「挫折」せずに司法試験・予備試験の勉強を継続するコツ
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目次
1.司法試験・予備試験受験生に忍び寄る「挫折」
「法曹になろう!」司法試験・予備試験の受験勉強を開始されている全ての方々に,受験勉強を開始しようと決意した日があると思います。
その日のことを思い出してみてください。
多くの方は,希望,勇気,覚悟に満ち溢れていたことと思います。
ところが,司法試験・予備試験という魔物(本当は「見かけ倒しの魔物」なのですが)を前に,様々な事情が積み重なり,それらが複雑に絡み合う結果,「このままで本当に自分は合格できるのだろうか」という不安に突如襲われることがあります。
このような不安から,何をどうすればいいのか,何から手をつければよいのかが全くわからなくなってしまう…そんな状態のまま無為に時間が過ぎてしまう…その結果,防戦一方のままに「もう無理だ」とあきらめてしまう。
これが,司法試験・予備試験の受験勉強を開始した方々にしばしば忍び寄る「挫折」の正体なのではないでしょうか。
これを読まれている皆さんの中にも,もしかしたら自分は「挫折」しかけているかもしれないと思い当たる方も少なくないと思います。
もっとも,それ自体何も心配することはありません。短くとも1年以上はかかる長丁場の司法試験・予備試験受験生活で,そのような感覚を抱くことはむしろ通常なのですから。
大切なことは,このように忍び寄る「挫折」の影に対して,自分はどのように対峙するのかを(予め)考えておくことです。
仮に上記のようなプロセスを経て,「挫折」が生じるのであれば,このプロセスをきめ細やかに分析することによって,「挫折」は予め解消することが可能なのです。
以下でそのことについて詳しく見ていきましょう。
2.「挫折」の主な原因3要素
まずは司法試験・予備試験の受験勉強における「挫折」の原因についてさらに詳しく見ていきましょう。
「1.」で見たように,「挫折」の第一歩目の原因は「このままで本当に自分は合格できるのだろうか」という疑念が生まれてしまうことにあります。
このような疑念は,司法試験・予備試験の受験対策として予備校を利用していない人にはもちろん,予備校を利用している方にも生まれてしまっているのが現状です。
ではなぜ,このような疑念が生まれてしまうのでしょうか。
その理由を探るためには,司法試験・予備試験合格のために必要な要素とは何かという点に一度さかのぼる必要があります。
司法試験・予備試験合格のために必要な要素は以下の3点に大別されます。
(1)「方法論を確立すること」
(2)「可処分時間の確保」
(3)「モチベーションの維持」
司法試験・予備試験合格の有無は,これら3要素の掛け算(足し算ではありません)の数値によって決まるといっても過言ではありませんが,実は上記疑念が生まれてしまう原因は,この合格の3要素と表裏の関係にあるのです。
それぞれの要素について具体的に見ていきましょう。
(1)方法論を確立できない
これが一番の「挫折」の要因と言ってよいでしょう。
司法試験・予備試験は,昔と比べて,合格しやすい試験になってきたことは事実です。
しかしそうは言っても,他の国家試験に比べると,依然として勉強しなければならない範囲は膨大です。
したがって,司法試験・予備試験合格のためには,「膨大な範囲の知識を合理的にインプット・アウトプットするための方法論の確立」が必須です。
ところが,受験生の多くが,上記方法論の確立をすることができていません。
これは独学の方はもちろん,本来そのような方法論を伝授し,最終的に自学自習ができるようにすべき役割を担っているといえる予備校を利用されている方にも共通しています。
むしろ近時は予備校を利用されている方に,予備校を利用したが故に方法論を見失ってしまっている方が多く見受けられるように思います。
例えば,以下の例が挙げられます。
【例1】
予備校のインプットテキストが膨大で,かつインプット講義も長時間にわたるため,ある特定の科目のインプットだけで何か月もかかり,気づけばインプット講座を受講するだけで1年ほどかかってしまう結果,全科目インプットが終わるころには,最初のころにインプットした知識が全部抜けてしまっている(ふつう人間は1年以上前に勉強したことを覚えていません。)。
【例2】
