本記事では社会福祉士国家試験科目の1つである「社会保障」の概要や勉強法について紹介します。

本科目では年金や医療保険など、私達が普段から利用している社会保障サービスに関する知識を学びます。

試験では、日本における5つの社会保障制度を中心とした知識から諸外国の流れ、時事問題まで幅広い知識が問われます。

試験対策の参考にしていただき、効率的に学習を進めていただければ幸いです。

関連コラム:社会福祉士試験の19の試験科目(共通科目・専門科目)について解説

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「社会保障」科目とは?

社会保障の概要

「社会保障」は、社会保障制度の仕組みや財政、福祉政策の国際比較などの知識や理解が問われます。

社会保障制度は、生活に関する様々なリスクに備えるための制度であり、クライエントの生活の安定が損なわれる場合においては、適切な社会保障制度を紹介することが求められます。

社会保障制度の理解は、クライエントの生活課題解決に直接役立つ知識になるため、大事に学習を進めていきましょう。

社会保障の重要度

本科目は「保健医療と福祉」などの他科目との関連性が強く、他科目の得点にも反映しやすいです。

さらに、出題数が9問となっており、他の6問の科目に比べて多いことから、学習の重要度は高いといえます。

社会保障の難易度

本科目では、法改正や事例問題、統計問題に対応する必要があるなど、社会保障制度に関する深い理解が求められます。

また、社会保障制度自体の難解さに加え、ほぼ毎年、何らかの法改正が行われているといった点が、本科目の理解を複雑にしており、難易度は高いといえます。

とはいえ、出題内容には毎年大きな変化はないため、法改正に注意しつつ、5つの社会保障制度の基本的な知識を理解していくことから始めていきましょう。

「社会保障」の勉強法

ここからは、社会保障の勉強方法について具体的に紹介します。

重要なポイントを絞って紹介するので、学習の参考にしてください。

1. 年金制度から学習を始める

本科目で最も頻出の問題は、年金制度になります。

年金制度自体は非常に複雑ですが、年金制度を細かく問う社会保険労務士試験とは異なり、社会福祉士の試験は、基本的な知識を問う問題と、これを事例形式で問う問題がほとんどです。

そのため、基本的な知識をしっかり固めていくことが重要です。

年金の支給は被保険者や被保険者であった者に対して行われることから、基本的な知識の中でも真っ先に覚えなければならない知識は、被保険者の種類と要件です。

次の表のように被保険者の種類ごとのイメージを持つことから始めるとその後の理解が進みやすくなるのでおすすめです。

国民年金の被保険者の種類イメージ
第1号被保険者自営業者(その配偶者)、無職者、学生 など
第2号被保険者サラリーマン、公務員
第3号被保険者サラリーマン・公務員から扶養されている配偶者

このイメージに国内在住要件・年齢要件・国籍要件の有無を加えていくとよいでしょう。

また、試験では事例形式で被保険者の種類を区別させる問題、区別を前提とした年金の支給、保険料の支払を問う問題が出題されます。

事例問題における被保険者種類の区別は、次のステップを踏むと思考がスムーズになるので、試してみてください。

サラリーマン・公務員か?Yes→第2号被保険者
No→サラリーマン・公務員から扶養されている配偶者か?Yes→第3号被保険者
No→第1号被保険者

2. 医療保険制度は保険給付の種類・内容をしっかり押さえる

医療保険制度では、年金制度と同じように各医療保険制度の被保険者要件を押さえることも重要ですが、保険給付の内容を押さえることが重要になります。

特に事例問題で出題されやすい「傷病手当金」「出産手当金」「出産育児一時金」については、細かい内容まで丁寧に理解していきましょう。

また、「保険外併用療養費」「入院時生活療養費と入院時食事療養費の違い」「高額療養費」については、他科目の「保健医療と福祉」との関連性が強いことから、概要を説明できるくらいまで理解を深めておくとよいでしょう。

3. 諸外国の社会保障制度の発達の流れをつかむ

日本を含めた諸外国の社会保障の概念や対象、及び理念などの流れを追えるようにしましょう。

制度の変化を掴むことで現行の制度の理解もより深まります。

例えば、日本の介護保険は1995年にドイツで開始された介護保険を参考に制度化されています。

また、同じ資本主義の日本とアメリカでも社会保障の制度は大きく違います。

このように、歴史の流れをイメージすることで全体像をつかみやすくなり、学習をスムーズに進めることができます。

4. 試験直前に財源のデータに目を通す

本科目では、社会保障の財源と費用に関する出題が頻出なので押さえておく必要があります。

中でも、社会保障給付費、国民負担率などは過去にどんな問題が出たのか確認し関連データを日頃から目を通しておくのがベストです。

しかし、「日頃なかなか時間がつくれない」という方は、試験本番が近づいてきたタイミングで改めてデータを見直すようにしましょう。

数字は期間が空いてしまうと忘れてしまうことが多く、記憶の定着が難しいです。

従って、過去問題からどのデータの出題があるのか過去問題から確認しておき試験直前でデータを見直すと効率的です。

なお、データは細かい数字まで神経質に覚える必要はありません。

例えば、社会保障給付費は「年金:医療:福祉その他=5:3:2」といわれているように、大まかなイメージをできるようにしておきましょう。

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橋口 貴俊 講師

この記事の執筆者 橋口 貴俊 講師

橋口 貴俊講師 講師紹介はこちら

地元の都道府県社会福祉協議会で働く。
地域福祉の推進のため、県域における福祉人材の確保・育成・定着に関する業務に携わっている。

社会福祉士としての専門性を高めるため、社労士と行政書士の試験に、働きながら独学で合格する。
社会人のための効率の良い学習方法を追究した結果、80日の短期間で、難関と言われる行政書士試験の一発合格に至る。

受験生がつまずきやすい社会保障制度や法律について、社労士試験などで培った専門性を発揮し、合格に必要な知識だけに絞った分かりやすい講義を得意としている。