このコラムでは、民事訴訟法の基本書である『民事訴訟法』(瀬木 比呂志著)の内容と特徴、どのような人に向いているのかについて書いていきます。

司法試験の学習を進める中で民事訴訟法の科目を苦手としている人も多いのではないでしょうか。

そして、書店を眺めてみても民事訴訟法の教科書、概説書の数は他の科目に比べて多く、どれを選べば良いのかわからないという人も少なくないと思います。

そこで今回は、実際に『民事訴訟法』を使用していた筆者の経験を踏まえつつ、その内容と特徴、どのような人に向いているかを解説していきます。

『民事訴訟法』の内容と特徴

『民事訴訟法』は、司法試験受験を目指す学生や弁護士等の実務家が今一度民事訴訟法を学び直すことを念頭に置かれた基本書です。

そして、著者である瀬木先生が裁判官時代に「優秀な実務家でも民事訴訟法理論を正確に理解していない人が一定数いる」という認識をもち、そのような視点から難解、観念的と言われることの多い民事訴訟法理論を読者に正確に理解してもらうことを目的として執筆されています。

そのため、本書は難解な民事訴訟法理論を実務家としての視点を交え非常にわかりやすく解説しており、訴訟法的な考え方や感覚を身につけるのに有用な基本書となっています。

また、本書の特徴として、該当箇所を段落番号で指定するという索引の構成が採られています。

これは、同じ用語が訴訟のあらゆる場面で使用されることの多い民事訴訟法の学習において、文脈からその意味を理解することに資する構成と言えるでしょう。

司法試験の勉強での使い方

この章では、『民事訴訟法』を司法試験の勉強でどう活用すれば良いのかについて解説していきます。

近年の司法試験問題の出題傾向

近年の司法試験では、問題文において会話形式で実務家が学生・司法修習生に問題を提起し、学生や司法修習生の立場から解答するという形式が採られています。

そして、司法試験で多く問われる論点は、訴訟法的な考え方や感覚、実務家が実際に遭遇するであろう問題に関わるものがかなりの数を占めています。

そうすると、それらの論点に関する考え方やその根拠を正確に示すことができるようなることが司法試験の学習において非常に重要であると言えます。

『民事訴訟法』は上述したように、実務家としての著者の視点から、訴訟法的な考え方や実務上問題となりうる論点にもわかりやすく言及されており、司法試験の学習においておすすめできる基本書です。

司法試験の学習への使い方

本書は、上述の通りそのわかりやすさに特徴があるため、民事訴訟法に苦手意識を持っている人に手に取ってほしい基本書です。

民事訴訟法では、例えば「先行自白」などにみられるように一見して用語とその意味がやや噛み合っていないように見えるものも多く存在しています。

そこで、普段の授業や答案練習をする中で少し引っかかる用語や概念が出てきた時に本書を参照するという使い方をしてみてください。

本書には各章の末尾に確認問題が掲載されており、辞書的な使い方だけではなく、時間的に余裕のある時には目次に目を通して、気になった章をとりあえず読んでみて、確認問題を頭の中で解答してみるという自主学習的な使い方も有用です。

『民事訴訟法(瀬木 比呂志著)』の評価

本書は、難解な論点や概念については分量を割いて丁寧に解説されており、民事訴訟法を一通り学習した上で苦手意識を持つ人にはおすすめと言えます。

そして、実務家としての民事訴訟理論の考え方や感覚を知ることができるので、民事訴訟法を得意科目にしたいという方にもおすすめです。

他方で、一般的な事項や条文を読めば、その趣旨が理解できるような事項については簡潔に記載されているため、コンメンタールのように細目的事項についても網羅的に詳細に記載された基本書を探している人には向かない書籍かもしれません。

また、上述のように本書は特徴的な索引の構成を採用しているので、一度手に取ってみることをおすすめします。