社会福祉士国家試験の傾向と対策を紹介します。

合格に向けた基本戦略

試験を受けるからには闇雲に学習するのではなく、敵(試験内容)を知り、戦略的に学習を進めて行く必要があります。

学習時間だけを意識した勉強では合格するのは難しいでしょう。

要は短時間でどれだけ自分のモノに出来るかが勝負です!ここでは基本的にどのようなことを念頭に置いて学習を進めたら良いか、学習の戦略を解説していきます。

忘却曲線を意識して学習をする

「昨日覚えたところなのに今日になったらもう忘れている…」と思って、悲しくなった経験はありませんか?それもそのはず、人間の脳は折角覚えてもすぐ忘れるようになっているのです。

では、なぜ小学二年生の時に覚えた九九は今でも思えているのでしょうか?それは、繰り返し九九を使っているからです。

心理学者のヘルマン・エビングハウスは『忘却曲線』といわれるものがあると提言したのです。この曲線によると、一生懸命暗記しても、その20分後には40%のことを忘れ、何もしないと(復習しないと)次の日には75%も忘れることになるのです。

直ぐに忘れてしまうのは当然のことであると考えて、くじけずに復習を繰り返すことによって脳に記憶が定着するようにするのです。

よって、復習(暗記の覚え直し)は早めに行って、その後も定期的・計画的に復習をする様にします。

例えば、テキストや過去問集に、いつ学習したか日付を付けていくようにする方法があります。

苦手な科目はむしろチャンス

多くの科目の中には苦手な科目が存在することがあると思います。

例えば、高齢者分野は得意だけど障害者分野は苦手だという人は、普段、障害者に関わる機会が少ないことが考えられ、テキストや過去問を読んでもスムーズに理解できない場合があるのです。

