憲法の基本書は様々なものがありますが、

憲法の答案の枠組みがわからない・・・

憲法では判例が大切というけれども、答案にどう落とし込んだらよいのか説明してほしい

そもそも三段階審査ってなに・・・

といった悩みを持たれている方も多いのではないでしょうか。
そこで本コラムでは、三段階審査論の先駆けとなっている小山剛先生の「憲法上の権利の作法」について、内容や特徴、司法試験に向けた活用方法等について解説していきます。

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憲法上の権利の作法Iの内容と特徴


「憲法上の権利の作法」は、その表題のとおり、憲法上の権利を主張するうえでの「作法」が詳細に記載されている書籍です。

本書には、防御権(典型的な例として、表現の自由などです)に関して、原則・例外関係を前提とした三段階審査論(いわゆる、保護領域→制限→正当化の三段階で審査する判断枠組みをいいます)に落とし込んで、整理がなされています。

一方で、上記原則・例外関係を前提とすることができない積極的権利(典型的な例として、生存権等が考えられます)に関しても、下限統制(一定のラインまでは権利として保証されていると考え、そのラインを下回る場合に当該権利の制約を観念することができるとする審査方法)等といった判断枠組みを提示しています。

多くの受験生は、防御権に関する論証は三段階審査論で論じようと準備をしている方が多いですが、積極的権利についての論証まで準備をしている受験生はごくわずかでしょう。

実際、司法試験では防御権だけでなく、積極的権利についても出題されていることをも踏まえると、幅広く論証の作法」を身に付けておく必要性があります。

そのような「作法」を習得するうえでは、本書は最適の基本書となります。

まとめると、本書の特徴は、防御権のみならず、積極的権利についてまで幅広く論証の作法を網羅している基本書であるといえるでしょう。

司法試験の勉強での使い方

本書の基本的な利用方法は、「①通読(問題をざっと読み、全体像をつかむ。)②2回目以降は、三段階審査・下限統制・制度準拠審査を中心に読み込む」ことをお勧めします。 

通読

本書を活用するうえで、まずは通読をすることをおすすめします。 

その際注意すべき点は、難解だと感じたところについて立ち止まらずそのまま読み進めることです。

本書は、憲法上の各種権利についてそれぞれ丁寧にどのような判断枠組みで論じるべきかを整理しています。

そのため、判断枠組みも大枠はあるものの細部が異なっているところもあり、はじめから全てを理解しようとするのは困難です。

そのため、本書を読み進めていく途中で挫折し、通読することができないまま本書から離れてしまう受験生が多々いらっしゃいます。

そのような状態では、本書の良さを実感することができません。

そこで、まずは通読することが大切ですが、その際は概ね全体像をざっくり掴む程度でよみ進めて頂ければ結構です。

三段階審査・下限統制・制度準拠審査を中心に読み込む

本書を1度、通読をした後は、司法試験出題頻度の高い防御権・積極的権利に関する論証の作法である三段階審査・下限統制・制度準拠審査を中心に何度も読込ましょう。

その際は、内容それ自体を理解することも大切ですが、判断の枠組みを意識しつつ、読み込むことが大切です。 

司法試験でこの権利が出題された場合、どのような論理の順番で答案を記載しようか・・・という視点から本書を読み込むことをおすすめします。  

そのような視点から本書を読み込むことで、自然と頭の中に憲法の答案枠組みを形成することができ、憲法の答案はいったい何をどのように記載すればよいのかといった悩みから脱却することができるでしょう。

憲法上の権利の作法の評価

本書は、憲法答案の判断枠組みである「作法」を丁寧に整理しているという点で、司法試験との相性が非常によい書となっています。 

そのため、憲法の答案の書き方それ自体がしっくり来ていない方には、おすすめの本となっています。

他方で、内容がやや難解な部分もありますので、初学者の方がまず最初に手に取る本としてはあまりお勧めすることが出来ません。
憲法の勉強をしたことがある方で、答案の書き方に迷われている方には大変お勧めできる基本書となっていますので、本書は中級者から上級者向けの本になります。

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