保育士の方の中には、「社会福祉士に転職してみたい」、「社会福祉士の資格を取って仕事の幅を広げたい」と、将来を見据えてキャリアアップを考えている方も多いのではないでしょうか?

社会福祉士は、相談援助のプロとしてさまざまな方のサポートを行う職業です。

保育士と社会福祉士のダブルライセンスを取得すれば、業務の幅や活躍の場が広がるでしょう。

本コラムでは、保育士から社会福祉士になるにはどうすればいいのかを解説します。

ダブルライセンスのメリットや試験の免除制度にも触れるため、興味のある方はぜひ今後の参考にしてみてください。

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保育士から社会福祉士になるには

保育士から社会福祉士になるには、社会福祉士試験に合格しなければなりません。

社会福祉士試験は国家資格であり、受験するためには受験資格の要件を満たす必要があります。

社会福祉士試験の概要

試験時期

社会福祉士試験は、年1回・例年2月上旬に実施される試験です。

また、出願期間は、例年試験日前年の9月上旬〜10月上旬です。

試験は、厚生労働省の指定を受けている公益財団法人社会福祉振興・試験センターが実施しています。

受験資格

社会福祉士試験の受験資格は、以下のように定められています。

  1. 4年制大学で指定科目を修めて卒業した方
  2. 2年制(又は3年制)短期大学等で指定科目を修めて卒業し、指定施設において2年以上(又は1年以上)相談援助の業務に従事した方
  3. 社会福祉士短期養成施設(6月以上)を卒業(修了)した方
  4. 社会福祉士一般養成施設(1年以上)を卒業(修了)した方
[社会福祉士国家試験]試験概要:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

4年制の福祉系大学で指定科目を履修して卒業する以外は、相談援助の実務経験や養成施設での修学が必要になります。

福祉の短大や一般の大学・短大を卒業している場合、保育士の方でも実務経験や短期養成施設もしくは一般養成施設の修学などの要件を満たせば、受験資格が得られるでしょう。

学歴が該当しない場合でも実務経験があれば、一般養成施設などで必要な知識や技能を1年以上修得することで受験が可能です。

試験科目

社会福祉士試験で出題される科目は、以下の6科目群(19科目)です。

1医学概論
心理学と心理的支援
社会学と社会システム
2社会福祉の原理と政策
社会保障
権利擁護を支える法制度
3地域福祉と包括的支援体制
障害者福祉
刑事司法と福祉
4ソーシャルワークの基盤と専門職
ソーシャルワークの理論と方法
社会福祉調査の基礎
5高齢者福祉
児童・家庭福祉
貧困に対する支援
保健医療と福祉
6ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)
ソーシャルワークの理論と方法(専門)
福祉サービスの組織と経営
参考:[社会福祉士国家試験]出題基準

出題範囲は人体の構造から心理学の知識、介護保険制度、福祉サービスの経営まで多岐にわたります。

合格基準

以下、2つの条件を満たした受験者が合格となります。

  1. 問題の総得点の約60%を基準とし、問題の難易度で補正した点数以上の得点がある
  2. 1の得点を満たし、出題する6科目群すべてにおいて得点がある

※参考:[社会福祉士国家試験]合格基準:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

なお、出題形式は五肢択一を基本とした多肢選択形式です。

問題数は129問で配点は1問1点、129点満点になります。

関連コラム:社会福祉士国家試験の試験内容・情報をわかりやすくまとめて紹介!

保育士から社会福祉士になるのに、免除科目はある?

保育士が社会福祉士試験を受験する際に、免除される科目はありません。

保育士の有資格者であっても、社会福祉士試験合格を目指すには基本的に一般の社会人と同じような条件になります。

ただし、保育士としての実務経験が受験資格の要件のひとつである相談援助実務(実務経験)に該当する場合があります。

保育士から社会福祉士になるのに、実習免除はある?

保育士から社会福祉士を目指す際、特定の施設・職種での相談援助の実務経験にかかわる要件を満たせば実習免除が認められます。

社会福祉士の実習とは、受験資格を得るための必須条件のひとつです。

福祉系の大学や短期養成施設、一般養成施設でのカリキュラムに含まれており、履修していないと受験することができません。

ただし、厚生労働省が定めた施設・職種で保育士として相談援助の実務経験を積んでいる場合は、実習免除の対象として認められます。

保育士の場合、「児童分野」での以下の施設での経験が該当します。

  • 児童相談所
  • 児童養護施設
  • 障害児入所施設(児童発達支援センター(障害児通所支援事業))
  • 知的障害児施設(知的障害児施設、自閉症児施設(第一種、第二種))
  • 知的障害児通園施設
  • 盲ろうあ児施設(盲児施設、ろうあ児施設、難聴幼児通園施設)
  • 肢体不自由児施設(肢体不自由児施設、肢体不自由児通園施設、肢体不自由児療護施設)
  • 児童心理治療施設
  • 重症心身障害児施設
  • 障害児通所支援事業(児童発達支援センターを除く)
  • 乳児院
  • 指定発達支援医療機関(肢体不自由児施設支援、重症心身障害児施設支援)
  • 重症心身障害児(者)通園事業を行なっている施設

