではありません。
予備試験の範囲が膨大だからです。

そのため、大学在学中に合格される方は資格予備校に通い、効率よく必要最小限度の知識を手に入れて受験する方が大半です。

つまり、大学在学中の合格者の典型例は、受験予備校に通い、毎日勉強するから合格することができるといえるでしょう。

法曹を目指す大学生の皆さんは、ぜひ予備試験にチャレンジしてみてください!

※関連コラム:予備試験とは?

在学中に予備試験に合格するポイント

在学中に予備試験に合格するポイントの一つは,効率的なインプットにより知識の定着を図ることです。

予備試験に合格するためには,法科大学院修了程度の知識が必要とされています。
そのため,大学在学中の人にとって,何ら工夫せずに勉強していては,予備試験に合格するために必要な程度の法的知識を身につけることは困難です。

また,在学中の予備試験合格への最大の壁は,論文式試験合格にあると言われています。

これは,法律科目が7科目でただでさえ負担が大きいのみならず,法律実務基礎科目という大学生にはほとんど馴染みのない科目や選択科目の対策までしなければならないことに理由があります。

ただし、法律実務基礎科目や選択科目は,法律科目7科目を勉強していれば,決して「ゼロ」からの学習とはなりません。
なぜなら,法律実務基礎科目や選択科目は,法律基本科目7科目のどれかに考え方が似ていたり,法律基本科目7科目の応用にすぎないものといえるからです。

大学在学中に予備試験に合格するためには,試験で求められている答案の型を身につけ,試験問題に対応できる応用力を身につけるための,正しい論文対策を行う必要があります

さらに,学習進捗のマネージメントを行うことも大切です。

司法試験予備試験は,5月に短答式試験,7月に論文式試験,10月に口述式試験があります。
そのため,適切な時期に適切な学習をしなければ,それぞれの試験に合格することは困難です。

そして,受験生同士の情報交換を行うことも大切でしょう。
予備試験合格を目指す者同士,情報交換をすれば有益ですし,モチベーションの維持にも繋がります。

予備試験ルートによる司法試験合格の学習スケジュール

◆2年合格の学習スケジュール

予備試験ルートによる司法試験2年合格の学習スケジュールとしては


① 大学1年時から学習を開始し,大学2年時に予備試験に合格,大学3年時に司法試験に合格するというもの
② 大学2年時から学習を開始し,大学3年時に予備試験に合格,大学4年時に司法試験に合格するというもの


の2通りが考えられます。

具体的に見てみますと,学習1年目の早い段階でインプットを効率的に行い正しい知識を身につける必要があります。

そして,学習1年目で,正しい論文の型を身につける必要もあります。

また,予備試験の合格発表は,2月上旬であり,司法試験は同年の7月中旬です。つまり,予備試験の最終合格発表を待って司法試験の本格的な対策を開始するのでは,時間が約半年しかありません。

そのため,9月の論文式試験が終わった後も,継続して論文対策を行うことが大切です。

大学生が司法試験合格までに必要な勉強時間は?

3,000~8,000時間の勉強時間が必要とされます。

司法試験は文系最難関といわれる試験です。

ご存知の通り、8科目の論文式試験、3科目の短答式試験の試験範囲は膨大です。
この範囲の勉強をすべて行うには、膨大な時間がかかります。

しかし、「単に知識を確認するにとどまらず,掘り下げた考察をしてそれを明確に表現する能力,論理的に一貫した考察を行う能力,及び具体的事実を注意深く分析し,法的な観点から適切に評価する能力を確かめること」(令和元年司法試験民事系科目第一問採点実感)を目的として作成された論文式試験では、「1日〇〇時間勉強した」といった事実はあまり重要ではないといえます。

それよりも、正しい方向で、試験が要求している力に沿った勉強を、集中して行うということが最も重要なのです。
この方向性がずれてしまうと、何万時間勉強しても合格に近づかないということになってきます。

勉強時間は合格のための「手段」ですのでくれぐれも「目的」にならないように注意しましょう。

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まとめ

在学中に、司法試験に合格することは、可能です。

より早く、法曹になることで、実務経験を多く積むことができ、予備試験に在学中に合格すると、就職にも有利になるというメリットがあります。

予備試験対策は、そのまま法科大学院の受験対策にも繋がるため、どちらのルートを選ぶことになっても有効といえます。

まずは予備試験を突破できるよう、勉強に取り組みましょう。

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この記事の監修者 谷山 政司 講師

谷山 政司 講師

平成23年度に(新)司法試験に合格後、伊藤塾にて主に予備試験ゼミを中心とした受験指導業務を担当。
谷山ゼミ受講者のうち、およそ70名ほどが予備試験に合格。谷山ゼミ出身者で、最終的な予備試験の合格率は7割を超える。

自身の受験経験だけでなく、答案の徹底的な分析やゼミ生への丁寧なカウンセリングの結果確立した論文作成ノウハウをもとに、アウトプットの仕方はもちろん、インプットの仕方までをも指導するスタイルは、ゼミ生の圧倒的支持を受けた。

また、期をまたいだゼミ生の交流会等を定期的に行うなど、実務に出た後のフォローも積極的に行っている。

谷山講師の紹介はこちら

ブログ:「谷山政司のブログ」
Twitter:@taniyan0924

 

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