社労士と簿記1級では、どちらを資格取得した方が良いのでしょうか?

社労士は労務管理のエキスパート、簿記1級は会計のエキスパートであり、どちらも資格の専門性をいかした仕事を行うことができます。

そのような2つの資格を比べた場合、どちらの資格を取得すべきか、そしてどちらの資格のほうが難易度が高いか気になる人もいるでしょう。

そこで今回は社労士と簿記1級を比較しながら、難易度や将来性について解説していきます。

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社労士と簿記1級はどっちの資格がいい?

社労士と簿記、どちらの資格も業種を問わずどんな会社にも役立ちます。
社労士は国家資格者で、人事や労務に関する悩み・問題の改善などの支援を行います。
そして簿記は企業の日々行われる経済活動を帳簿に記録するための手続きのことで、経理にとって必要不可欠な知識です。
就職や転職に活きる資格を取得したいと考えている方は、自分の興味関心に合わせて資格を選んでも差支えないでしょう。

可能ならば、社労士資格と簿記の資格、どちらも取得するのがおすすめです。
理由としては、似た分野を扱う機会が多いこと、また独立開業する場合・企業に務める場合のどちらでも有利になるから。

社労士は労働法の知識が必要なのはもちろん、労務や保険などの書類作成や手続きを行います。
数字を取り扱うことも多く、経理としてのスキルを求められることも少なくありません。
中小企業の中には経理は外注しているところもあり、社労士と簿記どちらの資格も持っているというのはとても強みになるはずです。

社労士と簿記1級、難易度が高いのはどっち?

結論から申し上げますと、社労士と簿記1級の難易度は、社労士の方が難易度が高いです。

合格率や勉強時間の観点からは社労士の方が難しいといえますし、試験内容の観点からも基本的には社労士の方が難しいと判断できるからです。

以下の章では、受験資格・勉強時間・合格率・試験内容といった各観点について詳しく見ていきます。

社労士と簿記1級の受験資格を比較

最初に、受験資格の観点から2つの資格を比較していきましょう。

社労士試験の受験資格

社労士試験には受験資格が必要であり、学歴・実務経験・試験合格のうち1つを満たしていないと、受験ができません。

受験自体に制限がかかっているため、容易に合格できる試験ではないことがうかがえます。

簿記1級の受験資格

簿記1級試験には受験資格はありません

そのため、簿記2級など他の試験に合格していなくとも受験することができます。

もっとも、簿記1級試験から受験する人は少なく、簿記2級試験に合格した人が受験することが多いです。

受験資格はないものの、多くが簿記2級試験などに合格してから簿記1級試験を受験するため、簿記1級試験も難しい試験であることがうかがえます。

社労士と簿記1級の勉強時間を比較

次に、勉強時間の観点から比較します。

社労士試験合格に必要な勉強時間

一般に社労士試験は1,000時間の勉強が必要といわれています。

1日3時間勉強すると仮定した場合、約1年間かかる計算になります。

長期間にわたって勉強を続けていく必要があり、また複数回受験して合格するといった人も多くいます。

社労士試験は科目数が多いため、長時間の勉強が必要です。

また、判例の言い回しなどを正確に暗記する必要もあり理解と暗記の両方を伴って試験に挑まなければなりません。

簿記1級試験の合格に必要な勉強

簿記2級の知識がある人が簿記1級試験に合格するには、500時間~700時間の勉強が必要といわれています。

そのため、これから簿記の勉強を始める方はより多くの勉強時間が必要になります。

1日3時間勉強すると仮定した場合、6~8か月間の勉強が必要な計算です。

こちらも半年以上の長い勉強期間が必要です。

もっとも、受験に必要な科目数は4科目であるため、社労士試験と比較すると短い勉強時間となっています。

このように勉強時間の観点から比較しても、社労士試験の方が簿記1級試験より合格に必要な勉強時間が長く、社労士試験の方が難しいといえます。

※関連コラム「社労士試験の難易度を他の資格と比較しながら解説!なぜ難しい?

