憲法の基本書には、さまざまなものがありますが、

「結局、どの基本書がよいのか」

「基本書を読んでも、憲法の答案の書き方がわからないままだった」

「統治分野については、あまり時間をかけることなく勉強がしたいけれどもやり方がわからない」

などの悩みを持たれている方も多いのではないでしょうか。
そこで本コラムでは、通称新4人組という名で有名の憲法の基本書である「憲法Ⅰ・Ⅱ」について、司法試験の勉強に向けた利用方法につき、解説していきます。

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『憲法ⅠⅡ(新4人組)』の内容と特徴



「憲法Ⅰ」では基本権について、「憲法Ⅱ」では統治について記載がされています。

本書の特徴は、歴史的背景や学術的な傾向(司法試験との関係ではあまり有意義な記載ではないもの)になりがちな憲法の基本書が一定数あるなかで、司法試験(予備試験)考査委員や法科大学院で教鞭を取られている先生方が共同で執筆なされているため、司法試験との相性が非常によいという点です。

司法試験の憲法の勉強をしている中で、答案の枠組みとして三段間審査論という手法を聞いたことがある方も多いでしょう。

ですが意外にも憲法の基本書は、三段間審査論に沿って記述がなされているものがあまり多くありません。

ここに受験生が憲法に苦手意識を持ち、答案を上手く書くことができない原因が潜んでいます。  

本書は「三段間審査の手法を全面的に活用して基本権に関する判例を位置づけたうえで、批判すべきは批判し、評価すべきは評価しようとしている」(憲法Ⅰはしがき参照)ところに大きな特徴があります。

司法試験の勉強での使い方

本書の基本的な活用の仕方は、以下のとおりです。

本書を通読する(憲法Ⅰ・Ⅱ共通)

まずは、本書を通読しましょう。

本書は基本権と統治の分野につき、2冊に分かれており、一見すると文量が多いと感じるかもしれません。

ですが本書は内容が非常に簡易かつ簡明であり、回りくどい表現をしていませんので、苦になることなく通読をすることができます。  

通読をする際のポイントは、項目です。 

本書の特徴について三段間審査論を意識して構成していると挙げましたが、その特徴がまさに項目に現れています。

具体的には、本書の基本権の項目はいずれも①保護領域、②制約、③正当化で構成されています。

3つの段階で項目立てされていることにより、今どの判断枠組みの段階で論じられているのか参考判例として挙げられているのはどのレベルでの議論なのか等、項目を見ることで一目瞭然です。 

このことからも、本書はまさに法的三段論法が強く意識された構成となっていることがわかります。 

憲法Ⅱにおいても、項目が詳細に区分されており、無味乾燥となりがちな統治分野について、基本書を読み進めていく指標にすることができます。 

このように、本書の活用方法として、まずは「項目を意識したうえでの通読」をおすすめいたします。

通読後の活用方法

憲法Ⅰ|憲法答案全体のイメージを掴めた方は 「基本権各論」不安がある方は「基本権総論」を重点的に読み込む

①憲法答案全体のイメージを掴めた方・・・「基本権各論」を重点的に読み込む

本書の通読を終え、憲法答案のイメージを掴めた方は、「基本権各論」を重点的に読み込んでいきましょう。 

特に、生存権や平等権等といった自由権以外の権利について、三段階審査論をそのまま適用することができない権利については必読です。 

多くの受験生は、積極的権利と消極的権利を区別することなく、どのような権利でも三段階審査論の判断枠組みにあてはめて論じる傾向がありますが、三段階審査論はあくまで自由権をペースに用いられた審査論です。 

司法試験の問題でも、上記点を意識した論述が求められているところ、本書は自由権以外の権利についての判断枠組みも明確に記載されています。 

②憲法答案全体のイメージに不安がある方・・・「基本権総論」を重点的に読み込む

本書の通読を終え、憲法答案のイメージに不安を抱いた方は、ぜひ、「基本権総論」を重点的に読込ましょう。 

基本権総論では、そもそも三段階審査とはどのような審査論なのか?という点から掘り下げて、わかりやすく解説がなされています。 

基本権各論を重点的に読み進める前に、まずは、「基本権総論」を丁寧に読み、憲法の答案枠組み(判断枠組み)を抑えましょう。

憲法Ⅱ|短答式試験出題頻出分野を重点的に読み込む

憲法Ⅱの統治分野については、短答式試験出題頻出分野に焦点を絞って、メリハリをもって読み込むことをおすすめします。その際、掲載されている判例を意識して読むと良いです。 

司法試験の出題傾向として、どうしても手薄になりがちな統治分野ですが、判例の理解は基本権の分野と同様に重要です。 

本書は、判旨の重要な部分を抜粋したうえで、記載がなされていますので、短答式試験出題頻出分野については本書掲載判例は丁寧に読込ましょう。

『憲法ⅠⅡ(新4人組)』の評価

憲法Ⅰ・Ⅱは、

  • 憲法答案の判断枠組みを丁寧に解説している
  • 三段階審査論を強く意識した構成のもと、記載がなされている
  • 判例につき、重要な判断部分を適切に抜粋したうえで記載がなされている

という特徴をもった基本書です。
そのため、これから憲法の勉強をはじめようする初学者の方から、すでに勉強が進まれている中上級者の方まで、幅広く、お勧めできる基本書となっております。

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