社会保険労務士試験は難易度が高いだけでなく、合格後に特別な手続きや研修が必要なことでも知られています。
合否の確認はいつ・どこでできるのか、合格後はどのような流れで現場に出るのかなど、わかりにくいことが多くて困っている方もいるでしょう。

この記事では、令和6年のデータを参考に、社会保険労務士試験の合格発表や合格後の流れなどを詳しく解説します。
合否がわかるまでの間におすすめの過ごし方についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

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第56回(令和6年)社労士試験の合格発表概要

第56回(令和6年)社会保険労務士試験の合格発表が、2024年10月2日(水)に行われました。
受験者数43,174人に対して合格者は2,974人、合格率は6.9%という結果でした。

以下の概要を解説します。

  • 受験申込者数・受験者数・受験率
  • 合格者数・合格率
  • 合格基準点

受験申込者数・受験者数・受験率

2024年(令和6年度)2023年(令和5年度)
受験申込者数53,707人うち科目免除者:970人
(うち公務員特例の免除者413人)
53,292人
受験者数43,174人うち科目免除者:806人
(うち公務員特例の免除者356人)
42,741人
受験率80.4%80.2%
引用:第56回社会保険労務士試験の合格者発表(厚生労働省)

第56回社会保険労務士試験の受験者数は、前年とほぼ同水準の43,174人でした。

受験申込者・受験者数はいずれも前年より若干増加の傾向がみられ、社会保険労務士資格に対する需要が安定して推移していることがわかります。
各項目の数値に大きな変動がないため、前年から続けての受験者が大きな割合を占めていた可能性もあります。

社会保険労務士試験は例年6〜7%ほどの合格率を推移する非常に難易度の高い試験であるため、初めて受験する人よりも何年も続けて挑戦している人の方が多くなる傾向があると考えられるでしょう。

合格者数・合格率

2024年(令和6年度)2023年(令和5年度)
合格者数(うち免除者)2,974人(69人)2,720人(92人)
合格率(うち免除者)6.9%(8.6%)6.4%(11.0%)
引用:第56回社会保険労務士試験の合格者発表(厚生労働省)

第56回社会保険労務士試験の合格者は2,974人、割合にして受験者全体の6.9%でした。

カバーすべき知識の範囲が広い・「一部合格」制度がないなどの理由から、社会保険労務士試験は他の国家資格と比較しても合格率が上がりにくく、例年6~7%弱を推移しています。
令和6年・令和5年においても厳しい状況だったといえるでしょう。

なお、社会保険労務士試験では前年の成績を考慮した試験免除や一部合格はないものの、実務経験などの要件を満たした受験者は科目免除で受験することができます。
いずれの場合も通算10〜15年ほどの経験が必要となるため免除資格を得ることは簡単ではありません。
しかし、現場で培った経験と知識は強力な武器となり、科目免除者の合格率は他の受験者に比べて多少上がる傾向があります。

合格基準点

令和6年度の社会保険労務士試験における合格基準点は以下のとおりです。

  • 選択式試験
合格基準点
総得点25点以上(平均点22.9点 前年度比△0.4点)
各科目労働に関する一般常識につき 2点以上 その他 3点以上
引用:第56回(令和6年度)社会保険労務士試験の合格基準について

第56回社会保険労務士試験の、選択式試験における総得点内の合格基準点は25点で、平均点は22.9点でした。
科目別の合格基準点は3点以上となっていましたが、「労働に関する一般常識」の科目のみ2点以上に設定されていました。

  • 択一式試験
合格基準点
総得点44点以上(平均点30.6点 前年度比△1.2点)
各科目全科目につき4点以上
引用:第56回(令和6年度)社会保険労務士試験の合格基準について

第56回社会保険労務士試験の、択一式試験における総得点内の合格基準点は44点、平均点は30.6点でした。
科目別の合格基準点は、すべての科目において4点以上となっていました。

参考:【令和7年度】社労士試験の合格点と合格基準の決め方は?最新情報と過去の傾向を解説!