模試をやってみると、得意・苦手は一目瞭然に結果として出ますが、決して焦ることはありません。

勿論、得意分野であっても勉強を怠ってはいけませんが、苦手な分野・科目であっても、十分に得点に結び付けられチャンスはあります。

苦手な分野で低い得点しか取れない場合には、基礎が理解できていないということです。

よって、テキストの太字の部分を覚えたり、過去問の頻出問題を繰り返して解くことによって、ある程度の得点を確保することができます。

「苦手な分野だ…」と感じるのであれば、難しい事柄に深入りせずに、基礎的なことを中心に覚えていくと早いペースで得点へと結び付けることができます。

過去問⇔テキストを繰り返す

ある程度テキストに目を通して過去問を解いてもOKですし、いきなり過去問を解いてテキストに移ってもOKです。

大切なことは、過去問で出題方法や傾向を把握して、テキストでさらに理解を深めるというようにしていきます。

過去問をいきなり解いても、間違いが多いと思いますが、それは全く気にする必要はありません。

「問題を解く」というよりも「問題・解説を読む」と考えておきます。

過去問を解いて一喜一憂するのではなく、

『なぜそのような答えになるのか?』
『どの部分を理解・暗記する必要があるのか?』
『深入りして覚えないでいい部分はどこなのか?』

を把握していくようにします。

科目ごとの学習方法

ここでは19科目ある社会福祉士試験の基本的な学習方法を解説していきます。

人体の構造と機能及び疾病の学習方法

人の成長と発達、ICF、人体の構造と各器官、疾病・障害の概要、認知症、リハビリテーションについて問題が頻出しています。

ICFは環境因子と個別因子についても説明出来るようにしておく必要があります。

心理学理論と心理的支援の学習方法

欲求・動機付け、感覚と覚知、パーソナリティ理論、集団や適応、ストレス、記憶・学習について頻出しています。

誰(人名)が何をしたのかも覚える必要があります。

マズローの欲求段階については完璧に説明できるようにしておきましょう。

社会理論と社会システムの学習方法

社会変動、生活の理解、人口統計、行為と役割、現代社会の問題について頻出しています。

行為の4種類では内容を全て把握しておく必要があります。

近年話題になっている性的少数者LGBTについては自分の言葉で解説できるようにしておきます。

自殺対策についてもゲートキーパーの役割について把握するようにします。

現代社会と福祉の学習方法

社会福祉理論の展開、福祉国家レジーム論、需要とニード、福祉供給、福祉政策の課題、人権擁護について頻出しています。

ウェッブ夫妻、ティトマス、ラウントリー、マルサス、センなどの西洋の研究者について、どのような事柄に携わったのか覚えておく必要があります。

大河内一男、岡村重夫、一番ケ瀬康子など日本の研究者についても覚えておきましょう。

社会調査の基礎の学習方法

統計法、量的調査の方法や整理と分析、質的調査の方法や整理と分析、ITの活用方法について頻出しています。

社会調査における倫理と個人情報保護についても近年、出題が増えているようです。

個人情報を適切に保護・管理する方法について理解しておきましょう。

相談援助の基盤と専門職の学習方法

社会福祉士、社会福祉士以外の専門職、ソーシャルワーカーについて頻出しています。

社会福祉士の行動規範については内容が沢山ありますが、一通り目を通しておきます。

極端に難しい問題は出題されていませんので、常識的に考えて回答出来るようにしておきましょう。

認定社会福祉士の要件も覚えておく必要があります。

相談援助の理論と方法の学習方法

相談援助における援助関係・流れ・面接技術について頻出しています。

加えて、手段を活用した援助相談、相談援助における様々な技術についても近年頻出されている傾向にあります。

パターナリズム、ラポール、自己覚知などは内容を理解するだけでなく、事例を出して自分で解説出来るようにしてしておく必要があります。

地域福祉の理論と方法の学習方法

イギリスとアメリカの地域福祉の展開、日本の地域福祉の展開、社会福祉の主体、社会資源などについて頻出しています。

イギリスの地域福祉の展開については、年号と人名を完璧に覚える必要があります。

社会福祉法4条については、内容を理解しておきます。

福祉行財政と福祉計画の学習方法

地方公共団体、福祉に関する国の財源、国と地方の財源関係、地方福祉計画、高齢者や障害者に関する行政計画などについて頻出しています。

国の財源では円グラフを参考にして、年金や医療・介護、少子化対策について理解しておく必要があります。

福祉サービスの組織と経営の学習方法

社会福祉法人、NPO法人、経営と組織運営、福祉サービス管理・運営について頻出しています。

社会福祉法人の概要(評議員、評議委員会、理事、理事会、監事、会計監査人)について解説できるようにしておきましょう。

アンゾフ、チャンドラー、アンドルーズなどの人名についても覚え、どのようなことを行ったのかも把握しておきます。

社会保障の学習方法

日本の社会保障制度、年金保険制度、医療保険制度、労働保険制度、社会保障の財源と費用について頻出しています。

後期高齢者医療費制度の対象者、財源について、しっかり具体的な数字を出せるように暗記しましょう。

就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付、育児休業については、どのような制度なのか具体的に解説できるように覚える必要があります。

高齢者に対する支援と介護保険制度の学習方法

介護保険制度、介護保険サービスで利用できるサービス、地域支援事業、老人福祉法、介護の基本、認知症ケアについて頻出しています。

介護保険制度では申請から結果が出るまでの流れや、保険者の種類などについて把握しておきます。

認知症ケアについては、どのような対応をするのがベストなのか事例を通して理解しておきましょう。

障害者に対する支援と障害者自立支援制度の学習方法

障害者福祉の理念、障害者差別解消法、障害者総合支援法、精神保険福祉法などが頻出しています。

ノーマライゼーションについては必ず理解し、自分の言葉で解説出来るようにしておきます。

バンク・ミケルセンとニィリエの人名は覚えましょう。

障害者総合支援法では主な介護給付の種類(居宅介護・重度訪問介護・同行支援・生活介護・行動支援等)について理解しておく必要があります。

児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度の学習方法

児童・家庭福祉制度の歴史、子どもの権利、児童福祉法、児童福祉施設、児童相談所、母子保健法、児童虐待の防止について頻出しています。

1947年の児童福祉法から2017年の子育て安心プランまでの制度の歴史について流れを把握し、エンゼルプランや新エンゼルプラン、いじめ防止対策推進法などについて解説できるようにしましょう。

低所得者に対する支援と生活保護制度の学習方法

貧困の実態、公的扶助、生活保護制度、保護の種類と基準、自立支援プログラム、低所得者対策について頻出しています。

貧困の実態では『貧困線の年次推移』を把握しておきます。

社会保障と公的扶助を対比して機能、対象、給付水準、財源などに分けて覚えるといいでしょう。

生活保護の基本原則・原則については必ず覚える必要があります。

保健医療サービスの学習方法

医療保険制度、医療計画、国民医療費、診療報酬、医療施設と医療の専門職などが頻出しています。

レセプト、診療報酬得点、社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会の言葉の解説が出来るようにしましょう。

また、医療診療の仕組みについても図を観ながら理解しておくと良いでしょう。

就労支援サービスの学習方法

労働市場の動向、労働法規、障害者に対する就労支援、就労支援制度が頻出しています。

団結権、団体交渉権、団体行動権の労働三法については必ず覚えましょう。

労働基準法の主な内容(男女同一賃金、解雇予告、休日、最低年齢、産前産後、就業規則など)については、具体的な数字まで覚える必要があります。

権利擁護と成年後見制度の学習方法

基本的人権、契約、消費者保護、親族、行政法、成年後見制度が頻出しています。

科目のタイトル通り、成年後見制度については概要を把握しておきます。

後見・補佐・補助について要件は覚えておき、更に、開始の手続き、同意権・取消権・代理権についても確実の自分で解説できるようにしておきましょう。

更生保護制度の学習方法

保護観察、更生保護の担い手・機関、医療観察制度について頻出しています。

少年法における少年の定義(犯罪少年・触法少年・虞犯少年)は必ず理解しておきます。

保護観察の一般遵守事項と特別遵守事項について、対比させて覚えておくと良いでしょう。


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この記事の監修者 遠藤 愛 講師

遠藤 愛 講師

全くの異業種から介護の世界に飛び込み、訪問介護員として介護業界での勤務をスタート。住居環境・経済状況が様々なケースを担当。

現在は、医療ソーシャルワーカーとして、地域の在宅・施設の福祉職と協働しながら、数多くの高齢者・障害者とその家族への退院支援業務にあたる。

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