インプット講義がようやく終わったけれども,その後初めてアウトプット講座に入り,答案を作成するときに,今まで学んだ知識をどのように使って,何をどの程度どの順番で書いたら良いのか全く分からない,かつ,それを誰にも聞くことができない。
こうなってくると,せっかくインプット講座,アウトプット講座を受講していても,その後「何を,いつまでに,どの程度,どのように」進めていけば良いのかという方法論を確立できず,その修正の機会も与えられない結果「このままで本当に自分は合格できるのだろうか」という疑念に駆られてしまうのです。
また,最近はSNSの発達により,Twitterや,ブログ等で合格者の勉強方法等が多く公開されています。その中にはもちろん有益なものもありますが,真似ができないような方法論や,そもそも本当にそのようなことを行ったのか疑問になってしまうような方法論なども含めて,アクセスできる情報が昔に比べ飛躍的に増大しました。
ところが,それがために,特に独学者の方は情報の過剰摂取となり,「結局,何を信じたらよいのだろう」と悩みだしたり,あるいは新しい情報に触れるたびに勉強方法をコロコロと変えていく結果,「このままで本当に自分は合格できるのだろうか」という疑念を抱いてしまったりする受験生がいることも事実です。
(2)時間が取れない
こちらは特に社会人受験生に多くある悩みの一つです。いわゆるカレンダー通りにお勤めをされている方を想定すると,1週間の可処分時間はおおよそ15時間〜30時間程度であることが多いです。
このように,大学生や無職の方に比べて,ただでさえ可処分時間が少ないのに,これに加え,残業や,会社の飲み会,あるいは家庭を持たれている方は家庭での仕事や家族サービス等で,勉強への可処分時間が削られていきます。
そうするとやはり,「このままで本当に自分は合格できるのだろうか」という疑念が生まれてきてしまいます。
(3)モチベーションが上がらない,維持できない
こちらは,全ての受験生に当てはまる部分です。
受験勉強とは,決して楽なものではありません。それでもなぜやるのか。
それは,苦しいことを乗り越えた先に得られるものがあるからだと思います。
逆に言うと,人は,その先に得られるものがなければ,よほどのことがない限り,苦しいことはそもそも行わないし,行ったとしても続かないのです。
「得られるもの」に優劣はありませんし,それは人それぞれ違うものであり,違っていてよいものであると思います。
ただ,「得られるもの」に向けたモチベーションが持てなかったり,維持できなかったりすると,「自分は何のために今苦しい思いをしているのだろう」,という状態を招きやすく,そこに「このままで本当に自分は合格できるのだろうか」という疑念が入り込む余地を与えることになります。
※関連コラム:司法試験予備試験に1年で合格する勉強法
3.「挫折」しないようにするためのルール
正しい方法論を確立する〜対象の限定と反復〜
合格するための正しい方法論は一つではありません。
合格者によって様々です。しかしながら,近時の予備試験合格者についていえば,その方法論の幹として採用しているシステムはほぼ共通しています。
それは,「対象の限定と反復」です。すなわち,「信頼でき,かつ,分厚過ぎないインプットテキスト・アウトプットテキスト(過去問含む)を決めて,それを分かるまで繰り返す」というものです。
受講生の多くが悩みを抱えている「記憶ができない,論文が書けないという原因」の9割以上が,対象を限定して反復することのいずれかもしくはいずれもが出来ていないことにあるといっても過言ではありません。
原因はとてもシンプルなのです。
この方法論に対しては,ある部分が確実に理解できてからでないと,次の部分も理解できないのではないかという懸念を持たれる方がかなり多いのですが,そのような方は発想を逆転させる必要があります。
ある部分が分からなくても,とにかく先に進みましょう。なぜなら,法律というのは,ある分野を勉強したことにより,それ以外の分野の理解が深まる,あるいは,ある科目を勉強したことにより,他の科目の理解が深まることがよくあるからなのです。
言い換えると,分からないことを理解するために先に進むのです。
このように対象を限定して反復を無数に繰り返し,それでも分からない部分については,時間をかけて調べたり,あるいは合格者や講師に聞いたりすれば良いのです。
独学の方はこのような観点からスケジュールを組むべきです。