第56回(令和6年)社労士試験の合格者の属性は?

ここでは、第56回社会保険労務士試験の合格者の属性について、以下の内容で解説します。

  • 社労士試験合格者の年齢階層別割合
  • 社労士試験合格者の職業別割合
  • 社労士試験合格者の男女別割合

社労士試験合格者の年齢階層別割合

出典:社会保険労務士試験の結果について(厚生労働省)

第56回社会保険労務士試験における合格者の年齢別の割合は、30代が最多で32.5%という結果になりました。
次いで、40代の28.9%、50代の19.2%と続きます。

合格者全体の約6割が30・40代の社会人世代です。
大学生を含む若年層よりも、社会人として入退社・保険・助成金などに関する知識をある程度得た年齢層の合格が目立ちます。

社労士試験合格者の職業別割合

出典:社会保険労務士試験の結果について(厚生労働省)

第56回社会保険労務士試験における合格者の職業別の割合では、「会社員」が最多で59.9%となりました。
10.6%の「無職」、8.6%の「公務員」があとに続きます。
本業に従事しながら受験対策を行い、試験を受けるというパターンがもっとも多いことがわかります。

また、国・地方の公務員として特定の業務に通算10年以上の実務経験を有することは科目試験の免除条件に該当するため、公務員は社会保険労務士を目指しやすい職業のひとつといえるでしょう。
さらに、無職の方は学習時間が取りやすく、合格率が上がっていると考えられます。

社労士試験合格者の男女別割合

出典:社会保険労務士試験の結果について(厚生労働省)

第56回社会保険労務士試験における合格者の男女別割合は、男性が61.1%、女性が38.9%となりました。
男性の方がやや多いという結果に終わったものの、極端な男女比の偏りはないといえるでしょう。

社労士試験の合格発表は何時?合格通知の確認方法

ここでは、社会保険労務士試験の合格発表について、確認できる場所や時間を以下の内容で解説します。

  • 社会保険労務士試験オフィシャルサイトを確認する
  • 厚生労働省のホームページを確認する
  • 成績(結果)通知書が届くのを待つ
  • 官報を確認する

社会保険労務士試験オフィシャルサイトを確認する

社会保険労務士試験のオフィシャルサイトからの合否確認が、もっとも早く結果を知ることができる方法です。
合格発表日の当日朝に、合格者の受験番号・試験問題・解答一覧の正誤・試験結果概要の資料などが掲載されます。

アップロード時間は、例年午前9:30頃になることが多いです。
いち早く合否がわかる・どこからでも確認できるなどメリットがたくさんある確認方法です。

一方、アクセスが集中することで読み込みが遅くなる・ページ自体に入れないなど、かえって結果の確認に時間がかかる可能性も高め。
よほど急いで結果を知る必要があるのでなければ、少し時間を置いてからアクセスするといいでしょう。

厚生労働省のホームページを確認する

厚生労働省のホームページでは、合格発表当日の朝に試験結果概要・参考資料・合格者の受験番号一覧などが確認できます。

アップロードは例年午前10:00前後に行われることが多いです。
結果の掲載時刻はやや遅めですが、合格発表の当日に結果が確認できる点にメリットがあります。

成績(結果)通知書が届くのを待つ

試験の合否は、受験者の手元に届く成績通知書にも記載されています。
成績通知書は合格発表の当日に郵送されるため数日のタイムラグは発生しますが、形に残る合格証書を手にした時の喜びはひとしおでしょう。

通知書や合格証書がいつ発送されるかは、社会保険労務士試験のオフィシャルサイトで確認することができます。

なお、令和6年実施の試験は合格証書の発送が遅れ、例外的に10月下旬郵送の対処が取られました。
合格していた場合、送付状・合格証書・成績通知書などが同封されたA4サイズの封書が届きます。

不合格だった場合はハガキで通知されるのみとなります。

万が一、郵送予定日から数日が経過しても結果が届かない場合は、オフィシャルサイト内に記載されている期限内に試験センターに連絡しましょう。

参考:合格発表以降の予定について(社会保険労務士試験オフィシャルサイト)

