本記事では社会福祉士国家試験科目の1つである「ソーシャルワークの理論と方法」の概要や勉強法について紹介します。

実際の現場でも役立つ知識も多いため、試験対策の参考にしていただき、効率的に学習を進めていただければ幸いです。

関連コラム:社会福祉士試験の19の試験科目(共通科目・専門科目)について解説

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「ソーシャルワークの理論と方法」科目とは?

ソーシャルワークの理論と方法の概要

「ソーシャルワークの理論と方法」は、旧カリキュラムの「相談援助の理論と方法」に相当する科目になります。

本科目は、午前に行われる「共通科目」と午後に行われる「専門科目」の2つの科目に分かれています。

ソーシャルワークの実践モデルやアプローチ、実践過程、ネットワーキング、社会資源の開発、事例分析など、ソーシャルワーク(相談援助)の理論や具体的な支援方法についての知識や理解が問われます。

ソーシャルワークの理論と方法の重要度

ソーシャルワークを実践していく上で最も大切にしなければならない知識や考え方が問われること、他科目と比較して得点しやすいこと、共通科目と専門科目を合わせて全科目最多の18問が出題されることから、学習の重要度は全ての科目の中で最も高いといえます。

本科目の出来で合否が決まると言っても過言ではないほど重要な科目になるので、重点的に学習を進めていきましょう。

ソーシャルワークの理論と方法の難易度

「ソーシャルワークの基盤と専門職」の科目と同様に、知識が入っていなくても一般的な倫理観で選択肢を選ぶことができる問題が多く、得点しやすい科目であることから、難易度は低めといえます。

事例問題で理解や倫理観、社会福祉士としての資質を問う問題が多いため、暗記よりも、問題をたくさん解いて、一定の考え方を身につけていきましょう

「ソーシャルワークの理論と方法」の勉強法

続いて、ソーシャルワークの理論と方法ついての勉強法をポイントを絞って紹介します。

1. 実践で必要になるという気持ちで学習する

本科目を学習するうえでポイントになるのが、「試験のためよりも、実践を意識しながら学習をする」ということです。

出題傾向に目を向けると多くが事例形式の問題になっており、実際の現場で問われる問題が多いです。

事例形式の過去問題を解きながら、社会福祉士に求められているものは何かを読み取れるようになると正解につながりやすくなります。

「実践の相談現場にいるつもりで解く」ことを意識しながら問題に慣れていきましょう。

2. バイステックの7原則を根拠に事例問題を解く

本科目の事例問題において根拠となる考え方がバイステックの7原則です。

以下の7つの原則を理解しておくことで、選択肢を選ぶ際に迷いを減らすことができます。

バイステックの7原則

  1. 個別化
    一人ひとりが異なる人、状況であると捉え、個別的に対応する
  2. 意図的な感情表出
    (相談者が)あらゆる感情を自由に表出・表現できるように働きかける
  3. 統制された情緒的関与
    援助者自身の感情を念入りに調べ、吟味し把握した上で相談者に対応する
  4. 受容
    相談者のありのままを受け入れる。反社会的な行動や逸脱を同調や許容するのではなく、そのような側面があることを認識し理解する
  5. 非審判的態度
    援助者がもっている価値観を基に、相談者を批判や攻撃をしてはいけない
  6. 自己決定
    相談者が自らの人生に関する選択と決定ができるように援助する
  7. 秘密保持
    援助者の情報は漏らさない

例えば、自己決定の原則を使えば、支援の方針に本人の意思が反映されているか、本人が意思決定できるように必要な情報を提供できているか、本人の意思をしっかりアセスメントできているか、などの一定の考え方を導くことができます。

3. 相談援助の過程の一連の流れを理解する

続いて、相談援助はどのように始まり、終結に向かっていくのか、一連の流れを理解する必要があります。

相談援助の流れ

  • 受理面接(インテーク)
  • 事前評価(アセスメント)
  • 支援の計画(プランニング)
  • 支援の実施(インターベンション)
  • 経過観察(モニタリング)と評価(エバリュエーション)
  • 支援の終結(ターミネーション)
  • アフターケア

各過程での特徴はもちろん、順番などを問う出題もあるので注意しましょう。

漢字だと比較的理解しやすいですが、試験ではしばしば横文字で出題されるので、そのような場合でも惑わされないようにしましょう。

4. 各モデル・アプローチの特徴と違いを理解する

相談援助(ソーシャルワーク)が歴史的にどのように発展してきたかを踏まえつつ、代表的なモデル(見本)やアプローチについての理解も深めましょう。

4−1 主なモデル(見本)

相談援助の考え方の基本となるのがモデルです。

それぞれの違いや特徴を押さえておきましょう。

  • 治療モデル
    医療をメインとしており、診断から始まり最終的には治療を目的としたモデル
  • 生活モデル
    生活をメインとしており、その人の日常に重点を置き「人と環境」との相互作用を取り入れつつ問題解決にあたるモデル
  • ストレングスモデル
    強み(ストレングス)を土台に問題解決にあたるモデル

4−2 主なアプローチ

相談援助は、相談者と共に目標を定めて計画を立て、社会資源を活用しながら目標に近づいていく活動です。

このとき、どのように目標に向かう方法はいくつもあり、その中でも主要なものには「○○アプローチ」と名前が付いています。

主なアプローチには、以下のようなものがあります(このほかにも多くあります)。

  • 心理社会的アプローチ
  • 機能的アプローチ
  • 課題中心アプローチ
  • 危機介入アプローチ
  • 行動変容アプローチ
  • エンパワメントアプローチ など

中には名前から読み取れるものもありますが、選択肢の中には紛らわしい記述、いわゆるひっかけがあるので、特徴と違いについて正確に理解しましょう。

5. スーパービジョンの機能と形態を押さえる

スーパービジョンとは、福祉業界において新人職員(スーパーバイジー)が施設長・管理者などの指導者(スーパーバイザー)から教育・指導を受ける一連の過程を指します。

簡単な例を挙げると、新しく入った職員に教育担当がついたとします。

業務を行う上で分からないこと、不安なことを教育担当の職員に聞きアドバイス(助言)を受けます。

この一連の流れがスーパービジョンになります。

こちらも横文字になると最初のうちは難しく感じるかもしれませんが、少しずつ慣れていきましょう。

6. 「ソーシャルワークの基盤と専門職」と一体的に学ぶ

本科目と「ソーシャルワークの基盤と専門職」は関連性が強く一体的に学習することで効率よく知識を深められます。

1点も多く得点するためにも2つの科目を効率的に学習しましょう。

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橋口 貴俊 講師

この記事の執筆者 橋口 貴俊 講師

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地元の都道府県社会福祉協議会で働く。
地域福祉の推進のため、県域における福祉人材の確保・育成・定着に関する業務に携わっている。

社会福祉士としての専門性を高めるため、社労士と行政書士の試験に、働きながら独学で合格する。
社会人のための効率の良い学習方法を追究した結果、80日の短期間で、難関と言われる行政書士試験の一発合格に至る。

受験生がつまずきやすい社会保障制度や法律について、社労士試験などで培った専門性を発揮し、合格に必要な知識だけに絞った分かりやすい講義を得意としている。