社労士と簿記1級の合格率を比較

次に、合格率の観点から比較します。

社労士試験の合格率

社労士試験の合格率は例年6~7%となっており、10%を下回る水準にとどまっていることが分かります。

社労士試験では毎年3万人以上が受験していますが、見事に合格を勝ち取ることができるのは2,000人程であり、合格が難しい試験であるといえます。

割合でいえば、受験生20人のうち1人が合格できるというものであり、合格は大変狭き門であることがうかがえます。

簿記1級試験の合格率

簿記1級試験の合格率は例年5~13%でとなっています。試験実施回によって合格率に差があり、各回を平均すると合格率は9.9%です。

こちらも平均合格率は10%を下回っており、合格が難しい試験であるといえますが、社労士試験と比較すると合格しやすい試験であるといえます。

また、簿記1級は毎年2回実施されており、合格のチャンスも多いです。そのため、毎年1回しかない社労士試験と比較すると合格を勝ち取りやすいといえます。

合格率の観点から比較しても社労士試験は簿記1級試験より合格率が低く、また年1回しかチャンスがないため社労士試験の方が難しいといえます。

社労士と簿記1級の試験内容を比較

最後に、試験内容の観点から比較します。

社労士試験の試験内容

社労士は、労務管理のエキスパートとして沢山ある労働法令についての知識を備えていなければなりません。

そのため、以下のような試験科目となっています。

科目名  選択式
合計8科目
択一式
合計7科目
労働基準法・労働安全衛生法 1問(5点) 10問(10点)
労働者災害補償保険法 1問(5点) 10問(10点)
雇用保険法 1問(5点) 10問(10点)
労務管理その他の労働に関する一般常識 1問(5点) 10問(10点)
社会保険に関する一般常識 1問(5点)
健康保険法 1問(5点) 10問(10点)
厚生年金保険法 1問(5点) 10問(10点)
国民年金法 1問(5点) 10問(10点)
合計 8問(40点) 70問(70点)

労働基準法や国民年金法といった労働に関する基本的な知識が出題されており、また主に法令からの出題となっています。

試験科目は選択式で8科目、択一式で7科目であり、全部で78問が出題されます。

出題形式は選択式と択一式に分かれています。

試験時間は、選択式が80分、択一式が210分となっています。

正確な知識を持っておかなければならず、また長時間集中して試験に臨まなければなりません。

社労士試験には総得点による基準点のほかに、各科目ごとに合格基準点があります。

例年の合格基準点は以下のようになっています。

・選択式試験の総得点40点中25点以上、かつ各科目5点中3点以上

・択一式試験の総得点70点中45点以上、かつ各科目10点中4点以上

この基準はあくまで目安であり、年度によって上下することがあります。

各科目に合格基準点があるのでどの科目もまんべんなく得点しなければならず、弱点を作ることができません。

また、総得点でも7割以上の得点を目標に点数を取らなければなりません。

科目基準点の存在と高い正答率が要求されるため、社労士試験は難しい試験であるといえます。

簿記1級試験の試験内容

簿記1級の取得は、会計への深い知識を持った人材となるため、試験科目も会計に関するものが出題されます。

具体的な試験科目は以下の通りです。

科目名
商業簿記
会計学
工業簿記
原価計算

会社の購買活動や販売活動など企業外部との取引を記録・計算する技能や資源の投入を記録・計算する技能を必要としており、しっかりとした会計スキルが必要です。

出題科目は4科目です。

社労士試験と比較すれば、科目数は半分以下となっており、各科目に集中して勉強に取り組むことができます。

出題形式は与えられた解答用紙に適切な数字を記入する記述式試験です。

正確な知識を持っていても、計算を間違えてしまうと正解にたどり着けない形式であり、語句や選択肢が与えられている社労士試験より難しい出題形式になっています。

試験時間は商業簿記・会計学で90分、工業簿記・原価計算で90分の合計180分です。

こちらも集中して取り組む必要はありますが、社労士試験と比較して試験時間は短くなっています。

簿記1級試験にも科目ごとの合格基準点が設定されています。合格基準点は以下の通りです。

・総得点の70%以上かつ1科目ごとの得点が40%以上

こちらも社労士試験と同様にまんべんなく得点する必要があり、弱点を作ることが許されない試験です。

以上からみて、基本的に社労士試験の方が難しいといえるでしょう。

もっとも、法律に慣れている人や計算が苦手な人にとっては社労士試験の方が馴染みやすいため、このような人にとっては簿記1級試験の方が難しいといえます。

実際に、社労士試験に合格した人でも簿記試験では不合格になることもあります。

社労士と簿記1級、将来性があるのはどっち?