参考:[社会福祉士国家試験]受験資格:相談援助業務(実務経験):公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

対象者は、常勤職員と常勤職員の3/4以上の時間を相談業務に携わったパート・アルバイトとなります。

なお、上記施設には「入所者の保護に直接従事する保育士」として介護福祉士試験を受験した場合、その実務経験が社会福祉士試験受験の要件とならない施設も含まれます。

保育士の方で介護福祉士試験の受験を予定している方は、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターの受験資格をよく確認しましょう。

保育士と社会福祉士、ダブルライセンスのメリットとは

保育士と社会福祉士のダブルライセンスによる主なメリットは、以下の3つです。

  • 児童分野に特化して活躍できる
  • 就職先や転職先の幅が広がる
  • キャリアチェンジや収入アップにつながる

児童分野に特化して活躍できる

保育士と社会福祉士のダブルライセンスを取得すると、児童分野の専門家として活躍できます。

社会福祉士の仕事は、日常生活を送るうえで困難を抱えている相談者の支援です。

サポートを行う対象は子どもやその家族も含まれており、保育士と社会福祉士は知識や技術が重なる部分があります。

保育士の知識・経験があれば、児童を直接サポートする児童福祉関係の施設で活躍しやすくなるでしょう。

なお、保育士と社会福祉士のダブルライセンスが活かせる施設の代表例は、児童養護施設や児童自立支援施設、児童相談所などです。

児童福祉関係の施設では、子どもの発達や発育に関する知識やコミュニケーション能力が求められます。

そのため、保育士の経験が特に役に立つでしょう。

就職先や業務の幅が広がる

保育士に加えて社会福祉士の資格を保有していると、就職や転職を行う際に選択肢が増えます。

さらに、ダブルライセンスであれば、より高い知識力と専門的な技術があると判断されるため、就職や転職する際に有利になるでしょう。

また、障がいがある子どもの保育に携わりたいと思っても、支援に特化した仕事に従事するためには社会福祉士資格が必要な場合があります。

児童分野でのさまざまな仕事に興味がある、支援が必要な子どもをサポートしたいという方は、保育士のほかに社会福祉士資格を取得するのがおすすめです。

キャリアチェンジや収入アップにつながる

保育士と社会福祉士のダブルライセンスを取ると、キャリアチェンジや収入アップがしやすくなります。

例えば、保育士として働く中で「幅広い人々の支援を行う現場も経験してみたい」という気持ちになった場合、社会福祉士資格を活かしてほかの施設や職種の仕事に変えることが可能です。

反対に社会福祉士の業務をしていても、同じ法人内に保育園や託児所などを運営する部署があれば、転職せずに保育の現場へのキャリアチェンジができるケースもあります。

ダブルライセンスであれば活躍できる場が増えるため、自分の希望に合わせて柔軟にキャリアを築いていくことができるでしょう。

さらに、収入アップをしたい場合は、社会福祉士の資格保有者が就職できるより給料が高い施設・職種への転職もしやすくなります。

また、職場によっては社会福祉士の資格に資格手当が支給されるケースもあるため、収入アップに繋がります。

まとめ

本コラムでは、保育士から社会福祉士を目指す方法とダブルライセンスのメリットを解説しました。

以下、要点をまとめます。

  • 保育士から社会福祉士になるには、社会福祉士試験に合格しなければならない
  • 保育士の仕事が受験資格の要件のひとつである相談援助実務(実務経験)に該当する場合がある
  • 保育士資格の保有による社会福祉士試験での免除科目はない
  • 保育士と社会福祉士のダブルライセンスには、児童分野に特化した活躍・就職先や転職先が増える・キャリアチェンジや収入アップがしやすいというメリットがある

支援が必要な児童へのサポート業務やキャリアチェンジに興味がある方は、ぜひ社会福祉士の資格取得を目指してみましょう。

ダブルライセンスを取得すれば、より専門性の高い仕事に従事できます。

ただし、保育士資格があるだけだと、社会福祉士への目指し方は基本的に一般的な社会人と変わりません。

受験資格を確認し、社会福祉士試験合格に向けてしっかり対策を行っていきましょう。

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