本記事では社会福祉士国家試験科目の1つである「刑事司法と福祉」の概要や勉強法について紹介します。

本科目は、刑事司法と福祉の連携強化を目指して刑事司法の仕組みや機能を学びます。

試験対策の参考にしていただき、効率的に学習を進めていただければ幸いです。

関連コラム:社会福祉士試験の19の試験科目(共通科目・専門科目)について解説

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「刑事司法と福祉」科目とは?

刑事司法と福祉の概要

「刑事司法と福祉」は、旧カリキュラムの「更生保護制度」がベースとなっている科目になります。

刑法、刑事司法や少年司法、更生保護制度や医療観察制度に関する知識や理解などが問われます。

犯罪や非行をした人は、背景として、社会的な課題や生きづらさを抱えていることが多く、司法と福祉分野の連携による更生支援が重要です。

司法の仕組みの理解は、連携の上で欠かせないものになるため、大事に学習を進めていきましょう。

刑事司法と福祉の重要度

他科目との関連性が弱く、他科目との学習の相乗効果はあまり期待できないものの、他科目と比べて対策がしやすく、安定して得点を積むことができるため、重要度は普通といえます。

刑事司法と福祉の難易度

出題範囲がある程度限られているため、難易度は低めといえます。

更生保護制度と医療観察制度が頭の中でごちゃ混ぜにならないように注意して学習をしていけば、比較的スムーズに基本的な知識を習得することができます。

なお、刑法は学習の底が見えないので、基本的な部分だけの学習に留めるなどの割り切りが必要です。

「刑事司法と福祉」の勉強法

続いて、刑事司法と福祉の勉強法をポイントを絞って紹介します。

1. 更生保護制度と医療観察制度は確実に押さえる

更生保護制度」と「医療観察制度」は本科目のメインとなる知識になるので、得点力アップのため、正しく理解する必要があります。

更生保護制度の概要

最初に、更生保護制度の目的や内容を理解しましょう。

目的などの概要を理解していないと選択肢に惑わされてしまうことがあるので、注意が必要です。

更生保護制度の目的は、更生保護法第一条に定められており、要約すると

犯罪をした者や非行をした少年に対して、社会内において適切な処遇を行うことにより、再犯を防ぎまたはその非行をなくし、自立と改善更生を助けるほか、犯罪予防の活動の促進等を行うこと

とされています。

そのほか、保護観察、生活環境の調整、仮釈放などの内容も頻出の内容となるので確実に理解しておきましょう。

更生保護制度の機関

更生保護制度の事務を行う代表的な機関は以下のとおりです。

  • 中央更生保護審査会
    恩赦の実施に関する法務大臣への申出、仮釈放の審査などを行う
  • 地方更生保護委員会
    刑事施設からの仮釈放の許可・取消、少年院からの仮退院の許可に関する事務を行う
  • 保護観察所
    犯罪、非行を行い家庭裁判所から保護観察の決定が出た少年、刑務所や少年院から仮釈放になった者、保護観察付の刑の執行猶予となった者に対して保護観察を行う

試験では、特に「地方更生保護委員会」「保護観察所」は頻出なので要確認です。

更生保護制度の内容

更生保護制度の内容は特に頻出なので、押さえておきましょう。

更生保護制度に含まれる内容は次の6つです。

  • 保護観察
  • 応急の救護等及び更生緊急保護
  • 仮釈放・少年院からの仮退院等
  • 生活環境の調整
  • 恩赦
  • 犯罪予防活動

処遇の対象・内容・流れ、関連する専門職とその役割に着目して整理をしていくと、理解がスムーズになります。

2. 刑事司法に関わる近年の動向をチェックする

近年注目されている、「少年事件」や「非行少年」に関わる取り扱いを理解しておく必要があります。

日ごろから新聞などに目を通す習慣をつけ、関連する事柄の動向に注目しましょう。

刑事司法の概要を詳しく知りたい方は法務省のホームページをご覧ください。

3. 更生保護制度の担い手を理解する

更生保護制度に関わる担い手の役割や連携方法なども、試験で出題される可能性があります。

「保護観察官」や「保護司」などの専門職の役割、どのように連携し機能しているのかといった流れを理解しましょう。

以下、代表的な専門職を紹介します。

保護観察官

  • 主な業務
    保護観察・生活環境の調整・更生緊急保護・犯罪予防活動
  • 配置場所
    保護観察所(全国50ヶ所)・地方更生保護委員会(全国8ヶ所)

保護司

  • 主な業務
    保護観察・生活環境の調整・犯罪予防活動
  • 配置場所
    保護区(法務大臣が都道府県の区域を分けて定める区域)

また、「保護司」は、法務大臣から委嘱されること、無報酬の民間ボランティアという位置づけであること、任期は2年間で再任ができること、定数は全国で5万2500人を超えないものと規定されていることなど細かい知識を問われる傾向にあるので、丁寧に押さえておきましょう。

4. 医療観察制度の概要を押さえる

医療観察制度も、本科目では重要な知識になります。

医療観察法とは、日本で初めての「司法精神医療」に関する法律で、心神喪失または心神耗弱の状態で重大な他害行為を行なった者に対して、専門的な治療と処遇を行う仕組みを定めています。

医療や行政ではなく、司法が処遇の決定を行ないます。

根拠法となる「医療観察法」は、2003(平成15)年に成立しました。

制度の処遇の流れや、保護観察所に配置される「社会復帰調整官」の役割などを理解しておく必要があります。

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橋口 貴俊 講師

この記事の執筆者 橋口 貴俊 講師

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地元の都道府県社会福祉協議会で働く。
地域福祉の推進のため、県域における福祉人材の確保・育成・定着に関する業務に携わっている。

社会福祉士としての専門性を高めるため、社労士と行政書士の試験に、働きながら独学で合格する。
社会人のための効率の良い学習方法を追究した結果、80日の短期間で、難関と言われる行政書士試験の一発合格に至る。

受験生がつまずきやすい社会保障制度や法律について、社労士試験などで培った専門性を発揮し、合格に必要な知識だけに絞った分かりやすい講義を得意としている。