また,予備校に通われている方は,まずもって,このような観点から予備校を正しく利用するということを心がけましょう。
これから予備校の利用を検討されている方は,その予備校が,本当に自分が合格するために現時点で足りないものを埋めてくれるものであるかどうか,無駄な情報が記載されていないか,無用な講義時間となっていないか,疑問を確実を事前にリサーチする必要があります。
現に短期合格者の方々は,予備校の利用前に,HPや受講相談を利用した徹底的な予備校リサーチと比較を行っている人が多いです。
また,現時点で既に予備校に通われている方も,一度,対象の限定と反復ができるカリキュラムになっているかという点からスケジュールや方法論を検証する必要があるでしょう。
なお,このことは,ネットの情報についても同様のことが言えます。
ネットの情報は,いわば,無数の各論的な記事が多いと思います。
ですから,その記事を見た際に,その本質は何であるのかをしっかりと考え抜いたうえで,取り入れるべき情報かそうでないかを判断してみましょう。
いずれにせよ,判断に迷ったら,すぐに身近な合格者に相談したり,受講相談などを利用して意見を取り入れてみることが大事です。
可処分時間をできる限り確保する
時間は皆に平等に与えられていますが,その使い方によって大きく差が出てしまうものです。
仕事の場面においても,勉強の場面においても,いわゆる要領の良い人とは,方法論をしっかりと確立した上で,時間をうまく作りあげて,使うことのできる人だと思われます。
時間の作り方は,意識をしないと上達しません。
月単位,週単位,1日単位で,ここまでに何をすべきで,そのためにはどのくらいの時間が必要かをしっかりと分析し,計画を立てることです。
そして,その計画を時間内に遂行できたのかを常にチェックし,計画に修正が必要か否かをその都度考えてみましょう。
勉強時間をストップウォッチで計測してみることも大事です。
ここで大事なのは,机に向かっている時間ではなく,机に向かっている中で実際に勉強している時間を計測することです。
この意味で6時間勉強することは本当に大変なことが分かります。
ただ,ストップウォッチで時間を管理できるようになると,逆に,「45分以内でここからここまでのテキストを読もう」とか,「30分以内に答案構成を終わらせよう」などという縛りをかけて勉強することに慣れてきます。
こうなると集中力も高まってきて,効率的な勉強ができるようになってきます。
また,モチベーションにも関係してくる部分ではありますが,友人との付き合いや,飲み会等,スキップできるものはできる限りスキップをしていきましょう。
モチベーションを維持するための方法を考える
モチベーションの「見える化」
まずは,目標を紙に書き出してみましょう。
モチベーションの「見える化」です。内容としては,法曹を志望した動機や合格後の目標から始まり,月単位,週単位,日単位の「ノルマ達成によるご褒美」などを書き出すことです。
これを勉強開始前に毎日必ずやってみると良いと思います。
仲間・ライバルを作る
これもモチベーション維持の有効な方法です。
確かに,受験生とは,本来孤独なものです。試験の合否という結果に対しては,最終的に自分が責任を負わなければなりません。
しかし,このことは,試験合格に向けた勉強も自分ひとりで行わなければならないことを意味しているわけではありません。
過剰に孤独を背負い込むことはないのです。
現に短期合格者の中には,勉強仲間や,自主ゼミを組んだり,受講生交流会等に参加したりして,勉強仲間・ライバルを見つけている方が多いように思います。
ただし,無理やり作る必要はありません。あくまで自分と同じ目的を持った方を見つけられると良いと思います。
全力で勉強し,全力で休む
全力で勉強しなければならないこと自体には疑いの余地がありません。
他方,全力で休むという点に意識があまり向いていない受験生の方も多いです。
休むことは悪という強迫観念に駆られることがありますが,どんな職業,どんなスポーツでも,パフォーマンスの最大化のために,休息は必要不可欠であり,このことは当然勉強にも当てはまります。
休息の取り方も試験対策の重要な一部と位置付けてください。
全力で休むことによって,その後の勉強に対するモチベーションがどんどん高まっていきます。
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