結論から申し上げると、独立開業を目指すのなら社労士、企業の経理部門でキャリアアップを目指したいなら簿記1級となります。

どちらの資格を取得しても就職・転職はしやすいですが、年収で比較すると社労士に軍配が上がります。

以下の章で、年収・就職や転職のしやすさ・独立開業のしやすさといった各観点について詳しく見ていきましょう。

社労士と簿記1級の年収を比較

さっそく、社労士と経理の年収について比較してみましょう。

社労士の年収

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、社会保険労務士の平均給与額は61.8万円、平均年間賞与は206万円でした。

つまり、社会保険労務士の平均年収は約947.6万円となります。

会計事務従事者の年収

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、大企業で働く会計事務従事者の平均給与額は35.9万円、平均年間賞与は133.5万円でした。

つまり、会計事務従事者の平均年収は約563.3万円となります。

社労士と簿記1級の就職・転職のしやすさを比較

次に、社労士と簿記1級取得者の就職・転職のしやすさを比較します。

社労士の就職・転職のしやすさ

社労士は企業望む人材のため、社労士資格を持っていることは就職・転職にとても有利です。

なぜなら、企業は被用者の保険の申請をしなければならず、その申請書作成の代行ができるのが社労士だから。

外注している企業が多い中、社労士の資格を持っている人材が確保できるとなれば会社の業務の効率化に大いに役立ち、就職・転職時に採用される可能性が高くなるでしょう。

簿記1級取得者の就職・転職のしやすさ

簿記は凡庸性の高い資格のため、企業に歓迎されることが多く就職・転職に有利です。

特に簿記1級となると経理・会計のスペシャリストとして扱われるため、高く評価されます。

企業の経理として活躍できるのはもちろん、会計事務所や税理士事務所への就職もおすすめです。

社労士と簿記1級の独立開業のしやすさを比較

最後に、社労士と簿記1級取得者の独立開業のしやすさを比較します。

社労士の独立開業のしやすさ

社労士は専門性が高く、独占業務もあるため独立開業できる資格として広く認知されています。

社労士資格を取得し2年間も実務経験、もしくは事務指定講習の履修すれば独立開業することが可能です。

簿記1級取得者の独立開業のしやすさ

簿記1級は難しい資格ではありますが、独占業務があるわけでもないので、資格を持っているだけでは独立開業は難しいでしょう。

どくりつかいぎょうを独立開業をしたいのであれば、簿記1級の知識を活かしつつ、公認会計士や税理士を目指すのが良いでしょう。

ダブルライセンス取得を目指そう

前述したとおり、可能であるならば社労士資格と簿記の資格、どちらも取得するのがおすすめです。

開業社労士として自身の事務所を立ち上げて運営する際、簿記の知識があれば自分で経理の処理ができ、外注代がかかることはありません。
また開業後も、経理に強い社労士として独自性もアピールできるというメリットがあります。

また社労士として企業に勤める場合も、人事・労務業務だけではなく給与計算を始めとした経理業務をカバーできるのは大きなアピールになります。
転職の際の切り札になるほか、資格取得することで社内での信頼がアップすること間違いなしです。

いきなり簿記1級を取得するのは難しいという方は、現場で使える知識を付けるというために簿記2級以上を目指しましょう。
会計に関する基礎知識を身に付けてから、簿記1級にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回の記事では社労士と簿記1級の資格の比較を行いました。

まとめると以下の通りになります。

  • 受験資格・勉強時間・合格率・試験内容の観点を踏まえると、社労士試験の方が簿記1級試験より難易度が高い
  • 社労士資格も簿記資格、どちらの資格を持っていても就職・転職はしやすい
  • 独占業務があり独立開業のできる社労士のほうが年収は高い
  • 社労士資格と簿記のダブルライセンス取得を目指すのがおすすめ

社労士も簿記もどちらも人気の資格となります。

社労士と簿記1級では専門分野が異なり職域が違うものの、似た分野を扱うことも多いです。

まずは社労士の資格取得をしたのちに、簿記2級以上を目指してみてはいかがでしょうか。

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