官報を確認する

例年10月下旬に発行される官報で、試験の合否を確認することができます。

官報とは、国の法令や公示事項などを国民に周知することを目的に、土日祝日を除いて毎日発行されている機関誌です。
全国の官報販売所で購入できるほか、インターネット版は直近90日の発行分を無料で閲覧することもできます。

なお、官報には合格者の受験番号のみが掲載されます。
試験問題や解答一覧で受験の振り返りをしたい場合は、試験のオフィシャルサイトなどを活用するといいでしょう。

社労士試験合格後の流れは?手続きや登録

ここでは、社会保険労務士合格後の流れや手続きについて、以下の項目で解説します。

  • 1.社労士会からの登録のお知らせを受け取る
  • 2.事務指定講習を受講する
  • 3.社会保険労務士連合会の名簿に登録・加入

1. 社労士会からの登録のお知らせを受け取る

試験に合格したら、合格証書とは別に全国社会保険協会連合会から「登録のお知らせ」が届きます。

実は、試験に合格するだけでは社会保険労務士を名乗れず、業務を行うこともできません。
最初に社会保険労務士の一員として正式に登録する必要があります。

合格時に関連業務の実務経験が2年以上ある場合はそのまま登録可能です。
未経験の場合は事務指定講習を受講し、指定のカリキュラムを修了すると晴れて社会保険労務士として登録となります。

2. 事務指定講習を受講する

合格時に実務経験がない場合、正式な登録前に「事務指定講習」という研修を受けなくてはなりません。

研修内容は通信指導課程と面接指導過程にわかれており、両方を期限内に修了することで2年以上の実務経験に相当すると見なされます。
通信指導過程は4か月間の自習形式の研修で、指定の教材を用いて行われます。

主な内容としては、4か月の期間内に数十件に及ぶ課題に取り組み、添削指導を受けるというものです。
期日内に提出できなかった場合は研修を受けなかったと判定されてしまうため、計画性を持って取り組む姿勢が問われます。

面接指導過程は自宅でのeラーニング、または都内会場での映像投影による講義で、健康保険法や国民年金法などの知識を深めることを目的としたものです。
eラーニングの場合は4か月以内に全科目を受講し、会場での講義の場合は4日間すべての日程に出席する必要があります。

上記2課程は、同じ年に受講しなくてはならないことに注意しましょう。
受講料など、研修についてより詳しく知りたい方は下記コラムをご参考ください。

参考コラム:社労士の事務指定講習は働きながら受けられる?日程・スケジュール・内容などを解説

3. 社会保険労務士連合会の名簿に登録・加入

事務指定講習を修了したら、いよいよ社会保険労務士としての登録を行います。
登録時には、以下の4パターンからどのような就業形態を選択するかを申告します。

  • 開業
  • 社会保険労務士法人の社員
  • 民間企業などに勤務
  • その他

希望の働き方に合わせて登録方法を選びましょう。

「すぐに社労士として仕事に就くわけではないが、将来的には開業や勤務を考えている」といった場合は、「その他」の扱いで登録することができます。

登録後は自動的に各都道府県の社会保険労務士会の会員となります。
ただし、登録時・社労士会への入会時・入会後の年会費と、都度数万円の費用が発生するのでご注意ください。

参考コラム:社労士合格後の登録や講習の流れとは?費用(登録料)と書類、更新について解説

社労士試験の合格発表までの正しい過ごし方

ここでは、合格発表を待っている間におすすめの過ごし方について解説します。

  • やりたかったことを実践する
  • 自己採点をして結果を受け止める
  • 1から戦略を見つめなおす
  • 就職活動を始めてみる

やりたかったことを実践する

自分へのご褒美も兼ねて、やりたかったことを思い切り実践しましょう。
過酷な受験期間中は、「もうすぐ試験だから」とずっと我慢していたこともきっとあったはず。
試験が終わったら、まずは自分自身の頑張りを認め、やりたかったことを自由にやってみましょう。

特に、ゆっくり睡眠時間を取る・趣味に時間を使うなど、リラックスできることはおすすめです。
心安らぐ時間を取ることでメリハリが生まれ、頭の中も切り替えやすくなるでしょう。
結果にかかわらず、「また明日から頑張ろう」と生活へのモチベーションも上がるはずです。

自己採点をして結果を受け止める

自己採点をして試験を振り返り、結果を受け止めましょう。
自分で採点するだけでも、ある程度の成果はわかります。

どの分野が得意か・どの分野の学習が足りていないかなど、自分の学習状態の傾向と現在の実力を知ることは今後本職の社会保険労務士となるためにも重要です。
もちろん、試験対策としても自己採点は非常に有効です。

採点の結果、残念ながら不合格になりそうだとわかったとしても、自分の解答傾向から次の学習計画に繋げることができます。

1から戦略を見つめなおす

自己採点などの結果、合格には至れない点数だったという場合は、学習戦略について1から見直してみることもおすすめです。
学習や理解が足りていない分野はどこかなど、解答からわかった自分の弱点を中心に補強するような計画を立てるといいでしょう。

社会保険労務士試験は学習範囲が広いため、すべての分野の知識を一度の試験勉強で完璧に身につけるとなると簡単ではありません。
点を取れなかった分野については今後学習に力を入れるべき分野が明確化されたと前向きにとらえ、再スタートに向けての戦略を練りましょう。

就職活動を始めてみる

受験時点で就業していない場合は、合否がわかる前に就職活動を始めることもおすすめです。

社会保険労務士試験の合格者には、無職の受験者も多くいます。
受験期間は学習時間を確保しやすい無職のままで過ごし、結果次第で就職活動を始めようと思っている人もいるでしょう。

しかし、考えることはどの受験者も同じです。
結果が出てから仕事探しを始めると、同じ境遇のライバル同士でポストを奪い合うような状況にもなりかねません。
合否が出る前に就職活動を始めておくことで、ほかの求職者に差をつけることができます。
合格・不合格のどちらに転んでも困らないように立ち回ることが最適解といえるでしょう。

合格発表までの正しい過ごし方は、動画でもご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。

まとめ

この記事では、社会保険労務士試験について以下の内容で解説しました。

  • 令和6年度の社会保険労務士試験の合格者は、2,974人。合格率は6.9%。
  • 合格者の年齢属性は30代がもっとも多く、40代、50代と続く。若年層よりも社会に出て経験を積んだ層の合格が目立つ結果に。
  • 合格者の職業属性は「会社員」が6割近くを占め、「無職」、「公務員」と続く。働きながら勉強をして合格するパターンがもっとも多い。
  • 男女別では、男性がやや多め。
  • 合格発表でもっとも早く合否がわかるのは、朝9:30頃に結果が掲載される試験のオフィシャルサイト。受験者のアクセス集中で閲覧が難しい場合は、10:00頃から厚生労働省のサイトでも確認できる。また、後日手元に封書の合格通知も届く。
  • 合格後は、全国社会保険協会連合会に社会保険労務士として登録する必要あり。実務経験がない場合は事務指定講習を受講する。
  • 合格発表までは、我慢していたことをやる・自己採点して今後の戦略を練るなど、前向きな過ごし方をするとよい。

社会保険労務士試験は合格後の流れがやや特殊で、試験を突破しただけでは社会保険労務士になることはできません。

開業・就業にあたって最初に名簿に登録するだけでなく、実務経験がない場合はさらに数か月かけて研修を受ける必要があります。

社会保険労務士は従業員の入退社や雇用保険、年金など、法令とお金に関わる手続きを担う非常に重要な職業であり、助成金の代理申請など独占業務も存在します。

合格までの道のりは厳しいものとなりますが、難関を突破すれば「人材に関するプロフェッショナル」として活躍できる、目指し甲斐のある仕事といえるでしょう。

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